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無常因果的終結(終末)
159:屍山血河(七)
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じわじわと距離を詰め、彩藍方の頭を砕かんばかりに片手を突き出す瞋九龍に、彩鉱門の掌門が「やめろ! やるなら私からに……!」と叫ぶのが聞こえた。
「安心しろ、小僧を殺したら貴様もすぐに儂の養分となることだろう……! ふっ、はははははははははは!」
まさに彩藍方の頭上を瞋九龍の手が掴もうとしたその瞬間。
瞋九龍の笑い声が終わらぬうちに、煬鳳は力の限り叫んだ。
「凰黎、頼んだぞーーーーーーーーーーーーーーっ!」
風のように淡青の袍がひらめいた。
次いで、淡い燐光が走り抜け、瞋九龍の右腕を斬り落とす。
「な、なんだとおおお!?」
予想だにしなかった出来事に、瞋九龍は切り落とされた腕の傷を抱えた。鮮やかな切り口と溢れる鮮血で辺りが真っ赤な血溜まりを作り出す。
「彩藍方!」
素早く凰黎は彩藍方を瞋九龍の元から引き離すと、静泰還の傍まで彼を連れて行った。彩藍方が安全な場所に移動したのを確認すると、煬鳳はその場にいる者たち全員に叫ぶ。
「みんな! 力は戻したからもう動けるはずだ、立ち上がってみろ!」
半信半疑で皆が足に力を込めると、驚くほど簡単に立ち上がってゆく。
「どうしたんだ? 動ける!」
「動けるぞ! 力が入る!」
驚き、喜びの声が溢れ、反対に瞋九龍からは殺意が煬鳳に向けられる。
「小僧! 貴様一体、何をした!」
「何をしたもなにも――」
煬鳳はにやりと笑う。
「お前と同じことをやったのさ。この火山を流れる翳炎の力を借りて、皆の力を戻したんだ!」
「小癪な! そのようなことを人の身でおこなって、ただで済むと思っているのか!?」
瞋九龍の言うことは当たっている。煬鳳は翳炎の力をその身に吸収し、瞋九龍に奪われかけた力を瞋九龍と同じように操って元の持ち主の元に戻しているのだ。龍が復活するための力を煬鳳が流用しているわけで、あまり長い間そうしていれば以前と同じように体に多大な負担がかかってしまうだろう。
瞋九龍は皆が倒れた際に地面に転がした剣や槍を手繰り寄せ、煬鳳に向けて放つ。その中にはついぞ先刻、鸞快子に弾かれてしまった彼自身の槍も混じっている。
「いいだろう、ならば死ぬが良い!」
槍や剣が一斉に煬鳳に向かって飛翔する。追いつく瞋九龍は己の槍をその手に携え、煬鳳に向けて振り下ろした。
淡青の光明が空を舞い、紫霄の光が疾駆する。
瞬くより速く冴え冴えとした鋼の音が鳴り響き、煬鳳を守るように二つの影が立ちはだかった。
「ならばその前に盟主様を倒すだけです!」
凰黎は瞋九龍の槍を受け止め、空から襲い来る剣の群れは、幾多の雷光が全て撃ち落とす。
「凰黎! それに……雷靂飛!?」
「このまま良いようにやられっぱなしでは、霆雷門の評判に関わるからな!」
相変わらずの揺るぎない雷靂飛の態度に、煬鳳は苦笑するばかり。しかし瞋九龍に力を渡さないためにも煬鳳は黒炎山の炎を操作し続けなければならないのだ。
彼らが加勢してくれることは、この上なく心強い。
「相変わらず良いときにばっか出てくるなぁ!」
「ははは! 瞋九龍は任せろ!」
雷靂飛は意気揚々と瞋九龍に剣を向ける。しかし瞋九龍の腕は既に再生されており、煬鳳が火山の力を奪っていても彼自身の強さは雷靂飛の比ではない。
すぐさま瞋九龍に叩き返された雷靂飛は崩れた岩の間から起き上がる。
「くそっ、本当に化け物だな!」
しかし次の構えを取る間もなく瞋九龍が眼前に迫ってきたのを見て、さすがに雷靂飛は驚き言葉を失った。
「雷靂飛!」
煬鳳の叫びとほぼ同刻に、雷靂飛の背後から目も眩むような電光が迸る。追撃をかける瞋九龍の一撃を雷靂飛の背後にいる人物が打ち返したのだ。
「煬掌門!」
「げっ、雷閃候!」
雷靂飛の窮地を救ったのは霆雷門の掌門である雷閃候だ。彼が瞋九龍に奪われた力もほぼ戻ったようで、先ほどほど放った電光は、かつて煬鳳が見た彼の全力の一撃とほぼ同じ輝きだったように思う。
「煬掌門! 貴様は手出しする必要はない。ここは我々に任せろ!」
普段からごろつきだのなんだのと言われ、五行盟を知らぬ頃に出会った雷閃候の印象も最悪だった。それなのに、ここにきて頼もしいことを言われるとどうにも照れる。
言葉にしたらなんだか笑ってしまいそうで、煬鳳は雷閃候に向けて頷くことで返事を返した。
瞋九龍の猛攻を雷閃候と凰黎の二人が応戦する。瞋九龍は動きも攻撃も人間離れしており、勝ち目など無いと思っていたのだが、意外にも二人は善戦しているようだ。
(多分、瞋九龍のほうが体を上手く使いこなしていないんだ……)
三百年経ってもやはり彼の根底は龍である。どんなに長く人間の姿をとろうとも、獣の戦い方は変えられないのだ。
――特に、戦い方を考える余裕が無いときは。
つまり、二人ともやはり善戦しているのだ。
周りの門弟たちは彼らを助けることもできず、ただ見守っている。三人の戦いが激しすぎて、行動を起こす隙間も見つからないのだ。
煬鳳の体には瞋九龍が火山から吸収しようとした力が絶えず流れ込んでいる。
何故なら彼らと戦っている間も、瞋九龍は火山からの力を己の内に取り込もうと試みているからだ。それに気づいているからこそ、煬鳳は彼の試みを邪魔するしかない。いまはまだ耐えることができているが、長引いてしまったらいずれ限界が来てしまうだろう。
(そうなったら……)
取り込めないほどの力を吸収すれば、黒曜と繋がっていたときと同じ結末を迎えてしまう。
瞋九龍が咆哮をあげた。
衝撃波が広がって、みな一斉に地面や岩面に打ち付けられる。さしもの凰黎たちも、強烈な衝撃を耐えきることができず、岩にめり込んでしまった。
「凰黎!」
顔をしかめた凰黎の口の端から血が流れ、煬鳳はすぐさま凰黎の元へ駆け寄りたい衝動に駆られる。
「どうしたら、どうしたらいいんだ!」
このままでは状況は変わらない。煬鳳が瞋九龍の邪魔をして、戦いを彼らに任せるしか手段はないのか。瞋九龍という化け物と彼らが傷つきながら戦うのを見守るしかないのか。
煬鳳は唇を噛み締めた。
『俺が行く』
黒い人影が煬鳳の傍に立つ。
その後ろ姿には見覚えがある。
「黒明!? 原始の谷にいるんじゃなかったのか!?」
目の前に立っているのは紛れもなく翳黒明その人だ。しかし、彼は原始の谷を開くために間違いなく凰神偉と共に星霓峰に残ったはず。
いったいなぜ、彼がここにいるのだろうか?
