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寄り道
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静かな環境で、勉強がはかどる。時々台本を手にして息抜きをする。舞台の方が大事だとは思うものの、進路を考えると、テストもあまり点数を下げるわけにはいかない。
「はい、どうぞ」
「あ、すみません、ありがとうございます。あの……お気遣いなく……」
智貴さんの手から差し出された麦茶のグラスを丁寧に受け取る。
「感心ですね。僕が高2の時なんて、真剣に勉強した覚えがないですよ」
そう言って笑いながら、向かいの席に座った。
バードステーションのレジカウンター横のテーブルに、私は勉強道具一式を広げていた。
「すみません、なんか……押しかけちゃって」
テスト前の日曜日。父も愛子さんも休みで、なんとはなしに息がつまる家を抜け出してきた。
あれから、表向きは普通に過ごしている……つもりだ。家に帰れば話もするし、父の帰りが遅い日は、愛子さんと2人で夕飯を食べることもあった。
でも、父と愛子さんの2人が一緒にいる空間に私も一緒にいる、というのがどうにも苦手だった。
図書館に行こうと思って家を出たのだが、途中でここに立ち寄ってしまった。
「でも日曜日だから、お休みかと思ってました」
「通販の発送はお休みしてますけどね。家も職場も兼用なので、定休日ってあんまり考えてないんですよ」
ホッペがちゃんと餌を食べるようになり、元気を取り戻したことを報告した。ついでに今はテスト期間だと伝えると、智貴さんがここで勉強してもいい、といってくれたのだ。
図書館はこの時期、学生でごった返す。席が取れないこともしばしばだ。ここは静かだし、ほぼ貸切状態。こんなにありがたい環境は、なかなかない。本当なら……家が落ち着く場所だったなら、自分の部屋が最適なのかもしれないけれど。
相変わらずこの店は静かなもので、今まで来客といえば、宅配が3件来ただけだ。たまたま智貴さんが席を外していたときで、最後の1件は私が受け取った。
一つは仕入れた商品だったようだけれど、もう1件は通販業者の箱、最後はネットスーパーからで、洗剤などの生活雑貨と食材の宅配だった。
ネットで注文すると、スーパーから配達してくれるらしい。一歩も外に出ないで日用品の買い物が済んでしまうのだ。
「通販、よく使うんですね」
「ええ、まあ……。通販で事足りることが多いですから」
「おでかけ、嫌いなんですか?」
「そうですねぇ……」
膝の上にオウムのタロを乗せ、まるで猫でも撫でているかのようだ。
「人が多いところは苦手なんです」
智貴さんは立ち上がり、タロを止まり木のスタンドに乗せた。
「だから買い物のために家を出ることは、ほとんどないですね」
「なんだか引きこもり……」
いいかけて、さすがに失礼だったかな、と言い淀んだ。
「あはは、そう言われればそうですねぇ」
「ご……ごめんなさい……失礼なこと……」
一瞬合わせたその目は、怒ってはいないようでホッとした。
「いえ、いいんです。まあ……自立はしているんで勘弁してください」
目を細くして、こちらに優しく笑いかけてくれている。
智貴さんはこの店舗兼住宅で一人暮らしをしているそうだ。自立していることは確かなのだろうけれど、家族はどうしているんだろう。
「両親は幼い頃に亡くなったんで、僕は祖父母に育ててもらったんです。少しの間、本当に引きこもりみたいなことをさせてもらった時期もありましたけどね」
その先は語らず、智貴さんは曖昧に微笑んだ。
「おじいさまとおばあさまは、今は一緒に住んでいないんですね」
「もう二人とも80を越えていますからねぇ。今は叔父夫婦と一緒に住んでいますよ。その方が僕も安心ですから」
智貴さんも親がいない暮らしをしていたんだ。
「一人暮らしって、寂しくないですか? 私、高校を出たら一人暮らししようと思うんです。でも、寂しくないかなって……」
