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別れの時
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お姉ちゃんの出発に合わせて、僕も準備をする。
お姉ちゃんが村を出てから貯めたお金は少なくなく、王国内をぐるっと回って食べ物を配るにはギリギリ足りるだろうというくらいには持っていた。
まだ教会に通う前に冒険者として高ランクの依頼を何度も受けていたお金と、スタンピード時に逃げ遅れた人の救助をしていた褒美だ。
しかし、いくらお金があったとしても、買う食糧がない。
王都は今もまだ食糧不足が続いている。
お姉ちゃんが買い占めれば、そのせいで飢える人が出る可能性がある。
それは本末転倒だ。
それに、ダイス君が王となってすぐに、王国には法が一つ増えた。
それは、食糧を買い占めることを禁止するという法だ。
さらに、法が出来る前に買い占めた者にも適正な価格で国に売るように求めた。
適正な価格とはスタンピードが起きる前の価格なので、これに応じれば買い占めた者は損を被るだろう。
無視しても裁かれることはないけど、ほとんどの商人がこれに応じた。
ダイス君が利益の為に食糧を買い占める者は、王国の民ではないと断言したからだ。
つまり、返さないと王国では今後商売がやりづらくなる。。
多くの商人をダイス君は敵に回したけど、上がり続けていた食糧の価格は落ち着きを取り戻した。
一方で、ダイス君がどうやって調べたのかはわからないけど、身を削って食糧を安く売っていた者達を介して国が集めた食糧を売った結果、身を削った以上の利益をその者達は得ることになった。
この一件で新国王は弱き者の味方だという話が広まり、ダイス君を支持する声はさらに大きくなった。
そんなことがあり、多くの食糧を買い込むことが出来ないお姉ちゃんの代わりに、僕が創造のスキルで食べ物を大量に創っている。
大量の食べ物をどうしたのか国の人から尋ねられたら、ダイス君は僕がアイテムボックスを使えることを知っているので、最近買い占めたわけではなく、昔から持っていた物だと言うことにしよう。
確認にきた人がどうかはわからないけど、苦しんでいる人の為に使うのだから、ダイス君ならそれを渡せとは言わないだろう。
すぐに食べられる食べ物の他に、野菜のタネや苗など、その場限りの援助とならない物も創る。
凍えているかもしれないから、布団もたくさん創っておこう。
「ただいま」
「お邪魔します」
寝転びながら、必要そうなものを思いついたものから創っていると、お姉ちゃんがリーナさんを連れて帰ってきた。
「おかえり」
「肝心なところを全部エルク任せにしちゃってごめんね」
「アイテムボックスに溜め込んでいたやつを出すだけだから気にしないで」
創造のスキルのことはリーナさんには秘密なので、創ったのではなく、アイテムボックスに入れてずっと保管したままになっていた物だということにしている。
さすがに量が多く、この言い訳は少し苦しいので、リーナさんは何か隠しているのだろうと思いつつも、聞かずにいてくれているのだと思う。
「リーナのアイテムボックスに移したいから、出してくれる?」
「うん」
まずは絶対に必要な食べ物から出していく。
麦を多めと、根菜類を中心に野菜がいいかな。
肉も貰ったらうれしいはずだけど、日持ちする物の方が生活には必要のはずだから、割合としては少なめでいいかな。
リーナさんのアイテムボックスに入れておけば腐らないから、村に到着した日に振る舞うくらいの量でいいだろう。
干し肉を作るにも、時間と手間が掛かることは知っている。
「ちょっと待って。そんなに入らないわよ」
まだ創った食べ物の1割も出していないのに、リーナさんのアイテムボックスが限界を迎えたようだ。
僕のアイテムボックスがいっぱいになったことはないけど、創造で創ったアイテムボックスとスキル屋から買ったアイテムボックスは似で非なる物なのか、それとも魔力量や熟練度によるものなのか。
一つや二つ村を回るだけなら十分すぎる量だけど、王国中の村を回ることを考えると明らかに足りない。
他国でも貧しい村を見つけたら、予定になくてもお姉ちゃんは助けに行くだろうし……。
「僕のバッグをあげるよ」
アイテムバッグの存在は隠していたけど、他に方法はないのでリーナさんに教えてしまうことにする。
「……これ、どうなってるの?」
リーナさんはどんどん食べ物が詰められていくアイテムバッグを不思議そうに見る。
「僕のスキルで見た目よりもたくさん入るように加工出来るんだ。誰にも話さないでね」
「エルク君の秘密を言いふらしたりしないわよ」
「このバッグに入れてから、アイテムボックスに仕舞えば、その分たくさん入るわね」
アイテムボックスの中でも、ちゃんとアイテムバッグの効果は持続してくれるようだ。
だけど、アイテムバッグの中にアイテムバッグが入らなかった。
