2 / 34
2
しおりを挟む
「ただいま戻りました」
「お嬢さん、おかえりなさい」
番頭のマックスさんは父の乳兄弟で、クロードは彼から商売の事を教えてもらった。
義母達が大きな顔をしている屋敷より店の方が楽しい。
「何かお手伝いしましょうか?」
「いや構わないです。明日にはゲイリーも戻る、急ぐ仕事は無いですよ」
お父様は義母を連れて仕入れ旅行に出かけているようだ。
母が亡くなり淋しかったのか父はお客だった美しい未亡人のシャーリーにのめり込んでいった。
再婚に反対していたお爺様が亡くなると直ぐにシャーリーと婚姻を結んだのだ。
「じゃぁ 売り上げのチェックでもしましょうか」
「お姉さま余計なことはしないで。無理をさせて寝込まれたら面倒だわ」
「セシリーまた来てたのね・・・」
同い年の義妹のセシリーは非常識なおバカさんだ。
彼女は王立学園に通って成績は最低。遊びに行ってるようなもの。
王立学園は3年制で私の女子学園は2年制。
私は早く卒業して店を手伝いたかったのよ。
「女子学園なんてつまらない!」と喚いてセシリーは共学の王立学園に入った。
そこで気弱な伯爵令息を掴まえ誘惑し妊娠、卒業間近に退学した。
その伯爵家に嫁入りして男の子を3人産み、三男をうちの養子にしたのだった。
「あら、このブローチ素敵ね。貸してね!」
「あ、ちょっと!」
店に顔を出しても手伝うわけでもない。ああして店の品物を勝手に持ち出して、当り前だが返してくれない。
セシリーだけじゃない、2歳下の義妹ミリアも手癖の悪い子だった。
この義妹たちは来た当初から私の物を欲しがり、私は泣いて嫌がった。
それで父がお店の物を上げると言ったので、好き勝手に商品を持ち出すようになったのだ。
当然マックスさんや従業員も父に抗議したが「高級品はガラスケースの中で持ち出せない。陳列商品なら安いものだ」と義妹たちの行為を容認した。
バーンズ商店は亡き祖父ケリー バーンズが一代で築いた雑貨店だ。
宝石から家具、衣服、小物と何でも扱っており、王都でも有名な大店だった。
それが徐々に傾いていったのは不甲斐ない父は勿論、3年前に我が家にやって来たあの屑共3人のせいだ。
私はお爺様とバーンズの店が好きだった。
だからクロードの協力を得て店を守ろうと必死に働いた。
過労で何度も倒れて寿命を削って店を守ったのだ。
結果、セシリーの息子夫婦に守り抜いた店を渡しただけだった。
セシリーの息子は悪い子ではなかったが、結婚した嫁が強欲で気の強い女性だった。
孫にあたる子たちも嫁に似て、人を見下すような子ども達に育った。
思い出せばクロードに申し訳なくて胸が痛む。
子どもは2回妊娠したが2回とも無理が祟って流産し、子どもは望めなくなった。
2度目の流産の後からクロードとベッドを共にする事が無くなっていった。
まだ男盛りだった彼がどう思っていたのか聞けなかったし、寡黙な彼は何も言わなかった。
「愛してほしい」と何故言えなかったのだろう。
あの時はクロードは元の恋人と浮気していると思った。そんな情報を聞いた記憶もある。なのでそれならそれでいいと諦めていた。
自分の幸せはお爺様の大切な店を守る事と信じていた。
私はお爺様の怨念でバーンズの店に取り憑かれていたのかもしれない。
「お嬢さん、おかえりなさい」
番頭のマックスさんは父の乳兄弟で、クロードは彼から商売の事を教えてもらった。
義母達が大きな顔をしている屋敷より店の方が楽しい。
「何かお手伝いしましょうか?」
「いや構わないです。明日にはゲイリーも戻る、急ぐ仕事は無いですよ」
お父様は義母を連れて仕入れ旅行に出かけているようだ。
母が亡くなり淋しかったのか父はお客だった美しい未亡人のシャーリーにのめり込んでいった。
再婚に反対していたお爺様が亡くなると直ぐにシャーリーと婚姻を結んだのだ。
「じゃぁ 売り上げのチェックでもしましょうか」
「お姉さま余計なことはしないで。無理をさせて寝込まれたら面倒だわ」
「セシリーまた来てたのね・・・」
同い年の義妹のセシリーは非常識なおバカさんだ。
彼女は王立学園に通って成績は最低。遊びに行ってるようなもの。
王立学園は3年制で私の女子学園は2年制。
私は早く卒業して店を手伝いたかったのよ。
「女子学園なんてつまらない!」と喚いてセシリーは共学の王立学園に入った。
そこで気弱な伯爵令息を掴まえ誘惑し妊娠、卒業間近に退学した。
その伯爵家に嫁入りして男の子を3人産み、三男をうちの養子にしたのだった。
「あら、このブローチ素敵ね。貸してね!」
「あ、ちょっと!」
店に顔を出しても手伝うわけでもない。ああして店の品物を勝手に持ち出して、当り前だが返してくれない。
セシリーだけじゃない、2歳下の義妹ミリアも手癖の悪い子だった。
この義妹たちは来た当初から私の物を欲しがり、私は泣いて嫌がった。
それで父がお店の物を上げると言ったので、好き勝手に商品を持ち出すようになったのだ。
当然マックスさんや従業員も父に抗議したが「高級品はガラスケースの中で持ち出せない。陳列商品なら安いものだ」と義妹たちの行為を容認した。
バーンズ商店は亡き祖父ケリー バーンズが一代で築いた雑貨店だ。
宝石から家具、衣服、小物と何でも扱っており、王都でも有名な大店だった。
それが徐々に傾いていったのは不甲斐ない父は勿論、3年前に我が家にやって来たあの屑共3人のせいだ。
私はお爺様とバーンズの店が好きだった。
だからクロードの協力を得て店を守ろうと必死に働いた。
過労で何度も倒れて寿命を削って店を守ったのだ。
結果、セシリーの息子夫婦に守り抜いた店を渡しただけだった。
セシリーの息子は悪い子ではなかったが、結婚した嫁が強欲で気の強い女性だった。
孫にあたる子たちも嫁に似て、人を見下すような子ども達に育った。
思い出せばクロードに申し訳なくて胸が痛む。
子どもは2回妊娠したが2回とも無理が祟って流産し、子どもは望めなくなった。
2度目の流産の後からクロードとベッドを共にする事が無くなっていった。
まだ男盛りだった彼がどう思っていたのか聞けなかったし、寡黙な彼は何も言わなかった。
「愛してほしい」と何故言えなかったのだろう。
あの時はクロードは元の恋人と浮気していると思った。そんな情報を聞いた記憶もある。なのでそれならそれでいいと諦めていた。
自分の幸せはお爺様の大切な店を守る事と信じていた。
私はお爺様の怨念でバーンズの店に取り憑かれていたのかもしれない。
50
あなたにおすすめの小説
皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]
風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが
王命により皇太子の元に嫁ぎ
無能と言われた夫を支えていた
ある日突然
皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を
第2夫人迎えたのだった
マルティナは初恋の人である
第2皇子であった彼を新皇帝にするべく
動き出したのだった
マルティナは時間をかけながら
じっくりと王家を牛耳り
自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け
理想の人生を作り上げていく
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
【完結】ありのままのわたしを愛して
彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。
そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。
私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?
自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?
【完】真実の愛
酒酔拳
恋愛
シャーロットは、3歳のときに、父親を亡くす。父親は優秀な騎士団長。父親を亡くしたシャーロットは、母と家を守るために、自ら騎士団へと入隊する。彼女は強い意志と人並外れた反射神経と素早さを持っている。
シャーロットは、幼き時からの婚約者がいた。昔からのシャーロットの幼馴染。しかし、婚約者のアルフレッドは、シャーロットのような強い女性を好まなかった。王宮にやってきた歌劇団のアーニャの虜になってしまい、シャーロットは婚約を破棄される。
【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ
彩華(あやはな)
恋愛
突然の婚約解消されたセイラ。それも本人の弁解なしで手紙だけという最悪なものだった。
傷心のセイラは伯母のいる帝国に留学することになる。そこで新しい出逢いをするものの・・・再び・・・。
従兄妹である私は彼らに・・・。
私の従姉妹を泣かしたからには覚悟は必要でしょう!?
*セイラ視点から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる