真のヒロインはおっさんだから興味ないでしょ?

七瀬なしの

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1章

イオリスはへたれ<美由視点>

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 外はすでに暗くなり、街の門もそろそろ閉める時間だ。
 師匠を待っていたイオリスは、時間的にこれから出立するわけにもいかず、ウチの屋敷に一泊することになった。

 まあ、燃料を補充しないことには、ここを出て行くわけにもいかないだろうけれど。

「……また同じ事言うわよ。師匠に回りくどい言い方しても通じません。素直に甘えなさい。気のないふりは逆効果!」
「いや、うん。分かってはいるのだが、つい……」

 来賓室のイオリスを訪ねて開口一番で小言を言った私に、彼はばつの悪そうな顔をした。

「全く、あんたはどうしてそう極端なのかしら。なかなか進まないかと思うといきなり突っ込むし。前回のアレなんて、師匠が鈍感だからあんなのほほんとした反応だけど、そうでなかったら警戒されて避けられるわよ?」
「……確かに、あれは先走ってしまったと反省しているが……、でもミュリカの飛び蹴りはやり過ぎだと思うぞ。あの後しばらく魂が飛んでたからな」
「師匠を無理矢理てごめにしようとしたのだから自業自得です。王子でも容赦しません」

 ぴしゃりと言うと、イオリスは反論できずに押し黙った。

「それで、後になって悔悟して腕輪のエネルギー消耗するとか、本当に困ったものだわ」
「し、仕方ないだろう。あの時は巧斗が『女神の加護』の持ち主だと知って、居ても立ってもいられなかったんだ。……過去、『女神の加護』を持った者は王族と結婚するのが基本だったからな」
「え、何それ、初耳」

 王子の言葉に、私は目を丸くした。
 もし最初から『女神の加護』持ちが王族と結婚すると決められていたのなら、過去の争奪戦はどうして起こったのだろう? 臣下の貴族や騎士が主君の嫁に横恋慕するとも思えないけれど。

「まあ、結婚できるのは王族の中で、未婚で適齢で、さらに『女神の加護』のフェロモンに反応する男性という条件付きなんだがな。それに合致する王族がいない場合、有能な臣下の間で『女神の加護』の奪い合いになる。それで過去には貴族同士の内乱に発展することもあったんだ」
「あ、なるほど、そういうことか……。それで、今回は王族として殿下が合致するわけね。その事実を知って舞い上がって、『巧斗は俺のものだ!』という結果に至ったと。……ジョゼがあんたに師匠の『女神の加護』を教えたがらなかった理由がやっと分かったわ」

 ため息を吐いた私に、イオリスは話を続けた。

「昔から『女神の加護』を持つ人間とだと、とても能力の高い子どもを授かると言われている」
「へえ。でも残念でした。師匠は立派な男なので」
「しかし、『女神の加護』持ちだぞ? ……もしかすると、ということもあり得る」
「……そういや、ギース兄様もそんなこと言ってたわねえ……。でも、夢見すぎじゃない?」
「試してみないと分からないだろう」

 男性妊娠か……。これも舞ちゃん好きそうな展開だな。
 ちなみに彼女は今は私の部屋に置いてきている。この場にいなくて良かった。

「試してみないととか簡単に言うけど、師匠の気持ちを無視したらただじゃおかないからね」
「それは分かっている。俺だって、巧斗に嫌がられるようなことはしたくない。この間ので身に沁みた。……そもそも、フェロモンで誘ってくる時点で、本能的な相性は悪くないはずなのだ。地道に距離を縮めるさ」

 イオリスは、相変わらずこういうところは真面目だ。未だ感情に振り回される未熟なところはあるが、きちんと反省もできる。

「じゃあ距離を縮めるためにとりあえず、師匠のところで充電させてもらってきなさいよ。素直に甘える! そして不埒なことはしない! いいわね?」
「う、うむ……。いや、でもいきなり部屋に行って甘やかしてくれっていうのもどうなんだ……? 何か口実がないと……」
「もういっそ腕輪の結魂契約について説明しちゃったら? そんでエネルギーチャージさせてくれって正直に言えばいいじゃない」
「嫌だ。巧斗に説明して、だったら腕輪を外してくれなんて言われたら、俺は軽く死ねる」
「へたれか!」

 まあ、へたれか。
 いつも横柄で居丈高な男が、こと師匠に関してはここまでへたれてしまうのも、微笑ましいっちゃ微笑ましいけども。

「ミュリカ、すまんが弟弟子のために、以前のように手を貸してくれないか。燃料補給は喫緊で必要なことだし、お前がいれば俺も変な気を起こさないだろう」
「仕方ないわねえ……」

 しかし私たち二人で師匠の部屋を訪れるとなると、何と理由を付けるべきか。逆に説明が難しい。

 そこで私ははたと舞ちゃんの存在を思い出した。
 そうだ、彼女にお願いしよう。
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