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52) 昇華

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 テスランと取引が終わった翌日、俺はサスペンサー公爵家を訪れた。

公爵は俺がテオドール第三王子殿下と第二側妃ミランダを保護していると知った時はそりゃ驚いた。
復帰するなら後ろ盾となり力になると申し出たが、テオ達の希望は廃嫡されたまま平民として生きていくことだった。
将来は魔道具の店を出したいそうだ。もちろん俺も援助を惜しまない。

「王太子殿下はミランダ様、テオドール様の冤罪は公に、今後の安全は保障すると仰せでした。
渡り人にも一切干渉しないとお約束頂きました。これが誓約書です。」

誓約書は2枚作製されており、1枚を受け取った。
「お力添え感謝致します。」そう公爵に礼を言い、邸を去った。


ハインツ王太子殿下については許しがたい点が多々あるが
誓約を守る限り手は出さないでおこう。
クロに締め上げられるエルザを青い顔で見ていたハインツ。
裏切ることは無いと思いたい。

イザベラは貴族牢に一生涯幽閉となり、エルザは処刑と決まった。
イザベラについては納得いかないが、公爵が『いずれ病死なさるでしょう』と不敵な笑みを浮かべて言ったので、そうなるんだろう。

俺はグランダの国民でも家臣でもない。グランダ国の先行きは俺には関係ない。
テオや公爵が困るなら手を貸すだけだ。



           ***



「サラ達は眷属では無いから外で会うってことね。」
ロビーでイブキは声を弾ませている。

全員が集合できる日取りを俺は尋ねていた。
ジューク達は休日が不定期で、ユカ達も忙しい。
サラ達は近々テスランの元に戻る予定らしい。

ユカ 「どこで会えるの? カスタルとか?」

「神木の所でいいと思ってる。リオンが手伝ってくれる。」
「ふふん、任せられよ。報酬は、いちごどっさりケーキを所望である。」

「なんでも好きな物、いっくらでも食べていいよ。」
「そうであるか! 葡萄ジュースお代わりである。」

レン 「セイヤ達に連絡しておくよ。」

タツキ 「それで全員そろうのか? 他に同級生はもう居ないよな?」
    
「魔界情報では見つからないようだ。召喚されたのは12人だね。」

タツキ 「マスターがそう言うなら12人だな。全員生きているマスターのお陰だ。」

トモ 「本当にみんな感謝してるよ。お礼に私からベーゼを!」

「う、冗談でしょう~ いらないよ~ 」

ユカ 「神木の花畑でピクニックしようよ。お弁当持っていこう。」

珍しくテオもピクニックに参加すると言う。

イブキ 「サラ達の銃器に興味があるのでは?」

テオ 「まぁ そんなところだ。」



再会は2日後に決まり、サラ達に伝えに行くと、イブキ達の存在を知って喜んだ。

サラ 「早く会いたいわ!ピクニックいいね。楽しみ! 師匠が凄く感謝してた。有難うね、ニト君。」

お礼や感謝の言葉はマジで照れる。カズヤの時に言われたのは買い物した時くらいだ。
お礼を口にしたことも無かった。母さんは俺に尽くしてくれたのに、当たり前だと思ってた。
俺が死んで、きっと母さんは誰よりも悲しんでくれただろう。
そして誰よりもホッとしているだろう。

「どうしたの、ニト君?」

「うん、いや、じゃ、当日迎えに来るよ。」

「うん、待ってるね!」

シェルに覚醒した時はチートスキルに舞い上がって前世なんてどうでも良かった。
(ふん、俺らしくもない。今更ノスタルジーに浸ってるんじゃねーよ。)



そうして約束の日、リオンを連れて宿にサラ達を迎えに行った。3人を神木に連れて行くと、既にピクニックの準備は完了していた。

「サラ!」イブキ達が駆け寄ってくる。JK達は抱き合って感涙で目を赤くした。
「無事でよかった。 本当に良かった。」


「帰りてーな。」「帰りたいよ。」 レンとリクだ。
「あーーーーーーーー日本に戻りたい!」

できるなら戻してやりたい。魔界情報にアクセスしても方法は分からなかった。

「シェル、やはり戻してやりたいか?」テオが深刻な顔でまた聞いてきた。

「そりゃ、家族の元に戻してあげたいよ。」

「そうか。」



ランチを楽しんだ後も、皆の話は尽きない。
テオはレイコに銃器をいくつか出してもらって興奮している。


夕暮れも近づき「そろそろ 帰ろうか。」と俺は終わりを告げた。

するとテオが「こうやって全員集まる機会は今後何度も無さそうだ。
試したいことがある。」と言い出した。

「私は少し前からマスターの変化が見える。
私のシークレットに関する事だが試していいか?」と俺に尋ねた。

「何をするんだ?」何が起こるか俺は不安だ。

「テオ大丈夫なの? 止めたほうが・・・」イブキや他の皆も不安な面持ちだ。

「やった事が無いので分からないが、悪いことではない。」

「テオがやりたいなら、やっていいけど危険はないのか?」

「ないと‥思う」テオの事は信用してるが、マジで大丈夫なのか?

「信じてくれ。」テオは俺に向かって手を差し出す。

 「<昇華>」と一言。



その感じが何なのか、うまく説明できないけど、穢れがふるい落とされて
俺の魂がすぅーーと浮上していく? ──不思議な感覚だった。


周りの景色は消えて、既視感を感じる場所に俺はいた。

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