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第3章 魔導要塞の攻防
第23話 バルティス聖騎士団始動
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港町エルチェリータが物々しい雰囲気に包まれている。鎧兜に身を包んだ聖騎士団が隊列を組んでいる。指揮を執るカーネルは隊列の先頭に立ち、遠巻きにアロン島を眺めている。
「本当にあの島が暗黒事変の発端となったのだろうか?」
港町のほとりに浮かぶ小さな島である。かつては貴族の別荘があったと言われているが、今ではその貴族は没落し、長らく無人島になっているとか。アーネスト神父によれば、逐電したかつてのカリスマヒーラー・リアムがこの島に潜り込み悪事を働いているということだった。
世界を闇に陥れるなどという怪異現象は、神話で語られる魔王伝説を現実のものにしたような話である。バルティス王国やフォルセル王国が建国される遥か昔、地上で暮らす人間に存亡の危機が訪れたという。闇の眷属を引き連れた魔王が地上をわがものにせんと襲い掛かったのだ。
魔王の侵攻はすさまじく、一度は世界は闇に閉ざされた。しかし神話の時代の人間はこれであきらめなかった。神から授かった聖剣を手にした勇者とこれを補佐する賢者によって、魔王との激闘が繰り広げられ、見事闇の一族を打ち払ったために、人の世は今に至るまで栄えているという。そんな神話で語り継がれるような出来事が、身近に浮かぶアロン島を舞台に今の世で起こるなど、とても信じがたい。
しかし、暗黒大事変は現実に起きてしまった大事件であり、多くの人間がアロン島の上空から闇が拡散する様を目撃している。暗黒大事変の元凶がまさしくアロン島発であるとしたら、そこには神話級の強大な存在が潜んでいると考え、警戒しなければならない。
王からはまずは調査隊を送り込み、島の状況を把握せよ、という指示を受けた。王は島に潜むものがリアムであるか否かにはあまり興味がないようだった。その点についてはカーネルも同感である。リアムであることが重要なのではなく、人類の存在を脅かす脅威がそこにあるか否かが重要なのだ。
カーネルは、聖騎士の中でも最強クラスの精鋭を集め、500人からの部隊を編成した。全員がヒールを習得し、身に着ける聖なる加護を受けた鎧兜は、通常の素材の1.5倍ほどに強度が高められている。教会への信仰を原動力に組織されたこの聖騎士こそ、バルティス王国が国土の統一を可能にした最大の戦力であり、その力は今も健在だ。
矢をはじき、刃を折る堅固な装甲の上、傷を負っても組織的なヒールで攻撃の手を休めることなく治療を行い、止まること知らぬ突撃の威力は圧倒的な破壊力で、多くの国が彼らの槍に蹂躙され滅亡してきた。
王は調査であるから、斥候を数名派遣する程度にとどめたほうが良いのでは、といったが、カーネルは最強の精鋭を持って乗り込むことを強く主張した。
「陛下、忠誠を誓うべき陛下に、今拙者はあえて身命を賭して具申いたします。暗黒大事変の元凶があの島にあると疑われる以上、その調査にあたっては伝説の魔王がいることを前提とした対応を取るべきと存じます。
下手に人を送り込み帰って来ぬという結果を繰り返すようなことはあってはなりません。相手が本当に魔王のような存在だとするならば、何度もこちらからアクションを試みるチャンスはないと心得るべきです。」
「しかし、その主力をよもや失うようなことになれば、我が国の受ける痛手は甚大であるぞ。そちはその責任をいかに取るつもりだ。」
「・・・命以上のものは差し出せませぬが。不敬を承知で発言させていただくなら、仮にわが精鋭を以ってして、歯が立たないような相手であるならば、はなから我が国は魔王に滅ぼされる運命にあるということとなります。
拙者は、最も生還する能力が高く、確実に情報を持ち帰れる人員として、わが精鋭の出動を推す次第にございます。そして、可能であるならばそのまま元凶を討ち取ることも辞さない決意です。」
「わかった。だが、早まるな。いたずらに刺激し、わざわざ我が国が攻撃を受けるような事態を引き起こすようなことだけはまかりならん。それだけは肝に銘じておけ。」
「御意。」
例え、勝てぬことはあったとしても、生還できる実力を持つ部隊を投入する。それがカーネルの考えだった。もし、本当にこの部隊を以ってして勝てぬような存在がある場合は、早急にフォルセル王国と協議し、魔導士軍団との連携も模索しなければならない。
カーネルの指揮する聖騎士団は隊列を乱すことなく船に乗り、アロン島へ向けて出港した。
ギュ─────
「あぉ、・・・くぅ。」
昼下がり、ベッドの中で魔術演習で消耗した魔力を回復させるために性欲の充足に励んでいたリアムは、絞られるようにして精を放出した。
「・・・ど、どうしたんだ、リリカ。ものすごい力で中が締まったぞ。おかげで一気にミルクが出てしまったよ。」
「はぁはぁ・・・。は、激しくイっちゃったからなんですが・・、何かリリカ、今とても胸騒ぎがしました。」
「(胸騒ぎがしても激しくイくのね。)なんかの前触れかな。魔力が高くなってからお前、結構霊感的なものが鋭くなってきてるからな。」
何事もなければよいが、と思いつつも肌の温もりに意識を溶かす二人であった。
「本当にあの島が暗黒事変の発端となったのだろうか?」
港町のほとりに浮かぶ小さな島である。かつては貴族の別荘があったと言われているが、今ではその貴族は没落し、長らく無人島になっているとか。アーネスト神父によれば、逐電したかつてのカリスマヒーラー・リアムがこの島に潜り込み悪事を働いているということだった。
世界を闇に陥れるなどという怪異現象は、神話で語られる魔王伝説を現実のものにしたような話である。バルティス王国やフォルセル王国が建国される遥か昔、地上で暮らす人間に存亡の危機が訪れたという。闇の眷属を引き連れた魔王が地上をわがものにせんと襲い掛かったのだ。
魔王の侵攻はすさまじく、一度は世界は闇に閉ざされた。しかし神話の時代の人間はこれであきらめなかった。神から授かった聖剣を手にした勇者とこれを補佐する賢者によって、魔王との激闘が繰り広げられ、見事闇の一族を打ち払ったために、人の世は今に至るまで栄えているという。そんな神話で語り継がれるような出来事が、身近に浮かぶアロン島を舞台に今の世で起こるなど、とても信じがたい。
しかし、暗黒大事変は現実に起きてしまった大事件であり、多くの人間がアロン島の上空から闇が拡散する様を目撃している。暗黒大事変の元凶がまさしくアロン島発であるとしたら、そこには神話級の強大な存在が潜んでいると考え、警戒しなければならない。
王からはまずは調査隊を送り込み、島の状況を把握せよ、という指示を受けた。王は島に潜むものがリアムであるか否かにはあまり興味がないようだった。その点についてはカーネルも同感である。リアムであることが重要なのではなく、人類の存在を脅かす脅威がそこにあるか否かが重要なのだ。
カーネルは、聖騎士の中でも最強クラスの精鋭を集め、500人からの部隊を編成した。全員がヒールを習得し、身に着ける聖なる加護を受けた鎧兜は、通常の素材の1.5倍ほどに強度が高められている。教会への信仰を原動力に組織されたこの聖騎士こそ、バルティス王国が国土の統一を可能にした最大の戦力であり、その力は今も健在だ。
矢をはじき、刃を折る堅固な装甲の上、傷を負っても組織的なヒールで攻撃の手を休めることなく治療を行い、止まること知らぬ突撃の威力は圧倒的な破壊力で、多くの国が彼らの槍に蹂躙され滅亡してきた。
王は調査であるから、斥候を数名派遣する程度にとどめたほうが良いのでは、といったが、カーネルは最強の精鋭を持って乗り込むことを強く主張した。
「陛下、忠誠を誓うべき陛下に、今拙者はあえて身命を賭して具申いたします。暗黒大事変の元凶があの島にあると疑われる以上、その調査にあたっては伝説の魔王がいることを前提とした対応を取るべきと存じます。
下手に人を送り込み帰って来ぬという結果を繰り返すようなことはあってはなりません。相手が本当に魔王のような存在だとするならば、何度もこちらからアクションを試みるチャンスはないと心得るべきです。」
「しかし、その主力をよもや失うようなことになれば、我が国の受ける痛手は甚大であるぞ。そちはその責任をいかに取るつもりだ。」
「・・・命以上のものは差し出せませぬが。不敬を承知で発言させていただくなら、仮にわが精鋭を以ってして、歯が立たないような相手であるならば、はなから我が国は魔王に滅ぼされる運命にあるということとなります。
拙者は、最も生還する能力が高く、確実に情報を持ち帰れる人員として、わが精鋭の出動を推す次第にございます。そして、可能であるならばそのまま元凶を討ち取ることも辞さない決意です。」
「わかった。だが、早まるな。いたずらに刺激し、わざわざ我が国が攻撃を受けるような事態を引き起こすようなことだけはまかりならん。それだけは肝に銘じておけ。」
「御意。」
例え、勝てぬことはあったとしても、生還できる実力を持つ部隊を投入する。それがカーネルの考えだった。もし、本当にこの部隊を以ってして勝てぬような存在がある場合は、早急にフォルセル王国と協議し、魔導士軍団との連携も模索しなければならない。
カーネルの指揮する聖騎士団は隊列を乱すことなく船に乗り、アロン島へ向けて出港した。
ギュ─────
「あぉ、・・・くぅ。」
昼下がり、ベッドの中で魔術演習で消耗した魔力を回復させるために性欲の充足に励んでいたリアムは、絞られるようにして精を放出した。
「・・・ど、どうしたんだ、リリカ。ものすごい力で中が締まったぞ。おかげで一気にミルクが出てしまったよ。」
「はぁはぁ・・・。は、激しくイっちゃったからなんですが・・、何かリリカ、今とても胸騒ぎがしました。」
「(胸騒ぎがしても激しくイくのね。)なんかの前触れかな。魔力が高くなってからお前、結構霊感的なものが鋭くなってきてるからな。」
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