能力者は現在に

わまり

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蓋のない骨壷 5

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ヘリコプターが到着したとの知らせが入った。地元の人から借りたボートを発信させる。和樹は南へ逃げるだろう。
和樹が船を盗んだ時、老人の家からは食料が殆ど消えていた。
となると和樹は遠くへ逃げる。

船よりもヘリコプターの方が早い。日本海にいるとしたら海上で発見できるのは確実だ。

大きな音と共に、黒いプロペラを付けたヘリコプターが頭上を通過する。
報告と同時に出発できるよう準備を整え、その時を待つ。
そしてその時が来た。「出せ!」という合図と同時に、5台ほどのボートが一気に発進する。
和樹勇太の船は陸から3時間、もし陸から離れたとしてもヘリコプターがあるし追い付くはずだ。
和樹勇太の船は小さく、ゆっくりとしたスピードで動いている様だった。
ヘリコプターには気付いたはずだが、スピードは上げなかったそうだ。
上空からは操縦室が見えない作りになっており、和樹勇太1人とは確定できない。

船が発進してから2時間、前方に少しのライトが見えた。和樹勇太の船だ
警戒しながら近づく。

少し様子が変だ
同じスピードのまま船は移動し、曲がることなく直進している。

まさか
「おい、近づけろ」
操縦している警官に言う

「しかし和樹は武器を持ってるかも知れません、危険です」
太田が止める

「違う、そもそも和樹がいないかもしれないんだ」
苛ついた声をだす

「はっ、まさか…ここは陸から三時間の場所、それにこの天気です。どうやって逃げるっていうんですか」

「元から騙された、って事はないか。直進しているとはいえ、明らかに1度方向転換しなければこの方向には進めん」
「まだ船内に潜んでいるか…?とにかく警戒して近付け」
ゆっくりとボートが近付き、10m程の幅を開けて並走する

「船首室は…だ、誰もいません…!」
太田が双眼鏡を覗き込みながら答える

「他の所は見たか、どこに隠れているかわからん」

「ええ、あの船はもう隠れられる場所は下の水槽くらいしか…」

「乗るぞ」

「本当ですか!?危険では」

「ここで手間取って、もし本当にやつが逃げていたら更に逃げられる。」
操縦する警官に呼び掛け、距離を縮めて飛び乗る。
まず水槽をものを落として確認する、そして覗いたが誰もいない。
船首室も確かめるがいなかった
「まさか本当に…」
荷物も隅々まで調べる、手掛かりになりそうなものは見つからないが、証拠の為卵の殻やハンドルから指紋を取った。

まさに今いたように食料が散乱している
しかし、船のどこにも和樹勇太の姿はなかった。
「どうやって逃げた…?」

泳ぐなんて無謀過ぎる。
この天気、気温の中だ。
それに船には彼が背負っていた黒い大きな荷物は無かった。
あれを運びながら泳いだのか。

「海の中を調べろ…」
和樹勇太が生きてるとは思えない。
だとしたら彼は海の中、死体が発見されたら事件は解決だ。

それで終わり、良い事のはずなのだが、
小川にはまだ拭いきれないものがあった。
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