決まりが悪そうな顔で頬を掻くと、その人物は言った。
『あー、いや。確かに俺は黒明でもあるんだけど……黒曜だ』
「黒曜!?」
『話はあとでな! あと永覇借りるぞ!』
「えっ!?」
黒曜は疾風のように瞋九龍の元に迫ると、永覇で瞋九龍を切り上げる。永覇の鋭い剣閃は、瞋九龍の脇腹から肩口に掛けて一気に傷跡を生み出した。
「ぐぬっ!? 貴様!」
溢れる鮮血をものともせず、鋭い腕が繰り出される。
瞋九龍は黒曜の腹を抉ろうとしたのだ。
黒曜は圧縮した翳炎を叩きこみ、二人の間で炎が爆裂した。
『黒冥翳魔としては正気を失っていたから何一つ覚えてはいないんだが――お前は当時の俺と戦ったんだったよな? あのときの再戦といこうじゃないか。盟主様?』
余裕の微笑みを浮かべ、黒曜が瞋九龍を見る。
普段は鳥の姿をしている黒曜だったが、どうやら煬鳳が吸収した翳炎の影響を受けて彼も人の姿を一時的に取り戻したらしい。その体からは煬鳳と同様に力が満ち溢れている。
「貴様、あのときは儂が手加減してやったというのに!」
『そうだな。お前は俺の体を滅ぼし、魂だけを残してこの火山に封じた。他でもない――お前自身の体を復活させるためという、野望のためだけに! 今度はお前が滅ぼされる番だ!』
黒曜は怒りと共に瞋九龍と激しく打ち合う。本来ならば瞋九龍が使うはずだった黒炎山の力を、いまは煬鳳が黒曜に流す形になっている。
ゆえに、二人の力はいま互角かそれ以上。
先ほどまでの戦いの傷跡も残っている瞋九龍のほうがやや劣勢に見えるほどだ。
「おのれ! 人間風情が!」
『悪いな。俺も既に人間は止めちまった。いまはお前とそれほど変わらない!』
黒曜の永覇による一撃が、瞋九龍の腹を貫いた。
地に落ちた瞋九龍はよろけながら立ち上がる。
腹を貫かれてもなお衰えぬぎらぎらとした野心の眼差しは、己が負けるなどとは微塵も思っていなかった男の執念の光だった。
ふらつきながらも体勢を立て直し、剣を構える凰黎や黒曜たちに瞋九龍は向き直る。彼の背後には山の山頂がもう見えていた。
「お、おのれ……! こうなったら不完全でもいい、龍の身体に戻って貴様ら全員食い殺してやる……!」
飛びあがる瞋九龍に反応するのた僅かに遅れ、咄嗟に誰かのあげた「あっ」という叫びだけが小さく響く。
『いけない、奴は火口に飛び込んで龍の身体に戻る気だ!』
黒曜が叫び永覇を差し向けるが、既になりふり構っていられない状態の瞋九龍は振り返ることもせず一心に火口へと向かう。
「ははは! これで貴様らも終わりだ!」
まさに瞋九龍が火口に飛び込もうとしたその瞬間、脇から霜灰の影が飛び掛かった。
「ぬお!?」
体制を維持することもできず瞋九龍は頂上付近に落ち、ごろごろと斜面を転がってゆく。瞋九龍に重なるようにして組み付いた人物は、蓬静嶺の嶺主である静泰還だった。静泰還を振りほどこうと暴れる瞋九龍に必死で組み付いたまま離すことはなく、どんなに瞋九龍が彼を痛めつけてもその手を緩めることはない。
「嶺主さま! 何をなさるおつもりですか!」
凰黎の悲痛な叫びが静泰還に向けられた。
焦り始めた瞋九龍はなんとかして静泰還を引き剥がそうと彼への攻撃の手を緩めない。しかしどんなに傷ついても彼は瞋九龍を抑え、火口へは行かせまいとしているのだ。
「阿黎! いまのうちに、私に構わず火龍を討つのだ!」
「止めて下さい! お願いですから、瞋九龍から離れて下さい!」
「見誤るな!」
彼を救おうと走り出す凰黎に対し、静泰還は厳しい声を投げかける。彼の揺るぎない家族への想いがどれほど深いものであるか、周りにいる誰もみな痛いほど理解した。
「ここで瞋九龍を止めなければ睡龍の地は滅び、世界は終わる! 私が押さえている間に、瞋九龍を倒せ!」
