203 / 275
第5部 追う人、逃げる人、悪い人。
202
しおりを挟む
息を切らしてリビングへやってきたウミは相手のインゴールにボールを持ち込みトライを狙うラグビー選手のように、すぐユラの元へ駆け寄った。
「ウミくん?どうしてここへ?」
妻の母を心配しているウミは早口で事訳を話し始めた。
「ウミくん落ち着いて。私は大丈夫よ。
それよりウミくんは滝のような汗をかいちゃってるじゃない。
脱水症状をおこして倒れたら大変なんだから。」
ユラはスリッパをパタパタ鳴らして冷蔵庫から麦茶が入っているガラス製のピッチャーとウミ専用の、どでかいマグカップを持ってきた。
「ありがとうございます!」
ゴクゴク喉を鳴らして一気に飲み干した後、プハァーと息を吐き出した。
「良い飲みっぷりねぇ。でもゆっくり飲まなきゃ身体に悪いのよ。」
「早食い、早飲み、早寝、早弾きは得意なんで!」
豪快にサウスポースタイルのウミはエレキギターを弾く真似をした。
「なによそれ。ウフフ。」
笑うユラの目には可愛いわんぱく坊やのように映る。
「って、こんな話をしにきたんじゃないんだ。
ヤクザの女が家にやってきて危険な目に遭わされている可能性があるって聞かされてさ、大急ぎでここへきたんだ。」
部屋の隅で泣きべそをかくモモをウミは見た。
「あっ、コイツがヤクザの女ですか?
おまえ、ソラのお母さんに何しやがった!」
ウミは非常な剣幕で睨みつけた。
「うん。でもモモちゃんの件はこれでお終いよ。
私は警察に伝える気もないわ。」
「オガタのおっさんの話では"菊入組"とかって言っていたな。
てことはよぉ、おめえは新富福町界隈の人間だよな?」
「あら、暴力団だったの?そうは見えないけど。
モモちゃん。今すぐ足を洗いなさい。
おばさんと共に一緒に生きて行きましょうよ。」
美熟女のユラは着ているワンピースが盛り上がるほどの乳房を揺らしビシッと指をモモにさした。
「うるさぁぁい!」
モモは右腕で目元を隠しながら大嵐家を出て行った。
「待てよピンク!俺はおまえを許しちゃいねえんだぞ!」
ウミはモモを追いかけようとしたが、ユラに止められた。
「ウミくん!それ以上の深追いはしなくていいの。きっとあの子は変われるはずだわ。」
「そうかな?あんな女は死ぬまで変わらない気がする。
三つ子のうらめしいだっけ?古くから伝わる諺があるし。」
「私の目に狂いはないわ。きっとあの子は生まれ変われるはずよ。
それとね、ウミくん。
三つ子のうらめしいじゃなくて、三つ子の魂ね。」
「あは、そうだった。さすがの俺も東大は出てないもんでさ。」
「っんもぉ、お茶目さんねぇ。東大を出てなくてもわかると思うけど。」
間違えた事を恥ずかしそうに笑うウミは顔から汗が弾け飛んでいる。
「ウミくん、そのままでは気持ち悪いはずよ。すぐにシャワーを浴びてきなさい。」
ユラは庭に出て物干し竿に干してあるバスタオルを手渡した。
「はいどうぞ。お天気が良かったからタオルがふんわりして気持ち良いでしょ?」
「は、はい。確かにふんわりしてますね。ありがとうございます…。」
ユラを助けにきたはずが、なぜかシャワーを浴びる展開に少し戸惑っていた。
「お姉ちゃんとは毎日、一緒にお風呂入ってるの?いいわね~新婚夫婦って。」
「いや…。」
「私を守ろうとしてくれたお礼に、お姉ちゃんに代わって義母が可愛いウミくんの身体を流してあげようかしら?」
大人の妖艶な美しさを醸し出すユラはウインクしてウミを誘った。
「あ、そろそろ帰りますんでまた来ますです。はいです、はい。」
動揺するウミは急いで玄関を開けて大嵐家を飛び出した。
「あら、じきにパパも帰宅するから3人でお夕飯を食べたかったのに。
男の子ってわんぱくで落ち着きがないわね。」
「…あの、奥さん?」
「アナタ達、まだここに居たの?」
「見知らぬ人物を不用心に招いたりしてはなりませんよ。それから戸締りをするのを忘れずお過ごしください。」
オールバックの男が言った。
「そんな事くらいわかってるわよ。
なによ、アンタ達だって見知らぬ人じゃない。その分際で勝手に部屋へ入って来てよく言うわね。」
「私どもは奥様が襲われてしまうのを危惧して助けに参ったのですが…。」
オールバックの隣にいるセンター分けの男が言った。
ユラは2人の足元を見て怒鳴った。
「まぁ!!なんていうこと?私のお家でアナタ達は土足じゃないの!
出て行きなさい!今すぐに!」
「す、すみません…。」
砂城院家でボディガードを勤めている屈強な男達も、ユラにはタジタジだった。
「まったく。どんな教育を受けてきたのかしら?ご両親の顔を拝見したいわ。」
一方、肝心なソラはウミが居所を掴んだビジネスホテルのベッドでガンガンに効いた冷房のなか眠っていた。
「ウミィ…寒いよぉ。オーロラを見ながらオッパイとお尻を丸出しでカキ氷なんて食べられるわけないじゃん…。」
オーロラが輝く凍てつく世界で、ソラは全裸になってカキ氷を食す夢を見ていた。
更にソラの双子の妹であるセラはーーーー
「あはは。
違うってばオオニシさん、そうじゃないよ。さっきも言ったじゃん。」
「す、すまん。」
おおらかなセラは慣れない仕事で四苦八苦するオオニシの指導にあたっていた。
「2人とも休憩にしようよ!」
「ヒロコさん了解!」
「あ、はい!」
けっこう平和に仕事をしていた。
「ウミくん?どうしてここへ?」
妻の母を心配しているウミは早口で事訳を話し始めた。
「ウミくん落ち着いて。私は大丈夫よ。
それよりウミくんは滝のような汗をかいちゃってるじゃない。
脱水症状をおこして倒れたら大変なんだから。」
ユラはスリッパをパタパタ鳴らして冷蔵庫から麦茶が入っているガラス製のピッチャーとウミ専用の、どでかいマグカップを持ってきた。
「ありがとうございます!」
ゴクゴク喉を鳴らして一気に飲み干した後、プハァーと息を吐き出した。
「良い飲みっぷりねぇ。でもゆっくり飲まなきゃ身体に悪いのよ。」
「早食い、早飲み、早寝、早弾きは得意なんで!」
豪快にサウスポースタイルのウミはエレキギターを弾く真似をした。
「なによそれ。ウフフ。」
笑うユラの目には可愛いわんぱく坊やのように映る。
「って、こんな話をしにきたんじゃないんだ。
ヤクザの女が家にやってきて危険な目に遭わされている可能性があるって聞かされてさ、大急ぎでここへきたんだ。」
部屋の隅で泣きべそをかくモモをウミは見た。
「あっ、コイツがヤクザの女ですか?