残念だ。もし入れば無限に物が入るのと変わらなくなるのに。
入る量は増えたけど、入れる物は選別しないと。
食糧だけでも全部は入らないから、布団とかは置いていくしかない。
お菓子もいっぱい用意したけど、最低限にするしかない。
「同じバッグをたくさん用意しておくから、明日また来て」
リーナさんに今日のところは帰ってもらい、翌日、アイテムバッグに詰めておいた食糧をアイテムボックスに仕舞ってもらい、アイテムボックスに入らなかった分は馬車に積み込む。
これでお姉ちゃんが出発する準備が全部終わった。
終わってしまった……。
「ラクネからは聞いてるけど、リーナさんは自分の意思でお姉ちゃんと一緒に行くんだよね?僕がリーナさんの傷痕を治したからじゃないよね?」
聞いてはいたけど、引っ掛かってはいたので、出発してしまう前に直接聞く。
「もちろん、エルク君には感謝しているわ。ラクネがエルク君を連れてきてくれなかったら、まだ私は部屋にひきこもっていると思う。でも、エレナと一緒に行くと決めたのは、私がエレナの夢を応援したいと思ったからよ。もちろん、エルク君に治してもらったのがキッカケにはなってるけど、それだけで可愛い妹と別れて旅に出ようとは思わないわよ」
僕に気を使って言っているわけではなさそうだ。
「それが聞けてよかったです。お姉ちゃんをよろしくお願いします」
「私の方がお世話になることが多い気がするけど、任せて」
「準備も終わったから、昨日話した通り明日の朝に出発するわ」
「うん。気を付けてね。すぐには帰って来れないよね?」
「旅自体に慣れてないし、雪も積もっているから半年くらいは掛かるかな。帰ってくる頃には夏になっているわね」
「そっか。気を付けてね」
そして翌日、お姉ちゃんが出発の時になる。
「これ、お弁当ね。リーナちゃんと一緒に食べてね」
お母さんが、大きめのお弁当をお姉ちゃんに渡す。
「ありがとう。ちゃんと手紙を出すからね」
「何か問題が起きたり、不安なことがあったらすぐに帰ってきていいのよ。無理しないでね」
「うん。そろそろ行くね」
「……いってらっしゃい。気を付けてね」
僕は少し俯いたまま見送る。
「………………ほら、何してるの。出発するから早く乗って」
「え……?」
顔を上げるとお姉ちゃんが手を差し伸べていた。
「はい。これは、エルクのお弁当ね」
お母さんからお弁当を渡される。
「一緒に行きたいなら素直に言えばいいのに。バレバレよ。顔に行きたいってずっと書いてあったわ。ほら」
お姉ちゃんが差し伸べた手を掴むように言う。
「うん!」
1章 完
お姉ちゃんが村を出てから貯めたお金は少なくなく、王国内をぐるっと回って食べ物を配るにはギリギリ足りるだろうというくらいには持っていた。
まだ教会に通う前に冒険者として高ランクの依頼を何度も受けていたお金と、スタンピード時に逃げ遅れた人の救助をしていた褒美だ。
しかし、いくらお金があったとしても、買う食糧がない。
王都は今もまだ食糧不足が続いている。
お姉ちゃんが買い占めれば、そのせいで飢える人が出る可能性がある。
それは本末転倒だ。
それに、ダイス君が王となってすぐに、王国には法が一つ増えた。
それは、食糧を買い占めることを禁止するという法だ。
さらに、法が出来る前に買い占めた者にも適正な価格で国に売るように求めた。
適正な価格とはスタンピードが起きる前の価格なので、これに応じれば買い占めた者は損を被るだろう。
無視しても裁かれることはないけど、ほとんどの商人がこれに応じた。
ダイス君が利益の為に食糧を買い占める者は、王国の民ではないと断言したからだ。
つまり、返さないと王国では今後商売がやりづらくなる。。
多くの商人をダイス君は敵に回したけど、上がり続けていた食糧の価格は落ち着きを取り戻した。
一方で、ダイス君がどうやって調べたのかはわからないけど、身を削って食糧を安く売っていた者達を介して国が集めた食糧を売った結果、身を削った以上の利益をその者達は得ることになった。
この一件で新国王は弱き者の味方だという話が広まり、ダイス君を支持する声はさらに大きくなった。
そんなことがあり、多くの食糧を買い込むことが出来ないお姉ちゃんの代わりに、僕が創造のスキルで食べ物を大量に創っている。
大量の食べ物をどうしたのか国の人から尋ねられたら、ダイス君は僕がアイテムボックスを使えることを知っているので、最近買い占めたわけではなく、昔から持っていた物だと言うことにしよう。
確認にきた人がどうかはわからないけど、苦しんでいる人の為に使うのだから、ダイス君ならそれを渡せとは言わないだろう。
すぐに食べられる食べ物の他に、野菜のタネや苗など、その場限りの援助とならない物も創る。
凍えているかもしれないから、布団もたくさん創っておこう。
「ただいま」
「お邪魔します」
寝転びながら、必要そうなものを思いついたものから創っていると、お姉ちゃんがリーナさんを連れて帰ってきた。
「おかえり」
「肝心なところを全部エルク任せにしちゃってごめんね」
「アイテムボックスに溜め込んでいたやつを出すだけだから気にしないで」
創造のスキルのことはリーナさんには秘密なので、創ったのではなく、アイテムボックスに入れてずっと保管したままになっていた物だということにしている。
さすがに量が多く、この言い訳は少し苦しいので、リーナさんは何か隠しているのだろうと思いつつも、聞かずにいてくれているのだと思う。
「リーナのアイテムボックスに移したいから、出してくれる?」
「うん」
まずは絶対に必要な食べ物から出していく。
麦を多めと、根菜類を中心に野菜がいいかな。
肉も貰ったらうれしいはずだけど、日持ちする物の方が生活には必要のはずだから、割合としては少なめでいいかな。
リーナさんのアイテムボックスに入れておけば腐らないから、村に到着した日に振る舞うくらいの量でいいだろう。
干し肉を作るにも、時間と手間が掛かることは知っている。
「ちょっと待って。そんなに入らないわよ」
まだ創った食べ物の1割も出していないのに、リーナさんのアイテムボックスが限界を迎えたようだ。
僕のアイテムボックスがいっぱいになったことはないけど、創造で創ったアイテムボックスとスキル屋から買ったアイテムボックスは似で非なる物なのか、それとも魔力量や熟練度によるものなのか。
一つや二つ村を回るだけなら十分すぎる量だけど、王国中の村を回ることを考えると明らかに足りない。
他国でも貧しい村を見つけたら、予定になくてもお姉ちゃんは助けに行くだろうし……。
「僕のバッグをあげるよ」
アイテムバッグの存在は隠していたけど、他に方法はないのでリーナさんに教えてしまうことにする。
「……これ、どうなってるの?」
リーナさんはどんどん食べ物が詰められていくアイテムバッグを不思議そうに見る。
「僕のスキルで見た目よりもたくさん入るように加工出来るんだ。誰にも話さないでね」
「エルク君の秘密を言いふらしたりしないわよ」
「このバッグに入れてから、アイテムボックスに仕舞えば、その分たくさん入るわね」
アイテムボックスの中でも、ちゃんとアイテムバッグの効果は持続してくれるようだ。
だけど、アイテムバッグの中にアイテムバッグが入らなかった。
残念だ。もし入れば無限に物が入るのと変わらなくなるのに。
入る量は増えたけど、入れる物は選別しないと。
食糧だけでも全部は入らないから、布団とかは置いていくしかない。
お菓子もいっぱい用意したけど、最低限にするしかない。
「同じバッグをたくさん用意しておくから、明日また来て」
リーナさんに今日のところは帰ってもらい、翌日、アイテムバッグに詰めておいた食糧をアイテムボックスに仕舞ってもらい、アイテムボックスに入らなかった分は馬車に積み込む。
これでお姉ちゃんが出発する準備が全部終わった。
終わってしまった……。
「ラクネからは聞いてるけど、リーナさんは自分の意思でお姉ちゃんと一緒に行くんだよね?僕がリーナさんの傷痕を治したからじゃないよね?」
聞いてはいたけど、引っ掛かってはいたので、出発してしまう前に直接聞く。
「もちろん、エルク君には感謝しているわ。ラクネがエルク君を連れてきてくれなかったら、まだ私は部屋にひきこもっていると思う。でも、エレナと一緒に行くと決めたのは、私がエレナの夢を応援したいと思ったからよ。もちろん、エルク君に治してもらったのがキッカケにはなってるけど、それだけで可愛い妹と別れて旅に出ようとは思わないわよ」
僕に気を使って言っているわけではなさそうだ。
「それが聞けてよかったです。お姉ちゃんをよろしくお願いします」
「私の方がお世話になることが多い気がするけど、任せて」
「準備も終わったから、昨日話した通り明日の朝に出発するわ」
「うん。気を付けてね。すぐには帰って来れないよね?」
「旅自体に慣れてないし、雪も積もっているから半年くらいは掛かるかな。帰ってくる頃には夏になっているわね」
「そっか。気を付けてね」
そして翌日、お姉ちゃんが出発の時になる。
「これ、お弁当ね。リーナちゃんと一緒に食べてね」
お母さんが、大きめのお弁当をお姉ちゃんに渡す。
「ありがとう。ちゃんと手紙を出すからね」
「何か問題が起きたり、不安なことがあったらすぐに帰ってきていいのよ。無理しないでね」
「うん。そろそろ行くね」
「……いってらっしゃい。気を付けてね」
僕は少し俯いたまま見送る。
「………………ほら、何してるの。出発するから早く乗って」
「え……?」
顔を上げるとお姉ちゃんが手を差し伸べていた。
「はい。これは、エルクのお弁当ね」
お母さんからお弁当を渡される。
「一緒に行きたいなら素直に言えばいいのに。バレバレよ。顔に行きたいってずっと書いてあったわ。ほら」
お姉ちゃんが差し伸べた手を掴むように言う。
「うん!」
1章 完
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