74 / 93
第74話 解凍
しおりを挟む
「あら、チェインが朝帰りしてきましたわ」
「祝勝会はどうでした?」
「今から二次会を開こうか」
「お土産は?」
翌朝、王宮が手配した馬車に乗って宿まで帰ってきた俺を【フルーレティ】の四人が冗談を交えながら出迎える。
食堂で朝食を取り一息つくと、王宮内での出来事を伝えた。
正式に子爵位を与えられた事、ハーゲン伯爵の補佐官に任命された事、ハーゲン伯爵がフルーレ村のフルーレティの事を把握している事、ついでにハーゲン伯爵にもリッキー辺境伯についての調査を依頼した事。
……ほとんどハーゲン伯爵が絡んでるな。
「よりによってチェインがお父様の補佐官ですって!? ……でもまあ陛下の決めた事なら仕方がありませんわね……ぐぬぬ……」
「それで、伯爵が言うには俺は今まで通り冒険者を続けてていいんだってさ」
「当たり前ですわ。もし身分にものを言わせてチェインを縛ろうというのでしたら、本当に親子の縁を切って差し上げますわ」
ルッテは眉を吊り上げ、歯ぎしりをして不満を露わにするが、俺に責任がある訳ではないのでそれ以上の言及はしなかった。
今日はこの後フルーレ村へ向かう予定だ。
俺達はまずギルド本部へ足を運ぶ。
「やあ皆さん、昨日は大活躍でしたね。もう出発ですか?」
「ええ、まだまだやる事がたくさんありますからね」
俺達はホリックさんと挨拶を交わし、転移装置でクリムドへ飛んだ。
クリムドからフルーレ村へはレンタルした馬車で半日程の移動になる。
転移装置の便利さを知ってしまうと移動が億劫で仕方がない。
「なあ、フルーレ村にも転移装置を設置して貰うようホリックさんに頼んでみないか? マリーニャも里帰りが楽になるぞ」
フルーレ村への道中、プリンが退屈そうに欠伸をしながら発案する。
「そんな個人的な都合が認められるわけないでしょう」
「じゃあフルーレ村にギルドの支部を作っちゃえばいいんじゃないか」
「あの小さな村のどこにギルドの需要があるんですか。そもそも、私は村にギルドの人間を近付けたくないんですけど」
「それもそうか」
マリーニャとプリンのやり取りを眺めながら、俺はまだ未修得の鈺魔導士の最上位魔法の事を考えていた。
確か転移装置と同等の効果がある魔法があったはずだ。
俺は最上位魔法の一覧をメモしておいたノートを開く。
「ええと確か……あった、これだ」
転移魔法≪ワープ≫。
好きな場所に一瞬で移動できる魔法だ。
転移装置は転移装置間でしか移動できない。
好きな場所に移動できるというこの魔法は完全に転移装置の上位互換だ。
但し転移できるのは自分一人だけらしい。
仲間と一緒に転移するには『スキル・魔法対象拡大』を組み合わせる必要がある為、二つ合わせて経験ポイントが20000も必要になる。
修得できるのは当分先になりそうだ。
◇◇◇◇
昼過ぎになって漸くフルーレ村に到着した。
俺達はそこから更に南へ進み、フルーレティの眠る洞穴へ向かう。
そこでは前回見た時と変わらず氷の中で眠っているフルーレティの姿があった。
「それでは今からフルーレティを目覚めさせますが、もし目を覚ました瞬間に私達に襲い掛かってきたらどうしましょう」
「いざとなったらチェインが≪リプレイス≫で何とかしてくれるから平気だぞ」
「そうですねプリン。それではまず氷を溶かします。≪フォイエル≫!」
マリーニャが意を決して炎魔法を詠唱すると剣先から迸った炎の渦が氷を包み込む。
しかしただの氷ではないのか、一向に溶ける気配はない。
このまま続けても先にマリーニャの魔力が枯渇してしまうだろう。
マリーニャは諦めて魔法を解除し、剣を鞘に納める。
「困りましたね。別の方法を考えましょう」
「氷を破壊したらどうだ?」
プリンが三尖両刃刀弐式を握りしめて前に出る。
「こいつでフルーレティの周りの氷を削り取るぜ」
「プリン、間違って中にいるフルーレティまで削らないで下さいね」
「分かってるよ」
プリンは三尖両刃刀弐式を振り下ろす。
ザクッ。
三尖両刃刀弐式の刃先が氷に少しめり込んだ。
「思ったより硬いな。こりゃちょっと時間が掛かりそうだ……でもこれならいける!」
プリンは何度も氷を叩き続け、削れた氷の欠片が辺り一面にダイヤモンドダストの様にきらきらと舞い落ちる。
「はぁ、はぁ、手が痺れてきた」
一時間程叩き続けたところでプリンが音を上げた。
フルーレティを覆う氷はまだ一割も削れていない。
「あれだけやってまだこれだけしか削れてないのか。これじゃあ何日も掛かってしまうな」
「仕方ありませんね、別の方法を考えましょう」
一同は頭を捻って思慮を巡らす。
「うーん、マリーニャが≪ブラスト≫で氷を爆砕するとか」
「中にいるフルーレティにも被害が及ぶので却下です」
「マリーニャの≪フォイエル≫とプリンの打撃を同時に氷にぶつけてみるのはどうでしょう?」
「待て、それはあたしが炎に巻き込まれるのがオチだ」
「それじゃあ……」
俺は一つの作戦を思いついた。
「俺の≪リプレイス≫を使えばうまくいくかもしれない」
