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side 神下 える①

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インチキくさいショタ神の言う通り、私は見知らぬ世界へと飛ばされていた。

周りを見ると山と川。それから森。
どんな田舎なのだとガッカリする。

遠くの方に建造物が見えるので、あれがショタ神が言っていた街なのだろう。

私はとりあえず今の状況を考えて、やらないといけない事をやる。
自撮り&SNSにアップだ。

しまった!今は素顔だ。着替えて、メイクしたい。
せめて目元だけでもイジって、口元はマスクで隠したい。
なんで学校ではメイクしたらいけないんだろう。そしたら今悩む事はなかった。
いや、クラスの友達には秘密にしているから、どっちにしても軽いメイクしかしてないか。

「はぁ」
仕方ないから自撮りはやめて、背景だけにするか……。

私はポケットからスマホを取り出して……あれ?電池切れ?電源が入らない。
おかしいな。寝ている間に充電したし、少し前まで80%くらい残ってたはずなのに。
……もしかして、この世界でスマホは使えなくされてる?
そんな、私の生き甲斐が……。

私の趣味はコスプレだ。
小さい頃は朝にやっていた魔法少女のアニメのキャラになりたかった。別に凝った衣装を着たりはしていなかった。
お母さんに買ってもらった変身セットを使ってごっこ遊びをしていただけ。
そこまではどこにでもいる女の子だったと思う。
それが何をどう拗らせたのか、自分で生地を買ってきて、裁縫をして本物のように作るようになった。もちろん杖などの小物もちゃんと作る。
作った衣装に着替え、メイクをして写真を撮る。

何着か作った時、誰かに見せたくなった。
でも知り合いにはこんな趣味があることは秘密にしていた。
だからサブ垢を作ってSNSにアップした。
メイクをしているから、万が一知り合いが見たとしても、私だとは誰も気付かないだろう。

少しずつだがフォロワーが増えていくのが嬉しくて、私はどんどんとエスカレートしていった。

コスプレのイベントにも参加するようになった。
そこで同じ趣味の仲間とも出会った。

1人の時はヒラヒラの可愛い系の衣装ばかり作っていたけど、少し際どい衣装や、男物の衣装を着ることもあった。

「あぁ。楽しかったなぁ」
私は空を見上げて呟く。

雲を見ること数分、スマホが使えないということが受け入れられず現実逃避していたけど、なんとか戻ってくる。

「なんとしてでも帰らないと。まだ作りかけの衣装があるんだから!」
私は決意する。

まずは現実を知る為に、ショタ神がくれると言っていたスキルを確認することにする。

「ステータスオープン!」
アニメでよく見る呪文を唱えてみると、目の前にステータスの書かれた板が出てきた。

[異世界言語]というのはみんなもらったやつだから、私専用のは[種族チェンジ]ってやつだね。

私は詳細を見る。

[種族チェンジ]
対象の種族を変更する

「対象のって自分でもいいのかな?もしかして色々と自分の姿を変えることが出来るってこと?やった!嬉しい」
私は深く考えずに喜んだ。
説明文を最後まで読まずに……

「種族チェンジ!」
私は早速スキルを使おうとしてみるけど、何も起きなかった。

なんでかなって思ったけど、多分何に変わりたいか決めてなかったからではないかと思う。

私は何になるか考える。
1発目だから思い入れのある姿になりたい。

そうなると魔法少女かな?
でも魔法少女って種族ではないよね?
そもそも魔法を使える少女ってこの世界にいっぱいいそうだし……。
種族だからエルフとか獣人とか魔族ってことだよね?
どうせなるなら、獣人か魔族だよね……。猫耳が生えたりするのかな……。

「はぁはぁ」
考えただけで笑みが溢れる。

私は悩んだ結果、1つの種族に決めた。

作りかけで置いてきてしまった衣装の事を考えて、完成させられなかったなら、せめてその姿にはなろうと思った。

「種族チェンジ!」
私は再度スキルを使用した。

今度はちゃんと発動したのか、私は意識を失った。

そして目覚めると、目の前に真っ白な神殿があった。
え……?

「ねぇ、なんでそんな格好でここにいるの?」
意味が分からずキョロキョロと周りを見ていると、ショタ神が目の前に急に現れた。

「とりあえずそのショタ神っていうのやめてくれないかな?なんか不愉快だよ」
もしかして口に出していただろうか……?

「え、あの、はい。すみません。神様」
私はショタ神に謝る

「口先だけ謝っても意味ないからね。内心でまたショタ神って言ったのわかってるから」

「もしかして、心を読んでいらっしゃいますか?」

「そうだよ」

「すみませんでした」
私はショタ……神様に再度謝った。

「まあ、それはいいや。思っちゃうことを止めるのは難しいからね。でも思わないように努力はするべきだよ。そんなことよりもなんでここにいるの?ちゃんと地上に全員飛ばしたはずだけど?隔離空間に残ってるっていうならまだ分かるけど……ここ天界だよ?軽々しく来ていい場所じゃないからね」
ショタ神いやいや……神様はそんなこと言うけど私も天界に来たくて来たわけではない。
知らぬ間に来ていたのだ。

でも考えてみると、思い当たる節はあった。

「神様、えっと多分なんですけど……」
私は説明しようとしたけど、先にショタに……神様に言われる。

「いや、言わなくていい。僕にもわかったよ。面倒なことをしてくれたね。おーい、誰でもいいからちょっと来てくれる?」
神様……。神様が呼ぶと、可愛い女の子が飛んできた。フワフワな羽が生えていて、頭には輪っかが浮いている。多分天使だ。

「最高神様、お呼びでしょうか?」
天使は神様の前に跪いて、用件を確認する。
この子供は最高神だったようだ。ちんちくりんな感じなのに偉いんだなぁ。
そんなことを考えてしまったら、凄い勢いで睨まれた。

「あ、あの、お互いのために良くないと思うので、心を読むのはやめてもらえませんか?」
私は提案してみる。正直勝手に思ってしまうことを、考えないようにするのは疲れる。

「……そうだね。そうするよ。だからって心の中でバカにしていいわけではないからね」
神様はそういうけど、別にバカにする気は初めからなかった。ちんちくりんに関してはそうとられてもおかしくはないけど、ショタに関しては私にとって標準語のようなものだ。男の子のことはショタと呼ぶ。人前では気をつけてるから口には出さないけど、内心では常にショタと呼んでいる。

「助かります」

「そんなことより、これの教育係を君に命じます。采配は君に任せますが、基本は自由にさせてあげなさい。その結果、堕天しても構いません」

「かしこまりました」
この天使ちゃんが私の教育係をしてくれるようだ

「お願いします」
私は天使ちゃんに頭を下げる

「私が先輩として、天使としてのお仕事を教えますが、最高神様が仰っていますので、お仕事をやるかやらないかはあなたにお任せします。但し、お仕事をしないとお食事は与えません。他の天使に示しがつきませんので」
働かざる者食うべからずのようだ。

「あの、一生天使をやるつもりはないので人間に戻っていいですか?」
私はスキルで天使に種族チェンジした。ちょうど天使の衣装を作っていたからだ。
多分天使は地上に住めないから天界に強制的に転移したのだと思う。

騒がせてしまったけど、天使としての生活をしたいわけではないので、人間に戻るつもりだ。

「何言ってるの?そのスキルは1度しか使えないよ?もう無くなってるでしょ?だから面倒なことになったって僕は言ったんだよ」
ショタ神に言われて私は顔を真っ青にしながら、ステータスを確認する。

[種族チェンジ]のスキルは既に無くなっていた。
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