パーティを追放された鈺魔導士はパラメータチェンジ魔法を覚えたら誰にも負けなくなった

かにくくり

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第67話 ギルドマスター

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「え、チェインを振ったんですか?」

 プリンが身に着けていた婚約指輪が俺の手に戻っていた事で、当然他の三人からの質問攻めに会う。
 馬車の中では逃げ場がないので根掘り葉掘り探られる事になった。

「チェインは本気じゃなったからね。本気であたしが欲しいって言うんなら考えてあげてもいいけど」

 更に昨夜の騒動もあり、最初は痴話喧嘩の末に振られたものだと思われていたが、根気強く説明をする事で何とか状況を理解してもらえた。

 昼時にはクリムドに到着したので、まずはダンガルさんの工房へ足を運ぶ。

「おやっさん、ちーっす! 依頼してた物はできてる?」

 いつも通りのノリで工房の中に入ってきたプリンを見て、ダンガルさんは面を食らう。

「プリンお前……記憶が戻ったのか?」

「心配かけてごめん。見ての通りすっかり元通りさ……あれ、おやっさん泣いてんの?」

「バカ言うな、これは汗が目に入っただけだ。工房ってのは暑いんだよ。そんな事より、依頼の品はできてるぞ。ほら持ってけ」

 ダンガルさんは顔をくしゃくしゃにしながら毛皮のマントとプリンの鎧を手渡す。
 口ではああ言っているが、余程プリンの事が心配だったのだろう。

「お前らもう無茶をするんじゃないぞ」

「はいはい、装備の修理費も馬鹿にならないからね。あ、でも装備が壊れた方がおやっさんは儲かるんじゃない?」

「バカか! 苦労して作ったもんを毎回壊される俺の気持ちを考えろってんだ」

「あはは、悪かったよ。おやっさんの泣き顔は見れたもんじゃないからね」

「うるさい、さっさと行け!」

 プリンは悪びれもせずに工房を後にする。

「まったくプリンったら……あ、おやっさん有難うございました」

「おうよマリーニャちゃん。それにルッテ、シズハナ、チェイン……プリンの事をくれぐれも頼むよ」

 ダンガルさんは先程とは打って変わって真剣な表情で話す。

「昔俺には娘がいたんだ。あいつみたいに元気にそこらじゅうを走り回っている様な女の子だった。どうもあいつと重ねてしまってな。悪いとは思っているんだが」

「おやっさん……」

「おっと、湿っぽくなっちまったな。すまんすまん。プリンには言わないでくれよ」

「はい……またすぐにこの工房に顔を出しますよ。次は装備の修理の為じゃなく、新しく手に入れた素材の活用法についての相談にね」

「ああ、楽しみしてるぜ」

 俺達は工房を出た後、冒険者ギルドクリムド支部へ向かった。

「折角魔法鈺を貰ったんだから、早速利用してみましょう」

 というマリーニャの鶴の一声で、ギルドの転移装置を使わせてもらう事にした。
 完全に興味本位以外の何物でもないが、ゲレナンデさんは快く承諾してくれる。

 使い方は簡単だ。
 転移装置の中に入り、中にある読み取りセンサーに魔法鈺をかざすと中央のパネルに転移先のリストが表示される。
 転移先の文字にタッチをすると、あっという間に転移完了だ。

 俺達が転移した先は王都にある冒険者ギルドの本部だ。

 さすがに本部となるとクリムド支部とは規模が段違いだ。

「お、【フルーレティ】の皆じゃないか。ここにいるという事は、さっそく転移装置を使ったな」

 エルテウス達【ブレイザー】が俺達を見つけて声をかけてきた。

「私が言うのもなんだが、レベル80台の、しかも地方ギルドの冒険者が魔法鈺を持たされるなど異例の事だぞ」

「ええ、嘆きの渓谷では散々な目に遭いましたからね。このくらいして貰わないと割が合いません」

「言うねえマリーニャ君。でもまあ国崩こくほう級モンスターを二体も同時に相手をさせられた事を考えると、割が合わないかもしれないな。それで、今日は王都まで何をしに?」

「え? ああ、それはですね……」

 ただ転移装置を使ってみたいという好奇心で王都までやってきただけなのだが、それでは恰好がつかない。
 適当な理由をでっちあげてしまおう。

 マリーニャに代わって俺が答える。

「本部にはギルドマスターがいると聞いたので、一度お会いしてみたいと思ってね」

「ああ、彼女なら先程戻ってきたばかりだ。今なら会えるだろう」

 彼女……何となく年配のおじさんを想像していたけど、ギルドマスターは女性だったのか。

「中々気さくな人物だぞ。一度話をしてみるといい」

「へえ、それは楽しみだね」

 俺達はエルテウス達と別れると、受付へ向かった。

「ギルドマスターと話をしたいんですけど」

 マリーニャは受付に魔法鈺を提示する。

「はい、お話は伺っています。【フルーレティ】の皆さんですね」

 俺達はギルドのスタッフに案内をされて奥の部屋に通された。

 部屋の中では、玉座と見間違うような豪華なイスに座っているひとりの女性の姿があった。
 ギルドマスターだ。

「やあ、よく来たね」

 帽子を深くかぶっており、その顔はよく見えない。
 しかしこの声はどこかで聞き覚えがある気がする。

「はじめまして、私は【フルーレティ】のリーダー、マリーニャと申します。そしてこちらが仲間の───」

 しかしギルドマスターは笑いながらそれを遮る。

「あはは、初めましてじゃないよ。私が分からないかい?」

 ギルドマスターが帽子を取ると、その素顔が明らかになった。

「え……あなたがギルドマスター!?」

 そこに座っていたのは、先日嘆きの渓谷で別れたばかりのホリックさんだった。

「うん、世間に正体が知られると色々と面倒でね。隠してたのは悪かったよ」
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