短編物語パンドラ 【百合】

わまり

文字の大きさ
79 / 81

弁明 21

しおりを挟む
まだ救える…
写真を見る度、その確信は増えていった。よく見ると町の所々に安全な場所がある事が分かる。
一人づつそこに入れば、みんな助かる事だって出来るかもしれないのだ。
未来で覚えた写真を現実で確認し、そして少しずつだが進歩する。


中学でも放課後、少しづつ倉庫裏の山へ缶詰等の食料を運んで行った。
地震発生後、皆でこの倉庫裏に行って食料を分け、安全な場所へそれぞれ別れようという事だ。

たまにカノにも手伝って貰ったが、カノは何も聞かずに作業してくれた。

そして年もあけ、その日は近付いてきた。
夢の中で調べ、現実で行動する。
何日も繰り返し行った。


三学期も始まり、数日経った金曜日の放課後、カノが話しかけてきた。
「ねえ、明日さ」
私の机の前で肘をつく
「エミの家泊まりに行ってもいい?」

「構わないけど…」
「どうして急に?」
滅多に泊まろう等と言う方ではないので、聞き返す。

「なんとなくだよ、もうすぐ卒業だから、思い出を作りたいなって」
カノは微笑む

確かに、もうすぐ卒業になる。
地震発生後、卒業式なんてあげられるか分からないが、私はどうせ意識を失うので断る理由もない。
「なんか久しぶりだね、こうやって誘ってくるの」
「嬉しいよ」

「そうかな…でも私も嬉しい」
「今まで誘う勇気が無かったから…」
少し顔を赤らめ、恥ずかしがる
「じゃあ、私係があるから」
そう言って出ていった。

それじゃあ今まで何度か誘おうと思っていたんだな、私って鈍感かも。
「早く帰って片付けなきゃ」
私は席を立ち、帰りの支度を始める。

紅く染まった夕日を背に、道を歩く。
「…そうだよね、私…」
地震が起こったら、その後私は4年も目覚めない。卒業式どころか高校にも行けないのだ。
今になってそれを寂しく感じる。
でも、残された人はもっと寂しいと感じるのだろうな…。

涙で潤んだ目を擦り、空を見上げて走って帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...