婚約は解消されましたが勘違い令嬢に義兄の溺愛はなかなか届きません

ミカン♬

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14 義兄から婚約者へと

昨日庭園でルイーザがエマの耳元で囁いた。
『いい人でしょう?お爺様がエリックをエマにどうかって言ってるのだけど』

『優しそうな良い人ですね』

『でもね、彼はダメよ。私達に必要な人だから、エマにはあげられないわ』

『それならお爺様にお断りします。まだ婚約は考えられなくて』

『誰にも内緒にして上手く断って欲しいの。約束して、エマ』

約束したもののルイーザの『あげる』と言う言葉に違和感があった。それからエマはエリックが気になってついつい見てしまう。


(もう見ないでおこう。怪しいと思われるわ)
義兄にもバレていた。祖父には上手く断ったのでもう大丈夫。


義兄は体調も良くなったのか書斎に入って仕事をしている。

そしてこの夜、父から爆弾発言があるのだった。


夕食が終わると子どもたちは侍女長にエリックと共に部屋に戻された。
書斎にエマと父と祖父、カミールとルイーザの5名が集まって家族会議が始まった。

「ねぇエマ、何か重大な発表かしらね? ワクワクするわ」
父を見ると、この世の終わりのような顔をしている。

「はぁ~ 実はオリーヴが訴えられている。慰謝料を請求されて、カミールに事実関係を調べて貰っていたんだが、オリーヴの立場は良くない」

「クラーク ヤンデール伯爵とマギー ジャックス子爵令嬢の婚約が破棄され、理由がオリーヴとの浮気。しかも破棄したのがヤンデール伯爵の方で、ジャックス子爵はフランセ侯爵家にも抗議しています。浮気は事実と判明しています」

義兄の報告にエマは城の庭園で二人が逢引きしていたのを思い出した。伯爵は24~5歳で婚約者がいてもおかしくない年だ。

「ヤンデール伯爵家から婚姻の申し込みが来ている。先代とも話し合って、オリーヴはヤンデール伯爵に嫁がせることにした」

「オリーヴは納得しているのよね?」

「はぁ~するわけ無いだろう。部屋で暴れているようだ。メイド達が怖がっている」

「あやつは修道院へ行くべきだ! 薬を盛るような人間だぞ」

父は擁護していた筈だが、薬を盛ったのが姉を切る決定打になったようだ。

「この国で再婚相手はヤンデール伯爵以外には無いかもしれません。彼はオリーヴをずっと慕い続けていました。きっと大切にして、幸せにしてくれると思いますが」

「私も賛成だわ。エマが家督を継いでくれる方が安心だもの」

「私が後継者ですか?」

「いいや、エマが継いだ場合オリーヴに恨まれるだろう?そこでカミールに継いでもらう」

「あら、そうしたらカミールが恨まれませんか?」

「儂を恨めばいい。カミールは儂の養子にして継がせる」
祖父は義兄を王配にするのを諦めたようだ。

「私もお兄様が良いと思います」
誰が継いだところでオリーヴは家族全員を恨むだろう。目を瞑ると暴れまわって喚き散らすオリーヴの姿が目に浮かんだ。

「カミールの婚約者はエマとする。いいね、エマ?」

「エマ!寝てるのか!」

「え? あ、はい」

書斎はシ─ンとなり粛々と皆で決定を受け入れた。

「エマ婚約おめでとう。二人はお似合いだわ」
「エマが卒業したら直ぐに式を挙げたいと思います」
義兄がエマの腰を抱いて引き寄せた。


「───────え!? 私、お兄様と結婚するの?」

「お前が儂にカミールがいいと言ったんじゃないか」
「いえ、あれは・・・」
「儂に一任すると言ったんだ、もう決定だ」

「カミール、エマを頼むよ。この通りぼんやりとしてるからな」
「はい、必ず幸せにします」
「ウェディングドレスは早く注文した方が良いわね!」
「オリーヴを先に嫁がせなければ、はぁ~ 忙しくなるな」

畳みかけるように話が進んで行く。まてまてまて。

「お兄様、本当に私でいいのですか?もっと相応しい人がいるかもしれませんよ?」

「あとでゆっくり話しをしようか、エマ」
義兄からは冷たいオーラがちょっと出ていた。



家族会議が終わりエマは義兄の部屋まで連れて行かれた。扉は開いて廊下には侍女長が待機中。

「エマ、本当は先に結婚を申し込みたかった。植物園で申し込む予定だったんだ」
エマをソファーに座らせて義兄は足元に膝をつき手を握った。

「そうだったの? 本当に私でいいの?」
手を握ったまま隣に座って熱く見つめてくる義兄にエマの心臓が跳ねる。

「養子に来た時、エマにはもう婚約者がいたから諦めていたけど、エマが婚約者だったら良かったのにとずっと思っていたんだ」

「私はお兄様が本当のお兄様だと良いな~と思っていました」

「それだと結婚できないじゃないか。でももうエマは私だけのエマになった。過去なんてどうでもいい。愛しているんだ、結婚してくれるね?」

「はい。でもごめんなさい」

「え? ごめんなさい?」


「お兄様から婚約者へと変わっていくのに、少し時間がかかるわ」

「全然かまわないよ。卒業までゆっくり変えていこう」

エマを抱きしめて義兄は軽く口づけた。

「これからは名前で呼んで欲しい。お兄様って呼んだらキスの罰だ」

「お兄様、キスは・・・早くないですか?」

「またお兄様って呼んだね」

カミールの端正な顔が近づいて、角度を変えて何度もキスされる。
もう今までの真綿で包むような優しさで愛情を注いでくれた義兄は消えて無くなったとエマは知った。

このあと兄と呼ぶ癖が抜けなくて、エマは散々キスの罰を受ける羽目になる。


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