シブシブ異世界!!

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始まり始まり

始めに

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 図書館からの帰り道。携帯電話を片手に、コンビニ等へ寄り道しつつ帰路へつく。
 
 21時の繁華街はたいそう賑やかだ。
 昼間はだいぶ暑かったが、夜は風も出ていささか過ごしやすい。

 あっ……

 視界の先に男性が一人。不自然な空間が男性の周りに出来ている。
 まるで舞台に一人、スポットライトを浴びているような感じだ。
 飲み会の帰りだろうか。
 少し先には仲間と思われる集団がいて楽しそうではある。
 そしてそこは交差点。

 来る……

 先を歩いていた仲間が遅れ気味の男性に気付き元気な声を掛ける。
「おーいタナカー!早く来いよー」

 刹那、どこからともなくトラックが男性目掛けて突っ込んだ。

 うわっ……

 トラックの衝撃音が辺りを騒がす。
 先を歩いていた仲間達が悲痛な声をあげる。

「タ、タナカー!!」
「まじかよ!!」
「無事かっ!大丈夫かっ!」
「タナカー……!」
「おい……!おい!」
「そんな……っ」
「えっ、え……」

 来た……

 パァァっと、突っ込んだトラックが輝きだし、シュワーと透明に薄れていく。

 そして煌々と輝いているタナカが宙に浮かんでいる。

「タ、タナカー!!」
「まじかよ!!」
「無事かっ!大丈夫かっ!」
「タナカー……!」
「おい……!おい!」
「そんな……っ」
「えっ、え……」

「「異世界行きかー!!」」

 悲痛な呼び声は歓声へと変わっていく。
 険しかった表情は、安堵、驚き、羨望へと変化する。

「ヒュ~!」
「元気でなー!」
「うまくやれよー!」
「羨ましいぜー!」

 野次馬も増えヤンヤヤンヤと賑やかす。

 光と共にトラックとタナカは消滅。

 ひとしきり騒ぎ立てると仲間が電話を掛ける。

「あー、もしもしー? 今、異世界行き、発生しましたー。あーはい。場所は――」

「うわー私初めて見たー」
「私は二度目かな」
「あー俺も異世界、行きてーな」
「羨ましいよね!」
「俺は子供生まれたばっかだから、異世界行きは困っちゃうなー」
「全部補償されるらしいけど」
「僕も今、家建ててるからなー」
「一度は行ってみたいかも」
「でも帰って来れないんでしょ」
「あっちでは無双出来るらしいじゃん」
「仕事の締め切りヤベーから今すぐ行きたい!」
「ハーレムがいいな~」
「冒険してみてー」

 異世界行きを目の当たりにした人々が、口々に言い始める。

 異世界行きが当たり前になったこの世界。
 『 異世界行き課イセカイユキカ』という組織があり、異世界行きの諸々を処理している――。

 
 身内がいない場合も全部片付けてくれるんだって。
 心置きなく異世界へどうぞって事らしい。

 アタシは何度か異世界行きを見た事がある。
 そしてそのタイミングも何となく分かるようになってきた。

 だから、そうならないように気を付けている。
 だって、アタシはゼッッッタイッ、お断り。

 よくわからない世界に行くのも嫌だし、
 ドラマに漫画、動画だって続きがとっても気になるの。
 異世界になんて行ってられないんだから!!!!


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