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第四話:ようこそ、おめでとう
4-2:今夜は眠れない(2)
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それからもう少し時間が経った。僕は相変わらず一心不乱に折り紙の輪飾りを作り続けている。さすがに集中して作業を続けすぎて目が痛い。
それでも明日はすぐそこだ。時間は既に24時を超えている。
「きょっぴー。飾りも沢山作ったから輪飾りボクもやるよ」
「え、でも……」
ヴィクターが僕の所にやってきて、輪飾り用の折り紙を手に取った。
でも、ヴィクターは輪飾り作るの苦手だから大変だろうに……。そんな僕の気持ちを汲み取ったのか、ヴィクターはにこりと笑う。
「大丈夫。進みは遅くても、居ないよりは少しは力になるでしょ?」
「良いんですか?」
「勿論だよ。だって僕達同じビストロ・ノクターンの従業員仲間なんだから」
同じビストロ・ノクターンの従業員。
何気ない一言だったけど、ヴィクターの口からごく当然のように出てきたその言葉が泣きそうなほど嬉しかった。
「ちょっ!? どうしたの!? 涙ぐんで」
「な、な、なんでもないです!! 目にゴミが入っただけ!」
慌てて僕は弁解する。
だって、あんまり嬉しすぎて。
……僕、ちゃんと従業員で、仲間で……認めて貰えているんだ。それが分かったのが本当に、心の底から嬉しかった。
いつでもドジばかりするし、まだ全然頼りない。
ヴィクター程てきぱきもしていないし決断力もなくて、正直こんな僕は従業員として役に立てているのか、仲間として見て貰えているかずっと不安で仕方なかった。
「うん……そうですね。一緒にやりましょう」
慌てて涙が溢れそうになる目尻を指で払って、僕は笑った。
「進み具合はどうですか?」
「ジェドさん!」
そうこうしているとジェドさんが厨房から出てきた。既にコックコートを脱いでいるので、多分明日の準備が終わったのだろう。
「一通り準備が終わったから私たちも飾りの制作手伝うよ。……明日までに終わらないと朝から飾りつけできないんだよね?」
アインさんもすぐに後から顔を出す。
腕まくりして、気合も充分だ。
「はい、ありがとうございます! ジェドさん、アインさん!」
僕は嬉しくなって勢いよく立ち上がると、二人に頭を下げる。
「いやいや、水臭いですよ。当然でしょ、余はこういうの得意なんです。黒船に乗ったつもりで任せてください」
「いや、それ大船でしょ」
ジェドさんの黒船発言にヴィクターが突っ込んだ。まあ、黒船も大船も、どっちも大きそうではあるけれど。
「さあさあ、油を売ってる場合じゃないよ。ビストロ・ノクターン従業員、一致団結して頑張ろう!」
「はい、そうですね!」
アインさんの言葉に僕は元気に返事をする。
それと同時に騒がしい音を立てて入り口の扉が開いた。
「いやいやいや、誰か忘れてへん!? ワイやろ!」
「エミリオさん!」
いつもの事なんだけど、この時間にこんな派手に登場する人も珍しい。まあ、皆ホールに居るから外から中の様子は見えているわけだけれど。
それにしたって遠慮がない。
「エミリオ、どうしたんだい? こんな夜遅くに」
「ちっちっち。ワイ、目がいいんや」
何故かドヤ顔でエミリオさんはポーズを決めた。
「明日のおもてなし用の飾り作っとるんやろ? 随分苦戦してるみたいやから、ワイも手伝ったるわ!」
どうやら、手伝いに来てくれたらしい。
エミリオさんも、普段の仕事と明日のお菓子の準備と色々あったろうに人が良い。
「いいのかい?」
「もっちのロンや!」
そう言うなりドカっと絨毯の上に座り込む。
「さ、気合入れていくで!」
一番最後に来た人が、いの一番に折り紙を手に取る。僕達も顔を見合わせて笑った後で絨毯の上に座りなおすと、再び折り紙の輪飾り作りを再開した。
「輪飾りってどれくらい必要なんだい?」
「あっと……壁に取り付ける3メートルのものが8本、それから……」
アインさんの質問に、図面を見せながら慌てて僕は説明する。
ビストロ・ノクターンの夜は更けてゆく。
結局夜中までかかってなんとか誕生日パーティー用の飾りの制作は全て終わったのだった。
――お客さん、喜んでくれるといいな……。
僕にも誕生日パーティーの思い出とかあったのだろうか。
