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然后鳳凰抱鳳雛(そして鳳凰は鳳雛を抱く)
161:多生曠劫(二)
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(原始の谷の封印が解けなかっただって……!?)
そんなことがあるはずはない。
「ならばなぜ原始の谷は開いてしまったのですか?」
凰黎が凰神偉に尋ねた。
「それは――っ、離れろ! 凰黎!」
凰神偉が凰黎を突き飛ばした。
万晶鉱が岩壁ごと崩れ落ち、その向こうの土壁から何かが迫ってくる。
「兄上!?」
叫ぶ凰黎の目の前で、凰神偉の身体が宙に浮く。
性格には浮き上がるというよりも、釣り上げられたというのが正しい。
彼の腹からは人の腕よりも巨大な腕が突き出しており、その腕は甲冑を纏った巨大な男のものだった。
「なんだあれは!?」
妖邪の類とは違うが、人でもない。
あのような存在を見るのは初めてだ。
驚きのあまり、煬鳳は目を見開いた。
「凰黎!」
しかしそれよりも凰黎を、凰神偉を助けるのが先だ。煬鳳は巨大な兵士に向かって黒曜を放つ。
「……あれ?」
黒曜が、出てこない。
「おい、黒曜!? どうしたんだ!? 返事をしろ!」
しかしやはり、黒曜の返事は返ってこない。それどころか、気配すら感じられないのだ。
いままで煬鳳の身体の中にはいつも黒曜の存在は微かにあって、彼が望めば黒曜は出てくるし、望まなくてもときには出てくることもあった。
――それなのに、なぜ?
焦りと動揺で目の前がぐるぐると回る。いったい自分はどうしてしまったのか、何が起こったのか。
先ほどからおかしなことばかりで、何も分からないのだ。
「兄上!」
神侯を操り、凰黎は巨大な兵士と対峙する。強靭な兵士だが動きは鈍いらしく、神侯の攻撃をもろに食らった。それでも一撃で腕を落とすには足りないのか、兵士は凰神偉を腕からぶら下げたまま、凰黎への攻撃の手を緩めない。
兄を助け出せない焦りからか、一瞬の隙をついて兵士の腕が凰黎の鼻先まで迫る。
「危ない、凰黎!」
堪らず煬鳳は叫んだ。翳炎をぶつけようとしたのだが、やはり霊力が全く上がる気配はない。
万事休す――と思ったとき、幾多の光弾が降り注ぎ、大きな爆発が巨大な兵士の手元に連続で炸裂した。
爆発の衝撃で兵士の腕から凰神偉がずり落ちる。すかさず凰黎が飛び出して凰神偉を受け止めた。
(いまの攻撃はいったい誰が――!?)
先ほどの光弾を放った人物を確認すべく振り返り、煬鳳は固まった。
「凰黎! 大丈夫か!? こっちはもう駄目だ。発作を起こした奴らをどうにか手加減して気絶させてみたけど、多分、誰も助かりそうにない……」
煬鳳の視界の先から走ってきた青年は、黒く燃える鳥を連れている。
(嘘だろ!?)
走ってきたのは他でもない、煬鳳と黒曜だったのだ。
ならばいまこうして立っている自分はいったい何者なんだ!?