「家族がいたらなぁ、と思うことはありますね。風邪をひいたときとかは特に。でも、普段はこうしてタロもいますし、仕事もありますし」
気を紛らわすことのできる何かがあればいいのだろうか。
「私にもホッペがいるし、やりたいこともあるし……大丈夫かな……」
「大丈夫ですよ。一人暮らしなんて慣れですから」
将来のことを考えるとワクワクしたはずなのに、今はあまり考えたくない。
大学に行くことができたら、演劇をもっと学んで打ち込みたい。でも、大学に行くことなんかできるのだろうか。私は父に、大学に行きたいなんて言っていいのだろうか。私には弟か妹ができる。父にとっては、愛する妻との子供。私なんかより、その子を大事にしたいはずだ。
「ハルちゃんには夢があるんですよね。それ、演劇の台本でしょう?」
教科書と一緒に机の上に広げたままの台本を指差す。
「8月に舞台があるんです。でも、まだうまく演じられていなくて」
どんな役だって演じられると思っていたのに、苦手な分野があることに気づかされた。
「自分の経験が重なって辛い部分もあるし、逆にわからない気持ちもあって、ごちゃごちゃなんです」
「わからない気持ち、ですか」
そう。私が演じる幽霊は、恋をするのだ。
「私、今までちゃんと恋とかしたことがなくて。変ですよね、もう高2にもなって、恋もしてないなんて……」
智貴さんは静かに首を横に振った。そして、話の先を促す。
「私の役は、若くして孤独死した女性の幽霊なんです。自分のことが見える男性に出会って、恋に落ちて……でも別れなければならないんです。幽霊だから、成仏しなきゃいけない」
うんうん、と智貴さんが黙って相槌を打っているのを確認して、私は続けた。
「恋をして……その想い合った好きな人と別れなければならない。そんな気持ち、私にはきっとまだ理解できていなくて。なんか……演じてもしっくりこないんです」
恋をするという気持ちすらわからないのに。
「ハルちゃんは……恋にあまり良い印象がないんですね」
言われて、私はハッとした。
恋愛は甘酸っぱいとか、ときめくとかいうし、同級生も皆、楽しそうに恋バナをするし。私も漫画や小説を読むと、素敵だなとは思う。
でも、現実の私にとっては……たしかに、恋にはあまり良い印象がない。
母は新たな恋をして私を捨てた。今だって、父は新しい奥さんを見つけて……。
「ギャァァーーーッ!」
雄叫びをあげながら、タロがテーブルに突っ込んできた。
「タロ?!」
「ア゛ーーッ」
バサバサと大きく羽ばたき、強い風を作り出す。
広げていたノートがめくれ、プリントが吹き飛び、ペンが転がり落ちた。
「わっ、急にどうしたの」
私は床に落ちたそれらを拾いつつ、目に溜まった涙をこっそり拭いた。
「こらこら、タロ! すみません、大丈夫ですか?」
タロを腕に乗せ、智貴さんは再びタロを止まり木へ戻した。
「大丈夫です。でもいきなり叫ぶんだもん、びっくりしたぁ」
もしかしたらタロは、私が泣きそうなのに気づいたのだろうか。ごまかすのを手伝ってくれたのかな。タロのおかげで涙は引っ込んだし、笑ってごまかせた。
「智貴さんには、恋人って……いるんですか?」
「僕、ですか」
急に話を振られて、智貴さんは少し戸惑っているようだ。
「恋するって、そんなに素敵なことなのかなって……そんな話が聞けたらなって思って」
智貴さんの部屋の写真立てをうっかり見てしまってから、気になっていたのだ。あの綺麗な女の人は、誰なんだろう。もし恋人なら、どんな人なんだろう。どんな風に2人は過ごしているのだろう。
「今は……恋人はいませんよ」
智貴さんはふうっとため息をするかのように息をついて、私の正面に腰掛けた。
「あの写真ですか?」
ドキリと鼓動を感じ、一瞬だけ息が止まった。部屋の中を見てしまったこと、気づいていたんだ。
「あ、ごめんなさい……勝手に見ちゃって……」
智貴さんは笑みを浮かべたままだった。
