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33) 閑話 温泉旅行と真夜中のシェル

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§§§(閑話です。飛ばして頂いてもOKです。)


 ドラゴン退治が終わったら温泉に行こう! JK達と確かに約束した。
ジューク達を保護し、急ぐ用事も無いと判断した俺は温泉旅行を決行した。

 イブキが保護されたトップス子爵の領地のまだ先にある火山地帯、フロスピーク辺境伯の領地まで馬車で移動だ。気が重いが約束だから行くしかない。

 ワイルナーの街から乗り合い馬車に乗る。馬車酔いと戦いながら街から街に乗り継いで3日、ようやく湯煙香る街ヤマトにやって来た。ここには獣人やアジアンな顔立ちの人も多くイブキ達が”渡り人”とバレる事も無さそうだ。 
10人泊まれる宿を探すと【エチゴヤ】という日本風の旅館を予約できた。

 ヤマトから少し北西に行くと大きな港町ナザルがある。そこからは船で獣人国に渡れるのだ。
ナザルには瞬間移動装置を設置してある施設があった。
冒険者はAクラスになると金貨を払って使用できる。
(ダニーに頼んで城からここまで移動すれば良かったー)後の祭りだ。



 ヤマトには日本人向けの食材も沢山あった。魔界のカタログにない商品もあり買い物が楽しめそうだ。

俺は戻って総勢10人を【エチゴヤ】に連れてきた。

魔道具狂のテオが渋ったが無理やり連れてきた。俺の苦労の結果を知って欲しい。

宿は畳が敷いてあり、夕飯にスキヤキと寿司が出ると高校生全員熱狂した。


クロと温泉に浸かっていると隣でテオが
「こんな遠出は初めてだ。旅行も良いものだな。」と感慨深げに感想を漏らした。

異世界の温泉は水着で入る。混浴も問題ない。
「温泉で若返った気がするわ。日本料理が珍しいですわ。」とミラさん。

「温泉最高!お肌つるつる。」「タイ焼きも売ってたよ。」「浴衣着だ~」JK達に好評。

「卓球がある。」「ラーメン屋だ。」「コーラがある!」勇者軍団にも好評だ。

ヤマトには日本人向けの食材も沢山あった。魔界のカタログにない商品もあり買い物も楽しめた。
俺はJK達にせがまれて【エチゴヤ】に3連泊することとなった。

これで問題が1つ解決した。俺の苦労は報われたのだった。




          ***




▽▽▽イブキ視点

 楽しい温泉旅行が終わってしばらく経った頃ベルルが「マスターがヘンなのぉ~」と相談を持ち掛けてきました。
「ん? どういう事?」「夜中に時々出ていくのぉ~」
「コアの所に行ってるんじゃないの?」
「ん~ 『マスター』って声を掛けても無視されちゃうの~」

シェル君がベルルを無視するなんてヘンです。彼は愛想が良い少年では無いけど、声を掛ければきちんと向き合ってくれます。
「じゃぁ今度、夜中にヘンだったら、私に教えてくれる?」「わかった~」

1週間後ベルルが夜中に私を起こしに来ました。
「マスター やっぱりヘンなの~」

ホテルから出ると数本の外灯に明かりがついており、シェル君が芝生の上に佇んでいるのが見えました。
そっと近づいて「シェル君・・・」と声を掛けると彼はゆっくりこちらを振り返りました。
その目はいつものシェル君ではなくて、他人を見るような目で私を見つめていました。
それから「違う・・・ここは僕の・・・場所じゃない・・」そう言うとホテルに向かって歩き出しました。
私がエントランスに戻るとシェル君の姿はありませんでした。

夢遊病?それとも別の人格? もしも夢遊病なら彼をストレスから早く解放してあげたい。
今の私は大したことは出来ないけど、何とかしてあげたいと思いました。

翌日シェル君とベルルに昨夜の事を話すと彼にはそんな記憶は無いとの事。
「きっと寝ぼけていたんだ、心配かけてごめんね。」と寂しそうに笑って「夢遊病じゃないよ。ストレスなんて感じてないから。」と言いました。

本当にそうなのかな。別人のようだったシェル君、彼の求める場所ってどこなのかな。
私はもう一度真夜中のシェル君に会って話をしたいと思いましたが、その後会えることはありませんでした。


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