「瞋九龍は倒します! でも、嶺主さまが命を投げ出すことはないでしょう!」
「聞き分けなさい! 頼む……瞋九龍を! 妻と子の仇を討ってくれ!」
「そんなの、嫌です!」
凰黎の絶叫が響き渡る。
ふと、静泰還の表情が和らいだ。彼自身、瞋九龍からかなりの攻撃を受け身体は相当辛いはず。
にもかかわらず、彼の口元は穏やかに微笑んでいる。
「聞き分けのないことを言うものではない。…………そなたは誰よりも聞き分けの良い子ではなかったのか? 阿黎」
死をも覚悟した、瀬戸際の静泰還の声に凰黎は一筋の涙を零し、そのあときっぱりと彼に言い切った。
「私は二度も家族を、父を、失いたくはありません! 断固お断りします!」
返ってきた返答を全く予想していなかったのか、驚きのあまり静泰還は瞠目し、そして僅かに彼の腕が緩む。
『任せろ!』
黒い疾風が瞋九龍の傍から静泰還を連れ去った。その刹那、一筋の光が瞋九龍の胸を貫くと、その衝撃で彼を岩壁に縫い留める。
「貴様……!」
瞋九龍の胸に刺さったのは一本の矢。矢柄に書きつけられた文様、煬鳳が何度か見て、何度か助けられたあの矢だ。
「このような貧弱な矢で、儂の動きを止められる思うな……! あ?」
瞋九龍が力任せに矢を引き抜こうとした瞬間、自身の首がずるりと滑り落ち、地面に音を立てて零れ落ちた。
首だけ転がり落ちた彼は何が起こったのか理解することもできず、ただ虚空を呆然と見つめている。既に眼差しから光は失われていたが、彼の瞳が向けられた先にあったのは、彼がかつて龍として舞い上がったであろう広大な空だった。
「凰黎……?」
振り返れば、静泰還を支える黒曜と凰黎の姿。そしてその周りには彼の神侯が淡い燐光を放ち緩やかに軌跡を描いている。瞋九龍の最期を見届けた凰黎は神侯を収め、ゆっくりと静泰還を立ち上がらせた。
「……そなたに、私の妻子の仇を取らせてしまったな」
満身創痍の静泰還は、凰黎に支えられ辛うじて立っている。しかしそれでも彼の瞳は瞋九龍の首から目を離すことはなく、ようやく達成した長年の想いを遂げ、様々な想いがこみ上げているようだ。
「私は……いえ。私にとって、嶺主様はもう一人の家族です。家族の仇なのですから、当然のことをしたまでです」
凰黎は何と言おうか迷ったようだったが、それでも彼は静泰還のことを『家族』だと言った。
そんな凰黎の言葉に静泰還は目を丸くして、そして凰黎を抱きしめる。
「家族か……。そうであったな。そなたも、私にとって大切な家族。……悲しみすぎて、私はいままで大切なものが見えていなかった。許しておくれ、阿黎」
「許すもなにも……。私は昔もいまも変わらず、貴方の家族なのですから」
涙混じりに聞こえる凰黎の声。
煬鳳は二人の抱擁を、多幸感に包まれながら見守っていた。
(良かったな、凰黎……)
それまで頑なに亡き家族に遠慮をしていた凰黎が、瞋九龍と共に尽き果てようとしていた静泰還を前にして、初めて静泰還の前で彼を『父親』と呼んだのだ。
『あいつがあんな顔するなんて、意外だな』
「そりゃ、凰黎にとって嶺主さまは本当に大切な人なんだから。当然だろ?」
いつの間にか煬鳳の隣には黒曜が立っていた。
先ほど静泰還を風のように連れ去ったのは、何を隠そう黒曜だ。彼が静泰還を瞋九龍から引き剥がしていなかったら、もう少し瞋九龍を倒すのが遅れたら、火龍は蘇ってしまったかもしれない。
「それより黒曜、ありがとな。助かった」
煬鳳は隣に立つ黒曜に礼を言う。
『別に。俺もあいつに恨みがあったんだ。……それに、いまの俺たちに至るまでに、凰黎には随分と世話になっている。これくらい手助けしたってまだ足りないほどだ』
