黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

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第3章 魔導要塞の攻防

第27話 聖騎士たちの意地

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 うなりを上げる暴風雨は最後にひときわ強烈な突風を巻き起こし、島に侵入した聖騎士団を容赦なく叩きのめしたのち、数分後には嘘のように掻き消えていった。

 元々エルチェリータ周辺の夏は乾季だが、先ほどの嵐が嘘のようになりをひそめ、この地方本来の抜けるような青空が再び島の上空を覆った。

 爽やかに降り注ぐ陽光と吹き抜けるそよ風の下で、その大地には散り散りに吹き飛ばされた騎士たちがうめき声をあげていた。

 場所は浜辺であったので、多くのものは風にあおられて転げたことによる打撲程度で済んではいる。ただし、鎧の隙間から塩交じりの水が大量に流れ込み、全身ずぶぬれの状況は最悪のコンディションというほかはない。

 運の悪い数名は、浜辺に打ち上げられていた流木に激突して負傷したり、上空に巻き上げられて地面に落下したりした。彼らはかなりの重傷を負っており、幸い命に別状はないようだが、通常であれば戦線を離脱せざるを得ない状態だ。

 カーネルは何とか立ち上がり、しかと握り吹き飛ばされずに守り抜いた騎士団の旗を広げ、バラバラになった団員を呼び集めた。

「隊長。流木や岩にあたってしまったものがかなりの重傷です。」
「コネリーが骨を折っているようです。風でかなりの高さまで巻き上げられました。」

 負傷者の報告を聞きつつも、何とか全員を集結させるとカーネルが号令をかける。

「悪天候ごときで、我ら聖騎士団が引き返したとなれば、我が国の名誉が傷つく。今こそ我らの真骨頂を発揮するときだ!皆の者念を集中させよ!!」

 屈強な騎士たちだが、その外見に似合わず全員が魔力を集中させる。彼らの全身がわずかに白く光りだした。

「「「「「ヒール!!!」」」」」

 50人が集まり、一斉に放たれた治療魔法ヒールの閃光はさながら白い日の玉のように輝き、彼らを包み込んだ。これこそがバルティス王国の聖騎士団を不死身たらしめている力だ。

 治療魔法のヒールは通常は軽傷の治療程度しか行うことができないのが修道士たちの間では常識である。(但し、ほぼその能力のみを以って彼らは治療師としての権威を確立している。)

 しかし、実はヒールは技術的には簡単な治療術ではあるが、非常にロスの多い欠点を持っている。主に手に魔力を集中し患部にかざして使用するが、集中した魔力の4割程度は患部に届かず治療効果に寄与しないのだ。

 こうした欠点を持つヒールを彼ら聖騎士団は人数を集めることである程度克服する知恵を身に着けていた。50人が束になると、集団の中心部は空間がヒールの魔力で飽和し、患部を含めた全身を何度も術の力が駆け抜ける。本来患部に届かずに終わるはずの魔力も集団の中心部ではすべて治療に寄与し、治療効果が格段に向上するのだ。

 これは、白魔術の技術レベルとしては低いながらも、実戦で実用上の改善を工夫し続けてきた彼らのノウハウといえる。彼らの本分は戦闘であるので治療魔術の習得は修道士の手ほどき以上のことはしない(そして修道士はヒールしか教えないし教えられない。)騎士団は彼らのできる範囲で涙ぐましい改善を重ねてきたのだ。

「立てるか、コネリー。」
「はい、何とか。折れた骨が離れていなかったのが幸いしたようです。」

 集団の中心部に重傷者を配置し、一斉ヒールを行ったおかげで、修道士たちならさじを投げたかもしれない重傷者の治療を騎士団は何とか成し遂げた。

「よーし、陣形を整え再び前進だ。」

 カーネルが号令を発し、聖騎士団は探索の歩みを再開した。



(すごいな・・・あのダメージを治療するか。知らなかったが、バルティス王国わがくにの聖騎士団は修道院よりもよほど研鑽を積んでやがる。)

 魔道具のセンサーで彼らの状況を察知したリアムは、舌打ちをしつつも感嘆した。ヒールしか使っていないのだから、白魔術の技術は決して高いものではない。

 当然だ。彼らの専門は白兵戦による物理攻撃であり、白魔術の開発と研修は修道士が担うべき役回りなのだ。(あんな低い技術しか使わせてもらえない状況で、使い方をあのように工夫して・・・、もっと強い治療魔術を修道院が伝授していれば、恐らく彼らはさらに強くなるだろうに。)

 リアムは既に修道士の地位を捨てた立場ながら、治療師としての本分を全うしてこなかった修道院の足跡を恥じ、敵ながら彼ら聖騎士団に同情の念を禁じ得なかった。リアム自身、戦場で負傷者の治療にあたったことは幾度もあったが、戦闘の現場を目の当たりにすることはなかったため、彼らの実力を知らずにいたのだ。

 謙虚な気持ちになると、下半身は大人しくなるようで、リリカの中でミルクを放出したそれは今は小さくなり、コポッと小さな音を立てて、リリカから離れた。

 ちょっと残念そうな表情をしているリリカの股を伝う白い液のすじを懐紙で拭いてやりながらリアムは声をかける。

「リリカ。魔力の転送は終わったんだから、そんなにもの欲しそうな顔をするんじゃない。」
「そ、そんな。リリカそんなことありません。」
「嘘つけ。逝ってたじゃないか。」
「う・・・、そそれはその。」

 口ごもるリリカの頭を左腕で抱えて胸に引き寄せる。いつもベタベタ引っ付いているのにリリカの顔が赤くなった。

「ご、ご主人様?」
「気を抜くな。奴ら体勢を立て直したぞ。今度はお前が俺に魔力のサポートをする番だ。ただし肌でいいからな。」
「・・・はい!」
「それにリリカ。いくら効率が良くてもな、戦いの最中に気持ち良くなってたらだめだ。集中力がなくなるし、相手にも失礼だ。例えこちらの存在を向うが感知していなくてもだ。」

 しっかりミルクを放出しておいて言えた立場ではないのだが、彼らのガッツを目の当たりにした感動と賢者タイムになっているのとで、リアムは今神妙な心境になっている。

 任務遂行に対する彼らの信念は固い。確かに敬意を表すべきものだが、こちらとて自らの生活を守らねばならない。

 心を非情に徹し、今度はリアムが魔力の集中を開始した。
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