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愛ってなんぞや
第十九話
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「おはよう、ディアナ。」
蕩けるような甘い声が、ディアナの唇のすぐ側で囁く。
「……おはよう、ございます。」
バルドゥルの大きな手がディアナの頬にかかった髪をそっとかき上げ、背中に回された手はディアナを抱き寄せる。
しまった。寝過ごした……。
バルドゥルより早く起きないと、朝のスキンシップが長くなる。
こうして二人で朝を迎えるようになってもう半年以上過ぎた中で、真っ先にディアナが学んだ事だ。
ディアナが先に目覚めれば、そのまますぐにベッドを抜けるのだが、バルドゥルが先に起きるとそういうわけにいかない。
「…バルドゥル、さま。」
不埒な手が肩や背中へと撫であげる。
夜着の裾から入り込んだ手が、ショーツの上からお尻をフニフニと揉んでくる。
「おはようのキスはいいんだよな。」
猛獣を連想する薄い黄色の瞳で、ディアナの瞳を射すくめるように覗き込むバルドゥルは、ニヤリと嬉しそうに笑う。
おはようのキスは軽いフレンチキスですのよ、という言葉は舌と共に絡め取られる。
熱い舌がディアナの口腔を蹂躙し、ディアナを追い詰めるように舌を絡ませる。
「…んぁ…っ……んんっ…」
体の大きなバルドゥルに抱き込まれ、喰むようにキスをされると捕食されているような気分になる。
ディアナはバルドゥルの首にしがみつくと、ため息すら絡め取ろうとするかのような舌を、チュと小さな音を立てて吸い上げた。
「ふ……ンっ…ぁんっ…」
ようやっと解放されたディアナが、甘いため息を漏らす。
起きたばかりなのに、濃厚な口づけに翻弄された身体はだらりと弛緩する。
(流石に毎日触れていれば慣れてくるな。)
「何か、おかしな事考えてますのね。」
ニヤニヤするバルドゥルの額をペチンと叩くと、ベットから降りる。
火照った体に、床の冷たさが気持ちいいので、素足でクローゼットまで歩く。
今日は朝から会議があったはずだ。
いつもはもっとねちこいスキンシップをしてくるバルドゥルも、流石に加減したのか、余裕を持って着替えると、キッチンへと向かった。
「おはようございます、ディアナ様!」
ディアナがキッチンでお湯を沸かし始めると、裏口の鍵を開けてリルが顔を出す。
小動物を彷彿させるリルは、最近すぐ近くのアパートを借りたのだ。毎朝アパートから来る途中にパン屋寄って、朝食用のパンを買ってタイラー邸に通ってくると、朝ごはんをディアナとバルドゥルと共に取る。
タイラー夫妻を見送ったあと、ディアナの帰宅まで、家の家事や細々した家政をこなす。
ディアナが遅くなる場合は決まった時間で帰ることになっている、ホワイトな職場だ。
バルド王国にいた時には考えられない生活だが、ディアナもリルもすでにこの生活が気に入っている。
ライ麦のパンにバターやジャムやを塗り、コーヒーを淹れる。カヒル式の朝食だ。ディアナの好みで新鮮な果物も食卓に並ぶ。
「リル、もしかしたら俺はしばらく家を空けるかもしれない。
その時はゲストルームを好きに使ってくれていいから、タイラー邸に泊まってもらえんだろうか?」
「えー、大丈夫ですけど。何かあるんですか?」
「軍事機密で詳しいことは言えんが、そういう心算でいてほしい。」
バルドゥルが軍の仕事で家を空けるということは、戦争又はそれに近い戦闘があるのだろう。と、リルでも推測できるが、余計なことは言わない。
一応主人の仕事に干渉しないよう教育はされている。下っ端であったが。
「リル、無理しなくていいのよ。バルドゥル様は心配しすぎです。」
ディアナはそういうが、いくら治安の良い地域だとは言え、こんな美少女が一人でこの広い家にいるなんて危険だ。一晩やニ晩の話ではないのだ。
ディアナには言わないが、警邏の巡回も頼もうと思っているのだ。
軍内部では、半年ほど前から西の方の動きがきな臭いと聞いていたが、どうやら近いうちに戦闘になりそうな情報が入ってきている。
戦争になれば、バルドゥルの第三兵団も戦地へ行くことになるだろう。
バルドゥルの勇姿は、スミノフをはじめとした第三兵団の面々から聞かされている。
一個中隊を一人で全滅させたとか。
千人の敵を屠ったとか。
戦場での雄々しい活躍譚を聞いているが、それでも戦場では何があるかわからない。
