パーティを追放された鈺魔導士はパラメータチェンジ魔法を覚えたら誰にも負けなくなった

かにくくり

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第84話 シズハナの逆襲

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「灰塵と帰さしめよ、≪滅却業炎≫!」

 魔城ソロモンへ向けて進撃する俺達の前に何度もベルゼビュートの軍勢が立ち塞がったが、フルーレティはその強大な魔力でそれらを一瞬にして薙ぎ払う。

 一部にはその一撃を辛うじて耐えたり、身をかわして反撃を試みる手練れの悪魔もいたが、それらもエリゴールや配下の悪魔達によって殲滅される。

 決してベルゼビュート軍が弱い訳ではない。
 フルーレティが強すぎるのだ。

 現に平悪魔達の強さはフルーレティ軍もベルゼビュート軍も大差ない。
 もしフルーレティが陣頭で戦っていなければ、こちらもかなりの被害が出ていただろう。

 やがてベルゼビュートの軍勢は大した抵抗もできないまま魔城ソロモンまで撤退、籠城戦の構えを見せる。
 魔城ソロモンは瞬く間にフルーレティ軍に包囲された。

 フルーレティの極限魔法で城ごとを破壊するのは容易いが、俺達の目的であるまで破壊してしまう恐れがある。
 やはり城の内部に侵入し、その奥に潜むベルゼビュートを直接倒すしかない。

 狭い城内では大軍は意味をなさない。
 直ちに少数の精鋭部隊が編成される事になった。

「はい! 私達が行きます」

 戦力としては劣っていても、においては俺達冒険者に一日の長がある。
 マリーニャが我先にと志願する。

「その魔皇帝とかいうふざけた奴の顔面に一発お見舞いしてやるぜ」

「プリンは無鉄砲ですからね。私が魔法障壁で援護して差し上げますわ」

「ダンジョン内なら罠がたくさん仕掛けられているはず。私がいないと始まらない」

 プリン、ルッテ、シズハナもマリーニャに続く。

 そうなると当然俺も志願するしかない。
 俺達は5人でひとつの冒険者パーティ【フルーレティ】だ。

「俺の≪リプレイス≫をこの世界の奴らにも見せてやらないといけないな」

 次いでその≪リプレイス≫にボコられた勇者フェリグスが志願する。

「ベルゼビュートの討伐は我らの使命。当然私達も行かせてもらうぞ」

 しかし彼らの実力は本物だ。
 止める理由もないのですんなりと決定した。

 その結果、フルーレティとエリゴール、俺、マリーニャ、プリン、ルッテ、シズハナ、そして勇者フェリグスと四人の魔道士の合計12人が城内に侵入する事になった。

「我らが王フルーレティ様、ご武運を!」

「うむ。それでは参ろうぞ」

「私が先に進みます」

 先行しようとするフルーレティをシズハナが制すると、それを見ていた悪魔達がざわめく。

「人間の女風情がフルーレティ様を差しおいて何と恐れ多い事を」
「身の程をわきまえろ!」
「Booooo!」

 悪魔から湧き上がるブーイングの嵐。
 ダンジョン内では周囲の探知スキルを持っている者───俺達の場合はシズハナ───が先行するのは冒険者にとっては当たり前の事だが、悪魔達にはそれが理解できず、面白くないらしい。

 シズハナは自分に向けられるかつてない数の敵意に狼狽している。
 優れた探知スキルを持っている事が災いし、その負の感情が何倍にも増幅されて感じられているのだ。

 とても見ていられない。
 さすがに俺も頭にきた。
 もう味方だろうが関係ない。
 この悪魔どもに≪リプレイス≫からのぶん殴りコンボでも食らわせてやろうかと本気で考える。

 しかし、そんな悪魔達を今度はフルーレティが制する。

「よい。我が許す。人間達は我らにはない不思議な力を持っている。周囲を探知する能力スキルにおいては我もこの者には及ばん。お前達も覚えておくがいい」

「フルーレティ様がそう仰るのなら……」

 悪魔は強さが全ての完璧な縦社会だ。
 不平不満を並べていた悪魔達はフルーレティの一言で口を閉ざす。

 先程までのざわつきが嘘の様にしんと静まり返る。
 シズハナは気を取り直してフルーレティの前に出る。

「じゃあ行ってくる。でもその前に……ていっ」

「な、何をする!?」

 シズハナが投げた煙幕弾で先程まで文句を垂れていた悪魔の周囲が煙に包まれる。

「えいっ、やあっ、とあっ」

「あがっ」
「ひぎゃっ」
「ぐっはぁ」
「うげっ」
「ぼぎょっ」

 悪魔達の悲鳴が響き渡る。

「何だ? 何が起きてるんだ?」

 煙が晴れると、先程特に騒いでいた五体の悪魔の額に、シズハナの漆黒のクナイが深々と突き刺さっていた。

 悪魔達はそのまま後ろ向きで崩れ落ちる。

 国崩こくほう級モンスター深淵の蠕虫アビイスワームの外皮で作られた武器だ。
 非力なシズハナでも平悪魔程度なら充分にダメージを与える事ができる。

 しかし平悪魔と言ってもレベル100相当はある。
 地面に仰向けに横たわって痙攣しているが、これで死ぬ事はないだろう。

 多分。

「すっきりした。じゃあ行こう」

 普段ポーカーフェイスで何を考えているのかよく分からないが、今回はめちゃくちゃ怒っていた様だ。

「チェイン、シズハナはあまり怒らせない方がいいぞ。暗殺者アサシン程ではないが、忍者は暗殺術にも長けているからな」

 プリンがこっそりと俺に耳打ちをする。
 この忠告は肝に銘じておく事にしよう。

 忍者怖い。

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