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第3章 魔導要塞の攻防
第34話 リリカの魔術実験
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少し前まで、夜のお勉強のノルマの他にさらに魔導書を広げたりして、非常に熱心に水魔術の研究をしていたリリカだったが、最近はそれがなくなった。
一応夜のお勉強のノルマの予習はちゃんとしていて卒なくこなしているが、自習時間は必要最低限になっているようなのだ。すべきことはしているので別にどうということもないが、リアムはそれが少し気になった。夜のお勉強が終わった後、リアムはそのことを聞いてみた。
「そういえばリリカは、ちょっと前はいろんな魔導書を読みあさってたけど、最近しなくなったな。」
「あー・・・、でも夜の宿題はこなしてるんで大丈夫ですよね。」
「もちろん問題ないけど、どうしたのか気になってな。お勉強に飽きた?」
「飽きたというか、、どうもリリカのしたいことが書いてある魔導書がなさそうなので、もう魔導書で探すのはいいかなって思って。」
リリカはどうやら、各魔導書の目次と概要を片っ端から読んで回って、自分の使えるようになりたい術について書いてある魔導書を探し回っていたようだ。
「どんな魔術を探してたんだ?」
「水魔術なんですけど。。もっと、こう、アクアジェリングの他に農業に役立つのがないかなと思いまして。」
しかし、水の魔導書は元々数が少なく、あってもそこに書かれているのは、火の魔術を防ぐ防御系のものや、水の塊を飛ばすだとか(火の玉の方がよほど有効なので、戦闘においてあまり役に立たない)、最高峰と呼ばれる水魔術・メイルシュトロームは洪水を呼ぶような術で、どれも農業とは無縁のものばかりだった。
「・・・まあ、前も言ったけど、魔導士って基本的に研究所にこもって本ばかり読んでるような人間だからな。俺も似たようなもんだけど。そもそも魔術と農業を関連付けようなんて発想がないから、そういう魔術を記述した本もないと思うよ。」
「・・・てことなんですよね。なのでもう探すのやめたんです。」
「ちなみに何ができるようになりたかったの?」
「えっとね、作物の栄養価をもっと高くする方法はないかなと。」
それはリアムが想像していたよりかなり難しい話だった。
「それは・・・、かなり難しいことを考えたな。水魔術といえるのかも何とも言えないが。」
「でも、リリカは水魔術でできるんじゃないかなーと思ったんです。で、最近は魔導書を読む代わりに実はいろいろ実験をしてみてるんです。」
「実験」という単語を聞いてリアムは一瞬固まった。以前に実験と称してキュウリをいけない方法で食していた事件を反射的に思い出してしまったのだ(第21話の出来事)。
(い、いかん。あの話題にはならないようにせねば。)
「ど・・・、どんな実験をしてたのかな(震え声)?」
「リリカは、植物の養分って土に含まれてるものが水に溶けだしたもので、それを吸い上げてると思うんです。で、思ったのが・・・、ほら、塩とかって溶かすと塩水が濃くなってきたら溶けなくなりますよね。」
「あ、ああ、そうだな。(ホッ)」
思いのほかまともな話だったので、リアムはほっとした。
「ということは、水に溶ける養分も限界がある。でも、水魔術でもっと溶けるようにしたら、普通じゃ吸い上げれない養分を植物が得ることもできるようになるのではと思って、試してたんです。」
なるほど、そこに注目すれば確かに水魔術の領域になる。意外どころかかなりまともなことをリリカが考えていたのでリアムはうれしくなり、また学者的な意味でも興味をそそられた。
「で、実際何をやったんだ?」
「まず、塩水を限界突破できないかいろいろ試してみて、10倍濃度とか作れるようになりました。」
物質には溶解度というものがあり、水温を上げると溶かせる量は増えるものの、同じ温度であれば溶ける量には限度がある。塩でも砂糖でも、水に溶けはするが大量に入れれば解けずに底面に溜まる。
リリカはその限界値を超えて溶かす術を編み出したというのだ。実に地味な術で、どう考えても本場の魔術師が開発しそうな術ではなかった。だが、理科の実験的な面白さをリアムは素直に感じた。
「10倍ってのは、すごいな。相当辛くなるだろう?」
「もう、味わえたもんじゃなかったですよぉ。それに術を解くと溶けてた塩が解けていられなくなって、すぐに塊が水の中に出てくるんです。」
(再結晶だな。)リアムは書物で得たこれまでの知識と照らし合わせてそう思った。もしかするとリリカが試した術は、農業とは別の用途にも使えるかもしれない。
「で、それを畑の土でも試したんですけど、あまり効果がなくて今いろいろお試し中なんです。」
「なるほどな。」
最近台所にいる時間や畑にいる時間が少し長めに感じていたが、その理由がようやく分かったのだった。
「ただ、どうだろう?水に溶けている養分の濃度を濃くしたら作物が育つとは限らない気がするがな。だってほら、水魔術を使わなくても、それなら水をやらずに液体の肥料(要するに肥ですね)だけやればいいみたいな話になるけど、そうはいかないだろ?」
「そうなんです。養分の濃いのを吸わせると結構枯れちゃったりするんで、今のところ失敗ばかりです。」
「10倍の塩水が飲めたもんじゃないのと同じで、植物も養分が濃ければいいという訳じゃないんだろうな。ま、失敗することもあるだろうけど、いろいろ興味を持つのはとてもいいことだ。」
「あ、今の褒めてくれました?」
「ああ、リリカはえらいな!」
「え、えへへー♪」
褒められてリリカのテンションがぐっと上がった。
「リリカね、実は今も興味津々なことがあるんです♪」
「うんうん、なんだ?」
その流れでいいことがあまりないのだが、楽しい気分になっていたリアムは油断していた。
「塩水はもう無理なんですけど、ご主人様のミルクは濃くしたらかなりイケるんじゃないかって思ってて。ね、ご主人様、今日は味見を。」
「イケません!」
思わず股間を両手で隠したリアムに、そんなこと言わずになどとにじり寄るリリカ。今夜もご褒美タイムにリアムの喘ぎ声が響くのだった。
一応夜のお勉強のノルマの予習はちゃんとしていて卒なくこなしているが、自習時間は必要最低限になっているようなのだ。すべきことはしているので別にどうということもないが、リアムはそれが少し気になった。夜のお勉強が終わった後、リアムはそのことを聞いてみた。
「そういえばリリカは、ちょっと前はいろんな魔導書を読みあさってたけど、最近しなくなったな。」
「あー・・・、でも夜の宿題はこなしてるんで大丈夫ですよね。」
「もちろん問題ないけど、どうしたのか気になってな。お勉強に飽きた?」
「飽きたというか、、どうもリリカのしたいことが書いてある魔導書がなさそうなので、もう魔導書で探すのはいいかなって思って。」
リリカはどうやら、各魔導書の目次と概要を片っ端から読んで回って、自分の使えるようになりたい術について書いてある魔導書を探し回っていたようだ。
「どんな魔術を探してたんだ?」
「水魔術なんですけど。。もっと、こう、アクアジェリングの他に農業に役立つのがないかなと思いまして。」
しかし、水の魔導書は元々数が少なく、あってもそこに書かれているのは、火の魔術を防ぐ防御系のものや、水の塊を飛ばすだとか(火の玉の方がよほど有効なので、戦闘においてあまり役に立たない)、最高峰と呼ばれる水魔術・メイルシュトロームは洪水を呼ぶような術で、どれも農業とは無縁のものばかりだった。
「・・・まあ、前も言ったけど、魔導士って基本的に研究所にこもって本ばかり読んでるような人間だからな。俺も似たようなもんだけど。そもそも魔術と農業を関連付けようなんて発想がないから、そういう魔術を記述した本もないと思うよ。」
「・・・てことなんですよね。なのでもう探すのやめたんです。」
「ちなみに何ができるようになりたかったの?」
「えっとね、作物の栄養価をもっと高くする方法はないかなと。」
それはリアムが想像していたよりかなり難しい話だった。
「それは・・・、かなり難しいことを考えたな。水魔術といえるのかも何とも言えないが。」
「でも、リリカは水魔術でできるんじゃないかなーと思ったんです。で、最近は魔導書を読む代わりに実はいろいろ実験をしてみてるんです。」
「実験」という単語を聞いてリアムは一瞬固まった。以前に実験と称してキュウリをいけない方法で食していた事件を反射的に思い出してしまったのだ(第21話の出来事)。
(い、いかん。あの話題にはならないようにせねば。)
「ど・・・、どんな実験をしてたのかな(震え声)?」
「リリカは、植物の養分って土に含まれてるものが水に溶けだしたもので、それを吸い上げてると思うんです。で、思ったのが・・・、ほら、塩とかって溶かすと塩水が濃くなってきたら溶けなくなりますよね。」
「あ、ああ、そうだな。(ホッ)」
思いのほかまともな話だったので、リアムはほっとした。
「ということは、水に溶ける養分も限界がある。でも、水魔術でもっと溶けるようにしたら、普通じゃ吸い上げれない養分を植物が得ることもできるようになるのではと思って、試してたんです。」
なるほど、そこに注目すれば確かに水魔術の領域になる。意外どころかかなりまともなことをリリカが考えていたのでリアムはうれしくなり、また学者的な意味でも興味をそそられた。
「で、実際何をやったんだ?」
「まず、塩水を限界突破できないかいろいろ試してみて、10倍濃度とか作れるようになりました。」
物質には溶解度というものがあり、水温を上げると溶かせる量は増えるものの、同じ温度であれば溶ける量には限度がある。塩でも砂糖でも、水に溶けはするが大量に入れれば解けずに底面に溜まる。
リリカはその限界値を超えて溶かす術を編み出したというのだ。実に地味な術で、どう考えても本場の魔術師が開発しそうな術ではなかった。だが、理科の実験的な面白さをリアムは素直に感じた。
「10倍ってのは、すごいな。相当辛くなるだろう?」
「もう、味わえたもんじゃなかったですよぉ。それに術を解くと溶けてた塩が解けていられなくなって、すぐに塊が水の中に出てくるんです。」
(再結晶だな。)リアムは書物で得たこれまでの知識と照らし合わせてそう思った。もしかするとリリカが試した術は、農業とは別の用途にも使えるかもしれない。
「で、それを畑の土でも試したんですけど、あまり効果がなくて今いろいろお試し中なんです。」
「なるほどな。」
最近台所にいる時間や畑にいる時間が少し長めに感じていたが、その理由がようやく分かったのだった。
「ただ、どうだろう?水に溶けている養分の濃度を濃くしたら作物が育つとは限らない気がするがな。だってほら、水魔術を使わなくても、それなら水をやらずに液体の肥料(要するに肥ですね)だけやればいいみたいな話になるけど、そうはいかないだろ?」
「そうなんです。養分の濃いのを吸わせると結構枯れちゃったりするんで、今のところ失敗ばかりです。」
「10倍の塩水が飲めたもんじゃないのと同じで、植物も養分が濃ければいいという訳じゃないんだろうな。ま、失敗することもあるだろうけど、いろいろ興味を持つのはとてもいいことだ。」
「あ、今の褒めてくれました?」
「ああ、リリカはえらいな!」
「え、えへへー♪」
褒められてリリカのテンションがぐっと上がった。
「リリカね、実は今も興味津々なことがあるんです♪」
「うんうん、なんだ?」
その流れでいいことがあまりないのだが、楽しい気分になっていたリアムは油断していた。
「塩水はもう無理なんですけど、ご主人様のミルクは濃くしたらかなりイケるんじゃないかって思ってて。ね、ご主人様、今日は味見を。」
「イケません!」
思わず股間を両手で隠したリアムに、そんなこと言わずになどとにじり寄るリリカ。今夜もご褒美タイムにリアムの喘ぎ声が響くのだった。
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