ドラマチック・スイッチ 〜映画にはなれないお父ちゃんの話〜

6ズルして、−700円

この『失敗』の結果を見て

『手伝わなかった』と、父を責める人は沢山いた

父本人も、その1人だった

『平さんに謝礼なんて払うの辞めろ。お金が勿体ない』

ーー直接、聞いたわけでは無い
でも、翌年声が掛からなかったのがそう思わせた

その当日、案の定

「た、助けてくれ！」

お呼びはかかった
予想がついてた父は頼まれてもいないのに家で待機していたし
突然の電話での連絡に、丁寧に対応し
二つ返事で、足早に現場へ駆けつけた

嫌な顔一つせず、手伝いに参加した

残りは、一切出なかった

でもそれは、改善や努力の結果では無く

作る量を減らす、という手抜きに過ぎなかった
貰えなかったと寂しそうに空の鍋を持ち帰る人も多かった

翌日家に来た町内会長が申し訳無さそうに渡して来た謝礼金

1300円だった

父は笑っていた

母が……何か言いたげに、複雑そうな顔をしていた