魔王狩り~転生してニートになった魔王は7人の高スペックイケメン悪魔に狙われています!~

あぐたまんづめ

文字の大きさ
2 / 19

第1話

しおりを挟む
   黒澤 眞央くろさわ まおは誰にも言えない秘密を抱えていた。
 それは同じ夢を何度も見ること。
 しかもその夢の中は漫画やアニメでいうところの「異世界」に酷似しており、眞央はそこで異世界の悪者である「魔王」になっているのだ。
 そこでは魔王らしく、自軍の悪魔数万を従え、人間の住む町々を破壊し、虐殺行為を繰り返す。まさに絶対悪。
 心が痛むことはなかった。どうせフィクションだと思っていたし、卑屈な性格の眞央は勇者より魔王の方が好きだったから。
 しかし所詮夢は夢。
 社会の底辺であるニート。親からのささいな援助で一人暮らし。友達もいない、彼女いない歴=年齢の童貞という残念な現実は変わらずにあり続ける。
 この夢みたいに誰もが畏怖し、かしずく魔王になれたらと眞央は何度思ったか。

―――そう、何度も。



***

「ああ……悲願がついに叶った。やっと見つけましたよ。我が魔王様」

 イッタイ ナニガ オキテイルンダ ?

 眞央は状況が全く飲み込めず、硬直していた。
 好きなアニメの新刊をゲットしようと新宿に赴き、何やら騒々しいなと思い人ごみの隙間から覗きこめば、TVで一度は観たことある世界的ハリウッド俳優がお忍びで来ていて……うわ~~足長っ顔小さっ! 同じ人間とは思えねぇ、と一人ツッコミをしていたら、俳優とバチッと目が合って、突然人を掻きわけてこちらに来たと思ったら、ひざまずかれ手の甲にキスをされ、冒頭のセリフに戻るというわけだ。
 この好奇な状況に、周りはいっそう騒々しくなり、「何かの番組のドッキリかなぁ」とはやし立てながら、二人をスマホのカメラで撮り始める。
 それでも俳優はおかまいなし。一筋の涙を零し、眞央の手の甲をひしと両手で握っている。
 その様は王子が長年の旅路の末にようやく探し当てたお姫様そのものだ。
 普段家に引きこもっているニートには、この都会のド真ん中、周りから脚光を浴び続けるにはキャパ越えで、ついに眞央は俳優の手を引っ張りがむしゃらに人ごみの中を脱走した。

「どこへ行くんだいっ!?」

「分かんねぇよ! けどあのままだと恥ずかしさで死ぬわっ!!」

「なるほど、じゃあ僕に任せてくれ。いい場所がある」

 今度は俳優が眞央の手をグイッと引っ張った。


 俳優が案内してくれたのは、路地裏にある寂れた喫茶店だった。
 周辺のビルに挟まれてるせいで日中でも薄暗い店内は、客が一人もおらず閑散としているが、むしろ好都合だった。
 俳優は年老いたオーナーにコーヒーを二つ注文すると、眞央と向き合う。

「まさか日本にいらっしゃるとは思わなかった。どうりであんなに探しても見つからなかったわけだ」

 間近で見ると、その美しさと只ならぬオーラがより一層感じられた。
 一言でいうと、泣きボクロがセクシーなアジアンビューティー。
 サイド三つ編みされた濡烏色のロングヘアは、彼の妖艶さをいっそう引き立てていて、男の眞央でもドキリとしてしまう。
 眞央はドギマギしながらも、勇気を出して告げる。

「あの……そのことなんですが、人違いだと思いますよ。あなたと会ったのはこれが初めてですし」

「それは嘘だね」

 俳優は断言した。
 びっしりと生えそろった睫毛に囲まれた双眼が、有無を言わさない迫力を感じさせる。

「僕と君の関係は家族の血よりも濃く、深く、友情や愛情という言葉では言い表せない固い絆で結ばれているんだから」

 俳優はそう言いながら、テーブルに置かれた眞央の手を指先でなぞる。
 眞央が恐怖を覚え、委縮するのを見ると、「どうやら本当に何も覚えてなさそうだね」と寂しげに微笑んだ。

「では改めて名乗らせていただこうではないか。親愛なる魔王様に仕えし『七つの大罪』が一人、『色欲』のアスモデウスとは僕のことさ」

「七つの大罪……」

 眞央はその存在を夢で知っていた。魔王が束ねていた数万の悪魔の軍勢の、頂点に君臨せし七人の悪魔のことだ。
 彼らは、魔王の最高の側近であり忠実な配下として幾千の戦いを乗り越え、魔王に勝利を捧げてきた。

「でもそれは夢の中の出来事で、現実じゃありえないはず……」

 混乱する眞央をよそに、アスモデウスはクスクスと笑う。

「こんな動揺する魔王様を拝めるとは、転生というのも実に愉快な余興じゃないか」

「転生?」

「そうだよ。赤子のように無知な我が王にお答えしようとも。僕達は、世界征服まであと一歩というところで、勇者の捨て身の攻撃に遭い死んだ。そして今、前世の記憶を引き継いで別の世界に生まれ変わったというわけさ」
 
「じゃあ、俺が繰り返し見ていた夢っていうのも――――」

「フィクションなんかじゃない。確かにあった前世の記憶さ」

 眞央の頭の中はもう滅茶苦茶にグチャグチャだった。
 突然あったイケメンが自分の部下で、しかもあれほど望んでいた魔王が現実だったなんて。
 しかしそれが事実だとしても、その記憶が自分のものだという確信がないので、全てを信じることはできない。
 眞央の顔を見て心中を悟ったアスモデウスは、「大丈夫」と言ってテーブル越しに身を乗り出すと、口づけを交わした。

「んんっ?!」

 眞央は反射的にアスモデウスを引きはがそうとするが、両手で顔を固定されているため、ビクともしない。
 彼の長い舌が眞央の口内に侵入し、歯の裏側をなぞり、舌を激しく絡ませ、蹂躙してくる。

「んっ…ふぅ、んん~~!!」

 眞央の瞳に生理的な涙がにじむ。
 互いの唾液が絡み合う。

「いやっ、だぁ!!」

 眞央はアスモデウスの力が弱くなった隙をみて、彼の体を押しのけた。
 まだ熱を帯びている自分の唇を押さえながら、弱々しく吐き捨てる。

「何でキスなんか……こんなん、知らねぇのにっ!」

 これがファーストキスなのだと察したアスモデウスは、興奮気味に叫ぶ。

「我が王の初接吻を戴けたとはっ! 有り難き幸せ、光栄の極みっ!!!」

 眞央は本能で察した。コイツは色んな意味でヤバイ奴だと。
 とりあえず逃げよう。眞央はそう思って席を立ち上がろうとした……が、視界がグニャリと歪み、そのまま意識を失った。

 テーブルに突っ伏した眞央を見下ろしながら、アスモデウスは人間離れした笑みを浮かべて告げた。

「我が王よ。この色欲が捕らえたからには、決して逃がしはしまいよ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

処理中です...