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最終話 エピローグ
しおりを挟む俺のクロースレスの魔法が発動した瞬間、王都中に先程までとは全く違う種類の悲鳴が響き渡った。
「きゃああああ、こっち見ないで!!!」
「お、俺の服があああああああ!?」
「嫌あああああああああああああ!」
兵士や冒険者達の裸を見て、まずヨイヤミがショックのあまり気を失って倒れた。
俺は急いで魔法の袋からパンツを取り出して履くと、すぐにヨイヤミの介抱に向かう。
「あら、随分と彼女に気を使うのね」
イザナミは自分の魔法の袋から代えのローブを取り出して身に纏いながら何かを含ませたような言い方をする。
「そりゃ気絶してる女の子を放置しておけないだろ。それよりも着替えるの早いね」
「当然よ。いつクロースレスを掛けられてもいいように何度もイメージトレーニングを繰り返して準備してきたからね」
周囲を見回すと、チルやサクヤのように過去にクロースレスを掛けられた事がある者達は皆着替え終わっている。
クロースレスの使い手である俺よりも準備がいいじゃないか。
「それよりもクサナギさん、その娘アマゾネスの生き残りなんですって?」
「そうだけど、マドウカから聞いたのか?」
「そうよ。……ちゃんと責任取ってあげてね?」
「責任? 何の話だ」
「あら、知らなかったの? 戦闘部族アマゾネスの掟では初めて敗北を喫した男性との子を成さないといけないのよ」
「は? 知らんし」
「今聞いて知ったでしょ。ヨイヤミちゃんアマゾネスの最後の生き残りなんだからあなたの責任は重大よ。それじゃあ私は負傷者達を見てくるからまたね」
「ちょっと待てイザナミ、今のは本当の話なのか……」
「うふふ、さあね?」
イザナミはいたずらっぽく笑いながら行ってしまった。
「あいつ、ひん剥かれた仕返しに俺をからかってるんじゃないだろうな……」
真相は気になるが、俺も負傷者達の救護をしなければいけない。
他の冒険者や兵士達と手分けをして王都内を回った。
衣服を消し飛ばされて裸のままの民衆も大勢いたので、皆で余っている衣服を分け与える。
裸にされた住民達の反応も様々で、恥ずかしがって蹲る者、どうせみんなも裸だからと開き直る者、新たな性癖に目覚めている者など三者三様だ。
一通り後始末が終わったところでタカミ殿下が民衆の前に立ち、ムスヒ及び魔族との戦いの勝利と自らが次期国王の座につく事を高らかに宣言する。
民衆はそれを喜びの声をあげて歓迎した。
タカミ陛下達はしばらくは疲弊した王国の再建で忙しくなりそうだ。
タカミ陛下の演説が終わった頃、ヤマツミ伯爵が疲れ果てた顔で声を掛けてきた。
「クサナギ殿、今日は一日大変だったな」
「ヤマツミ伯爵こそ大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが」
「一日中戦い続けておったからな。年寄りには堪えるわい」
「聞きましたよ、伯爵はタカミ陛下の相談役に抜擢されたとか。これからますます忙しくなりますね」
「まったく、今から頭が痛いわい。それよりもクサナギ殿、お主にもこの度の功績で子爵位を与えるという話が出ておるぞ」
「そうなんですか。でも俺は貴族なんて柄じゃないですよ。貴族社会のしがらみとか色々と面倒臭そうだし辞退してもいいですか?」
「まあ聞きなさい、君にとっても悪い話ではない。子爵となった暁には、君を正式な火焔山一帯を治める領主として認めようと陛下は仰っておられる」
「火焔山の領主に……」
確かに悪い話ではない。
俺は今まで半分山賊の親玉のようでいつ王国軍から討伐されるかも分からない微妙な立場にいたが正式に領主となればその心配はなくなる。
伯爵にとっても山賊と付き合いがあると疑いを持たれる心配がなくなるだろう。
「分かりました、その申し出受けさせていただきます」
「おお、引き受けてくれるか。これで私の心配事がひとつ減った」
「ひとつ? 他にも何かあるんですか?」
「ああ、チルとサクヤの事なんだがな」
「あの二人ならもう立派に勇者パーティとしてやっていますよ。見ましたか? あの魔王オロチに止めを刺した一撃を」
「いや、そっちの話ではない……」
伯爵は首を横に振り、頭を掻きながら続ける。
「あいつら強くなりすぎてしまったおかげで嫁の貰い手がいなくなってしまってな」
「あー……貴族の方々はもっとおしとやかな令嬢が好きそうですからね」
「どちらかをクサナギ殿が貰ってくれれば助かるんだがな。なんなら二人とも」
「ええ……?」
「それにクサナギ殿は娘達をしょっちゅう裸にしているそうではないか。男として責任を取らないといけないのではないかね?」
「いや、しょっちゅうではないですし、自分の欲望の為に他人の服を剥いだ事はないです」
「そんな事は分かっている。だが父親として見逃す事は出来ぬ! 幸いチルもサクヤもクサナギ殿に対して好意を抱いておる」
伯爵は有無を言わさぬ勢いで迫ってくる。
これは明らかに相談やお願いではなく脅迫のカテゴリーだ。
その時、伝令兵が走り寄ってきてヤマツミ伯爵に告げた。
「大変です! たった今隣国ヴィランド帝国の軍勢が国境に現れたとの知らせが! その数およそ百万!」
「何だと!? クサナギ殿、話は後だ。あのハイエナどもめ、以前から不穏な動きを見せていたが、我が国が内輪揉めをしている隙を狙ってついに侵略を開始したか! 急ぎ兵を差し向けろ!」
伯爵はそう言ったものの多くの兵は先程の戦いで負傷している。
今すぐ派遣できる兵は千人にも満たないだろう。
まさか人間同士の戦争に勇者パーティや冒険者達を駆り出す訳にもいかない。
タカミ陛下が即位したばかりだというのにとんだ災難だ。
この窮地を脱するにはどうしたらいいのだろう。
そう考えていると、ふと俺に注がれている周りの視線を感じた。
ヤマツミ伯爵が言った。
「クサナギ殿、お主も行ってくれ。お主のクロースレスをヴィランド帝国のハイエナどもにお見舞いしてやるのだ」
「俺ですか?」
確かに俺は現行勇者パーティの一員でもないし冒険者でもない。
それに子爵位を与えられて火焔山の領主となれば自分の領地と領民を守る為に戦う義務も発生するという訳か。
「分かりました。俺も行きます」
「よくぞ申した! では頼んだぞ」
俺は約千人の兵を引き連れて国境沿いへ向かった。
◇◇◇◇
前方にヴィランド帝国の先鋒部隊の陣営が見えてきた。
先鋒といってもその数は我が軍よりも遥かに多い。
その数は五万人は下らないだろう。
「クサナギ様、あれはヴァルキリー隊です!」
「ヴァルキリー隊?」
「はい、女騎士だけで編成されたヴィランド帝国の精鋭部隊です。何でもひとりひとりの実力はS級の冒険者にも匹敵するとか……来ます!」
俺達の接近に気付いたヴァルキリー隊は、指揮官と思われる鋼鉄の鎧を身に付けた金髪の女騎士を先頭にして一直線にこちらに向かってきた。
まともに正面からぶつかっても俺達に勝ち目はない。
俺は迷わずヴァルキリー隊に向けて呪文を詠唱した。
「……クロースレス!」
次の瞬間、ヴァルキリー隊の全ての者の身体が赤い光に包まれる。
「何かしら、この光は?」
「敵の妨害魔法? いえ、構いません。このまま突撃をして敵を殲滅しなさい!」
ヴァルキリー隊の女騎士達はこれから自分の身に何が起きるのかも知らず勇敢にもこちらに向かってくる。
次の瞬間、パァン! という破裂音と共に全てのヴァルキリー隊の身に付けている物がはじけ飛んだ。
ここから先は戦闘と呼べるようなものではなかった。
僅か千人に満たない兵を率いて百万のヴィランド帝国軍を打ち破った俺はヒノト王国の守護神として全世界にその名を轟かせ、以後俺が生きている間はヒノト王国に対して野心を持つ国は一切現れなかった。
俺は火焔山一帯の領主に就任してからもクロースレスの魔法にまつわる数々の逸話を後世に残す事になったが、どれも裸ネタを交えた笑い話として伝えられている。
完
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