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第49話 とろけるプリン
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街道沿いの沼の水面が不自然に波打ったかと思うと、突然盛り上がり津波の様に俺達に覆い被さってきた。
俺達が沼だと思い込んでいたもの。それは意思を持った液体、巨大なスライムだったのだ。
これは【溶かすもの】と呼ばれている種類で、全身が消化液でできている珍しいスライムだ。
ルッテが咄嗟にドーム状に魔法障壁を張り、俺達はその中に避難する。
しかしルッテが張った魔法障壁は消化液によって徐々に溶かされていく。
「あまり長くは持ちませんわ。早く次の手を考えないと」
「それでは私がやります」
マリーニャが魔法の詠唱を始めると同時に、ルッテは魔法障壁を解く。
「吹き飛びなさい、≪ブラスト≫!」
マリーニャの漆黒の剣先から爆風が巻き起こり、シュメルツェン達は散り散りに飛び散る。
「やったか!?」
周囲には消し済みになったシュメルツェンだったものの残骸が散らばっている。
しかし次は更に後方の水面が波打ち、俺達に向かってくる。
俺とルッテは咄嗟に氷結の杖を振りまわし、それを凍らせて防ぐ。
「ひょっとして、この沼全部がシュメルツェン?」
「そうみたいね」
俺達は不覚にも魔物の真っただ中に飛び込んでしまっていたのだ。
スライムに斬撃は無効だ。プリンとシズハナはこの時点で戦力として計算できない。
「仕方がないですね。ここは私がシュメルツェンを駆除します」
マリーニャは爆砕魔法を連発して覆い被さってくるシュメルツェン達を吹き飛ばし続ける。
しかし、少ししてマリーニャの動きが止まった。
その目は前方の巨大な影に向けられている。
「何あれ……?」
前方に突如現れたのは10メートルはあろうかという巨大なコボルトだ。
俺達を踏みつぶそうと言わんばかりにこちらを見下ろしながら近づいてくる。
行商人達からこの湿地帯に巨大な魔物がいるとは聞いていたが、限度があるだろう。
一般的にコボルトの身長は人間とさほど変わらない。
明らかに俺達が知っているコボルトとは別種の生き物だ。
しかし敵が強ければ強い程俺が活躍するチャンスと言える。
俺はコボルトのパラメータを頂戴するべく、≪リプレイス≫の魔法の詠唱を始める。
「チェインちょっと待って。あれあまり強そうじゃない」
「え?」
俺はシズハナに止められて魔法の詠唱を中断した。
「……チェインよりは強いけど」
「それは余計だ」
「何だ、でかいだけの見かけ倒しって事か。じゃああたしが行くよ!」
プリンが三尖両刃刀を握りしめてコボルトに突進し、薙ぎ払う。
その一閃は軽々とコボルトの足を切断した。
片足を失ったコボルトはそのまま転倒する───と誰もが思っていた。
しかし次の瞬間、コボルトの身体は液状化し、プリンの頭上から降り注ぐ。
「うわああああああああ!?」
プリンは逃げる間もなく飲み込まれてしまった。
「あれは……シュメルツェンがコボルトに擬態していたって事か!?」
スライムは液体ゆえに個の単位が曖昧な魔物だ。
一か所に集まれば一匹の巨大なスライムとなる。
そして他の魔物の姿に変化する事も容易い。
「早く助けないと!」
「プリン、ちょっと痛いけど耐えてね! ≪ブラスト≫!」
マリーニャはプリンを飲み込んだシュメルツェンに剣を突き刺し、その内部から爆砕魔法でプリンごと吹き飛ばす。
「ぐっはぁ」
爆発の威力でバラバラに吹き飛ばされ、周囲に雨の様に降り注ぐシュメルツェンに混じって、満身創痍のプリンが落下する。
直ぐにルッテが駆けつけ、仰向けで横たわっているプリンに治癒魔法を施す。
「プリン、生きてる?」
「こほっ、こほっ。マリーニャ、助けてくれたのは感謝するが、爆砕魔法のダメージの方がでかいんだけど」
「冗談を言える余裕があるなら大丈夫そうね」
「冗談なんか言ってねえよ」
プリンは全身に軽い火傷の様な怪我を負っていたが、それがシュメルツェンの消化液にやられたものなのか爆砕魔法で受けたダメージなのかは見た目では分からないな。
残りのシュメルツェンはマリーニャの爆砕魔法に恐れをなしたのか、水が引くように後退を始める。
しかし魔法珠から勝利のファンファーレが流れない事から、一時的に撤退しただけと思われる。
恐らく、仲間を引き連れて来るはずだ。
それまでにこちらも態勢を整えないといけないな。
何はともあれプリンが無事そうで良かった。
「うわっ なんだこれ!?」
と思ったらプリンが叫び声を上げる。
「どうしたプリン?」
皆の視線がスライムまみれになったプリンに集まる。
「チェインは見るな!」
「痛っ」
俺はプリンに目潰しをされ、視界が真っ暗になる。
「何するんだプリン!?」
「いや悪い、チェインは少し後ろを向いててくれないか」
どこを向いていようが目潰しをされてしばらく何も見えないんだから関係ないと思うが、ここで口答えをしても意味がなさそうなので仕方なく言うとおりにする。
「で、俺の視界を奪ってどうするつもりだ?」
「いや、それがね……シュメルツェンの消化液でいろいろ溶けちゃってね……」
……ああ、服とか下着とかね。
さすがに深淵の蠕虫の外皮で作られた鎧の胸当て部分や、死霊使いの鴉の鈎爪が使われていた三尖両刃刀の剣先は消化されなかったが、それ以外は全滅したという事らしい。
「またおやっさんのところで仕立て直してこないといけないな」
それにしても今回の討伐対象の魔物が全てシュメルツェンの擬態だったとしたら、クエストの成否はどうなるんだろう?
俺達が沼だと思い込んでいたもの。それは意思を持った液体、巨大なスライムだったのだ。
これは【溶かすもの】と呼ばれている種類で、全身が消化液でできている珍しいスライムだ。
ルッテが咄嗟にドーム状に魔法障壁を張り、俺達はその中に避難する。
しかしルッテが張った魔法障壁は消化液によって徐々に溶かされていく。
「あまり長くは持ちませんわ。早く次の手を考えないと」
「それでは私がやります」
マリーニャが魔法の詠唱を始めると同時に、ルッテは魔法障壁を解く。
「吹き飛びなさい、≪ブラスト≫!」
マリーニャの漆黒の剣先から爆風が巻き起こり、シュメルツェン達は散り散りに飛び散る。
「やったか!?」
周囲には消し済みになったシュメルツェンだったものの残骸が散らばっている。
しかし次は更に後方の水面が波打ち、俺達に向かってくる。
俺とルッテは咄嗟に氷結の杖を振りまわし、それを凍らせて防ぐ。
「ひょっとして、この沼全部がシュメルツェン?」
「そうみたいね」
俺達は不覚にも魔物の真っただ中に飛び込んでしまっていたのだ。
スライムに斬撃は無効だ。プリンとシズハナはこの時点で戦力として計算できない。
「仕方がないですね。ここは私がシュメルツェンを駆除します」
マリーニャは爆砕魔法を連発して覆い被さってくるシュメルツェン達を吹き飛ばし続ける。
しかし、少ししてマリーニャの動きが止まった。
その目は前方の巨大な影に向けられている。
「何あれ……?」
前方に突如現れたのは10メートルはあろうかという巨大なコボルトだ。
俺達を踏みつぶそうと言わんばかりにこちらを見下ろしながら近づいてくる。
行商人達からこの湿地帯に巨大な魔物がいるとは聞いていたが、限度があるだろう。
一般的にコボルトの身長は人間とさほど変わらない。
明らかに俺達が知っているコボルトとは別種の生き物だ。
しかし敵が強ければ強い程俺が活躍するチャンスと言える。
俺はコボルトのパラメータを頂戴するべく、≪リプレイス≫の魔法の詠唱を始める。
「チェインちょっと待って。あれあまり強そうじゃない」
「え?」
俺はシズハナに止められて魔法の詠唱を中断した。
「……チェインよりは強いけど」
「それは余計だ」
「何だ、でかいだけの見かけ倒しって事か。じゃああたしが行くよ!」
プリンが三尖両刃刀を握りしめてコボルトに突進し、薙ぎ払う。
その一閃は軽々とコボルトの足を切断した。
片足を失ったコボルトはそのまま転倒する───と誰もが思っていた。
しかし次の瞬間、コボルトの身体は液状化し、プリンの頭上から降り注ぐ。
「うわああああああああ!?」
プリンは逃げる間もなく飲み込まれてしまった。
「あれは……シュメルツェンがコボルトに擬態していたって事か!?」
スライムは液体ゆえに個の単位が曖昧な魔物だ。
一か所に集まれば一匹の巨大なスライムとなる。
そして他の魔物の姿に変化する事も容易い。
「早く助けないと!」
「プリン、ちょっと痛いけど耐えてね! ≪ブラスト≫!」
マリーニャはプリンを飲み込んだシュメルツェンに剣を突き刺し、その内部から爆砕魔法でプリンごと吹き飛ばす。
「ぐっはぁ」
爆発の威力でバラバラに吹き飛ばされ、周囲に雨の様に降り注ぐシュメルツェンに混じって、満身創痍のプリンが落下する。
直ぐにルッテが駆けつけ、仰向けで横たわっているプリンに治癒魔法を施す。
「プリン、生きてる?」
「こほっ、こほっ。マリーニャ、助けてくれたのは感謝するが、爆砕魔法のダメージの方がでかいんだけど」
「冗談を言える余裕があるなら大丈夫そうね」
「冗談なんか言ってねえよ」
プリンは全身に軽い火傷の様な怪我を負っていたが、それがシュメルツェンの消化液にやられたものなのか爆砕魔法で受けたダメージなのかは見た目では分からないな。
残りのシュメルツェンはマリーニャの爆砕魔法に恐れをなしたのか、水が引くように後退を始める。
しかし魔法珠から勝利のファンファーレが流れない事から、一時的に撤退しただけと思われる。
恐らく、仲間を引き連れて来るはずだ。
それまでにこちらも態勢を整えないといけないな。
何はともあれプリンが無事そうで良かった。
「うわっ なんだこれ!?」
と思ったらプリンが叫び声を上げる。
「どうしたプリン?」
皆の視線がスライムまみれになったプリンに集まる。
「チェインは見るな!」
「痛っ」
俺はプリンに目潰しをされ、視界が真っ暗になる。
「何するんだプリン!?」
「いや悪い、チェインは少し後ろを向いててくれないか」
どこを向いていようが目潰しをされてしばらく何も見えないんだから関係ないと思うが、ここで口答えをしても意味がなさそうなので仕方なく言うとおりにする。
「で、俺の視界を奪ってどうするつもりだ?」
「いや、それがね……シュメルツェンの消化液でいろいろ溶けちゃってね……」
……ああ、服とか下着とかね。
さすがに深淵の蠕虫の外皮で作られた鎧の胸当て部分や、死霊使いの鴉の鈎爪が使われていた三尖両刃刀の剣先は消化されなかったが、それ以外は全滅したという事らしい。
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