スキルがキモいという理由で王子から婚約破棄をされた巫女が実家に帰った結果王国が消滅した話

かにくくり

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第29話 王国滅亡の序章

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「何と痛快な、さすがは父上です」

 降霊術によって私に憑依したサイクリア陛下からアクリア様の部屋で行った事を聞いていたルーク殿下がポンポンと机を叩きながら心底愉快そうに笑っていた。

「ははは、俺もその時のあの女の顔を見たかったですよ父上」

 リストリア殿下もお腹を抱えながら笑い転げている。

「怨霊にならない程度に怒りを押さえながら霊力を使ってあやつの部屋を荒らすのはなかなか骨が折れたわい。実際に霊魂になって初めて分かったが、霊魂が現世に干渉するのは本当に大変だった。だがこれで余の気も晴れたというものだ。それではリストリアにルークよ、余はそろそろ逝くとしよう」

 一通りルーク殿下とも語り合った後サイクリア陛下の魂が私の身体から抜け出して天高く昇っていった。
 そしてその直後にリストリア殿下の背後からひとつの霊魂が離れていったのが見えた。

 守護霊としてずっとリストリア殿下を見守り続けてきたアステナ様の霊魂である。

「リストリア、私もサイクリア陛下と共に天国からあなたをいつまでも見守っていますからね」

 アステナ様のその言葉は巫女である私にしか聞こえないはずだけど、その想いは確かにリストリア殿下に届いているはずだ。
 アステナ様の魂はリストリア殿下に優しく微笑みかけた後、サイクリア陛下を追いかけて天に昇っていった。

 私は静かに二人の冥福を祈った。

「お姉ちゃん、あの女の人はだあれ?」

「え?」

 その時私の傍で【口寄せ】の様子を眺めていたクローディアが天に昇っていくアステナ様を指差して私に問いかけた。

「クローディア、アステナ様のお姿が見えたの?」

「うん、あの人がリストリアお兄ちゃんにかけてた声も聞こえたよ」

「ええっ!?」

「シルヴィア、クローディアのいう事は本当なのか?」

「はいリストリア様、アステナ様はサイクリア陛下と共にリストリア様の事をいつまでも見守っていると告げて天に昇られました」

「そうか。ならば俺は死ぬまで母上が失望しないような人生を歩まなければいけないな」

 そう決意を新たにするリストリア殿下の横で私は別の事を考えていた。

 私は立派な巫女になる為に十歳の頃から厳しい修行の日々を送ってきた。
 現世に干渉をするでもなくただ彷徨っているだけの霊魂は一般人からすれば空気のような物だ。
 私がそういった霊の姿を見たりその声を聞く事ができるようになったのは十二歳まで修行を続けた頃だ。

 それにも関わらず、まだ巫女の修行を一切した事が無い齢八歳のクローディアはアステナ様の霊魂の存在をはっきりと感じ取っている。

 もしかするとクローディアはとんでもない巫女の才能を秘めているのではないだろうか。

「クローディア、恐ろしい子……」

 私は無意識の内にそう呟いていた。


 それから間もなくして多くの労働者たちが仕事を求めてエルリーン伯爵領へと集まってきた。
 いずれもエディー公爵に騙されて王都で悪条件で働かされていた者たちだ。

 お父様は労働者たちを希望する仕事内容ごとに振り分けて働き先を斡旋していく。

 それにしても本当にすごい数だ。
 これだけの労働者が一斉にいなくなった王都はどうなっているんだろうと余計な心配をしてしまった。

 そしてその影響は直ちに現れた。

 エルリーン伯爵領へやってくる労働者の数は日を追うごとにネズミ算式に増えて行き、まずは労働者用の生活環境を整えるだけで手一杯の状態になった。

 簡易的な宿泊施設の建築から不足している食料などの物資の調達までとてもエルリーン伯爵領内だけでは手が足りず、近隣の領主たちの力を借りざるを得ない状態だ。

 この異常ともいえる数の労働者の流入について彼らに話を聞いてみると、帰ってきた答えはこうだ。

「新国王陛下の統治は滅茶苦茶だし、それに不満を持った私たちのような労働者が次から次へと王都から脱出していますからね。私たちの味方をしてくれていた心優しい貴族たちは皆新国王陛下やその取り巻きたちの不興を買って地方に飛ばされてしまいましたし、もう王都には権力にしがみついている一部の王侯貴族以外ほとんど人が残っていませんよ。あそこは都市としての機能が完全に崩壊しているんです」

 その話を聞いたリストリア殿下は溜息をついて呟いた。

「あのラングに国を治める能力なんてあるわけないだろう。馬鹿なだけならいいが、有能な臣下まで追い出したら当然の結果だ」

「リストリア様、この先この国はどうなちゃうんですかね?」

「さあな。俺はもう王室とは無関係だ。ルークお前はどうしたい?」

「私も今更王室に未練はありませんが、迷惑を被る民衆の事を考えると放置はできませんね」

「でもルーク様、その民衆たちももう王都にはほとんど残っていないんでしょう?」

「そうですね。まずは王都から脱出した人たちに私ができる事を考えましょう」


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