能力者は現在に

わまり

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喋らない双子 1

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   1
「凛、大丈夫?」

「ごめんね、理乃…」
凛と呼ばれた女の子は目を開き、答える

「水持ってきたから、ここに置いとくね」

「ありがと。」
薄い目を開け、双子の姉、理乃を見つめる。

「理乃…私ね…」

「うん。言わなくても分かるよ。凛の思ってる事。」

「やっぱり…私もなんだ。」

「私達は繋がってるからね…」



あれが最後の会話だった。
凛は教室の机でそう思う。

(凛、なにかあったの?悲しいの?)
頭に理乃の声が聞こえる。

(いやなんでもないよ。国語の授業ってだけ。)
(ねえ理乃、この力って、相手の思ってる事は覗けないんだね。)

(どうしたの急に?)
(まあ、相手に言いたい内容じゃないと分からないね。)

(そうだよね…)

だから私が何を思っても基本は理乃に届かない。
まだ、完全じゃないのかな

2人はいつしか喋らなくなっていた。能力のおかげで会話する必要が無くなったのだ。

「私は…喋りたいんだよ…」
そう凛はつぶやく。



理乃はまた凛が悲しい感情になっている事に気が付いた。
この頃、あの子からその感情をよく感じる…

テレパシーでも、相手には完全に伝わらない。
私達は1つなのだ。





この能力が発現した時は小学6年の時。
かれこれ3年、私達は会話をしていない。

この能力は幸運をもたらした。
片方が困っているときは必ず助けられた。
それに勉強だって、教科を分担して勉強した。
凛は国語と社会、理乃は数学と理科。
英語はどちらも好きだったので、両方で熱心に勉強をした。それで結果はいつも良かった。

そう。幸運しかないのだ。

なのに、この心情はなんだろう。
理乃とは繋がっているのにとても遠く感じる。



   2
ある日、高校生くらいだろうか、長い髪をたらし、おっとりとした人が訪ねてきて、こう言った
「篠原杏って言うの。単刀直入に言うとね、貴方達、なにか能力を持ってない?」

驚き、理乃に言った
(理乃!私達の能力の事知ってる人がいるの!)

(え!?その人はどんな人?)

(おっとりしてて…でもなんなんだろ?)
(聞いてみる)

「貴方は誰ですか…?」

「ごめんね、私は能力者を見つける目的で来たの。大丈夫、危害は加えないわ。協力しましょ。」

「協力?」

「うん。だから、能力を教えてくれない?」

(理乃、その人は能力の内容は知らないみたい)

(なら他にも能力があるって事?)

(そうかも…どうしよ。)

(帰ってもらおう。)

(そうだね、私達が見透かされてるみたいで嫌)
「ごめんなさい、帰って下さい」

「内容だけでいいの」

「帰って下さい!」
そう言い、強くドアを閉めた。
なんで能力の事を…?

凛は悔しく思った。私達が仲良いから手に入れたと思ったのに…
また胸が苦しくなった








篠原杏は3人の元へ戻った
「無理だったわ…」

「そうか…杏ならいけると思ったんだけど…」

「なかなか上手く行かなそうね。」
(あの子達、ちょっと変よね…ぎこちないって言うか…それにあの時々ある間…)

「ゆっくり打ち解けて行くしかないな」

「うん。やってみる」

能力、それは持っていて必ず幸せになるものじゃない。必ず不幸もある…
それは杏はよく分かっていた。




凛はベッドの上でクッションを抱え、横になっていた。
「理乃………」
呟き、また胸の中にあるモヤモヤについて考えていた。一緒にいるのに一緒じゃない。

理乃はまた凛の感情が変化したのが分かった。
「凛…….なにかあるのかな…」
暗くした部屋の中で理乃は天井を見つめた。

そして布団にくるまり、音を殺しながら何度も咳をした。私が倒れちゃ、凛が悲しむもの…。
頑張らないと…
もう1度咳をする。少し血の味が染みている。

窓から差し込む月の光は、理乃の手のひらに付いた血を照らしていた。
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