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13 黒い糸
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サーレン商店の馬車で送ってもらって屋敷に到着するとエントランスで義妹二人が待っていた。
「クレア 除籍ですって? もう大きな顔出来ないわねぇ」
「お母様からききました。お店はクロード様とわたしが継ぎます」
ニタニタ笑って嬉しくて堪らないようだ。
「勝手にすればいいわ。出ていく準備するからどいて」
「あらぁ~ この屋敷の物を持っていくのは許されなくってよ?」
「バカね、私自身の財産があるのよ、ホントバカね」
「お母様~~クレアが2回もバカって言った~」
「まぁ クレアは全然反省していないみたいね。可哀そうなセシリー」
いつから居たのか、階段上で義母は満足そうに微笑んでいる。
「クレアは出ていくのよね」
「そうみたいね、乱暴な娘はこの家にふさわしくないわ」
相手にするのも気分が悪い、私は急いで部屋に向かった。
部屋は明らかに物色した跡がある。
大きなスーツケースに制服や生活必需品をいれて離れの小宅に向かった。
ここは晩年祖母が年配のメイドと二人で暮らしていた小さな家。
それに祖母が遺言で私に残してくれた財産だ。
長年クロードと二人で過ごした家でもある。
彼は本宅で過ごしたことはない。
それでもクロードは文句ひとつ言わなかった。
ガチャガチャと鍵を回し扉ををあけた────
「お店に出入り禁止になりましたが、いいのですか?」
既に男は家の中にいた。
「死神さん。店は父が上手くやればいいわ」
「いい傾向です。でもまだ貴方に絡んだ黒い糸は全て切れていない」
「黒い糸?」
「複雑に絡んでいます。引き戻されないようにお気をつけて」
「黒い糸って何なのよ!」
いつも死神は言いたいことだけ言って消えていく。
夜になるとマックスさんが食料と薪を持って来てくれた。
「冷やして風邪を引かないで下さいよ」
「今日は何度そう言われたかしら、ふふ」
「みんな心配しているんですよ。ゲイリーだって本気じゃないですから」
「優柔不断よね、だからシャーリーに付け込まれるのよ」
「お嬢さんは強くなりましたね」
何度も店の危機を乗り越えてきたからね。
「有難うマックスさんもう帰って、奥さんと娘さんが心配しているわ」
「ええ、あ、私は大丈夫ですが、男性を部屋に入れてはいけませんよ。戸締りもしっかりとやって下さいね」
「はいはい」誰も来ないと思うけどね。
予想に反して二日後アスラン様が訪ねて来た。
「離れにご令嬢一人などと、大丈夫なのですか」
「戸締りはしっかりやっています。ご用は何でしょうか」
お茶をアスラン様にお出しすると「恐縮です」と述べて「貴方が除籍されると聞きました」
またメイドが噂を広めたわね。
「はい、でも私は大丈夫です。要件を聞かせて下さい」
「バーンズ男爵が危険です。夫人の夫だった先の子爵様も不審死ですからね」
「子爵は事故だったと聞きました」
「そうなっていますが、怪しい点も多々あったそうです」
「義母を疑っていらっしゃるの?」
「今は何とも・・・私を信用して下さるなら御父上の行動予定を教えて欲しい」
アスラン様のお顔の傷は正義感の証。王族にさえ進言されたのだから。
「マックスさんに確認してもらいましょう」
「お願いします。貴方自身もお気をつけて、この事は内密に願います」
私は急いでマックスさん宛に手紙を書き『どうかお父様をお守りください』と祈る気持ちでアスラン様に託したのでした。
去り際に「以前、妹が大変失礼をした。申し訳ない」とアスラン様は仰った。
「まぁ たくさんお買い上げ頂いて、ロザリア様には感謝しかありませんわ」
「気が強くて、家でも手を焼いているんだ」
「ふふ、とてもお兄様思いの可愛らしい方でした」
もう一度「済まなかった」と仰ってアスラン様は帰って行った。
翌日にはナタリーもやって来た。
「あら結構素敵な家ね」
「お婆様が残してくれたのよ」
「ふぅぅん、ところで除籍って本当なの?」
「ええ、春からは寮にいく予定よ」
「うぇぇ あんな場所に? 門限は16時よ!遅れたら食事抜き」
「それは厳しいわね」
「・・・クロード様が落ち込んでいたわよ」
「ナタリーに相談したの?」
「ヘンリーから聞いたのよ。彼ね、ずっと以前からあなたに好意を持ってたの」
「初耳だわ」
「私からあなたの事を聞いて、ヘンリーとお店まで見に行ったのよ」
「そうなんだ」
(多分クロードは女好きのヘンリーの付き添いで来たんでしょうね)
「その時に一目惚れだったそうよ。で、紹介したわけなのよ」
前回は一言もそんな説明はなかったわね。
「いい人だけど、彼は好みではないの。ごめんなさいね」
「わかったわよ」
「あの方なら、素敵なご令嬢と幸せになれるわ」
少し胸が痛んだ。夫婦の思い出が多いこの家にいるからだろう。
「クレア 除籍ですって? もう大きな顔出来ないわねぇ」
「お母様からききました。お店はクロード様とわたしが継ぎます」
ニタニタ笑って嬉しくて堪らないようだ。
「勝手にすればいいわ。出ていく準備するからどいて」
「あらぁ~ この屋敷の物を持っていくのは許されなくってよ?」
「バカね、私自身の財産があるのよ、ホントバカね」
「お母様~~クレアが2回もバカって言った~」
「まぁ クレアは全然反省していないみたいね。可哀そうなセシリー」
いつから居たのか、階段上で義母は満足そうに微笑んでいる。
「クレアは出ていくのよね」
「そうみたいね、乱暴な娘はこの家にふさわしくないわ」
相手にするのも気分が悪い、私は急いで部屋に向かった。
部屋は明らかに物色した跡がある。
大きなスーツケースに制服や生活必需品をいれて離れの小宅に向かった。
ここは晩年祖母が年配のメイドと二人で暮らしていた小さな家。
それに祖母が遺言で私に残してくれた財産だ。
長年クロードと二人で過ごした家でもある。
彼は本宅で過ごしたことはない。
それでもクロードは文句ひとつ言わなかった。
ガチャガチャと鍵を回し扉ををあけた────
「お店に出入り禁止になりましたが、いいのですか?」
既に男は家の中にいた。
「死神さん。店は父が上手くやればいいわ」
「いい傾向です。でもまだ貴方に絡んだ黒い糸は全て切れていない」
「黒い糸?」
「複雑に絡んでいます。引き戻されないようにお気をつけて」
「黒い糸って何なのよ!」
いつも死神は言いたいことだけ言って消えていく。
夜になるとマックスさんが食料と薪を持って来てくれた。
「冷やして風邪を引かないで下さいよ」
「今日は何度そう言われたかしら、ふふ」
「みんな心配しているんですよ。ゲイリーだって本気じゃないですから」
「優柔不断よね、だからシャーリーに付け込まれるのよ」
「お嬢さんは強くなりましたね」
何度も店の危機を乗り越えてきたからね。
「有難うマックスさんもう帰って、奥さんと娘さんが心配しているわ」
「ええ、あ、私は大丈夫ですが、男性を部屋に入れてはいけませんよ。戸締りもしっかりとやって下さいね」
「はいはい」誰も来ないと思うけどね。
予想に反して二日後アスラン様が訪ねて来た。
「離れにご令嬢一人などと、大丈夫なのですか」
「戸締りはしっかりやっています。ご用は何でしょうか」
お茶をアスラン様にお出しすると「恐縮です」と述べて「貴方が除籍されると聞きました」
またメイドが噂を広めたわね。
「はい、でも私は大丈夫です。要件を聞かせて下さい」
「バーンズ男爵が危険です。夫人の夫だった先の子爵様も不審死ですからね」
「子爵は事故だったと聞きました」
「そうなっていますが、怪しい点も多々あったそうです」
「義母を疑っていらっしゃるの?」
「今は何とも・・・私を信用して下さるなら御父上の行動予定を教えて欲しい」
アスラン様のお顔の傷は正義感の証。王族にさえ進言されたのだから。
「マックスさんに確認してもらいましょう」
「お願いします。貴方自身もお気をつけて、この事は内密に願います」
私は急いでマックスさん宛に手紙を書き『どうかお父様をお守りください』と祈る気持ちでアスラン様に託したのでした。
去り際に「以前、妹が大変失礼をした。申し訳ない」とアスラン様は仰った。
「まぁ たくさんお買い上げ頂いて、ロザリア様には感謝しかありませんわ」
「気が強くて、家でも手を焼いているんだ」
「ふふ、とてもお兄様思いの可愛らしい方でした」
もう一度「済まなかった」と仰ってアスラン様は帰って行った。
翌日にはナタリーもやって来た。
「あら結構素敵な家ね」
「お婆様が残してくれたのよ」
「ふぅぅん、ところで除籍って本当なの?」
「ええ、春からは寮にいく予定よ」
「うぇぇ あんな場所に? 門限は16時よ!遅れたら食事抜き」
「それは厳しいわね」
「・・・クロード様が落ち込んでいたわよ」
「ナタリーに相談したの?」
「ヘンリーから聞いたのよ。彼ね、ずっと以前からあなたに好意を持ってたの」
「初耳だわ」
「私からあなたの事を聞いて、ヘンリーとお店まで見に行ったのよ」
「そうなんだ」
(多分クロードは女好きのヘンリーの付き添いで来たんでしょうね)
「その時に一目惚れだったそうよ。で、紹介したわけなのよ」
前回は一言もそんな説明はなかったわね。
「いい人だけど、彼は好みではないの。ごめんなさいね」
「わかったわよ」
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