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第27話 王位継承
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「そう……ついに陛下が崩御されたのですね……」
王宮にある自分の部屋でサイクリア陛下が死んだ報告を受けた私レイチェルは、使者の手前自然と浮かび上がる笑みを必死で押さえていた。
「分かりました、お下がりなさい」
「ははっ……」
俯き加減で小刻みに震えている私を使者は悲しみのあまり涙をこらえているものだと勘違いしただろう。
そんな訳ないでしょう。
使者が部屋から立ち去ったのを確認して私は大笑いをした。
「あははははっ、これでラングが次の王位に就けば私は王妃になりますわ。あの馬鹿を思い通りに操るなんて赤子の手を捻るよりも簡単。この国の実権を握るのは私よ!」
その時、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえたので私は慌てて笑うのを止めた。
「……こほん、どうぞ」
「レイチェル様失礼いたします。ラング殿下が謁見の間でお呼びです」
「ええ、直ぐに行きますわ」
サイクリア陛下が世継ぎを決めずに亡くなった為にこれから重臣や元老院を交えて次の王を決める会議が行われるはずだ。
この国の聖女という立場にある私も当然その場に出席をする。
しかしラングに王位を継承させる為の工作は全て完了している。
今ラング以外の継承権を持った弟たちはある者は王都を離れ、ある者は投獄されている。
そして元老院がラングを王太子として認める条件として提示された王都の統治の実績についてもエディー公爵家の力を借りる事でしっかりと結果を出している。
私の父であるエクスディア侯爵はもちろん、政敵だったエディー公爵も今やこちらの陣営にいる。
ラングを次の王とする事を反対する者はもう誰もいないだろう。
会議と言っても事実上の出来レースになるはずだけど、最後までどんなハプニングが待っているか分からない。
油断は禁物だ。
「これが最後の大仕事よレイチェル」
私は両手で頬をパチンと叩いて気合を入れ直した。
私の部屋から謁見の間へと続く長い廊下は、今の私にはまるで栄誉を手にした者だけがその上を歩く事が許されるという真っ赤な絨毯にも見えた。
謁見の間に到着するとラングが開口一番私に助けを求めてきた。
「レイチェル、父上が亡くなられてしまった。葬儀の手配はどうすればよい? 私はこういった事は初めてで良く分からないのだ」
「は?」
次期王を決める会議ではなく、そんな事の為にわざわざ呼びつけたのかと私はため息をついた。
「……こほん、その様な事でしたら王宮の司祭に任せておけばよいのです。ラング様は皆の前で挨拶の言葉を述べるだけで結構ですわ。……挨拶の言葉もこちらでご用意いたしますのでラング様はそれを覚えて……いえ、忘れないようにカンペを懐にでも入れておいて下さい」
「そうか、それならば良い。父上を弔った後はようやく私がこの国の王になるのだな。今まで苦労をしてきたかいがあったというものだ」
「は、はい……ラング様の仰る通りですわ」
うっかり「苦労してきたのはあなたではなく私の方だ」と言いかけたのをなんとか堪えた。
とにかくまずはサイクリア陛下の葬儀を無事に終わらせ、その後でラングを即位させるように働きかけなければ。
それまでもう少しの辛抱だ。
気掛かりなのは未だに行方が分からない第三王子のルークだ。
サイクリア陛下の葬儀の最中に現れて何らかの妨害をしてくる可能性も十分に考えられる。
警戒を怠る訳にはいかない。
しかしそれは私の取り越し苦労だったらしく、サイクリア陛下の葬儀も重臣会議の場でラングを次期王として認めさせることも誰にも邪魔をされることもなく無事に終わらせることができた。
サンクタス王国の新国王となったラングは日を置かずに私との婚姻を発表。
あまりにも順調に事が運び過ぎて拍子抜けしてしまうくらいだ。
王妃となった私は言葉巧みにラングを操り贅の限りを尽くす。
そんな私に対して眉をひそめていた良識のある臣下たちはラングにあることないこと告げ口をして全員左遷してあげた。
これでもう王宮内で私に逆らえる者はいない。
そう思っていた矢先に思わぬ仕事が私に転がり込んできた。
「……つまり私にお義母様のお部屋の中に現れた邪悪な霊を駆除して欲しいと仰るのですか?」
「ええ、聖女であるあなたでしたらそのくらいの事はできますでしょう?」
私が聖女になれたのは父であるエクスディア侯爵が裏で暗躍していたからであって、いくらか修行をしたとはいえ私自身の聖女としての能力は高が知れている。
しかしいくら私でも先代王妃でありラングの母親であるアクリアには逆らえない。
「はい……」
私はしぶしぶとアクリアの頼みを受けてその部屋へとやってきた。
余程強力な悪霊でなければ私程度の破邪の力でも驚いて逃げていくかもしれない。
そんな私の甘い考えは即座に打ち砕かれた。
部屋に入った途端に私の全身に悪寒が走った。
王宮にある自分の部屋でサイクリア陛下が死んだ報告を受けた私レイチェルは、使者の手前自然と浮かび上がる笑みを必死で押さえていた。
「分かりました、お下がりなさい」
「ははっ……」
俯き加減で小刻みに震えている私を使者は悲しみのあまり涙をこらえているものだと勘違いしただろう。
そんな訳ないでしょう。
使者が部屋から立ち去ったのを確認して私は大笑いをした。
「あははははっ、これでラングが次の王位に就けば私は王妃になりますわ。あの馬鹿を思い通りに操るなんて赤子の手を捻るよりも簡単。この国の実権を握るのは私よ!」
その時、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえたので私は慌てて笑うのを止めた。
「……こほん、どうぞ」
「レイチェル様失礼いたします。ラング殿下が謁見の間でお呼びです」
「ええ、直ぐに行きますわ」
サイクリア陛下が世継ぎを決めずに亡くなった為にこれから重臣や元老院を交えて次の王を決める会議が行われるはずだ。
この国の聖女という立場にある私も当然その場に出席をする。
しかしラングに王位を継承させる為の工作は全て完了している。
今ラング以外の継承権を持った弟たちはある者は王都を離れ、ある者は投獄されている。
そして元老院がラングを王太子として認める条件として提示された王都の統治の実績についてもエディー公爵家の力を借りる事でしっかりと結果を出している。
私の父であるエクスディア侯爵はもちろん、政敵だったエディー公爵も今やこちらの陣営にいる。
ラングを次の王とする事を反対する者はもう誰もいないだろう。
会議と言っても事実上の出来レースになるはずだけど、最後までどんなハプニングが待っているか分からない。
油断は禁物だ。
「これが最後の大仕事よレイチェル」
私は両手で頬をパチンと叩いて気合を入れ直した。
私の部屋から謁見の間へと続く長い廊下は、今の私にはまるで栄誉を手にした者だけがその上を歩く事が許されるという真っ赤な絨毯にも見えた。
謁見の間に到着するとラングが開口一番私に助けを求めてきた。
「レイチェル、父上が亡くなられてしまった。葬儀の手配はどうすればよい? 私はこういった事は初めてで良く分からないのだ」
「は?」
次期王を決める会議ではなく、そんな事の為にわざわざ呼びつけたのかと私はため息をついた。
「……こほん、その様な事でしたら王宮の司祭に任せておけばよいのです。ラング様は皆の前で挨拶の言葉を述べるだけで結構ですわ。……挨拶の言葉もこちらでご用意いたしますのでラング様はそれを覚えて……いえ、忘れないようにカンペを懐にでも入れておいて下さい」
「そうか、それならば良い。父上を弔った後はようやく私がこの国の王になるのだな。今まで苦労をしてきたかいがあったというものだ」
「は、はい……ラング様の仰る通りですわ」
うっかり「苦労してきたのはあなたではなく私の方だ」と言いかけたのをなんとか堪えた。
とにかくまずはサイクリア陛下の葬儀を無事に終わらせ、その後でラングを即位させるように働きかけなければ。
それまでもう少しの辛抱だ。
気掛かりなのは未だに行方が分からない第三王子のルークだ。
サイクリア陛下の葬儀の最中に現れて何らかの妨害をしてくる可能性も十分に考えられる。
警戒を怠る訳にはいかない。
しかしそれは私の取り越し苦労だったらしく、サイクリア陛下の葬儀も重臣会議の場でラングを次期王として認めさせることも誰にも邪魔をされることもなく無事に終わらせることができた。
サンクタス王国の新国王となったラングは日を置かずに私との婚姻を発表。
あまりにも順調に事が運び過ぎて拍子抜けしてしまうくらいだ。
王妃となった私は言葉巧みにラングを操り贅の限りを尽くす。
そんな私に対して眉をひそめていた良識のある臣下たちはラングにあることないこと告げ口をして全員左遷してあげた。
これでもう王宮内で私に逆らえる者はいない。
そう思っていた矢先に思わぬ仕事が私に転がり込んできた。
「……つまり私にお義母様のお部屋の中に現れた邪悪な霊を駆除して欲しいと仰るのですか?」
「ええ、聖女であるあなたでしたらそのくらいの事はできますでしょう?」
私が聖女になれたのは父であるエクスディア侯爵が裏で暗躍していたからであって、いくらか修行をしたとはいえ私自身の聖女としての能力は高が知れている。
しかしいくら私でも先代王妃でありラングの母親であるアクリアには逆らえない。
「はい……」
私はしぶしぶとアクリアの頼みを受けてその部屋へとやってきた。
余程強力な悪霊でなければ私程度の破邪の力でも驚いて逃げていくかもしれない。
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部屋に入った途端に私の全身に悪寒が走った。
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