この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり

文字の大きさ
19 / 72

第19話 よい船旅を

しおりを挟む
「海賊だ! 海賊が攻めてきたぞ」
「あのピンク色の海賊船は……最悪だ、シュガーネイ船長率いる桃色海賊団だ!」
「は、早く自警団を……いや、王国軍に連絡をしてくれ!」

 北から海岸沿いに港へ向かってくる海賊船を目にした市民達はパニックになる。

「マール様、海賊旗は下ろしておいた方がよかったですね」
「いや、そもそもこの船は見た目からして有名すぎるからね……」

 ユフィーアは船舶の操舵の心得もあるというのでそのままピンクパール号に乗ってきたが、失敗したようだ。
 俺とユフィーアは港を右往左往する市民達を見て大いに反省をする。

 船を港に着けると自警団の皆さんが槍を手に隊列を組んでいるのが見えた。
 誤解を解かないと戦闘になる。
 俺は船から身を乗り出して大声で叫ぶ。

「皆さん驚かせてごめんなさい。俺達は海賊じゃありません」

 俺の姿に気が付いたトリトン船長が自警団の制止を振り切って前に出る。

「マール! まさかあんたらの言ってた新しい船ってそいつの事か?」
「はい、思ったより良い船が手に入りました」
「海賊から奪ってきたのか……まったく、信じられない事をするな」

 トリトン船長は自警団の皆さんに事情を説明する。
 最初は半信半疑だった自警団も、勇者ユフィーアが絡んでいると聞くと納得の表情を浮かべて解散した。


「しかしマールさん、本当にこの船を頂いてもいいですかい?」

「そうですね、ただで受け取るのはトリトン船長も心苦しいものはあるでしょう。だからこうしましょう。その船は差し上げるのではなく貸します。自由に使っていいですが、俺達に船が必要な時はこちらを優先してもらいます」

 トリトン船長は感激のあまり涙を流して喜ぶ。

「マールさん、本当にすまねえ。船が必要な時にはいつでも呼んで下せえ。世界の果てだって俺達が送って差し上げますぜ」

 桃色海賊団壊滅の情報はたちまち国内外に広がり、以後このピンクパール号を見られても恐れられる事はなくなった。


◇◇◇◇


「野郎ども出港だ!」

「はい、船長!」

 翌朝、積み荷が終わったピンクパール号はラマーゼン諸島へ向けて出港する。
 船の上に乗っていればオブジェクト消滅バグが発生して船が消える事は無いが、積み荷が無くなる可能性はある。
 俺はオブジェクト消滅バグの事を呪術の一種という事にしてクルーには交代制で積み荷から目を離さないように伝える。
 クルー達は俺の言った事を忠実に守っているようだ。

 俺とユフィーアは甲板の上に立って魔物の襲撃に備えるが、この日襲いかかってくる魔物はいなかった。


◇◇◇◇


 出港して二日目。
 快晴。
 波も穏やかでいい釣り日和だ。
 遠目に魔物を見かけたが、まだ襲ってくる気配はない。
 俺とユフィーアは交代で釣りに興じたが生憎だ。
 ユフィーアは銛を手に直接海に潜って魚を獲ってこようかと提案してきたが、海中で魔物に襲われたらいくらユフィーアでも無事でいられるか分からないので止めておいた。

 しかし個人的にユフィーアの水着姿には興味がある。


◇◇◇◇


 出港して三日目。
 何度か魔物が襲ってくるようになったが、出てくる敵は弱い魔物ばかり。
 ユフィーアが戦うまでもない。
 強敵が出てくるまでは熟練度の上昇狙いで俺が戦う事にした。
 空から襲ってくる鳥の魔物は弓矢で射落とし、海中から船を這い上ってくる魔物は銛で突き落とす。
 誰にでもできる簡単なお仕事です。


◇◇◇◇


 四日目。
 俺はぶっ倒れた。
 魔物にやられたのではない。
 船酔いだ。

時化しけって凄いんだね……ううっ」

「マール様、大丈夫ですか? 気を確かに!」

 酔いを治す魔法や薬は存在しない。
 ベッドに横たわる俺をユフィーアが心配そうに介抱してくれるが、ユフィーアもどうしたらいいのか分からずにオロオロしている。

 ユフィーアもクルー達もあの船揺れでどうして平気なんだ……。
 船が揺れなくなるバグがあればいいのに……

 ……いや、あるにはある。

 電撃魔法は偶に対象を痺れさせ、動きを止める追加効果が発生する。
 しかしそれは生物以外にも発生する事がある。
 例えば空中に投げたボールに電撃魔法を放ち、追加効果が発生するといつまでも落下せずにその場所に固定され、浮かび続ける事になる。

 追加効果の発生率は魔法使用者の魔力に比例する。
 その発生率は低めに設定されており高位の魔導士でも滅多に起きる事はない。
 ユフィーアレベルでも1割に満たないだろうが、何回か試し続ければその内成功しそうだ。

 でもこのバグはダメだ。
 確かに船を止めれば全く揺れなくなるが、完全にその場所に固定されて前にも後ろにも動かなくなってしまう。
 しかも生物でない物は自然治癒もせず、状態回復魔法も効かないので実質解除不可能ときたもんだ。

 諦めて時化しけが収まるまで大人しくここで横になっていよう。

 その時、クルーの叫び声が聞こえた。

「う、うわああああ! ユフィーアさん、早く甲板に来てくれ!」

 こんな時に魔物が現れたようだ。

「ユフィーア、俺の事はいいから行ってあげて」

「はい、マール様。すぐに戻りますから頑張って下さい!」

 そう言ってユフィーアは俺を心配しつつ甲板へ走っていった。
 次の瞬間、船が大きく傾く。
 俺はベッドから転げ落ち、頭を強く打つ。

「うう、なんだってんだ……」

 痛いし気持ち悪いし最悪だ。

 クルー達の叫び声はさらに大きくなる。

「出たぞ、クラーケンだ!」

 なんてこった。
 こんな時にクラーケンと遭遇エンカウントしてしまうとは。

 でもまあユフィーアならクラーケンぐらい簡単に倒せるだろうな。
 俺は彼女を信じて安静にしていよう。

「ユフィーアさん、お願いします」

「この程度の魔物なら私一人で問題ありません。はあっ!」

 ザシュ!

 バン!

「ギャオオオオオオオオオオオオン」

 ドゴッ!

 シュキーン!

「ああっ、クラーケンの触手が甲板まで!」

「あなたは下がっていて下さい。てりゃーっ!」

 ザンッ。

「オアアアアアアアアアアアアアン」

 バターン。

 声と音でユフィーアが戦っているのが分かる。
 音を聞く限りではユフィーアが優勢のようだ。

「ユフィーアさん、クラーケンの動きが止まりました! もう一息です!」

「はい、これで終わりです。電撃魔法、ライトニングアンペア!」

 ビリビリッ。
 ズゴーン!

 次の瞬間、先程までの揺れが嘘のように収まった。


しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...