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13 ルイーザとの約束
エマの叫びに家人が集まって、早急に医者を呼びに行かせて診てもらったが義兄の命に別状は無いと言われた。
ただお酒と一緒に睡眠薬を飲んだので2~3日は倦怠感などの後遺症があるかもしれないそうだ。
「この恥知らずは追い出すか修道院に送るべきだ!」
「なによ、ちょっと眠らせただけじゃないのぉ~」
「通常の2倍も飲ませて、体に何かあったらどうするんだ・・・」
「だって途中で起きたら言い訳できないと思ってぇ」
「なんの言い訳だ!貴様は腐っても王太子妃だったんだろうが!」
そもそも王太子妃の器では無いから離縁されてきたのだ。
祖父と父が叱ってもオリーヴは反省などしていない。欠伸をして眠そうだ。
「オリーヴには呆れるわね。睡眠薬なんか飲ませて何をしたかったのよ?既成事実を作るなら媚薬でしょう」
「媚薬は手に入らなかったのよ。正直カミールとはやりたくないし」
「エマの前でそんな話は止めるんだ・・・カミールの命に別状はないから部屋に戻ろう。オリーヴは当分部屋で謹慎だ」
父が促してそれぞれを部屋に戻した。
ケロッとした顔で戻って行くオリーヴにエマは初めて憎らしいと思った。
オリーヴは昔から義兄にはどんな我儘も聞いて貰えて、何をしてもいいと思っている節があった。婿に入りたくてやって来たお爺様の影だと見下している。遠慮なく言いたいことを言って、デートはいつもすっぽかし、恋人を大勢侍らして、最後に裏切った。
養子という立場から義兄も耐えたのだろうけど、姉はやり過ぎた。
「私はお兄様の傍にいます」
「いいから、家令と侍女長がいるからお前も戻りなさい」
年配の二人が付いているなら問題は無いと思いつつ、後ろ髪を引かれながらエマも部屋に戻った。
翌日エマは学園を休んで昼過ぎまで眠っている義兄の傍にいた。
ルイーザ親子とエリックは街に買い物に出かけてオリーヴは部屋で謹慎。
先代が帰るまでの辛抱と思っているはずだ、父はオリーヴに甘いのだから。
祖父と父は朝から書斎に籠りっきりで何かを相談し合っている。
義兄のベッドの傍でウトウトしていると「エマ」と声がした。
「お兄様大丈夫ですか?」
「ああ、水が欲しい。フラフラするな」
「お姉様に睡眠薬を飲まされたんですよ。どうしたの?お兄様らしくもない」
差し出されて水を飲みほしてカミールは記憶を辿った。
昨夜は結構ワインを飲んでいて酔っていた。そこにオリーヴが勝手に入って来たのだ。
自分もワインが欲しいと言って隣で飲み始めると、また昼間の取引の話を持ち出してきた。
断れば今度は政略で白い結婚をしようなどと言いだして辟易させられた。
夜も遅いからオリーヴに部屋に戻るよう言ったら突然押し倒され、口移しで苦いワインを飲まされたのだった。
「エマが気付いてくれたのか?」
「ええ、お姉様が部屋にいて様子がヘンだったので中に入りました」
「すまなかった。昨夜は少し酔っていたんだ」
空のコップを受け取ってサイドテーブルに置き、義兄の元気な姿にホッとした。
昨夜は薬で動けない義兄に触れて酷く動揺した。そして無防備にあんな時間にオリーヴとお酒を飲んでいたのが腹立たしかった。
「もしも、もしもですよ? び、媚薬だったらどうするんです。油断しすぎです」
「そうだな、その時はエマの所に助けを求めに行こうかな」
「でも酔っていたら正常な判断が出来なくなってお姉様と・・・その・・」
「オリーヴは私を相手になんてしないよ、お互い無理だ」
『正直カミールとはやりたくないし』
恥ずかし気もなくオリーヴもそう言っていた。
「エマはなぜ部屋に来たの? 用事があったのか?」
「んー 王配の事とか、後継者の事とか聞きたかったの」
「それなら大丈夫、心配は無いよ。でもユリウスとオリーヴには気を付けて欲しい。予想もしない事を仕掛けて来るかもしれないから」
「分かりました。ではお兄様が目覚めたと伝えてきますね」
エマが椅子から立ち上がると「エリック殿が良いと思ってるのか?」と義兄がエマを見上げた。
「良い人だと思いますよ。どうして?」
「昨日はずっと彼を見ていたから、また一目惚れしたのかと心配した」
(やだ、やはりエリック様を見過ぎていたわね)
「一目惚れなんかしませんよ。ちょっと気になっただけです」
「・・・うっ・・・」
なぜか落ち込む義兄の部屋から出るとルイーザ達が戻っており、屋敷の中に賑やかな声が響いている。
「大きなお店がいっぱいあったよー。明日はね、植物園にいくんだー」
甥たちは王都での買い物を楽しんできたようだ。父は小さなマシューを抱き上げたいがエリックから離れない。
「カミールはどうだ?」
元気になったと伝えると「ふん。そうか」と言って振り返り、お爺様は曽孫たちに優しい目を向けた。
「うわぁぁあん」
父に抱っこされたマシューが鳴きだしたのでエリックがあやしている。
「ふふ、お父様も泣きそう」
「エマ、エリック殿はどうだ?優しい良い男だぞ。年が9歳離れているが問題ないだろう」
「お爺様・・・あの・・もう少し王都から近い家が良いのですが」
「彼は次男だから婿にすればいいだろう」
「えっと・・・そうだ、カミールお兄様みたいな人が良いです!」
「ふむ、文官タイプか。カミールは王家に入れたいのだがな」
「婚約解消したばかりなので、ゆっくり探して下さいまし」
義兄のような人物は簡単に見つからないだろう。祖父は髭を摩りながら考え込んでいる。
エマにはエリックを婿に出来ない理由があるのだが、ルイーザとの約束で誰にも言えないのであった。
ただお酒と一緒に睡眠薬を飲んだので2~3日は倦怠感などの後遺症があるかもしれないそうだ。
「この恥知らずは追い出すか修道院に送るべきだ!」
「なによ、ちょっと眠らせただけじゃないのぉ~」
「通常の2倍も飲ませて、体に何かあったらどうするんだ・・・」
「だって途中で起きたら言い訳できないと思ってぇ」
「なんの言い訳だ!貴様は腐っても王太子妃だったんだろうが!」
そもそも王太子妃の器では無いから離縁されてきたのだ。
祖父と父が叱ってもオリーヴは反省などしていない。欠伸をして眠そうだ。
「オリーヴには呆れるわね。睡眠薬なんか飲ませて何をしたかったのよ?既成事実を作るなら媚薬でしょう」
「媚薬は手に入らなかったのよ。正直カミールとはやりたくないし」
「エマの前でそんな話は止めるんだ・・・カミールの命に別状はないから部屋に戻ろう。オリーヴは当分部屋で謹慎だ」
父が促してそれぞれを部屋に戻した。
ケロッとした顔で戻って行くオリーヴにエマは初めて憎らしいと思った。
オリーヴは昔から義兄にはどんな我儘も聞いて貰えて、何をしてもいいと思っている節があった。婿に入りたくてやって来たお爺様の影だと見下している。遠慮なく言いたいことを言って、デートはいつもすっぽかし、恋人を大勢侍らして、最後に裏切った。
養子という立場から義兄も耐えたのだろうけど、姉はやり過ぎた。
「私はお兄様の傍にいます」
「いいから、家令と侍女長がいるからお前も戻りなさい」
年配の二人が付いているなら問題は無いと思いつつ、後ろ髪を引かれながらエマも部屋に戻った。
翌日エマは学園を休んで昼過ぎまで眠っている義兄の傍にいた。
ルイーザ親子とエリックは街に買い物に出かけてオリーヴは部屋で謹慎。
先代が帰るまでの辛抱と思っているはずだ、父はオリーヴに甘いのだから。
祖父と父は朝から書斎に籠りっきりで何かを相談し合っている。
義兄のベッドの傍でウトウトしていると「エマ」と声がした。
「お兄様大丈夫ですか?」
「ああ、水が欲しい。フラフラするな」
「お姉様に睡眠薬を飲まされたんですよ。どうしたの?お兄様らしくもない」
差し出されて水を飲みほしてカミールは記憶を辿った。
昨夜は結構ワインを飲んでいて酔っていた。そこにオリーヴが勝手に入って来たのだ。
自分もワインが欲しいと言って隣で飲み始めると、また昼間の取引の話を持ち出してきた。
断れば今度は政略で白い結婚をしようなどと言いだして辟易させられた。
夜も遅いからオリーヴに部屋に戻るよう言ったら突然押し倒され、口移しで苦いワインを飲まされたのだった。
「エマが気付いてくれたのか?」
「ええ、お姉様が部屋にいて様子がヘンだったので中に入りました」
「すまなかった。昨夜は少し酔っていたんだ」
空のコップを受け取ってサイドテーブルに置き、義兄の元気な姿にホッとした。
昨夜は薬で動けない義兄に触れて酷く動揺した。そして無防備にあんな時間にオリーヴとお酒を飲んでいたのが腹立たしかった。
「もしも、もしもですよ? び、媚薬だったらどうするんです。油断しすぎです」
「そうだな、その時はエマの所に助けを求めに行こうかな」
「でも酔っていたら正常な判断が出来なくなってお姉様と・・・その・・」
「オリーヴは私を相手になんてしないよ、お互い無理だ」
『正直カミールとはやりたくないし』
恥ずかし気もなくオリーヴもそう言っていた。
「エマはなぜ部屋に来たの? 用事があったのか?」
「んー 王配の事とか、後継者の事とか聞きたかったの」
「それなら大丈夫、心配は無いよ。でもユリウスとオリーヴには気を付けて欲しい。予想もしない事を仕掛けて来るかもしれないから」
「分かりました。ではお兄様が目覚めたと伝えてきますね」
エマが椅子から立ち上がると「エリック殿が良いと思ってるのか?」と義兄がエマを見上げた。
「良い人だと思いますよ。どうして?」
「昨日はずっと彼を見ていたから、また一目惚れしたのかと心配した」
(やだ、やはりエリック様を見過ぎていたわね)
「一目惚れなんかしませんよ。ちょっと気になっただけです」
「・・・うっ・・・」
なぜか落ち込む義兄の部屋から出るとルイーザ達が戻っており、屋敷の中に賑やかな声が響いている。
「大きなお店がいっぱいあったよー。明日はね、植物園にいくんだー」
甥たちは王都での買い物を楽しんできたようだ。父は小さなマシューを抱き上げたいがエリックから離れない。
「カミールはどうだ?」
元気になったと伝えると「ふん。そうか」と言って振り返り、お爺様は曽孫たちに優しい目を向けた。
「うわぁぁあん」
父に抱っこされたマシューが鳴きだしたのでエリックがあやしている。
「ふふ、お父様も泣きそう」
「エマ、エリック殿はどうだ?優しい良い男だぞ。年が9歳離れているが問題ないだろう」
「お爺様・・・あの・・もう少し王都から近い家が良いのですが」
「彼は次男だから婿にすればいいだろう」
「えっと・・・そうだ、カミールお兄様みたいな人が良いです!」
「ふむ、文官タイプか。カミールは王家に入れたいのだがな」
「婚約解消したばかりなので、ゆっくり探して下さいまし」
義兄のような人物は簡単に見つからないだろう。祖父は髭を摩りながら考え込んでいる。
エマにはエリックを婿に出来ない理由があるのだが、ルイーザとの約束で誰にも言えないのであった。
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