「祝勝会はどうでした?」
「今から二次会を開こうか」
「お土産は?」
翌朝、王宮が手配した馬車に乗って宿まで帰ってきた俺を【フルーレティ】の四人が冗談を交えながら出迎える。
食堂で朝食を取り一息つくと、王宮内での出来事を伝えた。
正式に子爵位を与えられた事、ハーゲン伯爵の補佐官に任命された事、ハーゲン伯爵がフルーレ村のフルーレティの事を把握している事、ついでにハーゲン伯爵にもリッキー辺境伯についての調査を依頼した事。
……ほとんどハーゲン伯爵が絡んでるな。
「よりによってチェインがお父様の補佐官ですって!? ……でもまあ陛下の決めた事なら仕方がありませんわね……ぐぬぬ……」
「それで、伯爵が言うには俺は今まで通り冒険者を続けてていいんだってさ」
「当たり前ですわ。もし身分にものを言わせてチェインを縛ろうというのでしたら、本当に親子の縁を切って差し上げますわ」
ルッテは眉を吊り上げ、歯ぎしりをして不満を露わにするが、俺に責任がある訳ではないのでそれ以上の言及はしなかった。
今日はこの後フルーレ村へ向かう予定だ。
俺達はまずギルド本部へ足を運ぶ。
「やあ皆さん、昨日は大活躍でしたね。もう出発ですか?」
「ええ、まだまだやる事がたくさんありますからね」
俺達はホリックさんと挨拶を交わし、転移装置でクリムドへ飛んだ。
クリムドからフルーレ村へはレンタルした馬車で半日程の移動になる。
転移装置の便利さを知ってしまうと移動が億劫で仕方がない。
「なあ、フルーレ村にも転移装置を設置して貰うようホリックさんに頼んでみないか? マリーニャも里帰りが楽になるぞ」
フルーレ村への道中、プリンが退屈そうに欠伸をしながら発案する。
「そんな個人的な都合が認められるわけないでしょう」
「じゃあフルーレ村にギルドの支部を作っちゃえばいいんじゃないか」
「あの小さな村のどこにギルドの需要があるんですか。そもそも、私は村にギルドの人間を近付けたくないんですけど」
「それもそうか」
マリーニャとプリンのやり取りを眺めながら、俺はまだ未修得の鈺魔導士の最上位魔法の事を考えていた。
確か転移装置と同等の効果がある魔法があったはずだ。
俺は最上位魔法の一覧をメモしておいたノートを開く。
「ええと確か……あった、これだ」
転移魔法≪ワープ≫。
好きな場所に一瞬で移動できる魔法だ。
転移装置は転移装置間でしか移動できない。
好きな場所に移動できるというこの魔法は完全に転移装置の上位互換だ。
但し転移できるのは自分一人だけらしい。
仲間と一緒に転移するには『スキル・魔法対象拡大』を組み合わせる必要がある為、二つ合わせて経験ポイントが20000も必要になる。
修得できるのは当分先になりそうだ。
◇◇◇◇
昼過ぎになって漸くフルーレ村に到着した。
俺達はそこから更に南へ進み、フルーレティの眠る洞穴へ向かう。
そこでは前回見た時と変わらず氷の中で眠っているフルーレティの姿があった。
「それでは今からフルーレティを目覚めさせますが、もし目を覚ました瞬間に私達に襲い掛かってきたらどうしましょう」
「いざとなったらチェインが≪リプレイス≫で何とかしてくれるから平気だぞ」
「そうですねプリン。それではまず氷を溶かします。≪フォイエル≫!」
マリーニャが意を決して炎魔法を詠唱すると剣先から迸った炎の渦が氷を包み込む。
しかしただの氷ではないのか、一向に溶ける気配はない。
このまま続けても先にマリーニャの魔力が枯渇してしまうだろう。
マリーニャは諦めて魔法を解除し、剣を鞘に納める。
「困りましたね。別の方法を考えましょう」
「氷を破壊したらどうだ?」
プリンが三尖両刃刀弐式を握りしめて前に出る。
「こいつでフルーレティの周りの氷を削り取るぜ」
「プリン、間違って中にいるフルーレティまで削らないで下さいね」
「分かってるよ」
プリンは三尖両刃刀弐式を振り下ろす。
ザクッ。
三尖両刃刀弐式の刃先が氷に少しめり込んだ。
「思ったより硬いな。こりゃちょっと時間が掛かりそうだ……でもこれならいける!」
プリンは何度も氷を叩き続け、削れた氷の欠片が辺り一面にダイヤモンドダストの様にきらきらと舞い落ちる。
「はぁ、はぁ、手が痺れてきた」
一時間程叩き続けたところでプリンが音を上げた。
フルーレティを覆う氷はまだ一割も削れていない。
「あれだけやってまだこれだけしか削れてないのか。これじゃあ何日も掛かってしまうな」
「仕方ありませんね、別の方法を考えましょう」
一同は頭を捻って思慮を巡らす。
「うーん、マリーニャが≪ブラスト≫で氷を爆砕するとか」
「中にいるフルーレティにも被害が及ぶので却下です」
「マリーニャの≪フォイエル≫とプリンの打撃を同時に氷にぶつけてみるのはどうでしょう?」
「待て、それはあたしが炎に巻き込まれるのがオチだ」
「それじゃあ……」
俺は一つの作戦を思いついた。
「俺の≪リプレイス≫を使えばうまくいくかもしれない」
0
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる