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第3章 魔導要塞の攻防
第33話 お風呂洗い
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天気の良い初夏の昼下がりのこと、順調に畑仕事を終えたリリカは館に戻り、汗を流すべくお風呂に入った。水魔術の技術が上がってから、お風呂の準備も随分と楽になった。
今までも毎日お風呂に入っていたが、最近は一日に2度入ることも少なくない。今は初夏で、陽気は過ごしやすいが、畑仕事なんかをするとやはり汗をかくものだ。なので近頃は夜と畑仕事の後の2回お風呂に入るのがリリカの習慣になっていた。
実際のところ、一日に2度の入浴などという生活は貴族はおろか王族でもやってはいない。身体を洗うのも植物の種から油を搾って作った石鹸がたっぷりあり、薬草や香草を湯舟に浸け成分をしっかりお湯に抽出してから入る。鮮度抜群の生薬でできた入浴剤のお風呂に毎日浸かれるのでお肌はいつも健康的なツヤツヤサラサラなのだ。入浴については、多分バルティス王国でリリカが一番贅沢をしている。
この湯舟は、本人もあまり自覚していないが、地味にリリカの水魔術のトレーニング場になっている。実は最近この湯舟はあまり掃除をしていない。それどころかお湯も長らく換えていない。換えてはいないが衛生状態は保たれている。
このようなことができるようになったのは、少し前にリリカはあることに思いいたったことから始まった。(別に水を換えなくても、水の汚れを取り除ければお風呂って洗わなくてもいいんじゃない?) 石鹸で身体を洗うと、身体の油汚れが落ちる。湯舟の湯にもそういう汚れや抜けた毛なんかが溜まるから汚れてくるのだ。
衛生状態を保つには毎日きちんと湯舟を洗った方がいいに決まっているが、貴重な水を大量に使うことになるので、洗わなくて済むに越したことはない。現代の世の中と違って水道のない世界なので、風呂水を無駄にしない効果は生活上非常に大きい。
そこでリリカは水魔術で、湯舟の底面のごく薄い水の層を個体化させて水の膜を作ってみた。膜は非常に小さい穴をあけて、いうなればきめの細かい網のような構造にしてみた。これはなかなかテクニックが必要だったが、何日か練習を繰り返したらできるようになった。(←本人は自覚してないけど、水魔術師としては達人級の技術です。)
こうして作った水の網をゆっくりと水面まで引き上げると浴槽に浮遊していた汚れを全部すくい上げることができるのだ。浴槽に付着する汚れも浴槽に接する水を固化させてはがせば汚れを固着した状態で除去できた。
引き上げた水の膜は桶に放り込んで解除すると汚れをたくさん含んだ水に戻る。桶半ばいにも満たないので、水のロスが少ない。この汚れた水は畑にまけばいい肥料になった。
「っていう感じでね、お風呂を洗わなくてもずっと綺麗な状態を保てるようになりました!水もあまり使わないで済むんです。一日に何回もお風呂に入っても洗わなくていいんですよ!」
「・・・すごいな。ここまで魔術を日々の生活に使いこなせるようになるとは。」
こんな感じで、おふろ洗浄法を確立したリリカはリアムに自慢した。リアムはただただ感心するばかりだった。彼も魔術師としては天才的な才能があるが、修道院で技術を培ってきた正統派の術師である彼は、魔術は学問という意識が強く、日常生活に応用する発想があまりなかったのだ。
今回のお風呂もそうだが、それ以前の農作業の水やりなど、自分で応用方法を見つけられるようになったリリカの発想には、リアムはしばしば驚かされる。
しかしお風呂の件は、実は汚れの濾し取りだけでは不充分で、この方法だけでは数日たつと水が腐ってしまうことが分かった。
(汚れをすくい取ってるのにどうしてお風呂の水は腐っちゃうんだろう。) 数週間ほどリリカはそう考えながら、臭くなってしまった湯舟の水を抜いて渋々洗うことを繰り返していたが、やがてあることに気付いた。(あっ、もしかして水に溶けてるものが腐るんじゃないかな。汗とか。)
それは正解で、試しにヴェイパーディフュージョンで一旦水を気化させると溶けていたものが湯舟の底に残ることが分かった。リリカは、風呂水を気化させた状態を保ちながら、風呂の底にたまった汚れを雑巾がけで取り除き、再び水を湯舟に戻すという技を編み出して、とうとう水を腐らせることなく湯舟の水を清潔に維持する方法を極めたのだった。
ちなみに風呂桶いっぱいの水を気化させ、気化した水蒸気が拡散しないように維持しながら湯舟の底を掃除する行為は、筋トレで例えるなら百キロ越えのバーベルを持ち上げたままウォーキングをするようなもので、魔術師的にはとんでもない負荷だったりする。
最初の頃、リリカは(ちょっとキツイな)などと思いはしたが、お風呂の水を無駄にしたくない一心で毎日我慢してそれを繰り返していると段々なんてことなくなっていった。本人は気づいていないが、この無自覚魔力トレーニングを毎日続けることによって、リリカの魔力はリアムにかなり追いつくことになった。
ところで、今までは夜お風呂に入ると、お勉強→ご褒美→就寝の流れがずっと続いていた。そのためリリカは身体が清潔になると、ご主人様と肌の接触、と条件反射的に反応するようになってしまっていた。おかげでお昼間にお風呂を出ると無性にリアムの肌が恋しくなり、下腹部が疼いてしまうのだった。
「ね、ね、ご主人様。」
「何だ、リリカ。またお風呂に入ったのか?」
ある日の昼下がり、畑仕事を終えてお風呂で汗を洗い流したリリカは、髪の毛をタオルで拭きながらリアムの書斎に入ってきた。
「はい。今、リリカはとってもさっぱりです。」
「良かったな。夕飯の準備までまだ時間もあるし、少しはくつろいだら?」
「はい。でね、ご主人様。今、リリカ綺麗なんでどこ舐めても汚くないんですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・、・・・で?」
「な・・・舐めてほしいとこがあって──」
「お、俺、読書中だからな。ああいそがしい!」
「あ、もうご主人様―!(抱き)」
「何だよ、こら!抱きつくんじゃない。俺は風呂に入ってないからいろいろすると汚いぞ?」
「ご主人様になら汚されたいです♡」
洗ってないご主人様のでリリカの大事なところが汚される、本来嫌悪すべきシチュエーションを想像して逆に興奮するリリカに、(なんか、最近めんどくさいことになったな。) とリアムはほとほと参るのだった。でも、数日に1度は欲望に負けていたしてしまったり。・・・ご褒美じゃないのに。
─────
実は、今回の内容も地味に今後の仕込みのつもりです。
今までも毎日お風呂に入っていたが、最近は一日に2度入ることも少なくない。今は初夏で、陽気は過ごしやすいが、畑仕事なんかをするとやはり汗をかくものだ。なので近頃は夜と畑仕事の後の2回お風呂に入るのがリリカの習慣になっていた。
実際のところ、一日に2度の入浴などという生活は貴族はおろか王族でもやってはいない。身体を洗うのも植物の種から油を搾って作った石鹸がたっぷりあり、薬草や香草を湯舟に浸け成分をしっかりお湯に抽出してから入る。鮮度抜群の生薬でできた入浴剤のお風呂に毎日浸かれるのでお肌はいつも健康的なツヤツヤサラサラなのだ。入浴については、多分バルティス王国でリリカが一番贅沢をしている。
この湯舟は、本人もあまり自覚していないが、地味にリリカの水魔術のトレーニング場になっている。実は最近この湯舟はあまり掃除をしていない。それどころかお湯も長らく換えていない。換えてはいないが衛生状態は保たれている。
このようなことができるようになったのは、少し前にリリカはあることに思いいたったことから始まった。(別に水を換えなくても、水の汚れを取り除ければお風呂って洗わなくてもいいんじゃない?) 石鹸で身体を洗うと、身体の油汚れが落ちる。湯舟の湯にもそういう汚れや抜けた毛なんかが溜まるから汚れてくるのだ。
衛生状態を保つには毎日きちんと湯舟を洗った方がいいに決まっているが、貴重な水を大量に使うことになるので、洗わなくて済むに越したことはない。現代の世の中と違って水道のない世界なので、風呂水を無駄にしない効果は生活上非常に大きい。
そこでリリカは水魔術で、湯舟の底面のごく薄い水の層を個体化させて水の膜を作ってみた。膜は非常に小さい穴をあけて、いうなればきめの細かい網のような構造にしてみた。これはなかなかテクニックが必要だったが、何日か練習を繰り返したらできるようになった。(←本人は自覚してないけど、水魔術師としては達人級の技術です。)
