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side 田中 風磨②

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この世界に来てからしばらく経ち、俺は路地に座り込んでいた。

日雇いの仕事を探しても、住むところもない俺を雇ってくれるところはほとんどなく、雇ってくれたとしてもすぐにクビになってしまった。

食うものを買う金も既に無く、仕事もない。
まだ動けるうちに仕事を見つけないと飢え死んでしまう。

腹が減った。

俺は食べ物を買うお金もないので、食べ残して放置されたものや、捨てられているけどまだ食べれるものを探して食べるしかない。

酒場の外に置いてあるゴミ箱を漁っていると急に腹に衝撃が加わる。
俺は痛みで蹲りながら見上げると、男が立っていた。

「汚ねぇな!死にたくないなら早く消えろ!」
男は言いながらさらに俺を蹴飛ばす。

俺はフラフラと立ち上がり男を睨みつける。
そしたら殴られた。

俺は逃げる。

「次見つけたら、迷わずに衛兵につき出すからな!」

男に言われて俺は思う。いっその事、衛兵に捕まった方が飯が食えるのではないかと。

俺は詰所に行く。
とは言ってもどうやって捕まえてもらおうか。

俺は詰所にいた兵士に話をする。

「金がなくて食うものもないんだ。罪人と同じ扱いでいいから飯を食わせてくれないか」

「何言ってるんだ?こっちは暇じゃないんだ。罪人じゃないなら帰れ!」

「さっき向こうの酒場でゴミを漁った。男に衛兵につき出すと言われたんだから罪なんだろ?捕まえてくれ」

「はぁ。面倒だな。とりあえず、それは自白したってことでいいのか?」

「ああ、そうだ。俺は罪を犯した」

「なんで俺の当番の時に頭が沸いてる奴が来るんだよ。ほら、両手を出せ」

俺は言われた通りに両手を出す。
そしたら手を縛られた。

「こっちへ来い」
兵士に言われて奥の部屋に連れてこられた

「なんだそいつは?」
部屋にいた別の男が聞く

「迷惑行為をしたと自白しに来た」

「自白だあ?酔狂な奴がいるんだな。まあいい、そこに縛るぞ」
俺はよくわからないまま壁に固定された

「それで迷惑行為ってのは何をしたんだ?」
「酒場のゴミを荒らしたそうだ」
「なら3回でいいか。自白してきてるしな」
男はそう言いながら木の棒を手に取った

「な、何するんだ?」
俺は男に聞く

「何って、刑を執行するんだよ」
男はめんどくさそうに答えて、木の棒を振り上げて俺を殴った。

「痛い、やめてくれ」

「やめたら罰にならないだろう。後2回だから我慢しろ!」
さらに2回殴られた後、解放された。

「飯は……?」

「出るわけないだろ!」
殴られ損だ。

「もっと、罪が重いことをすれば飯が食えるほど拘束してくれるのか?」

「ふざけるなよ。自分勝手な理由で他人に迷惑をかけるな!それに何を期待してるかは知らんが、棒叩きより重い刑は鉱山奴隷だからな。飯は食えるが死なない程度に与えられるだけだ。それに餓死しないだけで大体は事故で死ぬことになる。そうなりたいなら、他人に迷惑をかける前に捕まえてやろうか?」

「すみませんでした」
俺は謝ってから詰所を出る

それから数日、もう動く元気もなく路地裏に座り込む。
俺はこのまま死ぬのだろう。そう思っていたら声を掛けられた。

「食う金もないんだろ?俺のところで働かないか?」
顔を上げる。ゴツい男がいた。

「俺でも出来る仕事ですか?」

「ああ、誰でも出来る。ただ危険はあるがな。このまま死ぬよりはマシだろ?」
男は不敵な笑みを浮かべながら言う。
まともな仕事ではないんだろう。
だが危険はあるといっても、どうせこのままだと死ぬんだ。

「どんな仕事ですか?」

「金を持ってる奴に分けてもらうように頼む仕事だ。分けてくれない奴からは無理矢理奪うがな!ハハハ」
男は笑いながら言う

「それって盗賊ってことですよね?」

「別に嫌なら断ればいい。目についたから誘っただけだ」
俺は迷ったが、考えているうちになんで俺がこんな目にあっているんだという気持ちが強くなってきた。

「仲間になります」

「先に言っておくが裏切り者には死より恐ろしい末路を辿ってもらうことになるからな。間違っても変な気は起こすなよ。ほらこれでも食え」
男はそう言ってパンを俺に投げた

俺は夢中になってパンを食べる。金がない時に食った硬すぎるパンではなく、柔らかいパンだ。

「それを食ったら初仕事に行くからな。食ったからには働けよ」

パンを食べ終わって、男と一緒に街の外に出る。
そこには男の仲間が数人いた。
馬車に乗ってしばらく進む。

「この辺りでいいか。次ここを通る馬車を襲うからな。無意味に殺すなよ。殺すと追っ手がキツくなるからな。お前はこれを使え」
男に短剣を手渡される

「わ、わかりました」
生きる為に仕方ない。死にたくない

少しして馬車が見える。

「あれを襲うぞ。俺が合図したら取り囲め」
馬車が近づいてくる

「今だ!」
男の合図で俺達は馬車を取り囲むべく走り出す

「金目のものを出せ!大人しく渡すなら殺しはしない!」
男が言うと、馬車の中から護衛の冒険者が出てきた。

すんなりと渡してくれることはなくて、戦闘になった。
俺はどうしていいのか分からず、オロオロする。

相手は2人なのに押されている。
1人がこちらに向かってきた。俺は咄嗟に風刃を使う。
相手は剣で防ごうとしたが、風刃は剣を切ってそのまま相手を切りつける。

剣を切った事で威力が落ちていたのか、真っ二つになることはなかったが、すぐに戦うことは出来ないだろう。

「よくやった!おい、馬車ごと置いていくなら見逃してやる。早くしないと相棒が死ぬんじゃないのか?」

「くっ!わかった。降参する」
もう1人の冒険者は両手を上げる

「ずらかるぞ!」
馬車から商人を降ろして、奪った馬車に乗りこんでいく。
動けなくなっている俺も乗れるように手を貸してくれる。

途中、街から乗ってきた馬車を回収してからアジトがあるという森の中に入っていく。
馬車から途中で降りて、森の奥まで進む。

「坊主、よくやった!今回1番手柄を上げたのはお前だ!連れてきて良かったぜ!これからも頼むぜ!」
悪いことをしたのはわかってるけど、褒められると嬉しいものだ。

アジトは洞窟だった。
盗んだもので宴会でもするのかと思ったけどそんな事はなかった。

腐りやすいものから食べるだけだ。
聞いたら、いつもよりは多いらしい。
イメージと違ったけど、散財していたらまたすぐに危険を冒して盗まないといけない。

夜になり、大分冷静になって考える。
あの冒険者の人は助かったのだろうか……。このまま盗賊をやっていていいのかと。

でもあのままだと飢え死にしていた。今は食べるものはあるし、洞窟ではあるけど寝るところもある。

これでよかったはずだ。

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