黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

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第2章 リリカの水魔術

第22話 ★リリカの水魔術

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 約1ヶ月後、魔法陣の基礎を習得したリリカは、アクアジェリングで土に与えた水分を数日間保持する技術を体得していた。畑の四方には元々魔石が設置してあり、リアムが展開した虫よけ用の結界が張られていたが、そこにさらに魔法陣を追加する形で、リリカの水魔術も展開することとなった。

 それからの畑仕事は目覚ましく効率的になった。水道もホースもない世界である。以前は雨水をためた水瓶や、川から組んできた水をじょうろに入れて広い畑にまいていた。これが結構大変な作業で畑仕事に費やす時間の大部分を占めていた。元々習得しようとしていた魔術ではないが、水魔術の研究によって水全般の制御を高度にできるようになったため、最近は水瓶から魔術で水を吸い上げ、畑にまくことができるようになった。

 水瓶から紐のように水が空中に引き上げられ、畑に運ばれてスプリンクラーのように細かい水滴になってばらまかれる様子はなかなか壮観だ。 畑にまいた水は、アクアジェリングによって土の中で粘度を増し、土や砂利に絡みついて土壌の表層部にとどまり、蒸発することなく、少しずつ作物に吸収されるようになったので、一度水をまけば4~5日はほっておいても問題なくなった。

 それだけでも大したものだが、その後数日おきに水やり水魔術を繰り返すうちにリリカの技術はどんどん向上していった。

「今日は雲が多めですね。じゃ、あれを使いましょう。」

 天気としては晴天だがやや雲が多い日に、リリカは雲の水分を寄せ集め、畑に局所的に雨を降らせるという荒技を使えるまでになった。さらには、雲一つない快晴の時にも、かなり距離はあるというのに海辺の水分を運んできて、畑に雨を降らせるなどということまでできるようになった。この魔術はレインコールと名付けた。

 しかも雨にする際に水質の調整を行い、一度気化させることによって塩分はしっかり分離する。おかげで今まで海水を天日干しして作っていた料理用の塩も簡単に手に入るようになり一石二鳥だった。

 ここまでくると、100%成功する雨乞いのようなもので、対象範囲を広くすれば天候を操る魔導士と言っても遜色ない実力になってきている。リリカは水やりが楽になって良かったくらいにしか思っていないのだが。

 開発したアクアジェリングの魔導書作成も、かなりの苦労があったがリアムの結構厳しい指導を受けながらなんとかこなし、リリカは立派に魔導書も一冊書き上げた。

 魔導書では、その術を全く知らない人が読んでも間違いなく術が再現できるように客観的に書く。それが魔導書の作成で最も重要な点で、リリカが最初に一番苦労したところだったが、完成品は理路整然とした内容にまとまっているとリアムもほめてくれた。一度要領を得ると次は随分効率的になり、数日後にはレインコールも魔導書にしてしまった。

 以前にも触れたように魔導書のグレードは、グリモワール、テクスト、ブックの3つのランクがある。フォルセル王国の王立魔導研究所の教授陣のお墨付きを得た魔導書のみがグリモワールであるので、リリカの魔導書がグリモワールとして扱われることはない。

 しかし、術理を踏まえて、しっかりとした内容に仕上がっているものはテクストとして扱うことはできる。テクストとグリモワールの本質的な違いは、内容の正確性に100%の保証があるかないかの違いだ。実際に魔導書の内容に従って魔術が使えれば、内容に誤りがないことは証明できたといえるため、そのテクストは実質的にグリモワールと同じといってよい。

 リリカの書いた魔導書は、リアムが書いてある内容に厳密に従ってやってみて再現性が確認できたので、内容としてはグリモワール水準のものに仕上がった。とうとうリリカは、魔力の容量以外の面でも本場フォルセル王国の魔導士たちに匹敵する技術を得たといえる。

「いいか、リリカ。どんなに頑張っても俺たちはしょせんモグリだからな。俺も含めて、魔導書っぽいものを作れるようになってきてはいるが、素人の俺たちができるってことは、本場のフォルセル王国じゃ誰でもできることに違いないんだ。決しておごることなく、自己研鑽に励まないといけないんだぞ。」
「分かってます、ご主人様!アロン島を守るために、リリカも日々頑張ります!」

「ご主人様、リリカはレインコールの方は3日で魔導書を書けましたけど、ほんばの魔導士の人たちはどのくらいのペースで書くんでしょうか。」
「・・・見たことないからわからん。しかし、俺で1冊書くのに1日かかることを考えれば、彼らは1日数冊なら余裕なんじゃないか?実力的には、リリカ<俺<<<<<<フォルセル王国の黒魔術師、みたいな感じのはずだから下手したら5冊や10冊も普通かもしれないぞ。」

「ほ、本当ですか?そんなの新しい術のアイディア出すだけでも追いつかないですよ。数百ページただただ文字書くだけでも一日で終わるかどうかな気がします。。」
「だから、前から言ってるだろ?フォルセル王国の黒魔術師はやばい、絶対に敵に回しちゃいかんって。俺らが逆立ちしたって勝てっこないんだからな。」
「そ、そうですね。フォルセル王国は遠いからここで大人しくしてれば大丈夫ですよね。」
「ああ、すぐ近くのバルティス王国はともかく、フォルセル王国はな。」

 ちなみにリアムは、速記の魔術というものを開発し、イメージした文章を高速で紙面に焼き付ける手法によって、1分間に10ページ以上を書き記す技術を習得している。本人曰く「本場の黒魔術師ならこのくらい常識のはずだ。1分間に100ページ以上などきっと当たり前に違いないだろうが、今の俺にはとても無理。」とのことで、焦燥感に駆られながら、日々技術を磨いているようだ。

********************

 最近、フォルセル王国の王立魔導研究所では、若き天才と呼ばれる新進気鋭の研究者が話題になっている。彼女の名は、ジャンヌ=オストヴァルド。火と光りの魔術に優れ、若くして教授職に就き、すでに相当数のグリモワールの作成を手掛けてきた。

 注目はその著作の速さで、1冊をわずか1ヶ月で仕上げているという。学会では「尋常ではない研究速度。」「史上最高峰の賢者。」などともてはやされる一方、何かインチキをしているのではないかと疑いの目で彼女を見るものも少なくないとか。

********************

 そんな最近のフォルセル王国の魔導学会事情など、露ほども知らないリアムとリリカは、今日も魔術の訓練をしながら、畑仕事をしたり、ベッドの中で魔力回復に必要な行為をしたりしている。

─────
ここで第2章を区切ろうと思います。
今後ともよろしくお願いします。
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