「煬鳳! 兄上が……!」
凰黎は凰神偉に必死で霊力を送り込んでいる。彼の腹の傷は広く、深く、いかに彼が強い人物であってもこれほどまでに酷い状況では助かる見込みは薄いだろう。
「俺もやるよ」
もう一人の煬鳳は手早く凰黎の脇に屈むと、凰神偉に霊力を送り込む。
「でも、煬鳳……貴方の身体はもう、先ほどの攻撃でかなり限界が……」
「俺はまだ大丈夫だ。それより、いまはお前の兄貴の命がかかってるんだから……!」
もう一人の煬鳳の息遣いは荒く、苦しそうだ。それでも彼が凰神偉に霊力を送り込むと首筋から汗が流れ落ちる。しかし不思議なことにその滴は落ちる前に蒸発してしまった。
(馬鹿な……だって俺はいま火龍も倒して、鸞快子に黒曜との霊力の繋がりも治療してもらったはずだ)
いまのはどう見ても、煬鳳の体温が相当上昇しているのだと考えられる。
ずしり。
重く鈍い音が響く。
同時に洞窟内部が震え、天井からはばらばらと石が落下する。
「どうやら相当奴らはしぶといようだな」
先ほどの兵士が倒れた方向を向いて、翳黒明が言った。彼の身体も傷だらけで、至る所から血が流れている。相当な激戦を繰り広げたらしく、手に持つ剣は折れ、片腕も動かないのかだらりと垂らしたままだ。
これが彩藍方の兄弟子である彩菫青の身体だと思うと胸が痛む。
先ほどもう一人の煬鳳が攻撃した兵士は、身体の大部分を失っていたが、それでもゆっくりと覚束ない様子ながらも起き上がろうと試みている。
すかさず翳黒明が兵士に向かって翳炎を炸裂させ、兵士はもんどりうって再びひっくり返ってしまった。
「こいつらは仙界の奴らが作り出した兵士だ。恐らく原始の谷を開いたのもそいつらの仕業だろう」
淡々と語る翳黒明に、凰黎は青ざめる。
「そんな、原始の谷は翳冥宮と恒凰宮の双宮が、決められた手順を踏まねば開けられないのでは!? しかも、微かにでも双宮の血が流れていなければ絶対に開かないのでしょう!? だからこそ、彩鉱門の公子の身体を借りている貴方では開くことができなかったはずなのに――」
途中で凰黎の言葉が途切れた。
洞窟の奥から、白い人影がゆっくりと近づいてくる。
「いま我々にできることは、せめて少しでも長く彼らを足止めしてやることだけ――」
凰神偉は震える足で立ち上がると、背筋を伸ばす。彼の瞳と翳黒明の瞳とが交錯し、互いに頷きあった。
「そのようだな。……煬鳳、凰黎。俺たちがここで奴らを足止めしているあいだに、仙界にいけ」
「そんなこと、できるはずないでしょう! 二人とも酷い怪我をしているのです。このまま――」
凰神偉が凰黎を抱きしめた。
「煬殿、阿黎のことを――頼む!」
覚悟の眼光が凰神偉に宿り、凰黎をもう一人の煬鳳へと突き飛ばす。もう一人の煬鳳は慌てて凰黎のことを支え、静かに凰神偉に頷いた。
それでも煬鳳に何か訴えようとする凰黎を、もう一人の煬鳳は力いっぱい抱きしめる。
「……凰黎、行こう!」
凰黎の手を引き、もう一人の煬鳳は洞窟の中を駆け出した。
「嘘だろ!? なんでなんだ!?」
走り出す二人の背を見て、迫るものを迎え撃とうとする凰神偉と翳黒明の姿を見て、煬鳳は力の限り叫ぶ。
それでも誰一人、煬鳳を振り返る者はいない。
「嘘だろ? 誰か、嘘だって言ってくれ!」
凰神偉はもはや気力だけで立っている状態だ。彼が凰黎を送り出したのは、命と引き換えに少しでも弟を遠くに逃がすため。
そして翳黒明もまた、その凰神偉に同調したのだ。
煬鳳と、凰黎を逃がすために。
誰一人、残らない。
凰黎ともう一人の煬鳳しか、残らない。
「そんなの、嘘だ!」
