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2 妖精の鏡
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バレンシアの部屋に入るなり私は本棚に飛びついた。
「これだ!この絵本」
<妖精の鏡>というタイトルの絵本を手に開いた。
そこには屋根裏部屋にあった姿見鏡と似た鏡の絵が描かれていた。
☆『面倒くさがり屋のお姫様。
「もう一人私が居れば何でも半分こ。自由な時間が増えるのに」
それを聞きつけた魔女がお姫様に【妖精の鏡】をプレゼントした。
妖精はお姫様と同じ姿で現れて、お姫様の勉強も習い事も半分こした。
でも面倒くさがり屋のお姫様は、いつしか全部妖精にやらせるようになった。
お姫様はいつも鏡の中に隠れて、おいしいお菓子を食べて遊んでいた。
甘いお菓子を食べてばかりのお姫様はブクブクと太って、鏡から出られなくなった。
すると魔女が現れて、ガシャーン!と鏡を割ってしまった。
妖精はお姫様になって、隣の国の王子様と結婚して幸せになりましたとさ』☆
「怖い童話ね。お姫様はどうなったのよ」
私は鏡の妖精ってこと?
この世界は魔女もいれば、妖精、獣人、魔物、魔法だって存在する異世界。
「ああ、異世界転生ね。笑えるわ、妖精だなんて、あははは」
バレンシアは今の生活に耐え切れず、鏡の中に逃げ込んでしまった。
「そして私に押し付けたの?めんどくさがり屋のお姫様のように」
泣いていたバレンシアを思い浮かべると憎めなかった。
「私もバレンシアも両方幸せになればいいのよ。片方だけが不幸になる必要はないわ」
妖精ならバレンシアよりも潜在能力は高いかもしれない。
「いやどう考えても、今はバレンシアを応援するしか選択肢がないわね」
ピアノの音色が時々聞こえる。バレンシアの記憶だとこんな日はヘレンは来ない。
この世界を詳しく知ろうと、本棚に置かれている書物を取り出して、暗くなるまで読み漁った。
メイドがやって来て夕食が運ばれ、テーブルの上に美味しそうな料理が並べられると、ヘレンがメインのお肉料理の皿を持ち上げて料理を床に落とし、肉を踏み潰した。
(ああ、肉が!)
文句を言いたいが殴られる回数が増えるので声に出せない。
「あら、好き嫌いはいけないわ。悪い子ね。料理を粗末にすると罰が当たるのよ?手を出しなさい!」
また自動的に手が出る。洗脳か⁈
「お前を産んだせいで姉は死んだのよ。ほら、掃除しなさい!」
掌を叩かれてソースで汚れた床を掃除すると、私は残ったパンとスープ、サラダを食べることが出来た。
こんな風景が日常茶飯事。これは誰だって逃げ出したくなる。
バレンシアの母親が難産で亡くなり、忌み子のせいだと思われている。とんだ言いがかりだ。
夜になるとヘレンにカギを掛けられ、部屋に閉じ込められた。
憎い女ヘレンだが、バレンシアに教育の機会を与えると言い出したのは彼女である。
後妻だったヘレンは夫の死後、公爵家に懇願してバレンシアの教育を申し出た。
平民の乳母は文字の読み書きが出来なかった、なのでバレンシアは9歳まで何も教育を受けていない。
もしもヘレンがきちんと教育したのならヘレンには感謝すべきだが、今の有様である。
バレンシアが私と入れ替わったのはヘレンに屋根裏部屋に連れて行かれ、姿見鏡を見つけて祈ったからだ。
奇跡は起こり私とバレンシアは入れ替わった。
「バレンシアに会わなくちゃ。二人で協力してこの現状を打開するのよ!」
後日、私はとヘレンに反抗して、希望通り屋根裏部屋に閉じ込められた。
「バレンシア!聞こえる?」
姿見鏡に向かって声を掛けても触れても鏡の中に戻れなかった。
「バレンシア!私は味方だからそれだけは覚えておいて」
聞こえているだろうか。
ただ、ヘレンから逃れて彼女は安堵しているのは間違いない。
大人の私でも、ここは耐えがたい世界だった。
「これだ!この絵本」
<妖精の鏡>というタイトルの絵本を手に開いた。
そこには屋根裏部屋にあった姿見鏡と似た鏡の絵が描かれていた。
☆『面倒くさがり屋のお姫様。
「もう一人私が居れば何でも半分こ。自由な時間が増えるのに」
それを聞きつけた魔女がお姫様に【妖精の鏡】をプレゼントした。
妖精はお姫様と同じ姿で現れて、お姫様の勉強も習い事も半分こした。
でも面倒くさがり屋のお姫様は、いつしか全部妖精にやらせるようになった。
お姫様はいつも鏡の中に隠れて、おいしいお菓子を食べて遊んでいた。
甘いお菓子を食べてばかりのお姫様はブクブクと太って、鏡から出られなくなった。
すると魔女が現れて、ガシャーン!と鏡を割ってしまった。
妖精はお姫様になって、隣の国の王子様と結婚して幸せになりましたとさ』☆
「怖い童話ね。お姫様はどうなったのよ」
私は鏡の妖精ってこと?
この世界は魔女もいれば、妖精、獣人、魔物、魔法だって存在する異世界。
「ああ、異世界転生ね。笑えるわ、妖精だなんて、あははは」
バレンシアは今の生活に耐え切れず、鏡の中に逃げ込んでしまった。
「そして私に押し付けたの?めんどくさがり屋のお姫様のように」
泣いていたバレンシアを思い浮かべると憎めなかった。
「私もバレンシアも両方幸せになればいいのよ。片方だけが不幸になる必要はないわ」
妖精ならバレンシアよりも潜在能力は高いかもしれない。
「いやどう考えても、今はバレンシアを応援するしか選択肢がないわね」
ピアノの音色が時々聞こえる。バレンシアの記憶だとこんな日はヘレンは来ない。
この世界を詳しく知ろうと、本棚に置かれている書物を取り出して、暗くなるまで読み漁った。
メイドがやって来て夕食が運ばれ、テーブルの上に美味しそうな料理が並べられると、ヘレンがメインのお肉料理の皿を持ち上げて料理を床に落とし、肉を踏み潰した。
(ああ、肉が!)
文句を言いたいが殴られる回数が増えるので声に出せない。
「あら、好き嫌いはいけないわ。悪い子ね。料理を粗末にすると罰が当たるのよ?手を出しなさい!」
また自動的に手が出る。洗脳か⁈
「お前を産んだせいで姉は死んだのよ。ほら、掃除しなさい!」
掌を叩かれてソースで汚れた床を掃除すると、私は残ったパンとスープ、サラダを食べることが出来た。
こんな風景が日常茶飯事。これは誰だって逃げ出したくなる。
バレンシアの母親が難産で亡くなり、忌み子のせいだと思われている。とんだ言いがかりだ。
夜になるとヘレンにカギを掛けられ、部屋に閉じ込められた。
憎い女ヘレンだが、バレンシアに教育の機会を与えると言い出したのは彼女である。
後妻だったヘレンは夫の死後、公爵家に懇願してバレンシアの教育を申し出た。
平民の乳母は文字の読み書きが出来なかった、なのでバレンシアは9歳まで何も教育を受けていない。
もしもヘレンがきちんと教育したのならヘレンには感謝すべきだが、今の有様である。
バレンシアが私と入れ替わったのはヘレンに屋根裏部屋に連れて行かれ、姿見鏡を見つけて祈ったからだ。
奇跡は起こり私とバレンシアは入れ替わった。
「バレンシアに会わなくちゃ。二人で協力してこの現状を打開するのよ!」
後日、私はとヘレンに反抗して、希望通り屋根裏部屋に閉じ込められた。
「バレンシア!聞こえる?」
姿見鏡に向かって声を掛けても触れても鏡の中に戻れなかった。
「バレンシア!私は味方だからそれだけは覚えておいて」
聞こえているだろうか。
ただ、ヘレンから逃れて彼女は安堵しているのは間違いない。
大人の私でも、ここは耐えがたい世界だった。
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