姉と弟の特別な変身デート

理事長と僕の特別な一日 - 第十話

新しい高校に入学するための試験日がやってきた。僕は女の子として入学することを決意していた。理事長は既に彼が男の子であることを知っているが、他の生徒や先生にはバレないようにしなければならない。今日は理事長と一緒に食事をしながら、食事マナーと会話のテストが行われる。

試験会場に入ると、豪華なランチが用意されていた。僕は緊張しながらも、背筋を伸ばして席に着いた。理事長は微笑みながらリトを迎え入れた。

「リトさん、どうぞお座りください。」

リトは丁寧にお辞儀をし、椅子に座った。理事長は温かいお茶を差し出しながら話し始めた。

「理事長をしております。あなたの担任の先生からお話は聞きました。今日は、あなたの食事マナーとコミュニケーション能力を見せていただきたいと思います。まずは、自己紹介をお願いします。」

リトは深呼吸をし、落ち着いた声で話し始めた。

「初めまして、リトです。趣味はこの通り、女の子として姉とお出かけを楽しんでいます。メイクやファッションで、特にウェディングドレスに興味があります。将来は、ウェディングプランナーになりたいと思っています。」

理事長は頷きながら、次の質問を投げかけた。

「素晴らしいですね。では、何か興味あるウェディングドレスがあれば教えてください。」

僕は少し考えてから答えた。

「最近気になったのは、シンプルでエレガントなウェディングドレスです。レースを使ったディテールと、流れるようなシルエットが特徴です。親戚のの結婚式を見て思いました。」

理事長は興味深そうに聞いていた。

「それは素晴らしいですね。では、ウェディングプランナーを目指す理由を教えてください。」

僕は真剣な表情で答えた。

「結婚式は人生の大切な瞬間です。その特別な日を最高の形で迎えるお手伝いをしたいと思っています。ドレスのデザインだけでなく、メイク、ティアラなどのプランニングを通じて、新婦の夢を叶えることができればと思っています。」

理事長は満足そうに微笑んだ。

「ありがとうございます、リトさん。あなたの夢と情熱が伝わってきました。」

その時、ウェイターがスープを運んできた。リトはナプキンを膝の上に広げ、スプーンを奥から手前に動かしながら音を立てずに飲んだ。理事長はその様子を見守りながら、さらに質問を続けた。

「リトさん、ウェディングプランナーとして大事なことは何だと思いますか？」

僕は微笑みながら答えた。

「新婦の希望をしっかりと聞き、それを形にすることです。細かいディテールにも気を配り、全てが完璧に調和するように心がけています。また、ゲストの皆さんにも楽しんでいただけるような工夫を取り入れることも大切です。」

理事長は興味深そうに頷いた。

「それは素晴らしいですね。では、これまでに一番印象に残っている結婚式のエピソードを教えてください。」

僕は少し考えてから答えた。

「一番印象に残っているのは、親戚の結婚式でサプライズを計画したことです。新郎新婦のために、友人たちと協力して特別な演出を用意しました。新婦が涙を流して喜んでくれた瞬間は、私にとっても忘れられない思い出です。」

その時、メインディッシュのステーキが運ばれてきた。リトはナイフとフォークを使い、一口ずつ丁寧にカットして食べた。理事長はその様子を見守りながら、さらに質問を続けた。

「リトさん、普段のメイクについても教えてください。」

リトは少し照れながら答えた。

「普段のメイクは、ナチュラルで清潔感を大切にしています。ベースメイクやアイメイクや控えめにしています。リップは赤いラメ入りの口紅ですが、特にこだわりを持っています。食事などで落ちやすい箇所にも気をつけてるのは大切だと思うからです。」

理事長は満足そうに微笑んだ。

「ありがとうございます、リトさん。あなたの夢と情熱が伝わってきました。」

しかし、デザートのケーキが運ばれてきた。僕は一口ずつ楽しみながら食べていたが、試験官が「残り時間はあと5分です」と告げた。僕は焦り始め、急いでケーキを食べようとした。その結果、クリームが口元に沢山ついてしまい、気をつけて拭き取ろうとしたが口紅が乱れてしまった。

「しまった…」と心の中で思いながらも、僕は冷静を装い、ナプキンで口元を軽く押さえた。全ての食事が終わり、口紅がついてしまった箇所を隠すようにナプキンを軽くたたんで椅子の上に置いた。

「慌てなくのいいのよ、時間が過ぎても身だしなみはとっても大事。せっかくの綺麗な口元がだいなしよ。」
先生の言葉に僕は失敗した！と思った。

試験が全て終わり、リトはほっとした表情で理事長室を後にした。
数日後、担任の先生から合格とのことだった。これから始まる新しい学校生活に向けて、彼女は一歩踏み出したのだった。