煬鳳は泣きながら叫び続けた。
「誰か……、誰か、答えてくれよ!」
『大丈夫ですよ、煬鳳。全て、夢なのですから』
聞き覚えのある優しい声が、暗闇に響く。
誰かに抱きしめられるように温かい感情が流れ込み、同時に心地よい冷たさが煬鳳の身体を癒やしてゆく。
――ああ、この霊力は凰黎のものだ……。
――夢で良かった。
――本当に良かった。
夢だと告げられ、泣きたいほど煬鳳は嬉しくなった。先ほどの酷い光景が真実だなんて信じたくはない。
夢であって、本当に良かったと心から思う。
「凰黎……。俺、本当に辛い夢を見たんだ。本当だったらどうしようかと思った」
凰黎の胸に縋りつくように煬鳳は頭をうずめる。煬鳳が頭を動かすたびに触れる、凰黎の優しい手が愛おしい。頭に載せられた凰黎の手を両の手で包み込むと、煬鳳はその手を己の頬にぴったりとくっつけた。
「凰黎の手、冷たくて気持ちいいな」
「手、だけですか?」
悪戯っぽい凰黎の口調。そんな瞬間もまた随分と久方ぶりに思えてしまう。
「手だけじゃないよ。冷たさも、温かさも……体全体に凰黎の優しさが染み込んでくるみたいだ」
天に昇るほどの心地よさに微睡み、このまま眠ってしまいたい。
そういえば、なぜ凰黎は煬鳳に冷気を送っているのだろう。何事もなければ霊気など凰黎は送らないはずだ。それに、煬鳳も通常の体温で冷気を送れらたとしたら、恐らく寒くて震えているだろう。
「なあ、俺もしかしてまた体温が上がってたのか?」
不思議に思って、煬鳳は尋ねる。
凰黎は一つ小さく溜め息をつき、少し呆れたように微笑んだ。
「煬鳳、瞋九龍との戦いでは、随分無理をしましたね。火龍に対抗して黒炎山を流れる翳炎の力を吸収しようなんて……」
「そういえば……そうだった。夢中だったから、忘れてたよ」
ようやく煬鳳は思い出す。
黒炎山の岩漿と共に燃え続ける翳炎の力を自分の力とし、さらにみんなの力を吸い取ろうとした瞋九龍に対抗するために煬鳳は逆にその力を利用したのだ。
瞋九龍に流れるはずの翳炎を己に流し、さらに瞋九龍が奪った人々の力を全て戻した。そのお陰で動けなくなった彼らはすぐに元の力を取り戻し、戦いへと復帰することができたのだ。
結果的には様々な人たちの協力があって瞋九龍を倒すことができたのだが……我ながら無茶をしたものだ。
改めて振り返り、煬鳳は笑った。
そんなことがあるはずはない。
「ならばなぜ原始の谷は開いてしまったのですか?」
凰黎が凰神偉に尋ねた。
「それは――っ、離れろ! 凰黎!」
凰神偉が凰黎を突き飛ばした。
万晶鉱が岩壁ごと崩れ落ち、その向こうの土壁から何かが迫ってくる。
「兄上!?」
叫ぶ凰黎の目の前で、凰神偉の身体が宙に浮く。
性格には浮き上がるというよりも、釣り上げられたというのが正しい。
彼の腹からは人の腕よりも巨大な腕が突き出しており、その腕は甲冑を纏った巨大な男のものだった。
「なんだあれは!?」
妖邪の類とは違うが、人でもない。
あのような存在を見るのは初めてだ。
驚きのあまり、煬鳳は目を見開いた。
「凰黎!」
しかしそれよりも凰黎を、凰神偉を助けるのが先だ。煬鳳は巨大な兵士に向かって黒曜を放つ。
「……あれ?」
黒曜が、出てこない。
「おい、黒曜!? どうしたんだ!? 返事をしろ!」
しかしやはり、黒曜の返事は返ってこない。それどころか、気配すら感じられないのだ。
いままで煬鳳の身体の中にはいつも黒曜の存在は微かにあって、彼が望めば黒曜は出てくるし、望まなくてもときには出てくることもあった。
――それなのに、なぜ?
焦りと動揺で目の前がぐるぐると回る。いったい自分はどうしてしまったのか、何が起こったのか。
先ほどからおかしなことばかりで、何も分からないのだ。
「兄上!」
神侯を操り、凰黎は巨大な兵士と対峙する。強靭な兵士だが動きは鈍いらしく、神侯の攻撃をもろに食らった。それでも一撃で腕を落とすには足りないのか、兵士は凰神偉を腕からぶら下げたまま、凰黎への攻撃の手を緩めない。
兄を助け出せない焦りからか、一瞬の隙をついて兵士の腕が凰黎の鼻先まで迫る。
「危ない、凰黎!」
堪らず煬鳳は叫んだ。翳炎をぶつけようとしたのだが、やはり霊力が全く上がる気配はない。
万事休す――と思ったとき、幾多の光弾が降り注ぎ、大きな爆発が巨大な兵士の手元に連続で炸裂した。
爆発の衝撃で兵士の腕から凰神偉がずり落ちる。すかさず凰黎が飛び出して凰神偉を受け止めた。
(いまの攻撃はいったい誰が――!?)
先ほどの光弾を放った人物を確認すべく振り返り、煬鳳は固まった。
「凰黎! 大丈夫か!? こっちはもう駄目だ。発作を起こした奴らをどうにか手加減して気絶させてみたけど、多分、誰も助かりそうにない……」
煬鳳の視界の先から走ってきた青年は、黒く燃える鳥を連れている。
(嘘だろ!?)
走ってきたのは他でもない、煬鳳と黒曜だったのだ。
ならばいまこうして立っている自分はいったい何者なんだ!?
「煬鳳! 兄上が……!」
凰黎は凰神偉に必死で霊力を送り込んでいる。彼の腹の傷は広く、深く、いかに彼が強い人物であってもこれほどまでに酷い状況では助かる見込みは薄いだろう。
「俺もやるよ」
もう一人の煬鳳は手早く凰黎の脇に屈むと、凰神偉に霊力を送り込む。
「でも、煬鳳……貴方の身体はもう、先ほどの攻撃でかなり限界が……」
「俺はまだ大丈夫だ。それより、いまはお前の兄貴の命がかかってるんだから……!」
もう一人の煬鳳の息遣いは荒く、苦しそうだ。それでも彼が凰神偉に霊力を送り込むと首筋から汗が流れ落ちる。しかし不思議なことにその滴は落ちる前に蒸発してしまった。
(馬鹿な……だって俺はいま火龍も倒して、鸞快子に黒曜との霊力の繋がりも治療してもらったはずだ)
いまのはどう見ても、煬鳳の体温が相当上昇しているのだと考えられる。
ずしり。
重く鈍い音が響く。
同時に洞窟内部が震え、天井からはばらばらと石が落下する。
「どうやら相当奴らはしぶといようだな」
先ほどの兵士が倒れた方向を向いて、翳黒明が言った。彼の身体も傷だらけで、至る所から血が流れている。相当な激戦を繰り広げたらしく、手に持つ剣は折れ、片腕も動かないのかだらりと垂らしたままだ。
これが彩藍方の兄弟子である彩菫青の身体だと思うと胸が痛む。
先ほどもう一人の煬鳳が攻撃した兵士は、身体の大部分を失っていたが、それでもゆっくりと覚束ない様子ながらも起き上がろうと試みている。
すかさず翳黒明が兵士に向かって翳炎を炸裂させ、兵士はもんどりうって再びひっくり返ってしまった。
「こいつらは仙界の奴らが作り出した兵士だ。恐らく原始の谷を開いたのもそいつらの仕業だろう」
淡々と語る翳黒明に、凰黎は青ざめる。
「そんな、原始の谷は翳冥宮と恒凰宮の双宮が、決められた手順を踏まねば開けられないのでは!? しかも、微かにでも双宮の血が流れていなければ絶対に開かないのでしょう!? だからこそ、彩鉱門の公子の身体を借りている貴方では開くことができなかったはずなのに――」
途中で凰黎の言葉が途切れた。
洞窟の奥から、白い人影がゆっくりと近づいてくる。
「いま我々にできることは、せめて少しでも長く彼らを足止めしてやることだけ――」
凰神偉は震える足で立ち上がると、背筋を伸ばす。彼の瞳と翳黒明の瞳とが交錯し、互いに頷きあった。
「そのようだな。……煬鳳、凰黎。俺たちがここで奴らを足止めしているあいだに、仙界にいけ」
「そんなこと、できるはずないでしょう! 二人とも酷い怪我をしているのです。このまま――」
凰神偉が凰黎を抱きしめた。
「煬殿、阿黎のことを――頼む!」
覚悟の眼光が凰神偉に宿り、凰黎をもう一人の煬鳳へと突き飛ばす。もう一人の煬鳳は慌てて凰黎のことを支え、静かに凰神偉に頷いた。
それでも煬鳳に何か訴えようとする凰黎を、もう一人の煬鳳は力いっぱい抱きしめる。
「……凰黎、行こう!」
凰黎の手を引き、もう一人の煬鳳は洞窟の中を駆け出した。
「嘘だろ!? なんでなんだ!?」
走り出す二人の背を見て、迫るものを迎え撃とうとする凰神偉と翳黒明の姿を見て、煬鳳は力の限り叫ぶ。
それでも誰一人、煬鳳を振り返る者はいない。
「嘘だろ? 誰か、嘘だって言ってくれ!」
凰神偉はもはや気力だけで立っている状態だ。彼が凰黎を送り出したのは、命と引き換えに少しでも弟を遠くに逃がすため。
そして翳黒明もまた、その凰神偉に同調したのだ。
煬鳳と、凰黎を逃がすために。
誰一人、残らない。
凰黎ともう一人の煬鳳しか、残らない。
「そんなの、嘘だ!」
煬鳳は泣きながら叫び続けた。
「誰か……、誰か、答えてくれよ!」
『大丈夫ですよ、煬鳳。全て、夢なのですから』
聞き覚えのある優しい声が、暗闇に響く。
誰かに抱きしめられるように温かい感情が流れ込み、同時に心地よい冷たさが煬鳳の身体を癒やしてゆく。
――ああ、この霊力は凰黎のものだ……。
――夢で良かった。
――本当に良かった。
夢だと告げられ、泣きたいほど煬鳳は嬉しくなった。先ほどの酷い光景が真実だなんて信じたくはない。
夢であって、本当に良かったと心から思う。
「凰黎……。俺、本当に辛い夢を見たんだ。本当だったらどうしようかと思った」
凰黎の胸に縋りつくように煬鳳は頭をうずめる。煬鳳が頭を動かすたびに触れる、凰黎の優しい手が愛おしい。頭に載せられた凰黎の手を両の手で包み込むと、煬鳳はその手を己の頬にぴったりとくっつけた。
「凰黎の手、冷たくて気持ちいいな」
「手、だけですか?」
悪戯っぽい凰黎の口調。そんな瞬間もまた随分と久方ぶりに思えてしまう。
「手だけじゃないよ。冷たさも、温かさも……体全体に凰黎の優しさが染み込んでくるみたいだ」
天に昇るほどの心地よさに微睡み、このまま眠ってしまいたい。
そういえば、なぜ凰黎は煬鳳に冷気を送っているのだろう。何事もなければ霊気など凰黎は送らないはずだ。それに、煬鳳も通常の体温で冷気を送れらたとしたら、恐らく寒くて震えているだろう。
「なあ、俺もしかしてまた体温が上がってたのか?」
不思議に思って、煬鳳は尋ねる。
凰黎は一つ小さく溜め息をつき、少し呆れたように微笑んだ。
「煬鳳、瞋九龍との戦いでは、随分無理をしましたね。火龍に対抗して黒炎山を流れる翳炎の力を吸収しようなんて……」
「そういえば……そうだった。夢中だったから、忘れてたよ」
ようやく煬鳳は思い出す。
黒炎山の岩漿と共に燃え続ける翳炎の力を自分の力とし、さらにみんなの力を吸い取ろうとした瞋九龍に対抗するために煬鳳は逆にその力を利用したのだ。
瞋九龍に流れるはずの翳炎を己に流し、さらに瞋九龍が奪った人々の力を全て戻した。そのお陰で動けなくなった彼らはすぐに元の力を取り戻し、戦いへと復帰することができたのだ。
結果的には様々な人たちの協力があって瞋九龍を倒すことができたのだが……我ながら無茶をしたものだ。
改めて振り返り、煬鳳は笑った。
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