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第四章
第四章 ~『楽しい食事と警告』~
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蛇の絵が玄関に飾られてからというもの、雪華の評判は目に見えて高まっていた。宿舎を行き交う女官たちは、絵を見るたびに立ち止まっては、感嘆の声を漏らしている。
後宮のあちこちで噂され、作者である雪華の名前も広く知られるようになった。絵を描いて欲しいとの依頼も増え、まさに名前を売るチャンスが実を結んだ結果だった。
雪華はその状況に充足感を覚えながらも、支えてくれた承徳に感謝を抱いていた。その彼との待ち合わせ場所である回廊へ向けて、雪華は早足で向かう。
仕事終わりの時間のため、夕陽が回廊の柱を赤く染めている。雪華は足を止めて周囲を見渡した。
すると、承徳の姿が遠くから現れる。申し訳なさそうに眉を下げながら向かってきた彼は、小さく頭を下げる。
「待たせたかな?」
「いえ、私が早く着いただけですから」
実際、待ち合わせの時刻よりも随分と早い時間だった。二人共、待ちきれずに早く来てしまったのだと知り、穏やかな空気が流れる。
「あの、承徳様。蛇の絵を飾るようにと勧めてくれて、本当にありがとうございました」
「君が才能を発揮した結果さ。私は少し手助けをしただけだよ」
謙遜する承徳の言葉に、雪華は微笑む。彼の優しさに触れて、自分の胸の内に感謝の思いが広がるのを感じていく。
「あの、お礼にご飯をご馳走させてくれませんか」
「気にしなくても良いのだが……」
「これくらいはさせて頂きたいんです」
遠慮するものの、雪華の意思が強いと悟ったのか、承徳は頷く。
「分かった。ご馳走になるよ」
「では食堂で夕飯にしましょう」
二人は並んで回廊を歩き、夕暮れの静かな庭園を抜けていく。空は赤から黒へと移り変わりつつあり、足元の石畳には竹笹の影が揺れている。
やがて食堂の明かりが見え始めると、香ばしい匂いが風に乗って漂ってきた。
(美味しそうですね)
雪華は思わず口元を緩めながら、食堂の前まで辿り着く。
扉を開けると、活気ある声と食器の触れ合う音が耳に飛び込んできた。天井から吊るされた赤い提灯が柔らかな明かりを放ち、中央には丸卓がいくつも並んでいる。それぞれに料理を囲む人たちの姿もあった。
雪華たちは窓際の丸卓に腰掛ける。庭園の景色を眺められるお気に入りの席だった。
「承徳様はここの食堂を使ったことはありますか?」
「ないね」
「なら普段は食事をどちらで?」
「う~ん、なんと言えばいいんだろうか……」
承徳が返答に窮していると、二人の間を割って入るように軽快な声が響く。
「ご注文はお決まりですか?」
振り返ると、食堂の給仕をしている女性が笑顔を浮かべていた。承徳はまるで救われたかのように軽く息を吐き、「食事が先だね」と話題を切り替える。
「承徳様は食べたいものがありますか?」
「雪華が勧めるものを食べてみたいな」
「ではそうしますね」
雪華は注文を伝えると、給仕は一礼して、その場を後にする。二人の間に静けさが戻り、やがて料理が運ばれてくる。
蒸し鶏の前菜から始まり、茶籠から湯気が立ち上る小籠包、黄金色の焼き餃子や、炒め物の青菜も届いた。
「とても美味しそうだね」
「味は私が保証します」
「それなら信頼できそうだ」
料理の美味しさと他愛ない会話を楽しみながら、二人の間に心地よい時間が流れていく。
香ばしい焼き餃子を一口頬張ると、外はカリッと、中はジューシーな食感に思わず笑みが溢れる。小籠包から溢れる熱々のスープも、青菜の炒め物のシャキシャキとした歯ごたえもすべてが絶妙だった。
承徳も舌に合っていたのか、笑みが溢れている。和やかな空気が流れる中、それを破るように、人影が近づいてくる。その人物には見覚えがあった。
鋭い目つきと冷ややかな雰囲気を纏った女官、黒羽だ。彼女は迷いのない足取りで近づくと、立ち止まって、わざとらしく口元に笑みを浮かべた。
「随分と楽しそうね」
黒羽の声が冷たく響き、雪華と承徳の会話を断ち切る。だが雪華に動揺した様子は見えず、いつものように冷静だった。
「なにか御用でしょうか?」
「用というほどのものじゃないわ。ただ、あなたの高い評判も長くは続かない。それを伝えに来たの」
その言葉に雪華はほんの少し眉を寄せるが、表情を崩さずに問い返す。
「どういう意味ですか?」
「あなたに黒い噂が流れているの……描いた絵が周囲に不幸を呼ぶってね」
「根拠のない噂でしょう。なら私が気にする必要はありませんね」
「いいえ、根拠ならあるわ。なにせ、そう占ったのは邪蓮さんだもの。あの人の占いはいつも当たると評判だし、信じている女官も多いわ」
黒羽もその信奉者の一人なのだろう。冷静に状況を受け止めた雪華は、黒羽をしっかりと見据える。
「黒羽様の話はこれで終わりですか?」
「この話を聞いても生意気なままなのね……」
「媚びないのは私の長所ですから」
「――ッ……ふん、きっとこの後、邪蓮さんの占いが的中して、あの蛇の絵も撤去されるわ。その時になって悔しがればいいのよ」
挑発を受けても雪華は眉一つ動かさない。その態度に、黒羽の目がさらに細くなる。
「どうして、そんなに余裕なのよ?」
「私の絵は既に多くの人の心に残っています。仮に撤去されたとしても、その感動は消えたりしませんから。それに……」
雪華は一息置いて、続ける。
「撤去はされないと思いますので」
「なぜそんなことが言い切れるのよ!」
「あの場所を管理しているのは静慧様ですから。とても理知的で冷静な方なので、不吉を理由に理不尽を強いるとは思えません」
雪華の正論に黒羽は拳を握りしめる。
「……お、覚えてなさい!」
黒羽は言い返せずに逃げるように踵を返す。荒々しい足音を立てながら去っていく背中には怒りと苛立ちが浮かんでいた。
去っていくのを確認すると、雪華は蒸し鶏を一口頬張る。その柔らかさと香ばしいソースの旨味に心を和らげる。
冷めない内に楽しもうと、二人は改めて料理に集中する。穏やかな時間を過ごす彼らに、もう横槍が入ることはなかった。
後宮のあちこちで噂され、作者である雪華の名前も広く知られるようになった。絵を描いて欲しいとの依頼も増え、まさに名前を売るチャンスが実を結んだ結果だった。
雪華はその状況に充足感を覚えながらも、支えてくれた承徳に感謝を抱いていた。その彼との待ち合わせ場所である回廊へ向けて、雪華は早足で向かう。
仕事終わりの時間のため、夕陽が回廊の柱を赤く染めている。雪華は足を止めて周囲を見渡した。
すると、承徳の姿が遠くから現れる。申し訳なさそうに眉を下げながら向かってきた彼は、小さく頭を下げる。
「待たせたかな?」
「いえ、私が早く着いただけですから」
実際、待ち合わせの時刻よりも随分と早い時間だった。二人共、待ちきれずに早く来てしまったのだと知り、穏やかな空気が流れる。
「あの、承徳様。蛇の絵を飾るようにと勧めてくれて、本当にありがとうございました」
「君が才能を発揮した結果さ。私は少し手助けをしただけだよ」
謙遜する承徳の言葉に、雪華は微笑む。彼の優しさに触れて、自分の胸の内に感謝の思いが広がるのを感じていく。
「あの、お礼にご飯をご馳走させてくれませんか」
「気にしなくても良いのだが……」
「これくらいはさせて頂きたいんです」
遠慮するものの、雪華の意思が強いと悟ったのか、承徳は頷く。
「分かった。ご馳走になるよ」
「では食堂で夕飯にしましょう」
二人は並んで回廊を歩き、夕暮れの静かな庭園を抜けていく。空は赤から黒へと移り変わりつつあり、足元の石畳には竹笹の影が揺れている。
やがて食堂の明かりが見え始めると、香ばしい匂いが風に乗って漂ってきた。
(美味しそうですね)
雪華は思わず口元を緩めながら、食堂の前まで辿り着く。
扉を開けると、活気ある声と食器の触れ合う音が耳に飛び込んできた。天井から吊るされた赤い提灯が柔らかな明かりを放ち、中央には丸卓がいくつも並んでいる。それぞれに料理を囲む人たちの姿もあった。
雪華たちは窓際の丸卓に腰掛ける。庭園の景色を眺められるお気に入りの席だった。
「承徳様はここの食堂を使ったことはありますか?」
「ないね」
「なら普段は食事をどちらで?」
「う~ん、なんと言えばいいんだろうか……」
承徳が返答に窮していると、二人の間を割って入るように軽快な声が響く。
「ご注文はお決まりですか?」
振り返ると、食堂の給仕をしている女性が笑顔を浮かべていた。承徳はまるで救われたかのように軽く息を吐き、「食事が先だね」と話題を切り替える。
「承徳様は食べたいものがありますか?」
「雪華が勧めるものを食べてみたいな」
「ではそうしますね」
雪華は注文を伝えると、給仕は一礼して、その場を後にする。二人の間に静けさが戻り、やがて料理が運ばれてくる。
蒸し鶏の前菜から始まり、茶籠から湯気が立ち上る小籠包、黄金色の焼き餃子や、炒め物の青菜も届いた。
「とても美味しそうだね」
「味は私が保証します」
「それなら信頼できそうだ」
料理の美味しさと他愛ない会話を楽しみながら、二人の間に心地よい時間が流れていく。
香ばしい焼き餃子を一口頬張ると、外はカリッと、中はジューシーな食感に思わず笑みが溢れる。小籠包から溢れる熱々のスープも、青菜の炒め物のシャキシャキとした歯ごたえもすべてが絶妙だった。
承徳も舌に合っていたのか、笑みが溢れている。和やかな空気が流れる中、それを破るように、人影が近づいてくる。その人物には見覚えがあった。
鋭い目つきと冷ややかな雰囲気を纏った女官、黒羽だ。彼女は迷いのない足取りで近づくと、立ち止まって、わざとらしく口元に笑みを浮かべた。
「随分と楽しそうね」
黒羽の声が冷たく響き、雪華と承徳の会話を断ち切る。だが雪華に動揺した様子は見えず、いつものように冷静だった。
「なにか御用でしょうか?」
「用というほどのものじゃないわ。ただ、あなたの高い評判も長くは続かない。それを伝えに来たの」
その言葉に雪華はほんの少し眉を寄せるが、表情を崩さずに問い返す。
「どういう意味ですか?」
「あなたに黒い噂が流れているの……描いた絵が周囲に不幸を呼ぶってね」
「根拠のない噂でしょう。なら私が気にする必要はありませんね」
「いいえ、根拠ならあるわ。なにせ、そう占ったのは邪蓮さんだもの。あの人の占いはいつも当たると評判だし、信じている女官も多いわ」
黒羽もその信奉者の一人なのだろう。冷静に状況を受け止めた雪華は、黒羽をしっかりと見据える。
「黒羽様の話はこれで終わりですか?」
「この話を聞いても生意気なままなのね……」
「媚びないのは私の長所ですから」
「――ッ……ふん、きっとこの後、邪蓮さんの占いが的中して、あの蛇の絵も撤去されるわ。その時になって悔しがればいいのよ」
挑発を受けても雪華は眉一つ動かさない。その態度に、黒羽の目がさらに細くなる。
「どうして、そんなに余裕なのよ?」
「私の絵は既に多くの人の心に残っています。仮に撤去されたとしても、その感動は消えたりしませんから。それに……」
雪華は一息置いて、続ける。
「撤去はされないと思いますので」
「なぜそんなことが言い切れるのよ!」
「あの場所を管理しているのは静慧様ですから。とても理知的で冷静な方なので、不吉を理由に理不尽を強いるとは思えません」
雪華の正論に黒羽は拳を握りしめる。
「……お、覚えてなさい!」
黒羽は言い返せずに逃げるように踵を返す。荒々しい足音を立てながら去っていく背中には怒りと苛立ちが浮かんでいた。
去っていくのを確認すると、雪華は蒸し鶏を一口頬張る。その柔らかさと香ばしいソースの旨味に心を和らげる。
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