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お前の奥さんは一体誰なんだ?
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馬車の中で恩人からホワイト侯爵夫人だと名乗られてエルシーは恐縮していた。
大きなお屋敷に招かれると直ぐに医者が来てレノの手当てが行われた。
顔だけでなく体もひどく殴られて痣だらけの痛ましいレノの姿に、エルシーは後悔で涙が止まらない。
エルシー自身も殴られた顔が青痣になっており、濡れタオルで患部を押さえていると侯爵夫人がエルシーの肩にそっと手を置いた。
「あのクソ野郎は知り合いなの?」
「私の従兄なんですが、結婚してからも執着されて困っているんです」
「まぁ、詳しい話を聞きましょう」
エルシーはオリバーとの確執を侯爵夫人に話すと「それでは貴方のご主人に連絡しなければいけませんわね」と言われて困ってしまった。
浮気して愛人がいるなんて知れたらヴァルは王宮騎士団を辞めさせられるかもしれない。
夫のヴァルは孤児院から引き取られてから、曾祖父の厳しい剣の修行に耐えてきた。
元騎士だった曾祖父は有能そうな子どもを連れてきては訓練してきたが、大抵の子どもは逃げ出した。
騎士学校だって平民だという事でヴァルは辛い思いをしたはずだ。
「夫は・・・」
言いかけるとレノの意識が戻った。
「エル姉?ここどこ?」
「レノ!ここはホワイト侯爵様のお屋敷よ。助けて頂いたの」
「うぅ・・僕、全然ダメだった。剣を抜くことも出来なかった」
腫れあがった目からレノは悔し涙を流した。
「大男二人に押さえられたんだもの、一人で逃げてごめんね。こんな目に合わせてごめん」
「ううん、ヴァル兄に連絡した? アイツどうなったの?」
「オリバーは警備隊に捕まったわ」
「悔しい。・・・・強くなりたい。エル姉殴られたんだね。守れなくてごめん」
「私は何ともないわ。王都に来なければ良かったのよ。本当にごめんなさい」
「レノ君、お姉さんのご主人はどこで会えるの?」
「あ、お城です」
ホワイト侯爵夫人に聞かれて、レノは答えてしまった。
仕方なくエルシーは夫の所在を話し、母親のようなホワイト夫人にこうなった経緯を聞いて貰った。
「まぁまぁ、第二騎士団所属ですか。うちの次男のエイダンが副団長なのよ。世間は狭いわね。因みにそこの団長は愛妻家なので愛人がいるなんて知れたらご主人は解雇でしょうね」
「そんな、夫は苦労して騎士になったんです」
「王宮の騎士団は規律が厳しいのよ。ご主人だって分かってるはずだけど…」
「僕は、僕は旦那様を信じています。ロージーさんは嘘つきです」
「うーん・・・浮気をしているとしたら、いつまでも隠しては置けないわよ。ご主人とはよーく話し合いなさい」
「わかりました。そうします」
エルシーはいよいよヴァルと対峙しなければいけないと覚悟を決めた。
*****
──その頃、エルシー達が来ていることを知らないヴァル。
王宮では午後から王太子殿下と婚約者様のお茶会が予定され、ヴァルは庭園の警備に駆り出されていた。
先週は夜警だったのと昨夜は赤子がグズったので睡眠不足ではあったが、しっかりと任務に付いていた。
だが団長が呼んでいると言われて、呼びに来た同僚と交代し、急いで団長の執務室に向かうと、団長のテッドリーと副団長のエイダンが待っていた。
ヴァルの挨拶も無視して団長は唐突に尋ねてきた。
「ヴァル、奥さんがオリバーって奴に襲われてホワイト侯爵家に保護されたそうだ。警備隊から連絡が入った」
「オリバーに? どうしてロージーが」
「だから、オリバーに殴る蹴るの暴行を受けたんだよ。死にかけたらしいぞ」
それはレノの事だったが、報告にミスがあったようだ。
「ホワイト侯爵家ですね。失礼します!」
「待て待て、本題はここからだ。オリバーが言うには『ヴァルが浮気したのを奥さんに教えたら、取り乱して暴れた』・・・なので殴ったそうだ。で、お前は浮気してるのか? だったらクビだぞ!」
「クビ? そんな・・・俺は浮気なんかしていません!」
「母・・・ホワイト侯爵夫人からも連絡が来ています。貴方の浮気に奥方は深く傷つき、侯爵夫人は大層ご立腹ですよ」
「おい、お前の奥さんは一体誰なんだ?」
「それはロージーです。赤子も生まれて────ぐわっ!」
ヴァルは団長に思いっきり顔を殴られて床に倒れた。
大きなお屋敷に招かれると直ぐに医者が来てレノの手当てが行われた。
顔だけでなく体もひどく殴られて痣だらけの痛ましいレノの姿に、エルシーは後悔で涙が止まらない。
エルシー自身も殴られた顔が青痣になっており、濡れタオルで患部を押さえていると侯爵夫人がエルシーの肩にそっと手を置いた。
「あのクソ野郎は知り合いなの?」
「私の従兄なんですが、結婚してからも執着されて困っているんです」
「まぁ、詳しい話を聞きましょう」
エルシーはオリバーとの確執を侯爵夫人に話すと「それでは貴方のご主人に連絡しなければいけませんわね」と言われて困ってしまった。
浮気して愛人がいるなんて知れたらヴァルは王宮騎士団を辞めさせられるかもしれない。
夫のヴァルは孤児院から引き取られてから、曾祖父の厳しい剣の修行に耐えてきた。
元騎士だった曾祖父は有能そうな子どもを連れてきては訓練してきたが、大抵の子どもは逃げ出した。
騎士学校だって平民だという事でヴァルは辛い思いをしたはずだ。
「夫は・・・」
言いかけるとレノの意識が戻った。
「エル姉?ここどこ?」
「レノ!ここはホワイト侯爵様のお屋敷よ。助けて頂いたの」
「うぅ・・僕、全然ダメだった。剣を抜くことも出来なかった」
腫れあがった目からレノは悔し涙を流した。
「大男二人に押さえられたんだもの、一人で逃げてごめんね。こんな目に合わせてごめん」
「ううん、ヴァル兄に連絡した? アイツどうなったの?」
「オリバーは警備隊に捕まったわ」
「悔しい。・・・・強くなりたい。エル姉殴られたんだね。守れなくてごめん」
「私は何ともないわ。王都に来なければ良かったのよ。本当にごめんなさい」
「レノ君、お姉さんのご主人はどこで会えるの?」
「あ、お城です」
ホワイト侯爵夫人に聞かれて、レノは答えてしまった。
仕方なくエルシーは夫の所在を話し、母親のようなホワイト夫人にこうなった経緯を聞いて貰った。
「まぁまぁ、第二騎士団所属ですか。うちの次男のエイダンが副団長なのよ。世間は狭いわね。因みにそこの団長は愛妻家なので愛人がいるなんて知れたらご主人は解雇でしょうね」
「そんな、夫は苦労して騎士になったんです」
「王宮の騎士団は規律が厳しいのよ。ご主人だって分かってるはずだけど…」
「僕は、僕は旦那様を信じています。ロージーさんは嘘つきです」
「うーん・・・浮気をしているとしたら、いつまでも隠しては置けないわよ。ご主人とはよーく話し合いなさい」
「わかりました。そうします」
エルシーはいよいよヴァルと対峙しなければいけないと覚悟を決めた。
*****
──その頃、エルシー達が来ていることを知らないヴァル。
王宮では午後から王太子殿下と婚約者様のお茶会が予定され、ヴァルは庭園の警備に駆り出されていた。
先週は夜警だったのと昨夜は赤子がグズったので睡眠不足ではあったが、しっかりと任務に付いていた。
だが団長が呼んでいると言われて、呼びに来た同僚と交代し、急いで団長の執務室に向かうと、団長のテッドリーと副団長のエイダンが待っていた。
ヴァルの挨拶も無視して団長は唐突に尋ねてきた。
「ヴァル、奥さんがオリバーって奴に襲われてホワイト侯爵家に保護されたそうだ。警備隊から連絡が入った」
「オリバーに? どうしてロージーが」
「だから、オリバーに殴る蹴るの暴行を受けたんだよ。死にかけたらしいぞ」
それはレノの事だったが、報告にミスがあったようだ。
「ホワイト侯爵家ですね。失礼します!」
「待て待て、本題はここからだ。オリバーが言うには『ヴァルが浮気したのを奥さんに教えたら、取り乱して暴れた』・・・なので殴ったそうだ。で、お前は浮気してるのか? だったらクビだぞ!」
「クビ? そんな・・・俺は浮気なんかしていません!」
「母・・・ホワイト侯爵夫人からも連絡が来ています。貴方の浮気に奥方は深く傷つき、侯爵夫人は大層ご立腹ですよ」
「おい、お前の奥さんは一体誰なんだ?」
「それはロージーです。赤子も生まれて────ぐわっ!」
ヴァルは団長に思いっきり顔を殴られて床に倒れた。
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