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第71話 街を喰らう蛇
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転移装置で冒険者ギルド本部へ飛ぶと、出口でホリックさんが俺達を待っていた。
「【フルーレティ】の皆さんよく来てくれました。他の皆さんは王都の東門でヨルムンガンドを食い止めています」
「よかった、間に合ったみたいですね。私達もすぐに向かいます」
「はい、ご武運を!」
俺達はギルドを出ると、急ぎ東門へ向かう。
「な、なんだよあれ?」
門まではまだかなりの距離があるが、巨大な蛇が胴体をうねらせながら暴れまわっている姿が遠目からでもはっきりと見える。
まるで山脈が動いている様だ。
「とにかく≪リプレイス≫が届く位置まで近付こう。いや、せめて俺だけでも東門の前まで行けば……」
「それなら良い手があります。魔法を数発放つ程度の魔力は回復していますので」
マリーニャが剣を掲げ、魔法の詠唱を始める。
「え? マリーニャ何を……?」
「≪ウィンド≫!」
マリーニャは風魔法で突風を起こし、俺の身体を東門の方角へ吹き飛ばす。
「うわああああああああああぁぁぁぁ……」
「おー、飛んでる飛んでる」
プリンは手庇をして空を飛んでいく俺を呑気に眺めている。
「それで、チェインの着地はどうするつもりですの?」
「チェインの身体能力だと墜落死する可能性が高いと思う」
「大丈夫よ。シャミィ、チェインをそっちに飛ばしたから受け止めるようにエルテウスさんに伝えてくれる?」
「はいはーい!」
マリーニャの髪から出てきたシャミィがエルテウスの下にいる妖精にテレパシーを送る。
返事はすぐに戻ってきた。
「了解した、あとは私達に任せてくれ───だってさ」
俺の身体は目にも止まらぬ速さで東門まで飛翔する。
マリーニャ達のやり取りは当然聞こえていないので、脳みそをフル回転させてどうやって着地するかを考える。
地面に激突する直前に、ヨルムンガンドと戦闘中のフィジカルが強そうな冒険者を適当に見繕って≪リプレイス≫でパラメータを交換させて貰えば骨折程度で済むかもしれない。
しかしここで無駄に魔力を消費すると、マジックポーションで魔力を回復するまでの30秒程の間は完全に無防備になる。
これは考えものだぞ。
などと悩んでいたところで、急に俺の周りの空気が柔らかな固体に変化していく。
「な、なんだよこれ?」
俺の身体は透明なクッションに包み込まれるようにして減速し、ゆっくりと着地した。
「今のは……魔法?」
「やあ、待っていたよチェイン君」
エルテウスと【ブレイザー】のメンバーがヨルムンガンドと戦いながら俺に声をかける。
全員笑顔を見せてはいるが、明らかに満身創痍だ。
城壁の上では王国の騎士団や他の冒険者達が弓矢や魔法で最前線で戦っている【ブレイザー】の援護射撃をしている。
その中にはハーゲン伯爵率いる神官部隊もおり、魔法障壁を展開してヨルムンガンドの攻撃を食い止めていた。
それにしても俺が来るまでの数時間、ヨルムンガンドの進撃をよくも食い止められたものだ。
「どうじゃなチャイン君。わしの得意とする空気を自在操る魔法、≪オンエアー≫は? 空気のクッションで衝撃を包み込むあの使い方を、皆はエアバッグと読んでおるそうじゃの」
「ラーシンさん……」
【ブレイザー】の魔法使いラーシンは数々の魔法を使いこなす魔法のスペシャリストだ。
そのレベルは現在90で、魔法使いを目指す者にとっては憧れであり目標でもある。
当然魔法剣士であるマリーニャもラーシンの得意魔法の事は熟知しており、彼の魔法ならば俺を受け止められるという確信があったのだろう。
俺はラーシンさんにお礼を言うと正面にいるヨルムンガンドに≪リプレイス≫の照準を合わせる。
「よし、やってくれチェイン君」
エルテウスは俺に早く≪リプレイス≫を使うように催促をするが、しかしここで俺はふと違う事を考えていた。
(国崩級モンスターの記憶ってどんな感じなんだろう)
思い立ったら吉日。
俺は≪リプレイス≫に『記憶』の交換を追加してヨルムンガンドに放つ。
「≪リプレイス≫!」
その瞬間、俺とヨルムンガンドのパラメータと記憶が入れ替わり、俺の頭の中に今まで体験した事がない多くの情報が入ってくる。
「リッキー……」
その時俺はそう呟いたらしい。
「今だ! 落ちろ裁きの雷、≪ブリッツ≫!」
「紅蓮の炎よ、彼の者を焼き尽くすのじゃ、≪ハイスヴァルム≫!」
「うおおおおお、必殺ッ無双流星斬ッ!」
「真空の刃よ、眼前の敵を切り刻め、≪シュニットゥ≫!」
次の瞬間、【ブレイザー】の一斉攻撃を受けたヨルムンガンドの身体は粉々に千切れ飛んだ。
テレッテレレー♪
ピロリロリロリロリロリロリロリロリロリ……ロリン♪
魔法珠から勝利を告げるファンファーレと、経験ポイント取得の効果音が鳴り響く。
取得した経験ポイントは500。
今回は王国軍と国中の冒険者達が総力を結集していたので、相手が国崩級モンスターといえどもひとり頭の取得経験ポイントは少なめだ。
ヨルムンガンドが死亡した事で≪リプレイス≫の効果が切れ、俺の記憶は元に戻った。
「チェイン君、どうしたんだい? ヨルムンガンドは倒したぞ」
勝利を喜びもせずにボーっとしている俺にエルテウスが声をかける。
「エルテウスさん、≪リプレイス≫を使った後、俺何か言っていませんでした?」
「ああ、確かリッキーとか言っていた気がするな。あれは何だったんだ?」
「リッキー……」
俺はエルテウスが教えてくれた言葉を復唱した。
「実はあの時、ヨルムンガンドのパラメータだけでなく記憶も一緒に交換してみたんです。効果が切れた後は全部忘れちゃうのが難点なんですけどね」
「成程、つまりヨルムンガンドの記憶の中にリッキーという名前があったという事だね」
「そのはずです。……そして俺はこの名前に心当たりがあります」
「奇遇だな。私もその名前の人物をひとりだけ知っている」
俺は廃墟ミリタへ依頼品の回収にいった時の事を思い出した。
リッキー辺境伯。
古今東西の珍しい鈺の収集家として知られる人物である。
「【フルーレティ】の皆さんよく来てくれました。他の皆さんは王都の東門でヨルムンガンドを食い止めています」
「よかった、間に合ったみたいですね。私達もすぐに向かいます」
「はい、ご武運を!」
俺達はギルドを出ると、急ぎ東門へ向かう。
「な、なんだよあれ?」
門まではまだかなりの距離があるが、巨大な蛇が胴体をうねらせながら暴れまわっている姿が遠目からでもはっきりと見える。
まるで山脈が動いている様だ。
「とにかく≪リプレイス≫が届く位置まで近付こう。いや、せめて俺だけでも東門の前まで行けば……」
「それなら良い手があります。魔法を数発放つ程度の魔力は回復していますので」
マリーニャが剣を掲げ、魔法の詠唱を始める。
「え? マリーニャ何を……?」
「≪ウィンド≫!」
マリーニャは風魔法で突風を起こし、俺の身体を東門の方角へ吹き飛ばす。
「うわああああああああああぁぁぁぁ……」
「おー、飛んでる飛んでる」
プリンは手庇をして空を飛んでいく俺を呑気に眺めている。
「それで、チェインの着地はどうするつもりですの?」
「チェインの身体能力だと墜落死する可能性が高いと思う」
「大丈夫よ。シャミィ、チェインをそっちに飛ばしたから受け止めるようにエルテウスさんに伝えてくれる?」
「はいはーい!」
マリーニャの髪から出てきたシャミィがエルテウスの下にいる妖精にテレパシーを送る。
返事はすぐに戻ってきた。
「了解した、あとは私達に任せてくれ───だってさ」
俺の身体は目にも止まらぬ速さで東門まで飛翔する。
マリーニャ達のやり取りは当然聞こえていないので、脳みそをフル回転させてどうやって着地するかを考える。
地面に激突する直前に、ヨルムンガンドと戦闘中のフィジカルが強そうな冒険者を適当に見繕って≪リプレイス≫でパラメータを交換させて貰えば骨折程度で済むかもしれない。
