31 / 93
第31話 公爵と侯爵
しおりを挟む
夜も更けて宴が終わると、俺達冒険者は追い出される様に王宮からの退去を命じられた。
もう俺達には用はないという事だろう。
「飯は美味かったが、あいつらの態度が気に入らねえ」
「オーリンの野郎、街で見かけたら卵投げつけてやろうぜ」
冒険者達は互いに愚痴を言い合いながら王宮を後にする。
「皆、少し話がある。少し時間を貰えないか?」
各々が仲間達の泊っている宿へ帰ろうとするのをエルテウスが引き止めた。
「お、あいつらをギャフンと言わせる算段だな。いいぜ、俺は乗った」
「俺もだ!」
「ボクも!」
王宮や貴族の連中のやり方に憤慨していた面々は、エルテウスの誘いに乗る。
当然俺とマリーニャもだ。
「ここでは人の目がある。場所を移動しよう」
俺達はエルテウスに連れられて【ブレイザー】のメンバーが泊っている宿に移動する。
プラリスは帰りたそうにしてたけど、女の子をひとりで夜道を歩かせる訳にはいかないという名目で半ば強引に連れて行く事にした。
部屋に入ると、【ブレイザー】のメンバーが俺達を待っていた。
さすがに次期勇者候補ともなると、泊っている部屋も豪華だ。
各パーティのリーダーと同伴者、総勢約20名が入ってもまだスペースに余裕がある。
「それでエルテウス殿、お主は何を企んでいるのであるか?」
【超僧戦隊】のリーダー、ヨゼフが質問を投げかける。
「ああ、お前達トロイの木馬って知ってるか?」
トロイの木馬は古くから読まれてきた戦記小説に登場する巨大なオブジェだ。
敵軍が残した巨大な木馬を戦利品として市内に持ち帰った結果、木馬の中に隠れていた兵士をまんまと市内に侵入させてしまったというシーンは有名だ。
あまりにも真に迫る描写は、この物語が創作ではなく現実の出来事を描いたものであると主張する歴史研究者も現れた程だ。
「勿論知っているが、それが何か?」
「OK、面白いものを見せてやる。≪フィー≫!」
エルテウスが聞きなれない魔法を詠唱すると、目に前には羽の生えた数人の小人が姿を現した。
それらはまるで人形の様に可愛らしい外見をしている。
「なんだそいつらは?召喚魔法じゃあなさそうだが」
「これは妖精と言ってな、万物に宿っている精霊を魔法で具現化したものだ。俺の命令通り忠実に働いてくれる」
見た事もない魔法を目の当たりにして周囲の者達がざわつく。
「私もそんな魔法は聞いた事もありません」
【魔導遊撃軍】のリーダーであるサンサーラですら知らないという。
「そりゃそうだろう。俺のオリジナル魔法だ」
優れた魔法の才能がある者は自力で新たな魔法を編み出す事があるという。
次期勇者候補といわれるだけあって、エルテウスはまさしく天才だった。
俺も思わずその天性の才能に嫉妬する。
エルテウスは俺達を落ち着かせて説明を続ける。
「こいつらを死霊使いの鴉の頭部に潜り込ませていたんだ。さっきの宴の席で全員回収してきた。色々と面白い事が分かったぞ」
エルテウスは大胆にも王国の内情を探る為にスパイを送り込んでいた。
もしこれが王国の知るところとなったら反逆罪に問われる事は必至だ。
エルテウスは地図を開き、ペンで線とバツ印を描く。
「まず、これがオーリンが死霊使いの鴉の頭部を運んだルートだ」
オーリンは不帰の山を発った後、一直線に王宮へ向かわず、王都の北東にあるニャラルト公爵の屋敷に寄っている。
しかし、不帰の山から王都ギルティアまでは距離がある。
途中で休息をとる為にニャラルト公爵の屋敷に立ち寄るのはおかしな話ではない。
「ああ、ここまでは不審な点はない。問題はここからだ」
エルテウスはさらにペンを握り、二本の線を引く。
片方の線は王都ギルティアへ。もう片方は王都南のギルティン侯爵領へと続いている。
「ニャラルト公爵の屋敷から王都へ続いている線は、オーリンが通った道だ。ホーロウ侯爵領へ続いている線は、死霊使いの鴉の頭部が運ばれたルートだ」
そしてホーロウ侯爵領で線は途切れている。
「そう、死霊使いの鴉の頭部は王都まで運ばれていない。そして死霊使いの鴉の頭部をホーロウ侯爵へ届けたのはニャラルト公爵の手の者だ。しかも、この輸送は極秘裏に行われている。民衆は死霊使いの鴉の頭部はオーリンによって王都に運ばれたと思っているだろうな」
「それは俺達も同じだ。エルテウス、これはつまりどういう事だ」
「余程表沙汰にしたくない何かがあるからに決まっているだろう。それが何かまではまだ分からないが」
「ニャラルト公爵……」
それまでエルテウスの話に黙って耳を傾けていたプラリスが口を挟む。
「私、一度だけお会いした事があります」
もう俺達には用はないという事だろう。
「飯は美味かったが、あいつらの態度が気に入らねえ」
「オーリンの野郎、街で見かけたら卵投げつけてやろうぜ」
冒険者達は互いに愚痴を言い合いながら王宮を後にする。
「皆、少し話がある。少し時間を貰えないか?」
各々が仲間達の泊っている宿へ帰ろうとするのをエルテウスが引き止めた。
「お、あいつらをギャフンと言わせる算段だな。いいぜ、俺は乗った」
「俺もだ!」
「ボクも!」
王宮や貴族の連中のやり方に憤慨していた面々は、エルテウスの誘いに乗る。
当然俺とマリーニャもだ。
「ここでは人の目がある。場所を移動しよう」
俺達はエルテウスに連れられて【ブレイザー】のメンバーが泊っている宿に移動する。
プラリスは帰りたそうにしてたけど、女の子をひとりで夜道を歩かせる訳にはいかないという名目で半ば強引に連れて行く事にした。
部屋に入ると、【ブレイザー】のメンバーが俺達を待っていた。
さすがに次期勇者候補ともなると、泊っている部屋も豪華だ。
各パーティのリーダーと同伴者、総勢約20名が入ってもまだスペースに余裕がある。
「それでエルテウス殿、お主は何を企んでいるのであるか?」
【超僧戦隊】のリーダー、ヨゼフが質問を投げかける。
「ああ、お前達トロイの木馬って知ってるか?」
トロイの木馬は古くから読まれてきた戦記小説に登場する巨大なオブジェだ。
敵軍が残した巨大な木馬を戦利品として市内に持ち帰った結果、木馬の中に隠れていた兵士をまんまと市内に侵入させてしまったというシーンは有名だ。
あまりにも真に迫る描写は、この物語が創作ではなく現実の出来事を描いたものであると主張する歴史研究者も現れた程だ。
「勿論知っているが、それが何か?」
「OK、面白いものを見せてやる。≪フィー≫!」
エルテウスが聞きなれない魔法を詠唱すると、目に前には羽の生えた数人の小人が姿を現した。
それらはまるで人形の様に可愛らしい外見をしている。
「なんだそいつらは?召喚魔法じゃあなさそうだが」
「これは妖精と言ってな、万物に宿っている精霊を魔法で具現化したものだ。俺の命令通り忠実に働いてくれる」
見た事もない魔法を目の当たりにして周囲の者達がざわつく。
「私もそんな魔法は聞いた事もありません」
【魔導遊撃軍】のリーダーであるサンサーラですら知らないという。
「そりゃそうだろう。俺のオリジナル魔法だ」
優れた魔法の才能がある者は自力で新たな魔法を編み出す事があるという。
次期勇者候補といわれるだけあって、エルテウスはまさしく天才だった。
俺も思わずその天性の才能に嫉妬する。
エルテウスは俺達を落ち着かせて説明を続ける。
「こいつらを死霊使いの鴉の頭部に潜り込ませていたんだ。さっきの宴の席で全員回収してきた。色々と面白い事が分かったぞ」
エルテウスは大胆にも王国の内情を探る為にスパイを送り込んでいた。
もしこれが王国の知るところとなったら反逆罪に問われる事は必至だ。
エルテウスは地図を開き、ペンで線とバツ印を描く。
「まず、これがオーリンが死霊使いの鴉の頭部を運んだルートだ」
オーリンは不帰の山を発った後、一直線に王宮へ向かわず、王都の北東にあるニャラルト公爵の屋敷に寄っている。
しかし、不帰の山から王都ギルティアまでは距離がある。
途中で休息をとる為にニャラルト公爵の屋敷に立ち寄るのはおかしな話ではない。
「ああ、ここまでは不審な点はない。問題はここからだ」
エルテウスはさらにペンを握り、二本の線を引く。
片方の線は王都ギルティアへ。もう片方は王都南のギルティン侯爵領へと続いている。
「ニャラルト公爵の屋敷から王都へ続いている線は、オーリンが通った道だ。ホーロウ侯爵領へ続いている線は、死霊使いの鴉の頭部が運ばれたルートだ」
そしてホーロウ侯爵領で線は途切れている。
「そう、死霊使いの鴉の頭部は王都まで運ばれていない。そして死霊使いの鴉の頭部をホーロウ侯爵へ届けたのはニャラルト公爵の手の者だ。しかも、この輸送は極秘裏に行われている。民衆は死霊使いの鴉の頭部はオーリンによって王都に運ばれたと思っているだろうな」
「それは俺達も同じだ。エルテウス、これはつまりどういう事だ」
「余程表沙汰にしたくない何かがあるからに決まっているだろう。それが何かまではまだ分からないが」
「ニャラルト公爵……」
それまでエルテウスの話に黙って耳を傾けていたプラリスが口を挟む。
「私、一度だけお会いした事があります」
0
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる