天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる

こたろう文庫

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「待たせたな」

コロネさんと現実逃避していたらギルマスが入ってきた。
ギルマスの用件が終わったら、来てもらえるように話をしていたようだ。

「ギルマス、マオさんが生活スキルの祝福を受けた時点で収納に既に物が入っていたそうです。ちょうど中身を出し終わった所なので、買い取れるものは買い取って欲しいとのことなんですが、私では価値が分からないものがほとんどなので手伝って下さい」
コロネさんがギルマスに今の状況を簡単に説明する。
丸投げするつもりではなかったようだ。

「…………ああ、わかった。坊主、少しいいか?」
ギルマスに呼ばれて、コロネさんには聞こえないように小声で話をする。

僕はギルマスにコロネさんに話した内容を教える。
樹海のことや異世界から来たこと、王国での事は話していないけど、樹海で手に入れた素材を見せてはいることを話す。

それから、転移させられる寸前に国王に盗むのスキルを使ったことを話して、あの宝剣や貨幣などは国王から盗んだものではないかという話もした。

「俺の手に負える話じゃないな。コロネに話したことは坊主がそれでいいなら何も問題はないが、王国の物を盗んだかもしれないという件は、俺がどうにか出来る許容範囲を軽く超えている」

「……そうですよね。とりあえず、ギルマスの可能な範囲で収納に入っていた物の処理をお願いしていいですか?」

「ああ」

ギルマスと内緒話を終えて、コロネさんとギルマスが仕分けをしていく。

僕はとりあえず、スキル球とスキル球のような色違いの球だけを収納に戻す。
他に僕の出来ることはない。

僕は困惑しながら作業する2人を眺めながら待ち、しばらくして仕分けが終わったようだ。

「終わったぞ。まずこっちがギルドで価値がないと判断したやつだ。坊主が要らないなら処分しておく。必要な物があれば抜いておいてくれ」
ギルマスが言った所には棍棒などのコロネさんからも処分するか聞かれた物と衣服の一部が置いてある。

「全部処分でいいです」
特に欲しいものはない。

「わかった。それから、ここの物はすぐにギルドで買い取りが出来るものだ。これが明細だ。問題ないか確認してくれ」
ギルマスに渡された紙には、細かくそれぞれの買い取り額が書かれている。

「大丈夫です。正直に言って、価値がどのくらいあるのかはわかりませんがギルマスを信用します」

「そうか。それでこっちは買い取り額を決めることがすぐには出来ないものだ。俺にも価値がわからん。だからオークションに出させてもらう。坊主には落札価格の半分を渡すということでどうだ?残りの半分から会場までの運搬費や手数料などを引いた分をギルドの利益とするつもりだ」

「僕の目的は収納の中身の整理なので、それで問題ないです。お金に関してはさっきスキル球を大金貨で買い取ってもらっているので困ってないです。その価格が妥当かどうかもわからないのでギルマスの判断にお任せします」

「欲がないな。少しでも多く金が欲しいとは思わないのか?」

「あるに越したことはありませんけど、必要な分があれば問題ないです。今はこの子達に美味しいものを買ってあげられれば十分です」

「……考え方は人それぞれか。話を戻すが、貨幣は使いにくいだろうから帝国のものと替えておくか?」
帝国で王国の貨幣を大量に持ってても、確かに使いにくい。

「僕は助かりますが、いいんですか?」

「冒険者ギルドは国に属していないからな。王国にあるギルドが使うことになるだけだ。何も困りはしない。ただ、額が額だから交換するなら時間はもらって、渡すのも少しずつになる。それでもよければ替えておく」

「お願いします」

「最後にこれらだが、これは買い取りも処分もギルドでは出来ない。理由はわかるだろ?悪いが持って帰ってくれ」
ギルマスに言われたのは、宝剣や金ピカな鎧などの装備品や絵画や壺などの骨董品に、ドレスなどの衣服と王冠類の装飾品だ。

「わかりました。ただ、多分収納に入りきりません」
ここに分けられているものに共通しているのは、王国から盗んだということが明らかに分かるものだ。

多分今頃、王国では宝物庫の中身が盗まれたと騒ぎになっている。
これらを処分したり、売却すると盗んだことがバレるから、ギルドとして受け取れないということだ。

「家の中に隠しておくなり、埋めるなり好きにしてくれ。家まで持っていくのは俺が手伝ってやるから。坊主はどこに住んでるんだ?オークションに出した物の金を後日持っていく必要もあるし、教えてくれ」

「今は街の外で野宿してます」

「は?」
「えっ?」
ギルマスとコロネさんが驚く。

「宿にはこの子達を連れ込めないと言われたので」

「……ちょっと待ってろ」
そう言って、ギルマスが倉庫を出て行き、戻ってきたギルマスに紙を2枚渡された。

「そこにいけば空き家を紹介してくれる。それは紹介状だ。借りてもいいし、買ってもいい。代金は俺の方に請求するように書いてある。さっきの王国の貨幣が帝国のものに替わるまでは俺の方でそこから払っておく」
ギルマスに地図を見せてもらい、街のどの辺りに行けばいいかを教えてもらう。

「ありがとうございます」
野宿をしなくていいようにしてくれたようだ。

「住む所が決まったらまたギルドに戻ってきてくれ。運ぶのを手伝うからな」

僕は一度ギルドを後にして、ギルマスに教えてもらった店に行く。

「すみません。家を探しにきました」
僕は店にいた男性に用件を言って、ギルマスからもらった紹介状を渡す。

「確かに冒険者ギルドのマスターからの紹介だな。どんな家がいい?」
男性が紹介状を読んでから、聞いてくる。

「この子達が窮屈に感じないように庭が欲しいです。それから、大きくなくていいのでお風呂と台所があると嬉しいです」

「調理場はあるてして、庭と風呂か……。いくつかあるから案内する。見て選んでくれ。おい!お客様の案内をする。馬車を用意してくれ」

「かしこまりました」
店の奥から返事が聞こえてきた。

少ししてから店の外に出ると馬車が止まっていた。

「お前が対応出来ない客が来たら、今日は店主はいないから後日来るように言っておいてくれ」

「かしこまりました」
店主自ら案内してくれるようだ。

「乗ってくれ。俺のお勧めする所から順番に案内する」

「この子達も乗せていいですか?」

「問題ない」
乗せていいようだ。ダメなら歩いて行こうかと思ったけど、この人はそのあたりが寛容だった。

僕はみんなと馬車に乗り、店主が御者を務める。

1軒目に到着する。
かなり街の中心からは離れている。

「見ての通りだが、ここは庭が広い。そいつらが窮屈することはないだろう。それから、周りに住んでいる人もほとんどいないから、そいつらが庭で走り回っていても迷惑にならない。俺がここを1番に勧める理由はそこだ。それじゃあ、屋敷の中を案内する」
店主がサラッと言ったけど、ここは屋敷だ。
家を探しに来たと言ったら、1番に屋敷を勧められた。

想定はしていなかったけど、確かに庭は広い。
豪邸のような大きい屋敷が、小さく見える程に庭が広い。

僕は店主に案内されて屋敷の中を見て回る。

全てを見て回るのは面倒な程に部屋があって、大きくなくてもいいといったはずなのに、とても大きな浴場と店でもやるのかと思うほどの調理場があった。

「ここが倉庫として使う地下室だ。実はここには秘密がある。悪いが後ろを向いておいてくれ。買うのが決まったらやり方は教える」
僕は店主の言う通り後ろを見る。

ガチャ!ギィーーー
「もういいぞ」
振り返ると、さっきまでただの床だったのにさらに地下に行く階段があった。

「地下室のさらに下に隠し部屋があるんだ」
降りた先は何もない倉庫だった。

沢山ある同じような部屋は全てを見てはないけど、これで見て回ったようだ。

「どうする?ここは貸してはいないから、住むなら買ってもらう必要がある。元々は貴族が住んでいた屋敷だから建物としても悪くないはずだ。ギルドマスターが金を立て替えると書いてあったから、金額は度外視して勧めた。金があるならこれから案内する予定のどこよりもいい所だとは断言出来る」
店主が言うようにこの屋敷に不満を感じるところは見当たらなかった。

1つ心配事はあるけど、大丈夫だろう。

「ちなみにいくらですか?」

「白金貨10枚だ。ギルドマスターの紹介だから安くはしている」

「とりあえず、次の所を見せてもらってもいいですか?」

「ああ、もちろんだ」

僕はここでは決めずに次に店主が勧める家を見に行く。

「ここも庭は広めだ。さっきのと比べはするなよ。ここは周りに人が住んでいるから、放し飼いは嫌がられるかもしれない。俺が見ている限り、驚く程に躾けられているようだが、それを他の人が知ってるわけではないからな」

店主から庭の説明をされる。
確かに店主の言う通り、実際にみんなが躾けられているかどうかは関係ない。
暴れるかも……、噛むかも……と思われ邪険にされる可能性はある。

次に大きめの家の中を見る。
浴室も広くて、キッチンもあって悪くなかった。

「ここは借りるなら一月大銀貨1枚だ。買い取る場合は大金貨7枚だな」

「さっきの屋敷でお願いします」
僕は豪邸を買うことにした。

びっくりするくらいに高いけど、白金貨はすぐに数え切れないくらいにたくさんあった。
湯水のようにお金はあるので、みんながのびのびと暮らせる所を選ぶことにする。

それから、あの隠し部屋はヤバいものを隠しておくのに良さそうだ。

「……あ、ああ。お買い上げありがとうございます。……勧めはしたが本当にあそこに決めるとは思っていなかった。俺としてはもう1軒案内した後に、ここの家に決めてもらうつもりで案内していたんだがな。……あそこが1番お勧めなのは間違ってないから誤解しないでくれよ。買えると思っていなかっただけだ」
店主は驚きながら答える。

その後、ギルドに戻った僕はギルマスに手伝ってもらって屋敷に引き取り拒否された物を移動させた。

差が激しすぎるけど、これで野宿生活とはおさらばだ。
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