しかしここで無駄に魔力を消費すると、マジックポーションで魔力を回復するまでの30秒程の間は完全に無防備になる。
これは考えものだぞ。
などと悩んでいたところで、急に俺の周りの空気が柔らかな固体に変化していく。
「な、なんだよこれ?」
俺の身体は透明なクッションに包み込まれるようにして減速し、ゆっくりと着地した。
「今のは……魔法?」
「やあ、待っていたよチェイン君」
エルテウスと【ブレイザー】のメンバーがヨルムンガンドと戦いながら俺に声をかける。
全員笑顔を見せてはいるが、明らかに満身創痍だ。
城壁の上では王国の騎士団や他の冒険者達が弓矢や魔法で最前線で戦っている【ブレイザー】の援護射撃をしている。
その中にはハーゲン伯爵率いる神官部隊もおり、魔法障壁を展開してヨルムンガンドの攻撃を食い止めていた。
それにしても俺が来るまでの数時間、ヨルムンガンドの進撃をよくも食い止められたものだ。
「どうじゃなチャイン君。わしの得意とする空気を自在操る魔法、≪オンエアー≫は? 空気のクッションで衝撃を包み込むあの使い方を、皆はエアバッグと読んでおるそうじゃの」
「ラーシンさん……」
【ブレイザー】の魔法使いラーシンは数々の魔法を使いこなす魔法のスペシャリストだ。
そのレベルは現在90で、魔法使いを目指す者にとっては憧れであり目標でもある。
当然魔法剣士であるマリーニャもラーシンの得意魔法の事は熟知しており、彼の魔法ならば俺を受け止められるという確信があったのだろう。
俺はラーシンさんにお礼を言うと正面にいるヨルムンガンドに≪リプレイス≫の照準を合わせる。
「よし、やってくれチェイン君」
エルテウスは俺に早く≪リプレイス≫を使うように催促をするが、しかしここで俺はふと違う事を考えていた。
(国崩級モンスターの記憶ってどんな感じなんだろう)
思い立ったら吉日。
俺は≪リプレイス≫に『記憶』の交換を追加してヨルムンガンドに放つ。
「≪リプレイス≫!」
その瞬間、俺とヨルムンガンドのパラメータと記憶が入れ替わり、俺の頭の中に今まで体験した事がない多くの情報が入ってくる。
「リッキー……」
その時俺はそう呟いたらしい。
「今だ! 落ちろ裁きの雷、≪ブリッツ≫!」
「紅蓮の炎よ、彼の者を焼き尽くすのじゃ、≪ハイスヴァルム≫!」
「うおおおおお、必殺ッ無双流星斬ッ!」
「真空の刃よ、眼前の敵を切り刻め、≪シュニットゥ≫!」
次の瞬間、【ブレイザー】の一斉攻撃を受けたヨルムンガンドの身体は粉々に千切れ飛んだ。
テレッテレレー♪
ピロリロリロリロリロリロリロリロリロリ……ロリン♪
魔法珠から勝利を告げるファンファーレと、経験ポイント取得の効果音が鳴り響く。
取得した経験ポイントは500。
今回は王国軍と国中の冒険者達が総力を結集していたので、相手が国崩級モンスターといえどもひとり頭の取得経験ポイントは少なめだ。
ヨルムンガンドが死亡した事で≪リプレイス≫の効果が切れ、俺の記憶は元に戻った。
「チェイン君、どうしたんだい? ヨルムンガンドは倒したぞ」
勝利を喜びもせずにボーっとしている俺にエルテウスが声をかける。
「エルテウスさん、≪リプレイス≫を使った後、俺何か言っていませんでした?」
「ああ、確かリッキーとか言っていた気がするな。あれは何だったんだ?」
「リッキー……」
俺はエルテウスが教えてくれた言葉を復唱した。
「実はあの時、ヨルムンガンドのパラメータだけでなく記憶も一緒に交換してみたんです。効果が切れた後は全部忘れちゃうのが難点なんですけどね」
「成程、つまりヨルムンガンドの記憶の中にリッキーという名前があったという事だね」
「そのはずです。……そして俺はこの名前に心当たりがあります」
「奇遇だな。私もその名前の人物をひとりだけ知っている」
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