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三章 妻、夏子を守れ!
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しおりを挟む(夏子と田口が約束した当日)
晴天だったはずが、名を馳せた泥棒が皆の目を盗むようにそっと雨雲が近付く。
眩しいほどの日差しから一変、あっという間に雨が降りだした。
天気予報を信じた街行く人々は、頭上に手やハンカチを被せ、天然のシャワーを浴びる羽目になった。
待ち合わせ時間より、15分早く到着していた田口は、カフェでブラックコーヒーを下品に啜っている。
「待ち合わせ時間になったけど、季節原さんは来なかった。
約束をすっぽかしたのよ。」
店内で人々が行き交うせいで、壁掛け時計が一時的に遮断される。
席に座る田口は身体を動かし、時計を見ようとするものの、なかなか時刻を確認できなかった。
「私、帰るわ。季節原さんは私と関わりたくないのよ。」
電話を切った田口は席を立ち会計を済ませた。
来店した老夫婦が開けたドアを我が物顔で通り、お礼も言わず外に出る。
傘を差した時、菊池が正面に立っていた。
「車に乗れ、早く。」
土砂降りの雨の中、白い軽自動車の運転席、助手席に二人は座った。
「夏子に電話しろ。」
「また無駄な事をするの?
そもそも、季節原さんになぜ執着するわけ?」
「おまえは気付いていただろうが。
僕は好きなんだよ、夏子が。」
「やっぱり。
で、それを打ち明けた今、季節原さんに何がしたいの?
職場でできなかったセクハラの続き?」
「そうだ。」
田口は呆れた。
「はぁ…認めるの?」
無表情の菊池は瞬きもせず、田口に目線を合わせた。
「あのね、上手く季節原さんをここへ呼び出せたとしてもよ?
あんたが、季節原さんに性的な行為を働いたら逮捕されるわよ。」
「おまえは黙って俺の言うとおりにしろ。
市村の人生がブッ壊れるのを、見たかないだろう?」
痛む胸を抑えた田口は下唇を前歯で巻き込むのと同時に目を閉じた。
瞼はピクピク痙攣している。
「で、でもね、季節原さんにアンタ酷い事をして傷つけるの?
そんな最低な事をして許されると思う?
アンタだって人生が終わるんだよ?」
田口の声が裏返る。
「夏子を同意させる。」
「不可能よ!」
「黙れ!」
「襲うなんてバカじゃないの!身勝手過ぎるわ。」
「いい加減にしろ」と軽自動車の狭い車内で菊池は怒鳴った。
「僕が好きな女を襲うわけがない。
合法的に夏子と仲良くなって色々楽しむんだよ。」
半袖のチェニックワンピースを着ている田口の胸元から手を入れ、ゆっくり乳房を揉む。
「…既婚者よ。」
「関係ない。
それより夏子に電話をしろ。
いや、呼び出したって出てきやしないか。
ちょっと、作戦を練るか。」
菊池は左の乳房から右の乳房へ手を移した。
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