確かに、と煬鳳は笑う。
本当に凰黎には返しても返しきれぬほど世話になっている。ときには迷陣の奥へ、また別のときには高く聳え立つ霊峰に、そして魔界にまでも。
――そんな彼の、心からの笑顔が見られたのだから。
少しは自分たちは彼のために何かをすることができたのだろうか。
そうであって欲しいと煬鳳は願う。
抱き合う二人はゆっくりと体を離し、互いに柔らかく微笑みあった。
「…………阿黎、もう一度父と呼んではくれまいか」
「!?」
少し恥ずかしそうに言った静泰還の言葉を、煬鳳は聞き逃さない。
凰黎は僅かに瞠若し……………………長い沈黙のあと、晴れやかに微笑んだ。
「それは、嶺主様がきちんとお怪我を治されたときまでお預けにしておきます」
「……」
微笑む凰黎に静泰還は絶句していたが、むしろ煬鳳は安堵感に満たされている。
僅かな意地悪を口にする凰黎と、静泰還との距離が縮まったように思えたからだ。
しかし、大切なのはこれからだ。
家族としての彼らの一歩はまだ始まったばかりなのだから。
――――
この先の更新は
12/23 2話更新
12/24 2話更新
12/25 2話更新
12/26 4話更新(最終話)
で予定しております。
「安心しろ、小僧を殺したら貴様もすぐに儂の養分となることだろう……! ふっ、はははははははははは!」
まさに彩藍方の頭上を瞋九龍の手が掴もうとしたその瞬間。
瞋九龍の笑い声が終わらぬうちに、煬鳳は力の限り叫んだ。
「凰黎、頼んだぞーーーーーーーーーーーーーーっ!」
風のように淡青の袍がひらめいた。
次いで、淡い燐光が走り抜け、瞋九龍の右腕を斬り落とす。
「な、なんだとおおお!?」
予想だにしなかった出来事に、瞋九龍は切り落とされた腕の傷を抱えた。鮮やかな切り口と溢れる鮮血で辺りが真っ赤な血溜まりを作り出す。
「彩藍方!」
素早く凰黎は彩藍方を瞋九龍の元から引き離すと、静泰還の傍まで彼を連れて行った。彩藍方が安全な場所に移動したのを確認すると、煬鳳はその場にいる者たち全員に叫ぶ。
「みんな! 力は戻したからもう動けるはずだ、立ち上がってみろ!」
半信半疑で皆が足に力を込めると、驚くほど簡単に立ち上がってゆく。
「どうしたんだ? 動ける!」
「動けるぞ! 力が入る!」
驚き、喜びの声が溢れ、反対に瞋九龍からは殺意が煬鳳に向けられる。
「小僧! 貴様一体、何をした!」
「何をしたもなにも――」
煬鳳はにやりと笑う。
「お前と同じことをやったのさ。この火山を流れる翳炎の力を借りて、皆の力を戻したんだ!」
「小癪な! そのようなことを人の身でおこなって、ただで済むと思っているのか!?」
瞋九龍の言うことは当たっている。煬鳳は翳炎の力をその身に吸収し、瞋九龍に奪われかけた力を瞋九龍と同じように操って元の持ち主の元に戻しているのだ。龍が復活するための力を煬鳳が流用しているわけで、あまり長い間そうしていれば以前と同じように体に多大な負担がかかってしまうだろう。
瞋九龍は皆が倒れた際に地面に転がした剣や槍を手繰り寄せ、煬鳳に向けて放つ。その中にはついぞ先刻、鸞快子に弾かれてしまった彼自身の槍も混じっている。
「いいだろう、ならば死ぬが良い!」
槍や剣が一斉に煬鳳に向かって飛翔する。追いつく瞋九龍は己の槍をその手に携え、煬鳳に向けて振り下ろした。
淡青の光明が空を舞い、紫霄の光が疾駆する。
瞬くより速く冴え冴えとした鋼の音が鳴り響き、煬鳳を守るように二つの影が立ちはだかった。
「ならばその前に盟主様を倒すだけです!」
凰黎は瞋九龍の槍を受け止め、空から襲い来る剣の群れは、幾多の雷光が全て撃ち落とす。
「凰黎! それに……雷靂飛!?」