それでもカヒル軍の誇る第三兵団長タイラー閣下の妻なのだから、不安な様子は見せまいと、心に決めるのであった。
蕩けるような甘い声が、ディアナの唇のすぐ側で囁く。
「……おはよう、ございます。」
バルドゥルの大きな手がディアナの頬にかかった髪をそっとかき上げ、背中に回された手はディアナを抱き寄せる。
しまった。寝過ごした……。
バルドゥルより早く起きないと、朝のスキンシップが長くなる。
こうして二人で朝を迎えるようになってもう半年以上過ぎた中で、真っ先にディアナが学んだ事だ。
ディアナが先に目覚めれば、そのまますぐにベッドを抜けるのだが、バルドゥルが先に起きるとそういうわけにいかない。
「…バルドゥル、さま。」
不埒な手が肩や背中へと撫であげる。
夜着の裾から入り込んだ手が、ショーツの上からお尻をフニフニと揉んでくる。
「おはようのキスはいいんだよな。」
猛獣を連想する薄い黄色の瞳で、ディアナの瞳を射すくめるように覗き込むバルドゥルは、ニヤリと嬉しそうに笑う。
おはようのキスは軽いフレンチキスですのよ、という言葉は舌と共に絡め取られる。
熱い舌がディアナの口腔を蹂躙し、ディアナを追い詰めるように舌を絡ませる。
「…んぁ…っ……んんっ…」
体の大きなバルドゥルに抱き込まれ、喰むようにキスをされると捕食されているような気分になる。
ディアナはバルドゥルの首にしがみつくと、ため息すら絡め取ろうとするかのような舌を、チュと小さな音を立てて吸い上げた。
「ふ……ンっ…ぁんっ…」
ようやっと解放されたディアナが、甘いため息を漏らす。
起きたばかりなのに、濃厚な口づけに翻弄された身体はだらりと弛緩する。
(流石に毎日触れていれば慣れてくるな。)
「何か、おかしな事考えてますのね。」
ニヤニヤするバルドゥルの額をペチンと叩くと、ベットから降りる。
火照った体に、床の冷たさが気持ちいいので、素足でクローゼットまで歩く。
今日は朝から会議があったはずだ。
いつもはもっとねちこいスキンシップをしてくるバルドゥルも、流石に加減したのか、余裕を持って着替えると、キッチンへと向かった。
「おはようございます、ディアナ様!」
ディアナがキッチンでお湯を沸かし始めると、裏口の鍵を開けてリルが顔を出す。
小動物を彷彿させるリルは、最近すぐ近くのアパートを借りたのだ。毎朝アパートから来る途中にパン屋寄って、朝食用のパンを買ってタイラー邸に通ってくると、朝ごはんをディアナとバルドゥルと共に取る。
タイラー夫妻を見送ったあと、ディアナの帰宅まで、家の家事や細々した家政をこなす。
ディアナが遅くなる場合は決まった時間で帰ることになっている、ホワイトな職場だ。
バルド王国にいた時には考えられない生活だが、ディアナもリルもすでにこの生活が気に入っている。
ライ麦のパンにバターやジャムやを塗り、コーヒーを淹れる。カヒル式の朝食だ。ディアナの好みで新鮮な果物も食卓に並ぶ。
「リル、もしかしたら俺はしばらく家を空けるかもしれない。
その時はゲストルームを好きに使ってくれていいから、タイラー邸に泊まってもらえんだろうか?」
「えー、大丈夫ですけど。何かあるんですか?」
「軍事機密で詳しいことは言えんが、そういう心算でいてほしい。」
バルドゥルが軍の仕事で家を空けるということは、戦争又はそれに近い戦闘があるのだろう。と、リルでも推測できるが、余計なことは言わない。
一応主人の仕事に干渉しないよう教育はされている。下っ端であったが。
「リル、無理しなくていいのよ。バルドゥル様は心配しすぎです。」
ディアナはそういうが、いくら治安の良い地域だとは言え、こんな美少女が一人でこの広い家にいるなんて危険だ。一晩やニ晩の話ではないのだ。
ディアナには言わないが、警邏の巡回も頼もうと思っているのだ。
軍内部では、半年ほど前から西の方の動きがきな臭いと聞いていたが、どうやら近いうちに戦闘になりそうな情報が入ってきている。
戦争になれば、バルドゥルの第三兵団も戦地へ行くことになるだろう。
バルドゥルの勇姿は、スミノフをはじめとした第三兵団の面々から聞かされている。
一個中隊を一人で全滅させたとか。
千人の敵を屠ったとか。
戦場での雄々しい活躍譚を聞いているが、それでも戦場では何があるかわからない。
それでもカヒル軍の誇る第三兵団長タイラー閣下の妻なのだから、不安な様子は見せまいと、心に決めるのであった。
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