クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫

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「君はつまらない人間になってしまったみたいだね」
堕天された天使が最高神からの伝言を僕に伝え始めると同時に、ネロ君が動かなくなる。
伝言は僕にしか聞かせないつもりのようだ。

どこから声を出しているのか、声はあの少年の声だ。
体の中にボイスレコーダーでも入っているのだろうか?

この世界をゲームのように楽しんでいた時に比べ、神の像の呪いを解いたらどうなるか、魔王に挑んだらどうなるか、知らないほうがわくわく出来ることをネロ君の占いを制限なく使って知ろうとしている今の僕は、確かにつまらない人間になったのかもしれない。

だけど僕個人の感情は、この世界の命運と天秤に乗せるにはあまりにも軽すぎる。

「それは自分でも自覚してます」

「続けます。あの子が辿り着いたとおり、この世界は神の選定を行う役目を担っているよ。神の使者ではなく神ね。既に何人かは死後神に転生することが決まっているよ。それぞれの世界には、その世界に合った役目を担ってもらっていて、この世界が特別というわけじゃない。例えば君達の暮らしていた世界には科学力を発展させるという役目が与えられている。その為に他の世界では当たり前に存在している魔法が使えなくなっているわけだね。そして、全ての物には神が宿ると信じられている日本では、慢性的な神不足に陥っている。多くの神がいくつも兼任している状態だ。だからこそ、日本の神々はこの世界への送還要請に前のめりで許諾した。君のような特殊なスキルを授かるような者は期待されていたけど、その評価は絶賛降下中だよ。保守的な人材なんて日本の天界には溢れていて必要とされていないからね。話が脱線したけど、せっかくの人材をつまらない人間へと変えてしまうこの世界が神を選定する役割を果たしているとは言えない。よって準備が整い次第作り変えることにしたよ。5年もすれば全てが作り変わるかな。こうならないように君には何度か忠告したり、選択肢を与えたりしたんだけどね。そうそう、君達に僕は嘘を吐いていることがあったよ。僕はこの世界の神ではなく、全ての世界を統べる神だよ。……以上です」
とんでもないことを言いやがった。
魔王が目を覚ますから5年後に世界が滅ぶのではなく、5年掛けて神が世界を作り変えるとか笑えない。

「聞いてもいいですか?」
ネロ君が動き出したので、伝言はこれで終わりのようだ。

「答えられることであればお答えします」

「どうして今回は伝言なのですか?今までは直接会いに来ていたと思うんですけど……」
ネロ君が状況がわからずおろおろしているけど、今は無視して話を進める。

「つまらない人間と話す程、最高神様は暇ではありません」

「そうですか」
なんでネロ君にクローネを会わせようとしただけなのに、こんな面倒な話を聞かなければならないんだ?

「他に何か神様が言ってたことはありますか?」

「いえ、ありません」

「わかりました。話は変わりますが、ネロ君のことは覚えてますか?」
世界を作り変えることをやめてもらうにはどうしたらいいのか聞いた方がいいのだろうが、つまらない人間になったことを理由に終わらせようとしていると言われると聞きにくいし、なんだか聞いたら負けな気がして聞かないことにする。

別にあの神が世界を滅ぼすことを僕に言わなければならないなんてことはないはずなので、これが最後の忠告なのだと思う。

あの子供の神はこの世界を作り変えたいと思っていないけど、それぞれの世界を管理する神の上に立つ立場として、作り変える必要があるということだろうか。

この世界を以前のように、ゲームみたいに楽しめばいいのかもしれないが、そう思えないのだからそれは無理だ。
それはあの神もわかっているはずなので、他の方法で僕の価値をアピールしないといけない。

いや、これは『世界を救え!』というルートにメインクエストが分岐したということかな。

自ら決めたクラスメイトを帰還させるというクエストではなく、運営が決めた初めてのメインクエスト。
そう考えると、なんだか楽しくなってきた。

「……覚えていません。何か大事なことを忘れているような気はするのですが、その子を見ると頭痛がするだけです」
クローネの答えに、伝言役としての役目を優先され放置されていたネロ君はショックを受ける。

「僕のこと覚えてないの?」
ネロ君にはクローネが生まれ変わっていることは伝えてあるので覚悟はしていただろうが、その目にはうっすらと涙が見える。

「後ろ髪を引かれるような、もやもやとした気持ちはあるのです。しかし、何も思い出すことは出来ません。このことを最高神様にご報告したところ、先程の伝言を預かることになりました。その際に、最高神様は記憶を取り戻したならここに戻る必要はないと仰っていました」
あの神はクローネの記憶が戻ると思っているのか。

「話が逸れるけど、あなたは最高神の部下ってことだよね?他の神との上下関係ってどうなってるの?」

「上下関係はありません。先程のように最高神様の代わりを務める際には、私の言葉は最高神様の言として扱われますが、私自身に他の神に命じる権限はありません。他の神が最高神様の持ち物である私達天使に命じることもありません」

「そうなんだ……。 話を戻すけど、以前のようにネロ君と契約したら思い出すことがあるんじゃないかな」

「契約ですか………………。そうですね、許可が出ましたので、契約することは可能です。私はどうすればよいですか?」
この天使とあの神は繋がっていて、連絡を取り合えるようだな。

「物心ついた時にはクローネと契約してたから、僕はどうやってこのスキルを使うのか知らないんだ」
ネロ君に契約を試してもらおうとしたけど、首を横に振られた。

「依り代のスキルも?」

「うん。前にも言ったけど、僕の意思とは関係なくクローネが僕の体を使っていただけだよ」

「そっか……。何か思い出すかもしれないから、何か思い出話でも聞かせるのがいいのかな……?」
ネロ君とクローネを会わせてはみたけど、失った記憶を取り戻す方法なんて知らない。

「うん。クローネはね────」

ネロ君がクローネとの思い出を口にする。
途中、クローネが暴れて喧嘩をした時にお礼を言っていなかったことをネロ君は泣きながら謝っていたけど、クローネは頭を押さえる仕草はするものの、記憶を取り戻す様子はない。

「ごめんなさい。わからないわ」

「クローネがいなくなる時に、これを置いていったんだ。これも覚えてない……?」
ネロ君が占いのカードをクローネに見せる。

クローネはピンときていない様子だったけど、カードをよく見る為に手に取った瞬間、カードが眩しく輝きだした。

あまりの眩しさに目を押さえ、まぶたの裏からでも分かるほどの光が消えてから目を開けると、カードだけでなくクローネの姿も消えていた。
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