おまえ、ソラのお母さんに何しやがった!」
ウミは非常な剣幕で睨みつけた。
「うん。でもモモちゃんの件はこれでお終いよ。
私は警察に伝える気もないわ。」
「オガタのおっさんの話では"菊入組"とかって言っていたな。
てことはよぉ、おめえは新富福町界隈の人間だよな?」
「あら、暴力団だったの?そうは見えないけど。
モモちゃん。今すぐ足を洗いなさい。
おばさんと共に一緒に生きて行きましょうよ。」
美熟女のユラは着ているワンピースが盛り上がるほどの乳房を揺らしビシッと指をモモにさした。
「うるさぁぁい!」
モモは右腕で目元を隠しながら大嵐家を出て行った。
「待てよピンク!俺はおまえを許しちゃいねえんだぞ!」
ウミはモモを追いかけようとしたが、ユラに止められた。
「ウミくん!それ以上の深追いはしなくていいの。きっとあの子は変われるはずだわ。」
「そうかな?あんな女は死ぬまで変わらない気がする。
三つ子のうらめしいだっけ?古くから伝わる諺があるし。」
「私の目に狂いはないわ。きっとあの子は生まれ変われるはずよ。
それとね、ウミくん。
三つ子のうらめしいじゃなくて、三つ子の魂ね。」
「あは、そうだった。さすがの俺も東大は出てないもんでさ。」
「っんもぉ、お茶目さんねぇ。東大を出てなくてもわかると思うけど。」
間違えた事を恥ずかしそうに笑うウミは顔から汗が弾け飛んでいる。
「ウミくん、そのままでは気持ち悪いはずよ。すぐにシャワーを浴びてきなさい。」
ユラは庭に出て物干し竿に干してあるバスタオルを手渡した。
「はいどうぞ。お天気が良かったからタオルがふんわりして気持ち良いでしょ?」
「は、はい。確かにふんわりしてますね。ありがとうございます…。」
ユラを助けにきたはずが、なぜかシャワーを浴びる展開に少し戸惑っていた。
「お姉ちゃんとは毎日、一緒にお風呂入ってるの?いいわね~新婚夫婦って。」
「いや…。」
「私を守ろうとしてくれたお礼に、お姉ちゃんに代わって義母が可愛いウミくんの身体を流してあげようかしら?」
大人の妖艶な美しさを醸し出すユラはウインクしてウミを誘った。
「あ、そろそろ帰りますんでまた来ますです。はいです、はい。」
動揺するウミは急いで玄関を開けて大嵐家を飛び出した。
「あら、じきにパパも帰宅するから3人でお夕飯を食べたかったのに。
男の子ってわんぱくで落ち着きがないわね。」
「…あの、奥さん?」
「アナタ達、まだここに居たの?」
「見知らぬ人物を不用心に招いたりしてはなりませんよ。それから戸締りをするのを忘れずお過ごしください。」
オールバックの男が言った。
「そんな事くらいわかってるわよ。
なによ、アンタ達だって見知らぬ人じゃない。その分際で勝手に部屋へ入って来てよく言うわね。」
「私どもは奥様が襲われてしまうのを危惧して助けに参ったのですが…。」
オールバックの隣にいるセンター分けの男が言った。
ユラは2人の足元を見て怒鳴った。
「まぁ!!なんていうこと?私のお家でアナタ達は土足じゃないの!
出て行きなさい!今すぐに!」
「す、すみません…。」
砂城院家でボディガードを勤めている屈強な男達も、ユラにはタジタジだった。
「まったく。どんな教育を受けてきたのかしら?ご両親の顔を拝見したいわ。」
一方、肝心なソラはウミが居所を掴んだビジネスホテルのベッドでガンガンに効いた冷房のなか眠っていた。
「ウミィ…寒いよぉ。オーロラを見ながらオッパイとお尻を丸出しでカキ氷なんて食べられるわけないじゃん…。」
オーロラが輝く凍てつく世界で、ソラは全裸になってカキ氷を食す夢を見ていた。
更にソラの双子の妹であるセラはーーーー
「あはは。
違うってばオオニシさん、そうじゃないよ。さっきも言ったじゃん。」
「す、すまん。」
おおらかなセラは慣れない仕事で四苦八苦するオオニシの指導にあたっていた。
「2人とも休憩にしようよ!」
「ヒロコさん了解!」
「あ、はい!」
けっこう平和に仕事をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
ヤンキー、悪役令嬢になる
山口三
恋愛
岸田和華(きしだわか)は異世界に飛ばされた。自分が読んでいた小説の悪役令嬢ジュリエットに憑依してしまったのだ。だが和華は短気でガサツで、中学高校と番を張ってたヤンキーだ。高貴な身分の貴族令嬢なんてガラじゃない。「舞踏会でダンス? 踊りなんて盆踊りしか知らないからっ」
一方、リアル世界に残された和華の中にはジュリエットが入っていて・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる