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31 舞踏会
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最後のミッション、王宮の舞踏会のエスコートの件でアッシュと義兄は揉めた。
プロポーズを受けたのにアッシュはまだ正式な婚約者ではないと意地悪な義兄はごねたのだ。
なぜか私は義兄マルク様の愛人として引き取られたと噂になっていた。
なのでアッシュは王宮の舞踏会で婚約者として参加したいと引かなかった。
「貴殿はクレアを侯爵夫人にするのを手伝うと言ったはずだ!」
「手伝っているさ、まだまだその器では無いと判断しているんだよ」
「俺なんかの妻になってくれるんだ、もう十分だ!」
「い~や、まだまだだね」
きっと義兄は私とアッシュを困らせて楽しんでいるのだ。
義兄はアッシュと同じ年だが婚約者がいない。
ノエル様のように破棄騒動になったら面倒なのだそうだ。
私はS的な性格の問題も絶対あると密かに思っている。
しかし、男二人を手玉に取る悪女だと、悪意あるご令嬢方に噂されている私の身にもなって欲しい。
義兄の態度と悪意ある私の噂に怒り狂ったアッシュから素晴らしいドレスと靴とアクセサリー一式が早々に送られて、私が泣いて懇願すると渋々許可が出た。本当に義兄は面倒くさい。
頂いたのは高価で本当に美しく素敵なルビーのアクセサリーだった。
でも、この先どんなアクセサリーを送られても、アッシュが最初に指に填めてくれた金の指輪が1番の宝物だ。気持ちが沈んだ時も指輪を撫でるとアッシュの温もりを感じられて前向きになれるもの。
***
淑女教育もまずまずの成果を上げており、私は時間があれば銀行に出向き投資の相談をしていた。
現在進行中の鉄道事業。未来に成功を遂げる芸術家たちにも投資した。
バーンズ商店、サーレン商店、いずれは頭角を現すお店にも投資していった。
ただお金が欲しくて投資しているのではない。
一時は有閑マダムを目指すのも良いなどと考えていた。
この世界が現実となり、私も現実に目を向けるべきだと思い直した。
商家の出の私がやるべき事それは【海賊】の撲滅。
海賊は商人にとって大きな脅威。
ミハイルは海賊に襲われそうになった女性を救おうとして命を落とした。
大人しくしていれば命は助かったのに正義感の強い彼は見て見ぬふりは出来なかった。
これからも海賊被害が多発する。
商家が一日で全財産を失う事も有り得るのだ。
海賊の撲滅に私は財産を投じたいと考えていた。
***
新年を迎えた宮廷舞踏会の当日、アッシュは素敵な黒い外套を着こなして訪れた。
金糸の刺繍の外套は美しく、アッシュにとても似合っていて暫し見惚れてしまった。
私は彼から送られたドレスを身に纏いエスコートを受けて馬車に乗った。
「俺の色だと地味だと思って」
彼からは金糸で刺繍された赤いドレスを送られていた。
「思った通り赤が良く似合う。綺麗だ」
初めは不愛想だったアッシュも会うごとに愛情の籠った言葉を掛けてくれる。
「嬉しいわ、言葉をいっぱいかけて欲しい。黙っていても分かり合える事って少ないと思うの」
「俺の今の気持ちを話してたら夜が明ける」
「そんなにたくさんあるの?」
「ある。今夜は離れないでずっと傍にいて欲しい。他の男とダ「ふふふ、わかったわ」
「アッシュもずっと傍にいてね」
「もちろん」
以前のように黙ったまま勝手に思い込んで諦めて────すれ違う。
アッシュとの人生はそんなことしたくない。
私の想いも言葉にして、たくさん届けたい。
王宮に到着して彼のエスコートで煌びやかな宮廷へと向かった。
アッシュに守られて多くの注目を浴びながら私は無事に4つ目のミッションをクリアーした──
───と思ったら最後に化粧室でリーズ伯爵令嬢とその他諸々に囲まれてしまった。
リーズ伯爵令嬢のモニカ様が堂々と私の前に立ちふさがったわ。
「いやだわ、匂うと思ったら平民が混ざっていたわ」
陳腐なセリフだ。もっとウィットに富んだ嫌味を言えないのかしら。
「本当ですわね」と諸々のご令嬢たちは扇を広げてお鼻を押えた。
「ローラング侯爵家とはお爺様の代からご縁があったのよ。平民なんかが出しゃばって良いお家柄ではないの」と得意げな顔でモニカ様は仰いましたわ。
私は一応、サウザー公爵家の養女なのですが、お茶会で沈黙していたので舐められているわね。
どんなご縁か知らないけど悪縁は切っておいた方が良さそうだわ。
リーズ伯爵家は鉄道の事業にも参加している資産家で、貴族の中でも一目置かれている。
娘の教育にもっと投資すれば良かったわね。
申し訳ないけど、邪魔な杭は打たせてもらうわ。
プロポーズを受けたのにアッシュはまだ正式な婚約者ではないと意地悪な義兄はごねたのだ。
なぜか私は義兄マルク様の愛人として引き取られたと噂になっていた。
なのでアッシュは王宮の舞踏会で婚約者として参加したいと引かなかった。
「貴殿はクレアを侯爵夫人にするのを手伝うと言ったはずだ!」
「手伝っているさ、まだまだその器では無いと判断しているんだよ」
「俺なんかの妻になってくれるんだ、もう十分だ!」
「い~や、まだまだだね」
きっと義兄は私とアッシュを困らせて楽しんでいるのだ。
義兄はアッシュと同じ年だが婚約者がいない。
ノエル様のように破棄騒動になったら面倒なのだそうだ。
私はS的な性格の問題も絶対あると密かに思っている。
しかし、男二人を手玉に取る悪女だと、悪意あるご令嬢方に噂されている私の身にもなって欲しい。
義兄の態度と悪意ある私の噂に怒り狂ったアッシュから素晴らしいドレスと靴とアクセサリー一式が早々に送られて、私が泣いて懇願すると渋々許可が出た。本当に義兄は面倒くさい。
頂いたのは高価で本当に美しく素敵なルビーのアクセサリーだった。
でも、この先どんなアクセサリーを送られても、アッシュが最初に指に填めてくれた金の指輪が1番の宝物だ。気持ちが沈んだ時も指輪を撫でるとアッシュの温もりを感じられて前向きになれるもの。
***
淑女教育もまずまずの成果を上げており、私は時間があれば銀行に出向き投資の相談をしていた。
現在進行中の鉄道事業。未来に成功を遂げる芸術家たちにも投資した。
バーンズ商店、サーレン商店、いずれは頭角を現すお店にも投資していった。
ただお金が欲しくて投資しているのではない。
一時は有閑マダムを目指すのも良いなどと考えていた。
この世界が現実となり、私も現実に目を向けるべきだと思い直した。
商家の出の私がやるべき事それは【海賊】の撲滅。
海賊は商人にとって大きな脅威。
ミハイルは海賊に襲われそうになった女性を救おうとして命を落とした。
大人しくしていれば命は助かったのに正義感の強い彼は見て見ぬふりは出来なかった。
これからも海賊被害が多発する。
商家が一日で全財産を失う事も有り得るのだ。
海賊の撲滅に私は財産を投じたいと考えていた。
***
新年を迎えた宮廷舞踏会の当日、アッシュは素敵な黒い外套を着こなして訪れた。
金糸の刺繍の外套は美しく、アッシュにとても似合っていて暫し見惚れてしまった。
私は彼から送られたドレスを身に纏いエスコートを受けて馬車に乗った。
「俺の色だと地味だと思って」
彼からは金糸で刺繍された赤いドレスを送られていた。
「思った通り赤が良く似合う。綺麗だ」
初めは不愛想だったアッシュも会うごとに愛情の籠った言葉を掛けてくれる。
「嬉しいわ、言葉をいっぱいかけて欲しい。黙っていても分かり合える事って少ないと思うの」
「俺の今の気持ちを話してたら夜が明ける」
「そんなにたくさんあるの?」
「ある。今夜は離れないでずっと傍にいて欲しい。他の男とダ「ふふふ、わかったわ」
「アッシュもずっと傍にいてね」
「もちろん」
以前のように黙ったまま勝手に思い込んで諦めて────すれ違う。
アッシュとの人生はそんなことしたくない。
私の想いも言葉にして、たくさん届けたい。
王宮に到着して彼のエスコートで煌びやかな宮廷へと向かった。
アッシュに守られて多くの注目を浴びながら私は無事に4つ目のミッションをクリアーした──
───と思ったら最後に化粧室でリーズ伯爵令嬢とその他諸々に囲まれてしまった。
リーズ伯爵令嬢のモニカ様が堂々と私の前に立ちふさがったわ。
「いやだわ、匂うと思ったら平民が混ざっていたわ」
陳腐なセリフだ。もっとウィットに富んだ嫌味を言えないのかしら。
「本当ですわね」と諸々のご令嬢たちは扇を広げてお鼻を押えた。
「ローラング侯爵家とはお爺様の代からご縁があったのよ。平民なんかが出しゃばって良いお家柄ではないの」と得意げな顔でモニカ様は仰いましたわ。
私は一応、サウザー公爵家の養女なのですが、お茶会で沈黙していたので舐められているわね。
どんなご縁か知らないけど悪縁は切っておいた方が良さそうだわ。
リーズ伯爵家は鉄道の事業にも参加している資産家で、貴族の中でも一目置かれている。
娘の教育にもっと投資すれば良かったわね。
申し訳ないけど、邪魔な杭は打たせてもらうわ。
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