「いいえ、いいんです。いつか、こうして誰かに話す日も来るのかなって、思っていました」
今まで誰にも話したことはないんですけれど、と前置きして、智貴さんはゆっくりと口を開いた。
「はい、どうぞ」
「あ、すみません、ありがとうございます。あの……お気遣いなく……」
智貴さんの手から差し出された麦茶のグラスを丁寧に受け取る。
「感心ですね。僕が高2の時なんて、真剣に勉強した覚えがないですよ」
そう言って笑いながら、向かいの席に座った。
バードステーションのレジカウンター横のテーブルに、私は勉強道具一式を広げていた。
「すみません、なんか……押しかけちゃって」
テスト前の日曜日。父も愛子さんも休みで、なんとはなしに息がつまる家を抜け出してきた。
あれから、表向きは普通に過ごしている……つもりだ。家に帰れば話もするし、父の帰りが遅い日は、愛子さんと2人で夕飯を食べることもあった。
でも、父と愛子さんの2人が一緒にいる空間に私も一緒にいる、というのがどうにも苦手だった。
図書館に行こうと思って家を出たのだが、途中でここに立ち寄ってしまった。
「でも日曜日だから、お休みかと思ってました」
「通販の発送はお休みしてますけどね。家も職場も兼用なので、定休日ってあんまり考えてないんですよ」
ホッペがちゃんと餌を食べるようになり、元気を取り戻したことを報告した。ついでに今はテスト期間だと伝えると、智貴さんがここで勉強してもいい、といってくれたのだ。
図書館はこの時期、学生でごった返す。席が取れないこともしばしばだ。ここは静かだし、ほぼ貸切状態。こんなにありがたい環境は、なかなかない。本当なら……家が落ち着く場所だったなら、自分の部屋が最適なのかもしれないけれど。
相変わらずこの店は静かなもので、今まで来客といえば、宅配が3件来ただけだ。たまたま智貴さんが席を外していたときで、最後の1件は私が受け取った。
一つは仕入れた商品だったようだけれど、もう1件は通販業者の箱、最後はネットスーパーからで、洗剤などの生活雑貨と食材の宅配だった。
ネットで注文すると、スーパーから配達してくれるらしい。一歩も外に出ないで日用品の買い物が済んでしまうのだ。
「通販、よく使うんですね」
「ええ、まあ……。通販で事足りることが多いですから」
「おでかけ、嫌いなんですか?」
「そうですねぇ……」
膝の上にオウムのタロを乗せ、まるで猫でも撫でているかのようだ。
「人が多いところは苦手なんです」
智貴さんは立ち上がり、タロを止まり木のスタンドに乗せた。
「だから買い物のために家を出ることは、ほとんどないですね」
「なんだか引きこもり……」
いいかけて、さすがに失礼だったかな、と言い淀んだ。
「あはは、そう言われればそうですねぇ」
「ご……ごめんなさい……失礼なこと……」
一瞬合わせたその目は、怒ってはいないようでホッとした。
「いえ、いいんです。まあ……自立はしているんで勘弁してください」
目を細くして、こちらに優しく笑いかけてくれている。
智貴さんはこの店舗兼住宅で一人暮らしをしているそうだ。自立していることは確かなのだろうけれど、家族はどうしているんだろう。
「両親は幼い頃に亡くなったんで、僕は祖父母に育ててもらったんです。少しの間、本当に引きこもりみたいなことをさせてもらった時期もありましたけどね」
その先は語らず、智貴さんは曖昧に微笑んだ。
「おじいさまとおばあさまは、今は一緒に住んでいないんですね」
「もう二人とも80を越えていますからねぇ。今は叔父夫婦と一緒に住んでいますよ。その方が僕も安心ですから」
智貴さんも親がいない暮らしをしていたんだ。
「一人暮らしって、寂しくないですか? 私、高校を出たら一人暮らししようと思うんです。でも、寂しくないかなって……」
「家族がいたらなぁ、と思うことはありますね。風邪をひいたときとかは特に。でも、普段はこうしてタロもいますし、仕事もありますし」
