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第10話 回想

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 俺の名前はチェイン・クローゼ。冒険者の卵だ。

 冒険者とは冒険者ギルドに所属し、依頼を受けて未知の世界を探索したり、凶悪な魔物の討伐を行ったりする職業である。

 ……まあ、それ以外にもいろいろな仕事をやらされるけど。

 必然的に戦闘力の高さが要求されることになる。

 冒険者は冒険者ギルドに登録する際に自らの意思で冒険職ジョブを選択する。
 冒険者としてどう生きるかはほぼこれで決まると言っていい。
 冒険職ジョブは念入りに吟味をして決めなければ。

 戦いに専念したい者は、戦士やサムライ等の純粋な戦闘力に特化した冒険職ジョブを選択する。

 魔法の道を究めたい者は各種魔法使いとなる。
 魔法使いと言っても炎魔法や雷魔法等の直接攻撃魔法、ステータスアップ等のパーティの支援を行う補助魔法、敵を眠らせたりステータスを下げたりする妨害魔法等様々な種類がある。
 中にはアイテムで代替が利くものもあり、魔法の習得はよく考えて行わなければならない。

 傷を癒すことが出来る僧侶や治癒士ヒーラーは重宝されるが、あくまで支援役だ。どう転んでも主役になる事はない。

 他にもシーフや忍者など、戦闘以外で活躍する職もある。

 折角冒険者になるんだから主役になれる職業にしなければ。

 冒険職ジョブによって習得できるスキルは異なる。
 習得できる魔法やスキルはギルドが発行している冒険者求人情報誌【ジョブナビ】で公開されているので、俺は全ての冒険職ジョブの魔法とスキルをチェックした。


 どの冒険職ジョブも、経験ポイントを沢山消費して習得できるスキルは強い。
 通常の10のダメージを与える剣技や、広範囲に雷を落としたり、炎で焼き尽くす魔法もある。
 しかしどのスキルの効果も自身のステータスに左右される。

 これらのスキルや魔法は上級の冒険者は当たり前の様に習得している為、強さはレベル次第という事になる。

 つまり今からベテラン勢に追いつくことはほぼ不可能という事だ。

 つまり正攻法では頂点は目指せない。
 俺はもっと簡単に強くなれる、裏技の様なスキルはないか必死で探した。

 でもまあそんな都合のいいスキルが簡単に見つかる訳……

 ……。

 ……。

 ……。

 ない。

 しかし代わりに怪しい冒険職ジョブを見つけた。

 鈺魔導士ぎょくまどうし
 初見で読み方を間違えかけたが、ご丁寧にこの職業の箇所だけ必ずフリガナが付いている。
 余程読み間違う人が多いんだろうな。

 最上位魔法に必要な経験ポイント10000。
 習得者が今まで一人も存在しない為、詳細不明。

 ……これ、絶対に怪しすぎるんですけど。

 でも習得に必要なポイントは10000か。
 しかも不人気職として有名な鈺魔導士の専用魔法ときた。
 こんな役立たず、誰もパーティに入れてはくれないだろう。
 かといってソロで経験ポイントを稼ぐのも無理な話だ。

 常人の思考回路だったら諦めて別の道を探すだろうな。

 しかし、今まで誰も習得した事がない魔法による、最強冒険者へ道。そそられないと言ったら嘘になる。


 協力者が必要だ。
 幸いパーティさえ組んで貰うことが出来れば、魔法珠のおかげで自分が戦わなくても経験ポイントを稼ぐ事はできる。
 俺は協力者を募る為、ギルド御用達の酒場に足を運んだ


◇◇◇◇


 狙い目は俺と同じような新米の冒険者だ。

 クエストの報酬の分配については冒険者ギルドのルールにて定められている。
 クエストへの貢献の有無に関わらず、メンバー人につき報酬の5%以上は必ず分配しなければならない。
 但し、20人以上のパーティ、すなわちレイドはその限りではない。

 確実に戦闘で貢献できない俺は、その最低の報酬だけでいい。
 そして荷物持ちや雑用は全部俺にやらせればいい。
 但し、俺は戦闘ポイントを10000貯めるのが目的なので、それまでは一切ポイントを消費しない。
 10000ポイント貯まったら、習得する魔法を吟味したいので、俺は一旦パーティから離れる。

 その条件で俺は仲間を募った。

「そいつは面白いな。最上位魔法に興味はねえが、丁度雑用係を探していたんだ」

 それが【ヘルクレス】のリーダー、ジェラルドだった。
 彼は安く顎で使える舎弟の様な人間が欲しかっただけだ。
 この時すでにラメアとアノムスの二人もヘルクレスに所属していた。
 類は友を呼ぶという言葉通り、この二人もジェラルドと同じ様な考えだった。

 最後に、ダンジョン探索に必要な治癒士ヒーラーとしてプラリスを半ば強引に勧誘し、今日に至ったというわけである。

 あの日から5年。
 今日のクエストはダンジョンの探索だ。
 場所はこの町から西へ10キロメートルほど先にある、深淵の迷宮と呼ばれる巨大なダンジョンだ。

 念願の10000ポイントまで後僅か。
 今日こそ念願の最上位魔法を習得して見せるぞ。

 俺はアイテムがいっぱい詰まったリュックを背負い、集合場所へ急いだ。
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