はい、こちらは『異世界行き課』です。ご用件をどうぞ。

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えと、こちらは『異世界行き課』です。

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 閑静な住宅街にその家はある。
異世界行き課イセカイユキカ』職員の眼鏡は、先日『異世界行き』となった「蕪木萌香」の自宅に来ていた。
 通常、戸建てであれば数人で向かうのだが、今回この家は眼鏡の所有物となる為、一人でどうぞとなった。萌香から眼鏡への手紙もあるとの事なので、女神様なりの配慮であろうか。

 ――ホントに素敵なお宅ですね……。
 眼鏡はいつものように白手袋をはめ、丸いキーホルダーのようなモノを玄関の鍵穴にかざす。
 これも女神様の不思議アイテムで『異世界行き課』にはなくてはならないモノになる。

 かざすだけで、どんな鍵でも開けてしまうのだ。
 電子パスワードも画面にかざせばログイン出来てしまう。
 また悪用は出来ない仕組みにもなっているそうで、使用は女神様に筒抜けで、女神様が許可しなければ開かないようになっているそうな。

 ――凄いですね……。

 ガチャリと鍵が開く。眼鏡は誰もいはしない家に向け声を投げる。
「お邪魔いたします」

 玄関を閉め辺りを見渡す。

『リビングのテーブルに手紙置いてあるから読んでね!!』
 萌香が異世界へと飛ばされる間際に伝えてくれた。

 まずは手紙をと、リビングへ進む眼鏡。
 ――綺麗なお宅ですね……。 萌香さんは一人で……。
 感傷的になる眼鏡。リビングテーブルの手紙を手に取る。

 ――これですね……。
 早速目を通す。そこには眼鏡への感謝と、家の事、必ず帰る!と意気込みが書かれていた。

 泣きながら読んでいた眼鏡だが、萌香の帰るという書き込みに笑みがこぼれる。
 ――ふふ。お強いですね。

「よしっ」
 眼鏡は萌香の手紙を胸にあて、宙を仰ぎ見る。

 ――異世界から帰った人の話は聞いたことはありませんが……。萌香さんが初となるかもしれませんし! 萌香さんがいつ帰っても困らぬよう、この家の維持を努めさせていただきます!

 うん!と決意を込めて力強くうなづく眼鏡。

 ――さてそれでは……

 萌香の手紙にあった貴重品置き場を確認し、家の鍵を持ち出す。
 各部屋は、ご両親と兄と萌香の部屋となっている。
 萌香自身も自分の部屋以外は触れておらず、掃除だけしているとのことだ。

 処分は自由にしてもらっていいとは書いてあったが、帰ってきたら空っぽだったでは、悲しすぎるでしょうと。何もしなかった事へのせめてもの罪滅ぼしで、現状ママを維持する事に決めた。

 ――うん。この家に住まわせてもらいましょう。大きな客間があったので、そちらに間借りさせてもらいます。自分の荷物も余裕で入りきるでしょう。萌香さんの手紙にも異世界から帰ってきたら一緒に住まわせてとありましたし。私が住んでいる事前提になってましたね。

 いつか萌香とこの家で暮らす事を想像し、ふふっと穏やかな表情になる眼鏡。

 ――さて、暫くは引っ越し作業が忙しくなりますね。どこかで有給休暇もとりましょう。

 いつまでもメソメソとしてはいられないと、いつか戻るであろうこの家の主人あるじの為に、行動を起こす眼鏡なのでした。
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