「このまま良いようにやられっぱなしでは、霆雷門の評判に関わるからな!」
相変わらずの揺るぎない雷靂飛の態度に、煬鳳は苦笑するばかり。しかし瞋九龍に力を渡さないためにも煬鳳は黒炎山の炎を操作し続けなければならないのだ。
彼らが加勢してくれることは、この上なく心強い。
「相変わらず良いときにばっか出てくるなぁ!」
「ははは! 瞋九龍は任せろ!」
雷靂飛は意気揚々と瞋九龍に剣を向ける。しかし瞋九龍の腕は既に再生されており、煬鳳が火山の力を奪っていても彼自身の強さは雷靂飛の比ではない。
すぐさま瞋九龍に叩き返された雷靂飛は崩れた岩の間から起き上がる。
「くそっ、本当に化け物だな!」
しかし次の構えを取る間もなく瞋九龍が眼前に迫ってきたのを見て、さすがに雷靂飛は驚き言葉を失った。
「雷靂飛!」
煬鳳の叫びとほぼ同刻に、雷靂飛の背後から目も眩むような電光が迸る。追撃をかける瞋九龍の一撃を雷靂飛の背後にいる人物が打ち返したのだ。
「煬掌門!」
「げっ、雷閃候!」
雷靂飛の窮地を救ったのは霆雷門の掌門である雷閃候だ。彼が瞋九龍に奪われた力もほぼ戻ったようで、先ほどほど放った電光は、かつて煬鳳が見た彼の全力の一撃とほぼ同じ輝きだったように思う。
「煬掌門! 貴様は手出しする必要はない。ここは我々に任せろ!」
普段からごろつきだのなんだのと言われ、五行盟を知らぬ頃に出会った雷閃候の印象も最悪だった。それなのに、ここにきて頼もしいことを言われるとどうにも照れる。
言葉にしたらなんだか笑ってしまいそうで、煬鳳は雷閃候に向けて頷くことで返事を返した。
瞋九龍の猛攻を雷閃候と凰黎の二人が応戦する。瞋九龍は動きも攻撃も人間離れしており、勝ち目など無いと思っていたのだが、意外にも二人は善戦しているようだ。
(多分、瞋九龍のほうが体を上手く使いこなしていないんだ……)
三百年経ってもやはり彼の根底は龍である。どんなに長く人間の姿をとろうとも、獣の戦い方は変えられないのだ。
――特に、戦い方を考える余裕が無いときは。
つまり、二人ともやはり善戦しているのだ。
周りの門弟たちは彼らを助けることもできず、ただ見守っている。三人の戦いが激しすぎて、行動を起こす隙間も見つからないのだ。
煬鳳の体には瞋九龍が火山から吸収しようとした力が絶えず流れ込んでいる。
何故なら彼らと戦っている間も、瞋九龍は火山からの力を己の内に取り込もうと試みているからだ。それに気づいているからこそ、煬鳳は彼の試みを邪魔するしかない。いまはまだ耐えることができているが、長引いてしまったらいずれ限界が来てしまうだろう。
(そうなったら……)
取り込めないほどの力を吸収すれば、黒曜と繋がっていたときと同じ結末を迎えてしまう。
瞋九龍が咆哮をあげた。
衝撃波が広がって、みな一斉に地面や岩面に打ち付けられる。さしもの凰黎たちも、強烈な衝撃を耐えきることができず、岩にめり込んでしまった。
「凰黎!」
顔をしかめた凰黎の口の端から血が流れ、煬鳳はすぐさま凰黎の元へ駆け寄りたい衝動に駆られる。
「どうしたら、どうしたらいいんだ!」
このままでは状況は変わらない。煬鳳が瞋九龍の邪魔をして、戦いを彼らに任せるしか手段はないのか。瞋九龍という化け物と彼らが傷つきながら戦うのを見守るしかないのか。
煬鳳は唇を噛み締めた。
『俺が行く』
黒い人影が煬鳳の傍に立つ。
その後ろ姿には見覚えがある。
「黒明!? 原始の谷にいるんじゃなかったのか!?」
目の前に立っているのは紛れもなく翳黒明その人だ。しかし、彼は原始の谷を開くために間違いなく凰神偉と共に星霓峰に残ったはず。
いったいなぜ、彼がここにいるのだろうか?
