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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編
第1話「おれの異母妹に、気が狂いそうなほど恋している少女」
しおりを挟む(UnsplashのONUR KURTが撮影)
二十一歳になる井上清春《いのうえきよはる》は、父親の家が嫌いだ。
十四歳の時に実の母は亡くなり、それまでの母と二人のホテル暮らしから、父親と本妻が住む本邸での生活に変わった。
清春は、そのときほど自分が法的に大人でないことを悔《くや》しく思ったことはない。
しかし十四歳には保護者を選ぶ権利はなく、この世の何よりも嫌いな父親とその本妻、異母妹との生活が始まった。
それからの四年間、歯を食いしばって勉強とアルバイトに没頭した。高校卒業と同時に父の家から出るためには、奨学金と生活費が必要だったからだ。
あれから、七年。
大学三年生になった清春は、クリスマス前の時期をひたすらバーテンのアルバイトに費やしていた。
パーティシーズンのバーは普段の数倍のチップを稼げる。勤労大学生の清春にとっては大事な稼ぎ時だ。
クリスマス、ニューイヤーズイブ、ニューイヤーズと絶え間なく働いて、来年度の生活費の半分を稼ぎ切ってしまうつもりだった。
ついさっき、二歳下の異母妹の真乃《まの》から電話があるまでは。
真乃は、バーのはじまる直前、最高に忙しいタイミングを正確にねらって電話をかけてきた。
「キヨちゃん、クリスマスはうちに帰ってきてよ」
妹は、いつものようにしれっと自分の言いたいことだけを可愛らしく言った。こっちの都合はおかまいなしだ。
清春は軽く舌打ちをして、
「仕事があるんだ。それにおれがいたって、おやじの機嫌は良くならないよ?」
清春は帰宅したくないから、そう言ってみたが、異母兄を振り回すことになれている真乃はけろりとした声で、
「キヨちゃんがいないと、お父さんはもっと機嫌が悪くなるの。それに、さ」
と言い、ほんの一瞬だけタメてから、
「佐江《さえ》も、くるわよ」
と、自分の親友の名を挙げた。
清春はあえてひんやりした声を作り、
「佐江ちゃんが来るから、どうなんだよ?」
と、答えて、異母妹の反応を待った。
真乃の答えが来るまで、清春の心臓はバクバク言っている。
岡本佐江は、異母妹・真乃の親友だ。そして――真乃を気が狂いそうに、愛している。ひそかに。
そして清春は、そんな佐江から、目が離せない。
ゆっくりと間を取って、意地の悪い異母妹は答えた。
「べっつにー。そう言えば、キヨちゃんが戻ってくる気になるかと思ってね。で、どうするの? くるの、こないの、キヨちゃん?」
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