気を紛らわすことのできる何かがあればいいのだろうか。
「私にもホッペがいるし、やりたいこともあるし……大丈夫かな……」
「大丈夫ですよ。一人暮らしなんて慣れですから」
将来のことを考えるとワクワクしたはずなのに、今はあまり考えたくない。
大学に行くことができたら、演劇をもっと学んで打ち込みたい。でも、大学に行くことなんかできるのだろうか。私は父に、大学に行きたいなんて言っていいのだろうか。私には弟か妹ができる。父にとっては、愛する妻との子供。私なんかより、その子を大事にしたいはずだ。
「ハルちゃんには夢があるんですよね。それ、演劇の台本でしょう?」
教科書と一緒に机の上に広げたままの台本を指差す。
「8月に舞台があるんです。でも、まだうまく演じられていなくて」
どんな役だって演じられると思っていたのに、苦手な分野があることに気づかされた。
「自分の経験が重なって辛い部分もあるし、逆にわからない気持ちもあって、ごちゃごちゃなんです」
「わからない気持ち、ですか」
そう。私が演じる幽霊は、恋をするのだ。
「私、今までちゃんと恋とかしたことがなくて。変ですよね、もう高2にもなって、恋もしてないなんて……」
智貴さんは静かに首を横に振った。そして、話の先を促す。
「私の役は、若くして孤独死した女性の幽霊なんです。自分のことが見える男性に出会って、恋に落ちて……でも別れなければならないんです。幽霊だから、成仏しなきゃいけない」
うんうん、と智貴さんが黙って相槌を打っているのを確認して、私は続けた。
「恋をして……その想い合った好きな人と別れなければならない。そんな気持ち、私にはきっとまだ理解できていなくて。なんか……演じてもしっくりこないんです」
恋をするという気持ちすらわからないのに。
「ハルちゃんは……恋にあまり良い印象がないんですね」
言われて、私はハッとした。
恋愛は甘酸っぱいとか、ときめくとかいうし、同級生も皆、楽しそうに恋バナをするし。私も漫画や小説を読むと、素敵だなとは思う。
でも、現実の私にとっては……たしかに、恋にはあまり良い印象がない。
母は新たな恋をして私を捨てた。今だって、父は新しい奥さんを見つけて……。
「ギャァァーーーッ!」
雄叫びをあげながら、タロがテーブルに突っ込んできた。
「タロ?!」
「ア゛ーーッ」
バサバサと大きく羽ばたき、強い風を作り出す。
広げていたノートがめくれ、プリントが吹き飛び、ペンが転がり落ちた。
「わっ、急にどうしたの」
私は床に落ちたそれらを拾いつつ、目に溜まった涙をこっそり拭いた。
「こらこら、タロ! すみません、大丈夫ですか?」
タロを腕に乗せ、智貴さんは再びタロを止まり木へ戻した。
「大丈夫です。でもいきなり叫ぶんだもん、びっくりしたぁ」
もしかしたらタロは、私が泣きそうなのに気づいたのだろうか。ごまかすのを手伝ってくれたのかな。タロのおかげで涙は引っ込んだし、笑ってごまかせた。
「智貴さんには、恋人って……いるんですか?」
「僕、ですか」
急に話を振られて、智貴さんは少し戸惑っているようだ。
「恋するって、そんなに素敵なことなのかなって……そんな話が聞けたらなって思って」
智貴さんの部屋の写真立てをうっかり見てしまってから、気になっていたのだ。あの綺麗な女の人は、誰なんだろう。もし恋人なら、どんな人なんだろう。どんな風に2人は過ごしているのだろう。
「今は……恋人はいませんよ」
智貴さんはふうっとため息をするかのように息をついて、私の正面に腰掛けた。
「あの写真ですか?」
ドキリと鼓動を感じ、一瞬だけ息が止まった。部屋の中を見てしまったこと、気づいていたんだ。
「あ、ごめんなさい……勝手に見ちゃって……」
智貴さんは笑みを浮かべたままだった。
「いいえ、いいんです。いつか、こうして誰かに話す日も来るのかなって、思っていました」
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