はい、こちらは『異世界行き課』です。ご用件をどうぞ。

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では、こちらは『異世界行き課』です。

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 気を取り直し、画面に目をやる眼鏡。
 楽しそうに萌香を眺める女神様。

 一先ず萌香も落ち着いたようで舗装されていない道を進んでいる。
 そんな様子をハラハラと見守る眼鏡。萌香が途中花を摘みに行くようで、おっと。と、ちょっと席を離れる。

「あらあら、あらあら、大変だわ。いかにもな悪漢が現れちゃった♪」
「……え!?」

 急いで女神様の席へと戻ると、少年姿の萌香は屈強な男に腕を掴まれ、ねっとりと絡まれていた。

「……!!」
 息をのむ眼鏡。萌香は間一髪で何とか男の絡みから逃れ走り出すが、男も追いかけている。

「も、も、萌香さん……っ」
 恐ろしさで声が震え、バッと女神様に顔を向ける。

「な、何とかしてあげられないのですか!!」
「ンも~。わかってるわよ~」

 ちょと口を尖らせる女神様。
 また鏡の前で人差し指を横に動かす。文字が浮かび上がりスゥっと萌香に向けて消えていくと同時に、今度は女神様が呟く。

『萌え・萌え・ボ・ン・バー♪』

 戸惑いながらも萌香が復唱すると、ボンッと何かが弾けた。

 ――あ、あれは…… ボム……。
 画面の萌香を凝視する眼鏡。
 すると女神様が萌香に向かって声をかけ始めた。

『聞こえますか……。今……、貴方の脳内に……、直接、語りかけています……』

 ――な!?
 信じられないといった表情で女神様を見つめる眼鏡。
 ――ど、どこで、そんなセリフを……ッ

 二人の驚く様に耐えきれず、うふふと含み笑いをもらす女神様。
 萌香もそれが女神様であると気づいたようだ。

『あ、は~♪ だっい、せい、か~~い! パンパカパカ~ン♪ 女神ちゃんでした!』
 早速正体を明かす女神様。

 もお、何が何だかと、女神様と画面の萌香を交互に見やる眼鏡。

『どぉ? 萌香ちゃん♪ 異世界は♪』
 うふふと呑気に挨拶をする女神様。

 追われている萌香はそれどころではない。
 バランスを崩し倒れ、また悪漢に捕まってしまう。

「!!!!」
 気が気ではない眼鏡。
 幾度も幾度も萌香と女神様を交互に見やる。

 女神様はハイハイやれやれといった表情を浮かべ、また人差し指を横に動かし呟く。
『萌え萌えボンバー』

 萌香の口から発せられた言葉は小さく爆ぜ、男はのけ反り、その隙を付き萌香は必死に走り出す。

 そんな様子を意にも介さない女神様。
『さて♪ 「チュートリアル」のお時間よ~!』

「萌え萌えボンバー」が爆発である事と、使用方法をお気楽に伝え始める。
 走りながら息を切らしながら何とか理解しようと努めている萌香。

『そ。そしたら「萌え・萌え・ボ・ン・バー♪」リピートアフターミ~』
 変わらず呑気な女神様。立ち止まり女神様の言う通りに試し打ちをしてみる萌香。

『あら♪ 早速理解したみたいね♪ さっきより理解が深まったところで、あ、ほら! また実戦よ~~♪』

 女神様の言葉にエ?となり画面を注視すると、先程の悪漢が仲間を引き連れ馬で追いかけて来ている。

 ――……!!!!
 ヒュっとなる眼鏡。

『ほらほら♪ 大変♪ 手篭めにされちゃう♪ 萌え萌えボンバー♪ 萌え萌えボンバー♪』
 茶化すような物言いをする女神様。

 萌香が大きな声で「萌え萌えボンバー!!!!」と叫ぶと、
 空気が集まるように風が吹き、先程とは比べようが無いほどの大きな爆発音と閃光が走った。

「ンっ……!!!!!!」
 少しの間萌香を視認出来ずにいたが、土煙が治まり視界が開けてゆくと、テニスコート4面くらいの大きさが綺麗さっぱり更地となっていた。

 呆然とする眼鏡と萌香。
『そ、威力は声の大きさと比例するわね♪』

 萌香は事の大きさに脱力し暫しガクリとしていたが、悪漢の行方を案じ始める。
『あぁ。生きてるわよ』
 あっさりと女神様が答える。
『爆風で大分遠くに飛ばされたみたいね♪ もお安心よ♪』

「人殺し」にならなかった事に安堵した様子だ。

 ――だけど、もしかしたら、いつかは……

 行く末を案じる眼鏡。気付けば爪の跡が付く程に、手を握りしめていた。

『あ、そうそう!』
 女神様の突然の大声にビクッとする。

 すると萌香はゆらりと膝をつく。

『これらは使えば使う程、魔力を消費するから気を付けてね♪』

 そしてゆるりとその場に倒れ込む萌香。

『使い切ると気を失いま~す♪』

「な…………!!」
 画面に釘付けとなる眼鏡。画面はノイズ混じりになり見えにくくなり始めていた。

 ノイズ混じりの画面の先で馬が萌香に近づいて来ている。薄っすらと月明かりを背に、人と馬のシルエットが浮かび上がる。先程の悪漢であろうか。

 萌香はその場に伏せ、微動だにしなくなってしまった。

「も、萌香さん!! 萌香さんっ!!!!」
 たまらず画面の萌香に向け声を掛ける眼鏡。
 とすると画面は真っ暗になり、何も映さなくなってしまった。

 驚き女神様を見る眼鏡。
「あら~。萌香ちゃんの魔力切れね」
「……っ え、 ど、どーゆう……」

「これはね~。そうね~……。分かりやすく言うとっ、携帯電話と一緒よ♪」
「え……?」

「片方が電池満タンでも、もう一方が電池切れたら通話出来ないでしょ♪ それと一緒♪ 萌香ちゃんの魔力もないと、見れないのよ~♪ 残念ね♪」

「――――――っ!!」
 声にならない叫びをあげる眼鏡。

「あぁ、萌香さんっ! ……どうか、どうか、ご無事で……!!」


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