決まりが悪そうな顔で頬を掻くと、その人物は言った。
『あー、いや。確かに俺は黒明でもあるんだけど……黒曜だ』
「黒曜!?」
『話はあとでな! あと永覇借りるぞ!』
「えっ!?」
黒曜は疾風のように瞋九龍の元に迫ると、永覇で瞋九龍を切り上げる。永覇の鋭い剣閃は、瞋九龍の脇腹から肩口に掛けて一気に傷跡を生み出した。
「ぐぬっ!? 貴様!」
溢れる鮮血をものともせず、鋭い腕が繰り出される。
瞋九龍は黒曜の腹を抉ろうとしたのだ。
黒曜は圧縮した翳炎を叩きこみ、二人の間で炎が爆裂した。
『黒冥翳魔としては正気を失っていたから何一つ覚えてはいないんだが――お前は当時の俺と戦ったんだったよな? あのときの再戦といこうじゃないか。盟主様?』
余裕の微笑みを浮かべ、黒曜が瞋九龍を見る。
普段は鳥の姿をしている黒曜だったが、どうやら煬鳳が吸収した翳炎の影響を受けて彼も人の姿を一時的に取り戻したらしい。その体からは煬鳳と同様に力が満ち溢れている。
「貴様、あのときは儂が手加減してやったというのに!」
『そうだな。お前は俺の体を滅ぼし、魂だけを残してこの火山に封じた。他でもない――お前自身の体を復活させるためという、野望のためだけに! 今度はお前が滅ぼされる番だ!』
黒曜は怒りと共に瞋九龍と激しく打ち合う。本来ならば瞋九龍が使うはずだった黒炎山の力を、いまは煬鳳が黒曜に流す形になっている。
ゆえに、二人の力はいま互角かそれ以上。
先ほどまでの戦いの傷跡も残っている瞋九龍のほうがやや劣勢に見えるほどだ。
「おのれ! 人間風情が!」
『悪いな。俺も既に人間は止めちまった。いまはお前とそれほど変わらない!』
黒曜の永覇による一撃が、瞋九龍の腹を貫いた。
地に落ちた瞋九龍はよろけながら立ち上がる。
腹を貫かれてもなお衰えぬぎらぎらとした野心の眼差しは、己が負けるなどとは微塵も思っていなかった男の執念の光だった。
ふらつきながらも体勢を立て直し、剣を構える凰黎や黒曜たちに瞋九龍は向き直る。彼の背後には山の山頂がもう見えていた。
「お、おのれ……! こうなったら不完全でもいい、龍の身体に戻って貴様ら全員食い殺してやる……!」
飛びあがる瞋九龍に反応するのた僅かに遅れ、咄嗟に誰かのあげた「あっ」という叫びだけが小さく響く。
『いけない、奴は火口に飛び込んで龍の身体に戻る気だ!』
黒曜が叫び永覇を差し向けるが、既になりふり構っていられない状態の瞋九龍は振り返ることもせず一心に火口へと向かう。
「ははは! これで貴様らも終わりだ!」
まさに瞋九龍が火口に飛び込もうとしたその瞬間、脇から霜灰の影が飛び掛かった。
「ぬお!?」
体制を維持することもできず瞋九龍は頂上付近に落ち、ごろごろと斜面を転がってゆく。瞋九龍に重なるようにして組み付いた人物は、蓬静嶺の嶺主である静泰還だった。静泰還を振りほどこうと暴れる瞋九龍に必死で組み付いたまま離すことはなく、どんなに瞋九龍が彼を痛めつけてもその手を緩めることはない。
「嶺主さま! 何をなさるおつもりですか!」
凰黎の悲痛な叫びが静泰還に向けられた。
焦り始めた瞋九龍はなんとかして静泰還を引き剥がそうと彼への攻撃の手を緩めない。しかしどんなに傷ついても彼は瞋九龍を抑え、火口へは行かせまいとしているのだ。
「阿黎! いまのうちに、私に構わず火龍を討つのだ!」
「止めて下さい! お願いですから、瞋九龍から離れて下さい!」
「見誤るな!」
彼を救おうと走り出す凰黎に対し、静泰還は厳しい声を投げかける。彼の揺るぎない家族への想いがどれほど深いものであるか、周りにいる誰もみな痛いほど理解した。
「ここで瞋九龍を止めなければ睡龍の地は滅び、世界は終わる! 私が押さえている間に、瞋九龍を倒せ!」
「瞋九龍は倒します! でも、嶺主さまが命を投げ出すことはないでしょう!」
「聞き分けなさい! 頼む……瞋九龍を! 妻と子の仇を討ってくれ!」
「そんなの、嫌です!」
凰黎の絶叫が響き渡る。
ふと、静泰還の表情が和らいだ。彼自身、瞋九龍からかなりの攻撃を受け身体は相当辛いはず。
にもかかわらず、彼の口元は穏やかに微笑んでいる。
「聞き分けのないことを言うものではない。…………そなたは誰よりも聞き分けの良い子ではなかったのか? 阿黎」
死をも覚悟した、瀬戸際の静泰還の声に凰黎は一筋の涙を零し、そのあときっぱりと彼に言い切った。
「私は二度も家族を、父を、失いたくはありません! 断固お断りします!」
返ってきた返答を全く予想していなかったのか、驚きのあまり静泰還は瞠目し、そして僅かに彼の腕が緩む。
『任せろ!』
黒い疾風が瞋九龍の傍から静泰還を連れ去った。その刹那、一筋の光が瞋九龍の胸を貫くと、その衝撃で彼を岩壁に縫い留める。
「貴様……!」
瞋九龍の胸に刺さったのは一本の矢。矢柄に書きつけられた文様、煬鳳が何度か見て、何度か助けられたあの矢だ。
「このような貧弱な矢で、儂の動きを止められる思うな……! あ?」
瞋九龍が力任せに矢を引き抜こうとした瞬間、自身の首がずるりと滑り落ち、地面に音を立てて零れ落ちた。
首だけ転がり落ちた彼は何が起こったのか理解することもできず、ただ虚空を呆然と見つめている。既に眼差しから光は失われていたが、彼の瞳が向けられた先にあったのは、彼がかつて龍として舞い上がったであろう広大な空だった。
「凰黎……?」
振り返れば、静泰還を支える黒曜と凰黎の姿。そしてその周りには彼の神侯が淡い燐光を放ち緩やかに軌跡を描いている。瞋九龍の最期を見届けた凰黎は神侯を収め、ゆっくりと静泰還を立ち上がらせた。
「……そなたに、私の妻子の仇を取らせてしまったな」
満身創痍の静泰還は、凰黎に支えられ辛うじて立っている。しかしそれでも彼の瞳は瞋九龍の首から目を離すことはなく、ようやく達成した長年の想いを遂げ、様々な想いがこみ上げているようだ。
「私は……いえ。私にとって、嶺主様はもう一人の家族です。家族の仇なのですから、当然のことをしたまでです」
凰黎は何と言おうか迷ったようだったが、それでも彼は静泰還のことを『家族』だと言った。
そんな凰黎の言葉に静泰還は目を丸くして、そして凰黎を抱きしめる。
「家族か……。そうであったな。そなたも、私にとって大切な家族。……悲しみすぎて、私はいままで大切なものが見えていなかった。許しておくれ、阿黎」
「許すもなにも……。私は昔もいまも変わらず、貴方の家族なのですから」
涙混じりに聞こえる凰黎の声。
煬鳳は二人の抱擁を、多幸感に包まれながら見守っていた。
(良かったな、凰黎……)
それまで頑なに亡き家族に遠慮をしていた凰黎が、瞋九龍と共に尽き果てようとしていた静泰還を前にして、初めて静泰還の前で彼を『父親』と呼んだのだ。
『あいつがあんな顔するなんて、意外だな』
「そりゃ、凰黎にとって嶺主さまは本当に大切な人なんだから。当然だろ?」
いつの間にか煬鳳の隣には黒曜が立っていた。
先ほど静泰還を風のように連れ去ったのは、何を隠そう黒曜だ。彼が静泰還を瞋九龍から引き剥がしていなかったら、もう少し瞋九龍を倒すのが遅れたら、火龍は蘇ってしまったかもしれない。
「それより黒曜、ありがとな。助かった」
煬鳳は隣に立つ黒曜に礼を言う。
『別に。俺もあいつに恨みがあったんだ。……それに、いまの俺たちに至るまでに、凰黎には随分と世話になっている。これくらい手助けしたってまだ足りないほどだ』
確かに、と煬鳳は笑う。
本当に凰黎には返しても返しきれぬほど世話になっている。ときには迷陣の奥へ、また別のときには高く聳え立つ霊峰に、そして魔界にまでも。
――そんな彼の、心からの笑顔が見られたのだから。
少しは自分たちは彼のために何かをすることができたのだろうか。
そうであって欲しいと煬鳳は願う。
抱き合う二人はゆっくりと体を離し、互いに柔らかく微笑みあった。
「…………阿黎、もう一度父と呼んではくれまいか」
「!?」
少し恥ずかしそうに言った静泰還の言葉を、煬鳳は聞き逃さない。
凰黎は僅かに瞠若し……………………長い沈黙のあと、晴れやかに微笑んだ。
「それは、嶺主様がきちんとお怪我を治されたときまでお預けにしておきます」
「……」
微笑む凰黎に静泰還は絶句していたが、むしろ煬鳳は安堵感に満たされている。
僅かな意地悪を口にする凰黎と、静泰還との距離が縮まったように思えたからだ。
しかし、大切なのはこれからだ。
家族としての彼らの一歩はまだ始まったばかりなのだから。
――――
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