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第4章 リリカのお勉強
第29話 ★炎の回復魔術
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リリカの魔術のお勉強が始まって約一ヶ月が経った。最初の一週間こそかなり辛そうにしていたリリカであったが、最近は何とか軌道に乗ってきた。
そうは言っても大変な事には変わりないが、今は一日の目標である「魔導書(テクスト)1ページを読み進める」を、毎日達成している。大体一つの術に対し、60ページ程を費やしているので、このペースなら、二ヶ月ほどかければ、魔術を一つ習得できそうだ。
しかし、成り行きとはいえ、二人とも随分ハードな日々を送る事になっている。リアムの魔術である程度便利にしているとはいえ、自給自足を維持するのは、日々何かとやらねばならない事が沢山ある。
その上、リアムはリリカに魔術を教え、自分も魔導書を読み、リリカも予習をしつつ、魔術の勉強に励んでいる。
誰の監視もない悠々自適の無人島生活なんだから、もっとダラダラしたって良さそうなものなのに、二人とも以前の勤勉な生活習慣が、そのまま残っているようだ。
実のところ、目標を達成したら貰えるご褒美が、リリカが続けられる最大の理由だ。本人は気づいていないが、それで一日のストレスを、全て発散していると言っても過言ではない。
例によって、リアムの舌と指で上りつめた後は、抱き枕の刑に処されるので、目標を達成できるようになった近頃は、毎晩リアムと一緒に寝ている。何とも幸せな気分で眠りにつき、清々しい気分で朝は目覚めている。
最近リリカは、ちゃっかり自分の着替えをリアムの部屋の衣装棚に仕舞っていたりする。そう言えば掃除以外で自分の部屋に入ったのは何日前だっけ?
今夜も部屋で二人並んで魔導書を読む。リアムがまず一文を読んで聞かせ、その意味するところを咀嚼して解説する。わからない事があれば、リリカが質問する。
能率が上がるか否かは、この質問の内容がかなり影響する。以前は、本質とは程遠い事しか聞けなかったリリカだが、最近は力の入った予習で、核心に迫る問いを連発し、リアムが驚くほどだ。おかげで理解が非常に早い。毎晩ご褒美確定なのである。
今二人が読んでいる魔導書は、「獄炎の法書」と題された300ページほどのテクストで、5種類の火属性の魔術の術理と使用方法が書かれている。リアムは5,600#Gをこの本にかけている。(←5,600万円相当)
その中で、今読んでいるものは、書の中の2項目の術「イグニスヒール」という魔術だ(1項目は飛ばしている)。一ヶ月かけて半分ほどを読み、ようやくリリカは、どういう事をしようとする術なのかが見えてきた。
「ご主人様。回復魔術という事で勉強してきましたけど、この魔術は怪我を治すんじゃないんですね。」
「気づいたか?その通り。対象の身体を治療するのではなく、消耗した魔力を回復させる魔術だ。」
「前にご主人様からは、黒魔術は戦闘で使う事を想定した魔術だと教わりましたけど、これも黒魔術なんですか?」
「怪我の治療ではなく、魔力の回復だからな。魔力不足というのは、消耗の激しい攻撃用の魔術以外では、普通起きない。だからこの魔術は、戦場での補給を想定したものという意味で、黒魔術とされてるんだよ。」
「でも・・・、ここまで読んだ内容だと、この魔術って、対象を焼き払うんですよね?」
「だな。なかなかの火力だぞ。」
「私、戦いとかした事ないけど、この魔術っていつ使うのか、よくわからないです。」
「もう一声。どうしてそう思う?」
「だって、攻撃に使うなら、相手の魔力なんて回復させなくていいし、回復に使おうとしたら、相手が死んじゃいますよ?」