こうして作った水の網をゆっくりと水面まで引き上げると浴槽に浮遊していた汚れを全部すくい上げることができるのだ。浴槽に付着する汚れも浴槽に接する水を固化させてはがせば汚れを固着した状態で除去できた。
引き上げた水の膜は桶に放り込んで解除すると汚れをたくさん含んだ水に戻る。桶半ばいにも満たないので、水のロスが少ない。この汚れた水は畑にまけばいい肥料になった。
「っていう感じでね、お風呂を洗わなくてもずっと綺麗な状態を保てるようになりました!水もあまり使わないで済むんです。一日に何回もお風呂に入っても洗わなくていいんですよ!」
「・・・すごいな。ここまで魔術を日々の生活に使いこなせるようになるとは。」
こんな感じで、おふろ洗浄法を確立したリリカはリアムに自慢した。リアムはただただ感心するばかりだった。彼も魔術師としては天才的な才能があるが、修道院で技術を培ってきた正統派の術師である彼は、魔術は学問という意識が強く、日常生活に応用する発想があまりなかったのだ。
今回のお風呂もそうだが、それ以前の農作業の水やりなど、自分で応用方法を見つけられるようになったリリカの発想には、リアムはしばしば驚かされる。
しかしお風呂の件は、実は汚れの濾し取りだけでは不充分で、この方法だけでは数日たつと水が腐ってしまうことが分かった。
(汚れをすくい取ってるのにどうしてお風呂の水は腐っちゃうんだろう。) 数週間ほどリリカはそう考えながら、臭くなってしまった湯舟の水を抜いて渋々洗うことを繰り返していたが、やがてあることに気付いた。(あっ、もしかして水に溶けてるものが腐るんじゃないかな。汗とか。)
それは正解で、試しにヴェイパーディフュージョンで一旦水を気化させると溶けていたものが湯舟の底に残ることが分かった。リリカは、風呂水を気化させた状態を保ちながら、風呂の底にたまった汚れを雑巾がけで取り除き、再び水を湯舟に戻すという技を編み出して、とうとう水を腐らせることなく湯舟の水を清潔に維持する方法を極めたのだった。
ちなみに風呂桶いっぱいの水を気化させ、気化した水蒸気が拡散しないように維持しながら湯舟の底を掃除する行為は、筋トレで例えるなら百キロ越えのバーベルを持ち上げたままウォーキングをするようなもので、魔術師的にはとんでもない負荷だったりする。
最初の頃、リリカは(ちょっとキツイな)などと思いはしたが、お風呂の水を無駄にしたくない一心で毎日我慢してそれを繰り返していると段々なんてことなくなっていった。本人は気づいていないが、この無自覚魔力トレーニングを毎日続けることによって、リリカの魔力はリアムにかなり追いつくことになった。
ところで、今までは夜お風呂に入ると、お勉強→ご褒美→就寝の流れがずっと続いていた。そのためリリカは身体が清潔になると、ご主人様と肌の接触、と条件反射的に反応するようになってしまっていた。おかげでお昼間にお風呂を出ると無性にリアムの肌が恋しくなり、下腹部が疼いてしまうのだった。
「ね、ね、ご主人様。」
「何だ、リリカ。またお風呂に入ったのか?」
ある日の昼下がり、畑仕事を終えてお風呂で汗を洗い流したリリカは、髪の毛をタオルで拭きながらリアムの書斎に入ってきた。
「はい。今、リリカはとってもさっぱりです。」
「良かったな。夕飯の準備までまだ時間もあるし、少しはくつろいだら?」
「はい。でね、ご主人様。今、リリカ綺麗なんでどこ舐めても汚くないんですよ?」
「・・・・・・・・・・・・・、・・・で?」
「な・・・舐めてほしいとこがあって──」
「お、俺、読書中だからな。ああいそがしい!」
「あ、もうご主人様―!(抱き)」
「何だよ、こら!抱きつくんじゃない。俺は風呂に入ってないからいろいろすると汚いぞ?」
「ご主人様になら汚されたいです♡」
洗ってないご主人様のでリリカの大事なところが汚される、本来嫌悪すべきシチュエーションを想像して逆に興奮するリリカに、(なんか、最近めんどくさいことになったな。) とリアムはほとほと参るのだった。でも、数日に1度は欲望に負けていたしてしまったり。・・・ご褒美じゃないのに。
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実は、今回の内容も地味に今後の仕込みのつもりです。
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