祝ってくれる両親が居て、幸せな幼少時代を過ごせただろうか。
明日来るお客さんの嬉しそうな姿を想像しながら僕はあっという間に眠りについた。
それでも明日はすぐそこだ。時間は既に24時を超えている。
「きょっぴー。飾りも沢山作ったから輪飾りボクもやるよ」
「え、でも……」
ヴィクターが僕の所にやってきて、輪飾り用の折り紙を手に取った。
でも、ヴィクターは輪飾り作るの苦手だから大変だろうに……。そんな僕の気持ちを汲み取ったのか、ヴィクターはにこりと笑う。
「大丈夫。進みは遅くても、居ないよりは少しは力になるでしょ?」
「良いんですか?」
「勿論だよ。だって僕達同じビストロ・ノクターンの従業員仲間なんだから」
同じビストロ・ノクターンの従業員。
何気ない一言だったけど、ヴィクターの口からごく当然のように出てきたその言葉が泣きそうなほど嬉しかった。
「ちょっ!? どうしたの!? 涙ぐんで」
「な、な、なんでもないです!! 目にゴミが入っただけ!」
慌てて僕は弁解する。
だって、あんまり嬉しすぎて。
……僕、ちゃんと従業員で、仲間で……認めて貰えているんだ。それが分かったのが本当に、心の底から嬉しかった。
いつでもドジばかりするし、まだ全然頼りない。
ヴィクター程てきぱきもしていないし決断力もなくて、正直こんな僕は従業員として役に立てているのか、仲間として見て貰えているかずっと不安で仕方なかった。
「うん……そうですね。一緒にやりましょう」
慌てて涙が溢れそうになる目尻を指で払って、僕は笑った。
「進み具合はどうですか?」
「ジェドさん!」
そうこうしているとジェドさんが厨房から出てきた。既にコックコートを脱いでいるので、多分明日の準備が終わったのだろう。
「一通り準備が終わったから私たちも飾りの制作手伝うよ。……明日までに終わらないと朝から飾りつけできないんだよね?」
アインさんもすぐに後から顔を出す。
腕まくりして、気合も充分だ。
「はい、ありがとうございます! ジェドさん、アインさん!」
僕は嬉しくなって勢いよく立ち上がると、二人に頭を下げる。
「いやいや、水臭いですよ。当然でしょ、余はこういうの得意なんです。黒船に乗ったつもりで任せてください」
「いや、それ大船でしょ」
ジェドさんの黒船発言にヴィクターが突っ込んだ。まあ、黒船も大船も、どっちも大きそうではあるけれど。
「さあさあ、油を売ってる場合じゃないよ。ビストロ・ノクターン従業員、一致団結して頑張ろう!」
「はい、そうですね!」
アインさんの言葉に僕は元気に返事をする。
それと同時に騒がしい音を立てて入り口の扉が開いた。
「いやいやいや、誰か忘れてへん!? ワイやろ!」
「エミリオさん!」
いつもの事なんだけど、この時間にこんな派手に登場する人も珍しい。まあ、皆ホールに居るから外から中の様子は見えているわけだけれど。
それにしたって遠慮がない。
「エミリオ、どうしたんだい? こんな夜遅くに」
「ちっちっち。ワイ、目がいいんや」
何故かドヤ顔でエミリオさんはポーズを決めた。
「明日のおもてなし用の飾り作っとるんやろ? 随分苦戦してるみたいやから、ワイも手伝ったるわ!」
どうやら、手伝いに来てくれたらしい。
エミリオさんも、普段の仕事と明日のお菓子の準備と色々あったろうに人が良い。
「いいのかい?」
「もっちのロンや!」
そう言うなりドカっと絨毯の上に座り込む。
「さ、気合入れていくで!」
一番最後に来た人が、いの一番に折り紙を手に取る。僕達も顔を見合わせて笑った後で絨毯の上に座りなおすと、再び折り紙の輪飾り作りを再開した。
「輪飾りってどれくらい必要なんだい?」
「あっと……壁に取り付ける3メートルのものが8本、それから……」
アインさんの質問に、図面を見せながら慌てて僕は説明する。
ビストロ・ノクターンの夜は更けてゆく。
結局夜中までかかってなんとか誕生日パーティー用の飾りの制作は全て終わったのだった。
――お客さん、喜んでくれるといいな……。
僕にも誕生日パーティーの思い出とかあったのだろうか。
祝ってくれる両親が居て、幸せな幼少時代を過ごせただろうか。
明日来るお客さんの嬉しそうな姿を想像しながら僕はあっという間に眠りについた。
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