「その通りだ。」
リアムはニヤっとわらった。
「なかなか、賢いぞリリカ。おかしいと思った時は、何となくで済まさず、何が原因でおかしいのか、はっきり言葉で表現するのが重要だ。」
「・・そうなんですね。」
「で、察しの通りこれは、丸っきり使い所のない魔術だ。理由は、今リリカが言った通りだ。」
「そんな使えない魔術をどうして作ったんですかね・・・」
「使い所よりも業績のためだろうな。これを書いた奴は、多分フォルセルの国立魔導研究所の教授だろう。奴らは新たな魔術の開発が、自身の業績になるからな。」
「そんなもののために、こんな高価な本を・・・。」
リリカは微妙な表情だ。貧農の家で食うや食わずの生活をしてきた彼女には、そんな無駄は考えられない事だった。
「彼らの世界では、ままある事だ。執筆者からすれば、通常、対象を破壊する事しかしない火属性の魔術に、何かしらの追加効果を付加したところにこの術の新しさがある、ていう事なんだろう。」
新しくても、役に立たない追加効果では意味はないのでは。どうせ勉強するのなら、使えるのがいい、と思うリリカだった。
「まだ何か言いたそうだな。」
「あの、失礼なこと言うかもしれないので。」
「いいから言ってみろ。疑問は残さない方がいい。」
「・・・何でご主人様は、そんな使えない魔法をリリカに教えようと思ったんですか?」
結構パンチの効いた質問が来た。言ってみてやっぱりまずいと思ったのか、リリカはごめんなさいをしようとした。
「謝らなくていいぞ。疑問に思ったことは何でも言うんだ。全部説明してやる。これは一応回復魔法だからな、ヒーラーを専門職とする俺が教えやすそうだと思ったからだ。
俺も教えるのは初めてだからな、役に立つかは置いといて、まずは一つ、お前にしっかり術を一つ教えたかったからだ。」
「そうなんですね。」
リリカは一応納得した様子だ。
「燃えない人だったら、この魔術も役に立つのかなー。」
「・・・・・・」
急にリアムが黙りこくった。え?何か怒らせたかしらと、思ってリリカが覗き込む。
「お前、今いいこと言ったな!」
「え?そ、そうですか?」
「凄いことを思いついちまった。」
興奮気味にリアムが呟く。実はこのひらめきが、この後二人の暮らしを大きく変えていくことになる。
------------------
少しストーリーを進めたいので、しばらくこんな感じの魔法回が続きます。
そうは言っても大変な事には変わりないが、今は一日の目標である「魔導書(テクスト)1ページを読み進める」を、毎日達成している。大体一つの術に対し、60ページ程を費やしているので、このペースなら、二ヶ月ほどかければ、魔術を一つ習得できそうだ。
しかし、成り行きとはいえ、二人とも随分ハードな日々を送る事になっている。リアムの魔術である程度便利にしているとはいえ、自給自足を維持するのは、日々何かとやらねばならない事が沢山ある。
その上、リアムはリリカに魔術を教え、自分も魔導書を読み、リリカも予習をしつつ、魔術の勉強に励んでいる。
誰の監視もない悠々自適の無人島生活なんだから、もっとダラダラしたって良さそうなものなのに、二人とも以前の勤勉な生活習慣が、そのまま残っているようだ。
実のところ、目標を達成したら貰えるご褒美が、リリカが続けられる最大の理由だ。本人は気づいていないが、それで一日のストレスを、全て発散していると言っても過言ではない。
例によって、リアムの舌と指で上りつめた後は、抱き枕の刑に処されるので、目標を達成できるようになった近頃は、毎晩リアムと一緒に寝ている。何とも幸せな気分で眠りにつき、清々しい気分で朝は目覚めている。
最近リリカは、ちゃっかり自分の着替えをリアムの部屋の衣装棚に仕舞っていたりする。そう言えば掃除以外で自分の部屋に入ったのは何日前だっけ?
今夜も部屋で二人並んで魔導書を読む。リアムがまず一文を読んで聞かせ、その意味するところを咀嚼して解説する。わからない事があれば、リリカが質問する。
能率が上がるか否かは、この質問の内容がかなり影響する。以前は、本質とは程遠い事しか聞けなかったリリカだが、最近は力の入った予習で、核心に迫る問いを連発し、リアムが驚くほどだ。おかげで理解が非常に早い。毎晩ご褒美確定なのである。
今二人が読んでいる魔導書は、「獄炎の法書」と題された300ページほどのテクストで、5種類の火属性の魔術の術理と使用方法が書かれている。リアムは5,600#Gをこの本にかけている。(←5,600万円相当)
その中で、今読んでいるものは、書の中の2項目の術「イグニスヒール」という魔術だ(1項目は飛ばしている)。一ヶ月かけて半分ほどを読み、ようやくリリカは、どういう事をしようとする術なのかが見えてきた。
「ご主人様。回復魔術という事で勉強してきましたけど、この魔術は怪我を治すんじゃないんですね。」
「気づいたか?その通り。対象の身体を治療するのではなく、消耗した魔力を回復させる魔術だ。」
「前にご主人様からは、黒魔術は戦闘で使う事を想定した魔術だと教わりましたけど、これも黒魔術なんですか?」
「怪我の治療ではなく、魔力の回復だからな。魔力不足というのは、消耗の激しい攻撃用の魔術以外では、普通起きない。だからこの魔術は、戦場での補給を想定したものという意味で、黒魔術とされてるんだよ。」
「でも・・・、ここまで読んだ内容だと、この魔術って、対象を焼き払うんですよね?」
「だな。なかなかの火力だぞ。」
「私、戦いとかした事ないけど、この魔術っていつ使うのか、よくわからないです。」
「もう一声。どうしてそう思う?」
「だって、攻撃に使うなら、相手の魔力なんて回復させなくていいし、回復に使おうとしたら、相手が死んじゃいますよ?」
「その通りだ。」
リアムはニヤっとわらった。
「なかなか、賢いぞリリカ。おかしいと思った時は、何となくで済まさず、何が原因でおかしいのか、はっきり言葉で表現するのが重要だ。」
「・・そうなんですね。」
「で、察しの通りこれは、丸っきり使い所のない魔術だ。理由は、今リリカが言った通りだ。」
「そんな使えない魔術をどうして作ったんですかね・・・」
「使い所よりも業績のためだろうな。これを書いた奴は、多分フォルセルの国立魔導研究所の教授だろう。奴らは新たな魔術の開発が、自身の業績になるからな。」
「そんなもののために、こんな高価な本を・・・。」
リリカは微妙な表情だ。貧農の家で食うや食わずの生活をしてきた彼女には、そんな無駄は考えられない事だった。
「彼らの世界では、ままある事だ。執筆者からすれば、通常、対象を破壊する事しかしない火属性の魔術に、何かしらの追加効果を付加したところにこの術の新しさがある、ていう事なんだろう。」
新しくても、役に立たない追加効果では意味はないのでは。どうせ勉強するのなら、使えるのがいい、と思うリリカだった。
「まだ何か言いたそうだな。」
「あの、失礼なこと言うかもしれないので。」
「いいから言ってみろ。疑問は残さない方がいい。」
「・・・何でご主人様は、そんな使えない魔法をリリカに教えようと思ったんですか?」
結構パンチの効いた質問が来た。言ってみてやっぱりまずいと思ったのか、リリカはごめんなさいをしようとした。
「謝らなくていいぞ。疑問に思ったことは何でも言うんだ。全部説明してやる。これは一応回復魔法だからな、ヒーラーを専門職とする俺が教えやすそうだと思ったからだ。
俺も教えるのは初めてだからな、役に立つかは置いといて、まずは一つ、お前にしっかり術を一つ教えたかったからだ。」
「そうなんですね。」
リリカは一応納得した様子だ。
「燃えない人だったら、この魔術も役に立つのかなー。」
「・・・・・・」
急にリアムが黙りこくった。え?何か怒らせたかしらと、思ってリリカが覗き込む。
「お前、今いいこと言ったな!」
「え?そ、そうですか?」
「凄いことを思いついちまった。」
興奮気味にリアムが呟く。実はこのひらめきが、この後二人の暮らしを大きく変えていくことになる。
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少しストーリーを進めたいので、しばらくこんな感じの魔法回が続きます。
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